http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/802.html
Tweet |
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121230-00012298-toyo-soci&p=1
東洋経済オンライン 12月30日(日)13時30分配信
21世紀の資源主戦場は「海洋」、それが中国を尖閣諸島に向かわせる……。
──今や銅さえレアメタルになりそうなのですか。
レアメタルの王様はコバルトといわれてきたが、もっと深刻な問題として、銅が決定的に重要なレアメタルの筆頭として挙げられるようになった。
銅は世界で年間1600万トン生産されている。銅鉱石の品位は下がる一方で、最近では0・55%を切るような含有率のもので量産している。一方で価格はこわばり、ロンドン金属取引所における推移で見ても、リーマンショックで一時急落したものの、その後さっと元に戻し、レアメタル問題でパニック状態になったときの水準を超えた。中国の経済減速がいわれる現在も高止まりしている。こうなると、銅でさえ、採掘先がこれからは海だとなってくる。
──銅が海洋資源になる……。
多くの鉱物資源が品位や環境の制約から、新しく大規模開発を始めることが難しくなってきた。それだけ、陸上から海洋に目が向くことになる。今や地球上の資源フロンティアは海といえる。日本が出遅れているうちに、太平洋はもう「草刈り場」のようになり始めている。
海洋資源といっても鉱物やエネルギーだけではない。再生可能な資源も膨大にある。それは洋上風力であり、海流であり、潮力。英国をはじめとして欧州は国家主導で政策を誘導して洋上風力発電に取り組んでいる。それに、海にはもちろん多種多様な生物がいて、この「遺伝子資源」も重要だ。
.
──鉱物資源に限れば海底資源が焦点であり、その事業化において日本は韓国にも大きく水をあけられているとあります。
韓国は、2012年5月に公表された、日本の「緊急経済対策」に相当する施策で、海洋開発産業にかかわる政府目標を打ち出している。海洋プラント受注を11年の257億ドルから20年までに年間800億トンに増やし、同時に関連するエンジニアリングや資機材などの国内受注比率を11年の40%から20年までに60%に向上させるというもの。もともと造船業の総合海洋エンジニアリング産業への転換を急いでおり、たとえば09年にはすでにサムスン重工業がロイヤル・ダッチ・シェルから15年間の契約で、天然ガスを船上設備で液化するシステムを備えたFLNG(洋上液化・貯蔵・出荷設備)を1隻50億トンで10隻分受注している。
──海底鉱物資源の開発でも取り組みが活発とか。
たとえばフランスの海洋エンジニアリング会社のテクニップと共同で開発を進めている。対象はパプアニューギニア沖での海底の金、銀、銅の採掘。テクニップは海底から鉱石を海上に引き揚げる揚鉱管の技術で優れる。船自体はドイツ製だが、テクニップを通じて海底資源開発の技術レベルを上げようと必死だ。
──パプアニューギニア沖は開発先端地域のようですね。
多国籍の関連企業が複数社群がってパプアニューギニアの領海、水深1600メートルの海底で事業化を進め、トップランナーは14年に年間180万トンの鉱石を採掘する計画だ。うち110万トンは中国向け。パプアニューギニア政府との最終契約がまだ残っているが、すでに主要な船、機械類の発注は済んでいる。10年近く探査を続けてきて、極めて品位の高い鉱石を確認している。たとえば銅の含有率はなんと7・2%、金もトン当たり5グラムと極めて高い。金属ベースの推定埋蔵量は154万トンに達し、商業化の段階に入った。
──日本船籍の探査船の動きでは「ちきゅう」や「白嶺」という名をよく聞きます。
「ちきゅう」は地球深部探査船で、主に地震や地球の成り立ちといったサイエンスの部門で活躍しているが、海底資源の探査にも加わる。11年に沖縄トラフのボーリング調査において5000万トンに相当する「海底熱水鉱床」に金、銀、銅の存在が確認された。「白嶺」の場合はまさに資源探査船で、海底観察、音響調査、物理探査、ボーリングによるサンプリングなどの作業をしている。このほかチャーター船を買い取った「資源」もある。
──海底資源の鉱床は生成によりいくつかの種類がありますね。
主なものを挙げれば三つだ。まず沖縄トラフのような海底熱水鉱床。水深700〜1700メートルの所にあり、金、銀、銅、亜鉛、鉛などが含まれている。最近注目され出した「コバルトリッチクラスト」は、水深800〜2500メートルの海山の斜面に海水中のレアメタル類が薄い層として広範囲に堆積したものをいう。また以前から知られている「マンガン団塊」は、品質的にはコバルトがやや多いコバルトリッチクラストとほぼ同じだが、特にレアアース類の品位が高い。水深4000〜6000メートルの公海の深海底に主にある。
このうちコバルトリッチクラストとマンガン団塊は太平洋に広く豊かな資源として存在する。マンガン団塊はハワイとメキシコの間に多く、日本は2カ所に北海道と同じぐらいの面積の鉱区を持っている。これまでの含有レアアースの調査では、中国の最も品位の高いものに比べても劣らないという鉱物もあった。熱水鉱床の多くは、太平洋プレートがフィリピンプレートに潜り込む地帯に沿って分布していて、海底火山として噴き上がった小笠原諸島近海や沖縄トラフが特筆される。
──日本近海には話題のメタンハイドレートも結構分布しています。
世界的に見ても膨大な量になる。炭素換算で試算すると、6750億トンの石炭、1600億トンの原油、960億トンの天然ガスに対して、メタンハイドレートは3兆トンという。日本にはシェールガスが大してないとすれば、深海底とはいえ、メタンハイドレートでの米国との共同研究を大いに促進すべきだろう。
リン鉱石にも注目したい。植物生育の3要素の一つであり、陸上のリン鉱石はモロッコや中国に偏在しているが、海底にも結構ある。農業国のニュージーランドは14年には水深400メートルの海底で鉱石の採掘を手掛ける。特に日本の土壌はリン分が少ないので、リン資源はしっかり押さえておくべきだ。
──日本のEEZ(排他的経済水域)は世界6位の広さがあります。
448万平方キロメートルもある。陸地にEEZを含めると、中国が世界7位で日本は9位の面積だ。いかに日本は「領土」が広いか。それだけ尖閣諸島も沖ノ鳥島、南鳥島も大事なのだ。日本は、海に背を向けず、資源が豊富な国だという意識を持って海洋に果敢に進出していかなければならない。
(聞き手・本誌:塚田紀史 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済 2012年12月29日-1月5日 新春合併特大号)
たにぐち・まさつぐ
1938年生まれ。九州工業大学鉱山工学科卒業。小野田セメント入社、資源事業部長などを経て、秩父小野田専務、太平洋セメント専務、屋久島電工代表取締役。その後、国際連合大学ゼロエミッション・フォーラム産業界代表理事、千葉商科大学客員教授などを歴任。著書に『教養としての資源問題』。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。