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ヘッジファンド 日本売りのチャンスをうかがう
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/708.html
投稿者 あっしら 日時 2012 年 12 月 05 日 04:39:05: Mo7ApAlflbQ6s
 


危なげな話もいろいろ書かれているが、読むべきところは、復旦大学経済学院の孫立堅副院長のいくつかの説明に尽きる。


1)「ヘッジファンドが日本国債を空売りすることはほぼ不可能だ。海外投資家による日本国債の保有率が上昇しているが、その90%以上は日本国内の金融機関と日銀によって握られている。これらの機関が日本国債を軽々しく手放すことは絶対にない。また仮に海外投資家が日本国債を投げ売りしたとしても、日本国内の機関がこれを容易に取得するだろう。日本国内の機関投資家が高い安定性を維持しているからこそ、個人投資家・海外投資家がこれに便乗し、日本国債を保有している」


2)「日本経済は閣僚経済であり、財務省などの各部門が強い力を握る。首相は頻繁に交代できるが、日本政府の各部門は終身雇用制を採用している。各部門は長期にわたり結束を強めており、日銀も首相ではなくこれらの部門からの影響を受ける」


3)「日本の財務省と日銀の関係は非常に特殊だ。日銀は独立性を持たず、財務省から抑制され、大きな影響を受ける。日本の銀行・保険会社などの金融機関が日本国債の最大の債権者となる巨大なリスクは、日銀によって支えられている。日銀のリスク負担の背後には、財務省の長期的な産業政策の支援がある。異なる政党が与党となれば異なる政策を実施する米国とは異なり、日本では政党が頻繁に交代しても、政策・制度に変更は生じない。安倍氏が首相になったとしても、日本の金融政策・産業政策に与える影響には限りがある」


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ヘッジファンド 日本売りのチャンスをうかがう

 日本の10年物国債の収益率が、ついに0.5ベーシスポイント持ち直した。これは長期的に日本売りを行なっていたヘッジファンドにとって朗報だ。国際金融報が伝えた。

 もう一つの「朗報」は、今年の大人用紙おむつの販売量が、初めて子供用紙おむつを大幅に上回ったことだ。これは日本の高齢化問題が、日本国債バブルをさらに深刻化させることを意味する。2012年の債務残高の対GDP比は230%に近づいており、財政危機の警戒ラインを大幅に上回っている。

 さらなる「好材料」は、衆議院総選挙後の情勢だ。ヘッジファンドは、自民党総裁の安倍晋三氏が首相となった場合、より力強い金融政策が実施され、日本国債の収益率を2%に押し上げると予想している。これは円の崩壊に必要な6-7%にはまだ遠いが、空売りを行う投資家が巨額の利益を手にすることになる。

 しかしながら、日本で空売りは依然として一つの理論に過ぎず、また新しい理論でもない。世界のヘッジファンドによる円空売りは、すでに4年連続で失敗に終わっている。それでは今、なぜ機会が到来したというのだろうか。大人用紙おむつの販売量が、日本国債の崩壊を招く最後のひと押しとなるのだろうか。


 ■国債の国有化

 日本財務省は12月4日、2兆3000億円規模の10年物国債を発行し、12月6日には7000億円規模の30年物国債を売り出す。これは日本の債務残高がさらに膨れ上がることを意味する。これはまた、日本経済が停滞する中、債務残高の対GDP比がさらに上昇することを意味する。

 この原因により、10年物国債の利回りが0.5ベーシスポイント持ち直した。これまで日本国債の利回りは9年半にわたり低位推移していたが、日本政府は今回の持ち直しに対して懸念を示していない。日本の0.71%という国債利回りは依然として世界最低水準であり、日本国債の人気の高さがうかがえる。

 某銀行のアナリストは取材に応じた際に、「日本にとって大きな課題は人口構成であり、短期間内に発生しうる危機ではない。日本の定年退職年齢は65歳に達するが、日本政府はユーロ圏の各国のように、必要が生じた場合にこの年齢をさらに延長することができる」と指摘した。

 某信託銀行の固定収益型商品ファンドマネージャーは、「10年物国債の利回りは低水準にあるが、依然として購入者がいる。特に海外投資家は近年、日本国債の保有に積極的になっている。海外投資家の保有する日本国債の規模は現在、全体の8%に達している」と話した。

 復旦大学経済学院の孫立堅副院長は取材に応じた際に、「ヘッジファンドが日本国債を空売りすることはほぼ不可能だ。海外投資家による日本国債の保有率が上昇しているが、その90%以上は日本国内の金融機関と日銀によって握られている。これらの機関が日本国債を軽々しく手放すことは絶対にない。また仮に海外投資家が日本国債を投げ売りしたとしても、日本国内の機関がこれを容易に取得するだろう。日本国内の機関投資家が高い安定性を維持しているからこそ、個人投資家・海外投資家がこれに便乗し、日本国債を保有している」と分析した。

