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「日本車キラー」 現代自に傷
燃費誇大表示で疑念 韓国での地盤も揺らぐ
世界で快進撃を続けてきた韓国・現代自動車にほころびが見え始めた。最重要市場である北米で、燃費性能を水増し表示して販売していた不祥事を巡って疑念が広がっているのだ。トヨタ自動車やホンダを徹底的に研究した対抗車種を投入し、シェアを伸ばしてきた「日本車キラー」のブランドが揺らいでいる。
6マイルの水増し
11月28日のロサンゼルス自動車ショー。燃費水増し表示事件の後、初めて公の場に姿を現す現代自幹部の周りに報道陣が殺到した。登場した米国現代自社長のジョン・クラフチックは、こう語り始めた。「問題を深刻に受け止めている。販売店を訪れた顧客の90%が補償に満足している」。この日はSUV(多目的スポーツ車)「サンタフェ」の新モデルが主役。だが、クラフチックは現代自が売りとしてきた燃費の良さについて一切触れなかった。
現代自は米国で、エコカーの目安とされる燃料1ガロン(約3.785リットル)で40マイル(1リットルで約17キロメートル)の走行が可能と繰り返してきた。しかし11月2日、米環境保護局(EPA)の調査で燃費性能の誇大表示が発覚した。対象は現代自が傘下の起亜自動車とともに販売した中型セダン「ソナタ」など13車種、計90万台。燃料1ガロンあたり最大6マイル(約9.6キロ)を水増し表示していたという。
現代自は燃費測定試験の「プロセス上の誤り」と説明、購入したユーザーへの補償をすぐに決めた。余計に払った燃料代を過去に遡って算出、さらに15%を上乗せする内容。
11月の米新車販売は過去最高を更新したが、消費者の間には現代自への疑念がじわりと広がっている。コネティカット州に住むシェリル・フォルティエは、6月に愛用の「ジープ」から起亜の「スポーテージ」に乗り換えたが、11月初めに事件を知り、憤る。「実際の補償にはネット上で面倒な入力が必要。将来の下取り価格にも影響すると思う」。
米国では同様の不満を持つ人々による集団訴訟が始まった。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは現代自の補償負担は年1億ドル(約85億円)と試算するが、裁判次第では金額が増える可能性もある。下取り価格減価への補償も求める動きがあるからだ。
燃費表示問題を巡る現代自の対応も、疑念を呼んでいる。まず、米メディアの関心が薄い大統領選直前に水増し表示をEPAと現代自が同時に公表した点。一部の韓国メディアは「大量リコール(回収・修理)の対応が後手に回ったトヨタとは違う」と持ち上げたが、燃費表示が疑わしいことは米消費者団体が以前から指摘していた。現代自は本当に迅速に対応したのか。
誇大表示に至った原因に関する説明にも疑問の声が上がっている。自動車大手のエンジニアは「燃費試験では燃料1ガロンで0.5マイルの誤差もめったに出ない。最大6マイルもの誤差を現代自が見逃すはずがない」と指摘。米上院議員のロックフェラーは11月末、真相解明を求める書簡をクラフチックに送った。単なるミスか、それとも──。仮に裁判で意図的だったと認定されれば、現代自の世界戦略にも影響する。
競争激化で焦りか
現代自が起亜自と合計でシェア7割超を握る金城湯池、韓国でも最近は地盤が揺らいでいる。現代自はこれまで、国内で稼いだ利益を海外に投じ成長してきた。近年はこうした手法が韓国消費者にも知れ渡り、値上げなどに不満が高まっている。
一方、トヨタや独フォルクスワーゲンなどの攻勢もあり、1〜11月の韓国内新車販売は現代自、起亜とも前年同期比3%ほど落ち込んだ。ウォン高も追い打ちをかける。
「燃費競争で研究開発力が追い付かない焦りがあったのではないか」。業界関係者は水増し表示問題の背景を語る。現代自は近年、外部デザイナーの抜てきでデザインを高めたり、「10年間10万マイル保証」など巧みなマーケティングで世界販売を伸ばしてきた。ただ売上高に対する研究開発費の比率は2%台とみられる。11年度で4.2%のトヨタに見劣りする。ハイブリッド技術、車体の軽量化、燃焼効率の良いエンジン──。燃費の向上は総合的な技術がものを言う。ずさんな燃費表示問題は、研究開発軽視の代償といえる。
現代自も問題の所在に気づいたようで、その後の動きは早い。燃費問題公表の10日後にアラバマ工場トップの交代を発表。グループ内部品メーカーにも生産や品質の専門家を配置し品質強化を印象づけた。
現代自のマーケティング力には定評がある。今回の問題をきっかけに地に足のついた経営に切り替われば、トヨタにとって一段と手ごわいライバルになるだろう。
=敬称略
(杉本貴司、尾島島雄)
[日経新聞12月30日朝刊P.10]
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