 上述したアナリストは、「日本の債務残高はすでに1000兆円に近づいているが、日本国内の金融資産は約1400兆円に達する。そのため日本国内の金融機関は、依然として国債を消化する能力を持つ。また日本国債は国有化の比率が高いため、どれほど格下げされたとしても、国内の銀行・保険会社・基金等の機関に対して影響が生じない」と分析を進めた。

 ■衆議院総選挙 空売りのチャンス到来か

 12月16日の衆議院総選挙は、空売りの一つのチャンスである。英国に本拠を置くオードリー・キャピタルの、日本売り専門の新ファンドを運用するクリストファー・リグ氏は、「情勢に変化が生じようとしており、すでに準備を整えている」と語った。

 リグ氏は「12月16日の衆議院総選挙は情勢変化の刺激剤となる。今回は、自民党総裁の安倍晋三氏が首相の座につくだろう。安倍氏は経済成長の推進に意欲的で、日銀がより積極的な措置を講じるよう望んでいる。日銀は来年年初に、総裁と2名の副総裁を交代する予定だ。安倍氏は任期内に、長期的にハト派であった日銀に変化をもたらす可能性がある。日銀はおそらく、外国債券の購入により量的緩和の新たな措置を推進する」と分析した。リグ氏は、この変化により日本国債の利回りが2%に押し上げられると予想した。これは円の崩壊に必要な6-7%にはまだ遠いが、空売りを行う投資家が巨額の利益を手にすることになる。

 ヘッジファンドの日本売りの前提条件は、安倍氏の衆議院総選挙での勝利だ。しかしながら、ヘッジファンドは日本の首相に対して、過度の期待を寄せているようだ。孫副院長は「日本経済は閣僚経済であり、財務省などの各部門が強い力を握る。首相は頻繁に交代できるが、日本政府の各部門は終身雇用制を採用している。各部門は長期にわたり結束を強めており、日銀も首相ではなくこれらの部門からの影響を受ける」と指摘した。

 孫副院長は「日本の財務省と日銀の関係は非常に特殊だ。日銀は独立性を持たず、財務省から抑制され、大きな影響を受ける。日本の銀行・保険会社などの金融機関が日本国債の最大の債権者となる巨大なリスクは、日銀によって支えられている。日銀のリスク負担の背後には、財務省の長期的な産業政策の支援がある。異なる政党が与党となれば異なる政策を実施する米国とは異なり、日本では政党が頻繁に交代しても、政策・制度に変更は生じない。安倍氏が首相になったとしても、日本の金融政策・産業政策に与える影響には限りがある」と説明した。(編集YF)

 「人民網日本語版」2012年12月4日

http://j.people.com.cn/94476/8045526.html


 

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コメント
 
01. 2012年12月05日 05:12:12 : Pj82T22SRI
爆発へカウントダウン、流動性バブル圧力鍋は沸騰中 年平均プラス13.2%ガンドラック
  12月3日(ブルームバーグ):ジェフリー・ガンドラック氏は10月半ばロサンゼルスのシティークラブで、約200人のファイナンシャルアドバイ

ザーや投資家を前に熱弁を振るった。テーマは地平線の彼方に見え隠れする金融大惨事の次の1幕だ。

米ダブルライン・キャピタルの共同創業者で最高経営責任者(CEO)の同氏によれば、惨事の第1幕は企業と家計、国家の債務が膨ら

み続けた27年間だった。これは2008年まで続いた。その時点で、無制限な貸し付けが遂に銀行をつぶし、世界経済をリセッション(景気

後退)に陥れ、各国政府と中央銀行は景気刺激のために何兆ドルをも費やさなければならなかった。これが第2幕だ。ブルームバーグ・マ

ーケッツ誌1月号が報じた。

恐ろしい第3幕として、ガンドラック氏はまた危機がやってくると予想する。巨額債務を抱えた国や企業が2013年以降のある時点でデフォ

ルト(債務不履行)に陥るというのだ。同氏は具体的な国名や企業名は挙げなかった。中銀はこれを防ごうと、さらに流動性を経済に供

給せざるを得なくなり、その後のインフレ高進のリスクが生じるという。
第3幕がいつ始まるかはガンドラック氏(53)にも分からない。しかし同氏は、それに向けて徐々に備えていく必要があると聴衆に説いた。ダ

ブルラインの投資責任者でもあるガンドラック氏は「あらかじめ危険信号が出されるとは思われない。行動を開始するのは今だ」と警告した


同氏が勧めるのはまず、実物資産の購入だ。宝石や美術品、商業用不動産などが望ましい上位を占める。また、ダブルラインは中国 企

業と米国の天然ガス会社 、産金会社 の株を買っているという。これらは割安だからだと同氏は説明した。

ビル・グロース氏を上回る成績

サブプライム住宅ローン危機を正しく予想したガンドラック氏の予言者としての力は折り紙付き。運用成績もこれを証明してくれる。ブルーム

バーグのデータによれば、同氏が以前に在籍したTCWグループで運用していたトータル・リターン債券ファンド の09年11月まで10年間の

成績は年平均プラス7.9%だった。ダブルラインの旗艦ファンド、ダブルライン・トータル・リターン債券ファンド は2010年4月の運用開始から

今年11月28日までの間、年平均プラス13.2%の成績を挙げ、著名運用者のビル・グロース氏を上回った。
高インフレ時代到来の予想が当たれば、ガンドラック氏のファンドも他の債券投資と同様に打撃を受ける。同氏は第3幕が上がるのを確

信しているので、2013年初めに株式ファンドとロング・ショート戦略のヘッジファンドを始めようと計画している。顧客にインフレから身を守る

追加の手段を提供する考えだ。割安な資産しか買わない主義の同氏は投げ売りされた証券を買うために現金も手元に置いている。トー

タル・リターン・ファンドの資産の17%は現金だ。78%は米政府の保証付き・保証なし両方の住宅ローン担保証券(MBS)に投資して

いる。

「大爆発を待っている」

同氏に言わせれば、今もうけられる金額は危機第3幕でもうけられる額に比べればスズメの涙だ。「何かがドーンと大爆発するのを待ってい

る」と同氏はロサンゼルスでの講演の1週間前に自社オフィスで語った。「第3幕が開くのが2年後だとしても、待つだけの価値がある。今の

市場には大した収益機会がない」と話した。

ガンドラック氏は大胆な発言でも知られる。今年4月にはニューヨークでの会議でブルームバーグ・ニュースのリポーターに、自分なら99年の

歴史を持つ連邦準備制度を廃止すると発言。三菱東京UFJ銀行のチーフ金融エコノミスト、クリス・ラプキー氏はこれについて、「ずいぶ

んと極端な見方だ」と首をかしげ、「1900年代の初めから進化してきた制度を全部変えて、一から始めようというのはばかげている」と一蹴

した。
ガンドラック氏にはキャリアが脅かされても自分の考えを貫く傾向がある。エール大学の理論数学の博士課程では博士論文のテーマ(無限

大が存在しないことを証明する)が学部の主流から外れるという理由で却下されたために、中退した。その後ロサンゼルスに移り2つのロック

バンドにドラマーとして所属。そして1985年にTCWのクオンツアナリストという職にたどり着いた。

けんか好きな性格

同氏はすぐにMBSファンドの花形運用者となったが、09年にはTCWの主導権をめぐる内部抗争に敗れ、解雇された。TCWは1カ月後

に受託者義務違反と企業秘密の窃盗で同氏を訴えた。

ガンドラック氏は反対提訴し、TCWが同氏とチームに12億5000万ドル(約1000億円)の運用報酬を将来支払わなくて済むよう、自身

を解雇したと主張した。ガンドラック氏とTCWは和解したが、同氏の好戦的な性格は変わらない。2010年からはモーニングスター の調査

アナリストらの判断が公平ではないとして、同社を相手取り係争している。

投資家としてのガンドラック氏は、価格が急落した資産があると買いまくる。07年にモーニングスター主催の会議で投資家に、サブプライム

市場は「完璧に純然たる破滅」の状態にあると警告。その約1年後には、ディストレスト債となり大半の投資家から忌避されていたMBS

を大量に買い始めた。これが奏功しTCWのトータル・リターン債券ファンドは09年の年初から同氏が解雇された12月4日までの間にプラス

21.7%の好成績を挙げた。

警告先は日本

今、世界的な金融大混乱と銀行救済、欧州の債務危機、中国の減速、米国の回復足踏みを経て、次の一連の悪いニュースがやってく

るとガンドラック氏は予想。同氏は第3幕と称するこの事態に備えている。同氏は13年にどこかの国がデフォルトに陥るとは考えていないも

のの、政府がどんどん積極的な資産購入へと追い込まれ自国通貨が下落しかねない国として、日本を例に挙げる。

日本経済は7−9月期に3.5%(前期比年率)のマイナス成長となった。4−9月の貿易収支は3兆2200億円と半期として過去最大の

赤字。日本銀行は10月30日に開いた金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金における資産購入を「66兆円」に拡大することを

決定した。ガンドラック氏は「日本は政策手段が尽きようとしている」と言う。

欧州中央銀行(ECB)が2010年から3554億ドル相当を経済に注入している欧州について、ガンドラック氏は市場を揺るがす幾つかの

イベントが起こり得るとみている。フィンランドのユーロ圏離脱やスペインでまた銀行がデフォルト寸前まで行く事件などがそれに含まれる。

流動性頼み

ダブルラインで新興市場債ファンドを運用するルツ・パディラ氏は「資産価格が上がっている唯一の理由はシステムに溢れる流動性だ」と指

摘する。
大統領選挙を終え財政の崖が目前に迫る今の米国で、ガンドラック氏が見るのは消費者ローンと政府の刺激策、連邦準備制度の力だ

けに頼った弱々しい成長だ。同氏は米金融当局が国債購入を拡大させればインフレ率が2ポイント跳ね上がるとみている。バーナンキ連

邦準備制度理事会(FRB)議長の下で当局は、08年以来2回の量的緩和(QE)で2兆3000億ドル相当の証券を購入している。
ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、当局は第3弾のQE3を2013年末まで延長し、購入総額は1兆ドルを突破する可能性があ

る。
「圧力鍋の中で圧力はどんどん高められていく。そして爆発する時、鍋のふたは空高く吹き飛ばされるだろう。それが第3幕の幕開けだ」と

同氏は述べた。

原題:Gundlach Expecting Kaboom of Defaults Pours Into ChineseStocks(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロサンゼルス Seth Lubove slubove@bloomberg.net;ニューヨーク Alexis Leondis

aleondis@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Laura Colby lcolby@bloomberg.net
更新日時: 2012/12/03 07:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ME9FTW6JTSF401.html


02. 2012年12月05日 09:28:24 : KwzxlT2Fm6
売ってもらって結構。
どんどん売り払い、損こけてもらいましょう。

金融詐欺集団は、日本から追放だ。


03. 2012年12月05日 10:33:58 : YM0oZVjtic
「あっしら」=隠れ[MR]?

撹乱コメント欄に 「Pj82T22SRI」でかってから出没
ちなみに「Pj82T22SRI」は
MRが「sci」を名乗っていた時のものと符合する


04. 2012年12月06日 05:00:59 : Apcu4sSTSU
単純な理屈だが、日本は金を無駄に使わなければ良いだけなんだよ。

巨額の国家予算を庶民感覚で使うようになれば金は国中に行き渡るし

十分に財政赤字を縮小に向かうだろうし、対外収支も黒字にできる。

金融緩和に象徴される無駄に使う部分を世界の投資家が狙っている

だけのことだ。投資家が美味しいと判断しない限り、日本が叩かれる

構図は日本の政治家が見抜いて国民を裏切らない政治をやるべきだ。


05. 2012年12月06日 10:39:12 : IOzibbQO0w
【第67回】 2012年12月5日 ザイ・オンライン編集部
【中原圭介の2013年投資戦略】
2013年は為替トレンドの大転換の年になる!シェールガス革命で復活するアメリカの動きにも注目

突然の衆議院解散、そして、安倍政権の現実性が高まる中で日経平均は上昇し円安の動きが続いている。この相場の流れはどこまで続くのか。総選挙後の景気と株価はどうなるのか。そして、2013年の世界経済の行方は――。リーマンショックや欧州経済危機など数々の予測を的中させてきたエコノミストの中原圭介さんに聞いた。

“安倍トレード”で日本株はどこまで上昇するか

?日経平均は11月前半に8600円台まで低迷していましたが、11月13日に野田総理が衆議院解散を明言してから11月末までに一気に9400円台まで上昇しました。


中原圭介(なかはらけいすけ)金融・経営のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」のエコノミスト兼経営コンサルタント。サブプライムショックや2011年の日経平均、今年5月の欧州危機を当てるなど、経済予測の正確さには定評がある。主な著書に『経済予測脳で人生が変わる!』(ダイヤモンド社)、近著は『日本経済大消失 生き残りと復活の新戦略』(幻冬舎

?その背景には、次期総理の最有力候補とされている安倍晋三自民党総裁の脱デフレ政策と公共事業復活の政策への期待感があります。いわゆる“安倍トレード”という動きです。

?安倍総裁は、2−3%程度の物価上昇率の目標を掲げ、それを実現するためにあらゆる手段を使った金融緩和策を日銀に迫ると言っています。そのためには、日銀法を改正することも視野に入れると強硬姿勢を見せています。

?また、安倍総裁は10年間で200兆円の公共事業を行う国土強靭化法の実現を主張しています。これは、小泉政権以降急速に縮小していた公共事業による景気対策を復活させようということを意味します。

?特に、日銀法改正を視野に入れた金融緩和策に期待が集まっていますが、私はこれについては実現するのは困難だろうと見ています。

?日銀法を改正してまで中央銀行に政治が介入するという手法は国際的にも非難が多く、国内外の専門家、そして自民党内からも反対の声が多いからです。

?10年間で200兆円という公共事業の復活についても、額面通りの実現は難しいと思います。経常黒字が減って赤字に転落しそうな状況で公共事業の拡大を行えば、財政悪化懸念から長期金利が急上昇してしまう危険性があるからです。

?たしかに、公共事業を拡大すれば国民の所得も改善し景気も良くなるでしょう。しかし、その持続性には大いに疑問符が付きますし、持続できなくなれば過剰に増えた建設業の就労者が失業者予備軍となり、景気は再び悪化してしまうでしょう。

?もっとも、野田政権下で発表された政府と日銀による脱デフレに向けた協力関係を明記した共同文書に沿って脱デフレ策を探っていくという今の流れは変わらないでしょう。また、公共事業拡大も、額面通りではないにしても、ある程度行われる可能性はあります。

?以上のことを考えると、当面のドル円相場の安値メドは、安倍政権による脱デフレ政策期待などを織り込んだとして、3月の円安水準である1ドル=84円くらいが精一杯ではないでしょうか。また、当面の日経平均の上昇メドは、期待を込めたとしても3月の高値1万200円台までは行かないのではないかとみています。

?当面の間、安倍政権への期待感だけで今年3月につけた円安水準と日経平均の高値水準を超えていくのはちょっと難しいのではないかと思います。


今の安倍自民党の掲げる政策では、悪いインフレが起きるだけ

?かりに安倍総裁が日銀法改正などにより強硬に日銀に対する介入を強めて、一段と金融緩和を拡大したとしても、それによって起こるのは良いインフレではなくて悪いインフレだろうと思います。

?良いインフレか悪いインフレかを分ける最大のポイントは国民の平均所得が上がるかどうかです。日銀も米国FRBもここ何年も金融緩和を行っていますが、日米ともに国民の平均所得が上がらない中で、資産や資源などの価格だけが上昇しています。

?資産価格の上昇は住宅バブルという形で表れて、それが破裂してリーマンショックが起きて、その後遺症がいまだに世界経済を苦しめています。資源価格の上昇は、原油、鉄鉱石、穀物などの価格が大幅に上昇するという形で起きて、所得が上がらない日米の国民だけでなく、新興国の貧しい人たちの生活も苦しめる結果になっています。

?これが悪いインフレです。

?では、国民の所得上昇による良いインフレを起こすためには、何をしたらいいのでしょうか。

?そのためには、自動車産業など日本経済の強みを維持しつつ、農業、観光、医療などの成長が見込める産業を、規制緩和などで振興することです。

?高品質な農産物、豊富な観光資源、高度な医療技術という日本の強みを生かし、拡大するアジア新興国の富裕層や中間層の需要を取り込んで成長するには、これらの分野の規制を緩和して育成していくべきです。そのことによって、国民の平均所得が上昇し、それによって良いインフレが起こされるはずです。

?しかし、残念ながら、今のところ安倍総裁からそうした政策はほとんど聞かれません。

2013年は円高トレンドの歴史的転換の年に

?目先的な円安のメドは1ドル=84円が精一杯と言いましたが、長期的な視点にたってみると、2013年は歴史的な円高トレンドが終焉する転換年になる可能性があると思っています。

次のページ>> 2013年には1ドル=90円の可能性も

?これまで歴史的な円高が続いてきた背景には、
(1)米国の金融緩和
(2)欧州の財政危機
(3)新興国による外貨準備の円買い
という3つの要因があったと思います。

?これらの要因によって、どちらかというと消去法的に円が買われ、その円買いの動きが過剰に進展してしまったのが2012年までの状況だと思います。

?しかし、この要因のうち(3)についてはほぼピークを過ぎたと思います。

?新興国は経済成長によって外貨準備を急増させてきましたが、それをドルやユーロにだけ集中させることには危険性を感じて、それ以外の通貨にも分散させる動きが強まりました。

?その主な分散先が円だったのです。

?この動きについては2012年がピークとなり、2013年に向けて下火になっていきそうです。新興国の外貨準備の通貨分散がある程度進んだのと、新興国経済自体の成長が減速して外貨を買い進める余裕がなくなってきているからです。

?米国の金融緩和拡大ついては、「雇用情勢の改善が鈍ければ一段の緩和を行う」との方針が打ち出されているので、場合によってはさらなる金融緩和の強化が行われる可能性は否めません。

?しかし、米国経済は最大のボトルネックであった不動産市場の回復が明確になり、雇用情勢も改善傾向をたどり始めています。こうした背景を考えると、2013年中には金融緩和の打ち止め感が強まる可能性が高いと思います。

?欧州の財政危機をめぐる情勢については、足元ではECBの打ち出した南欧国債の全額買い取り策などによって落ち着きを見せていますが、根本的な解決からはほど遠いと思います。この問題は残念ながら、あと1〜2年はくすぶり続けるでしょう。

?以上のように欧州の財政問題の懸念は残るものの、主な3つの円高要因のうち2つは解消に向かい、円高圧力はかなり後退しそうです。

?タイミングについては状況にもよりますが、先ほど述べた当面の円安メド1=84円も超えて、1ドル=90円水準を目指すような円安トレンドに入る可能性があると思います。

?その際、どのタイミングでどのくらいの円安に進展していくのかについて最大の鍵を握るのは米国の動向になってくると思います。

次のページ>> シェールガス革命で世界経済が大きく変わる

シェールガス革命で復活するアメリカ

?現状のアメリカ経済は、財政問題に苦しみ景気低迷を続ける欧州経済や、景気のスローダウンに苦しむ中国経済を尻目に、唯一世界経済のけん引役になりつつあります。

?先ほど述べたように欧州経済の困難はあと1−2年は続くと思います。

?中国経済も4兆元という景気対策の後遺症で過剰在庫・過剰設備、そして不動産バブルの反動や銀行の不良債権問題などの解消には時間がかかるでしょう。さらに、2013年の中国経済の最大のリスクは政治的な混乱です。

?中国では昨年9月に過激な反日デモが起きましたが、これは氷山のほんの一角であり、中国全土では年間10万件〜20万件におよぶ暴動が起きているとも言われています。その背景には、中国共産党による一党支配という政治的なゆがみから発生している二極化や官僚の汚職などに対する国民の不満が臨界点に達しつつあるという状況があります。

?2013年には、こうした政治的歪みや中国国民の不満が爆発して、政治的な混乱が一気に表面化してくるリスクがあるかもしれません。

?アメリカ経済については、労働市場と不動産市場が大底を打ち、緩やかながらも回復の傾向が感じられます。ただし、金融緩和だけによる景気回復ならば、その持続性に疑問符が付き、その反動に対する懸念も出てくるところです。

?しかし、アメリカ経済には今、長期的かつ非常に大きな追い風が吹き始めています。シェールガスの量産を可能にした「シェールガス革命」です。

?シェールガスというのは、頁岩と呼ばれる地層部分に堆積している天然ガスのことです。従来から北米などで大量の埋蔵量があることはわかっていましたが、技術的に採掘不可能とされていました。

?しかし、技術革新によって安いコストで大量にシェールガスを採掘することが可能になってきました。シェールガスの採掘が軌道に乗ってきたことで、米国はロシアと並ぶ原油ガス産出国となってきました。

?また、今後はシェールオイルの産出も本格化して、原油産出においてもサウジアラビアを抜いて世界一になるのは時間の問題となってきました。

日本経済にとってもプラスになるシェールガス革命

?このシェールガス革命によって今後数年、米国経済と世界経済は劇的に変わる可能性があります。

?まず、米国におけるエネルギーコストは劇的に下がりそうです。

?さらに、米国は原油や天然ガスの輸入国から輸出国に変わることで、貿易赤字も劇的に減少していくことが予想されます。

?こうしたシェールガス革命のトレンドは2012年に徐々に明確になってきましたが、2013年にはこのトレンドが一段と鮮明になり、米国経済の将来性に対する楽観論が強まるでしょう。

?このことは日本経済にも大きな福音となるでしょう。

?まず、ドル円相場の歴史的な転換が起き、ドル高円安トレンドに乗り始めてくると思います。

?また、アメリカとの協力関係を強めるとで、シェールガス革命の恩恵を受けられれば、日本のエネルギーコストも半分程度に減少していく可能性があると思います。三菱重工や日立製作所など、日本企業にはガス火力発電の高いノウハウを持っています。アメリカのシェールガス革命と日本の発電技術が結びつけば、大きな成果が生み出されるでしょう。

?日本の政治や経済界はここ数年、米国から中国に関心を移しつつありました。しかし、政治面でも経済面でも、再度アメリカとの協力・強調関係を強化するべきです。

?また、繰り返しになりますが、日本自身が規制緩和などによって農業・観光・医療の分野を中心に新産業の育成をすべきです。

?シェールガス革命と3つの分野の産業育成については私の新著『日本経済大消失 生き残りと復活の新戦略』(幻冬舎)でも詳しく述べましたが、新しい政権でこうした方向性の政策が打ち出されていけば、2013年以降本格的な円安トレンドに入りつつ、エネルギーコストは抑制されて、国民所得のアップを伴う良いインフレ、そして本格的な株高トレンドが生まれる可能性が十分にあると思います。

(取材・文/小泉秀希)
http://diamond.jp/articles/-/28979


06. 2012年12月06日 13:45:08 : p9B89YgNYw
チャンスをうかがうじゃなくてもう売ってるだろう
今の状況は日本買いのチャンスをうかうだろう

どっちにしても情報を捜査して儲けようと言うのが金融屋だからね
ホントにひっかけるような情報が多すぎる

冷静な第三者ってのはいないんだね
みんな当事者


07. 2012年12月13日 17:11:13 : IOzibbQO0w

「未踏の領域」に突き進むバーナンキ議長−日本の失敗教訓 

  12月13日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、バランスシートの拡大ペースをさらに加速させる資産購入を約束する一方、政策金利の見通しを失業率およびインフレ率と連動させることによって、金融政策で失業率低下を図るという未踏の領域にさらに踏み込んだ。
FRBの創立100周年の節目を控えて決定された今回の行動は、実験的な試みや強硬手段を取ることも辞さないバーナンキ議長の折り紙付きの積極姿勢を裏付けている。一連の措置はまた、1930年代の米国や90年代の日本のように金融緩和余地がわずかしかなければ、大きな経済的損失を被るという自らの研究を部分的に踏まえたものとなっている。
バーナンキ議長は、失業率7.7%という雇用市場の現状を「人的・経済的潜在力の莫大(ばくだい)な浪費」と呼び、さらなる国債購入は利益が潜在的リスクを上回ると語った。
三菱東京UFJ銀行の金融チーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏(ニューヨーク在勤)は「バーナンキ議長はこの景気のペースを再び加速させるために障害となる留め具を全て取り外そうとしている。視界に入るものは、国債であろうと住宅ローン担保証券(MBS)であろうと何でも買い入れようとしており、求めれば誰でも職を得られる状況になるまで、政策金利を低い水準に据え置く考えだ」と指摘する。
メシロウ・ファイナンシャル・ホールディングスのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「FRBは総力を結集している。彼らは日本と大恐慌の過ちを回避するために全力で取り組む決意であり、早過ぎる中止はないだろう。バーナンキ議長は、意図せぬ結果が生じるリスクを受け入れる覚悟だ」と話している。
成功の保証なくても試す
バーナンキ議長は12日、FRBが「追加的な金融緩和を提供する能力は無制限ではない」と述べた。議長は米プリンストン大学の教授だった2000年1月の論文「日本の金融政策:自己誘発性まひの事例か」(仮訳)の中で、「うまくいくことが完全には保証されていないことを試す」実験の意思が欠けていると日本の金融当局を批判していた。
FRB当局者らは今回初めて、経済指標の一定の基準と連動させる形で、政策金利の見通しを示した。連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の声明によれば、失業率が6.5%を上回り、向こう1、2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利は低い水準にとどまる見込みだ。2015年までは失業率が目標近くに低下することはないとFRB当局者は予測している。
このような基準の採用は、シカゴ連銀のエバンス総裁が昨年9月の段階で強く求めていたものだ。エバンス総裁は一時的にインフレが加速するリスクがあるとしても、失業率を押し下げるために「金融緩和の規模を著しく拡大すべきだ」と主張。その後、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁やイエレンFRB副議長、ボストン連銀のローゼングレン総裁もこの考えを支持した。
原題:Bernanke Wields New Tools for Jobs as Fed Enters UnmappedGround(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Caroline Salas Gage csalas1@bloomberg.net;東京 Craig Torres ctorres3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2012/12/13 16:00 JST


米FRB議長、景気支援や財政の崖対応での政策面の限界を指摘
2012年 12月 13日 09:35 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]


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米FOMC、数値基準導入と国債購入を決定:識者はこうみる
[ワシントン 12日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は12日、景気拡大に向けたFRBの支援策にも限界があるとの見解を示した。議長は連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「景気支援に向け、ここ数年でかなりの策を導入し、また新たな手法を見いだすことはいつでも可能だ。ただ金利がゼロに近く、(FRBの)バランスシートも既に膨らんでおり、追加緩和策を行う能力は無制限ではない」と述べた。

議長は、景気を阻害せず財政赤字を削減することに向け「財政政策立案者が一丸となり」歳出削減と税収増加策を講じることが重要と指摘。FRBも財政の崖による景気への悪影響を弱めるよう努力し、支援策を「おそらく若干拡大」すると述べた。

その上で「何度も述べてきたように、財政の崖の影響を完全に相殺することはできない。現時点でわれわれが利用できる手段や政策手段の限界を踏まえると、影響は大き過ぎる」と述べた。

議長はまた、雇用情勢の急激な改善に向けFRBが万能薬を有しているわけではないと指摘。「失業率を明日にでも5%に引き下げる魔法の杖を持っていれば、間違いなく利用する。しかし経済情勢、政策手段、FRBのバランスシート拡大に伴うコストやリスクの可能性を考慮する必要性などから、制約がある」と述べた。

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8BC00H20121213


小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
失業率を6.5%以下にするまで緩和策を続けるといったバーナンキ議長
2012/12/13 (木) 11:30


 どんなにゼロ金利政策を続けようと‥そして、どんなに長期国債を買い続けようと、なかなか失業率が低下しない。厳密に言えば、非常にゆっくりとしたペースで失業率は低下しているのですが、そのペースが余りにも遅い。さぞかし戦意を喪失しているのかと思いきや、さにあらず!

 流石バーナンキ議長! やるもんです。

 というか、財政の崖の問題が一向に解決しないなか、このままでは米経済がリセッションに突入するのが分かり切っているので、できる限りのことはやったという証拠を示しておく必要があるということなのでしょうか。

 効果があるかどうかは定かではない。しかし、何もしなければ、後日、FRBは何故事前に手を打たなかったのかと批判されることが必至である。バーナンキ議長はそう考えたというのでしょうか?

 いずれにしても、バーナンキ議長の決定したことは?

 実は、そう大したことではないのです。つまり、この12月に保有国債償還期間の長期化プログラムが終了するにともない、長期国債の購入額を増加させただけなのですから。

 しかし、その一方で、次のように述べていることに並々ならぬ決意を感じてしまうのです。

 FOMCの声明文です。

Press Release

Release Date: December 12, 2012
For immediate release

Information received since the Federal Open Market Committee met in October suggests that economic activity and employment have continued to expand at a moderate pace in recent months, apart from weather-related disruptions. Although the unemployment rate has declined somewhat since the summer, it remains elevated. Household spending has continued to advance, and the housing sector has shown further signs of improvement, but growth in business fixed investment has slowed. Inflation has been running somewhat below the Committee's longer-run objective, apart from temporary variations that largely reflect fluctuations in energy prices. Longer-term inflation expectations have remained stable.

「10月のFOMCの会合以降入手したデータによれば、気候の影響による混乱を別にすれば、ここ数か月、経済活動と雇用は緩やかなペースで拡大し続けている。失業率は、夏以降、幾分低下したもののまだ高いままである。家計の支出は拡大し続けており、住宅部門は改善の兆しを見せている。しかし、企業の設備投資の伸びは落ちている。インフレ率は、エネルギー価格の変動による一時的なブレを除けば、当委員会の長期的目標値を幾分下回って推移している。長期的なインフレ予想は依然として安定している」

Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee remains concerned that, without sufficient policy accommodation, economic growth might not be strong enough to generate sustained improvement in labor market conditions. Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee also anticipates that inflation over the medium term likely will run at or below its 2 percent objective.

「当委員会は、法律の規定に従って、雇用の最大化と物価の安定を促進することに努める。当委員会は、十分な緩和策を施さなければ、米国の経済成長率は、雇用市場の改善をもたらすほどの力強さを有しないと懸念する。さらに、世界の金融市場の緊張が今後の経済見通しに相当な下振れ圧力をかけ続ける。当委員会はまた、中期的なインフレ率は、2%の目標値かそれ以下で推移することになりそうだと予想する」

To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee will continue purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month. The Committee also will purchase longer-term Treasury securities after its program to extend the average maturity of its holdings of Treasury securities is completed at the end of the year, initially at a pace of $45 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and, in January, will resume rolling over maturing Treasury securities at auction. Taken together, these actions should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative.

「より強固な経済回復を支援し、そしてインフレ率が連銀の使命に沿った水準で長期的に推移することを確かなものにするために、当委員会は、住宅ローン担保証券を月400億ドルのペースで買い続ける。当委員会は、保有国債の平均償還期限の長期化措置が今年の末で終了した後、長期国債を手始めに月450億ドルのペースで購入する。当委員会は、住宅機関債と住宅ローン担保証券の償還元本を再びそれらの債券に投資する措置を継続し、1月には、入札によって償還期を迎える国債のロールオーバーを再開する。こうした措置が一緒になって、長期金利に対して下押し圧力をかけ続け、そして、住宅ローン市場を助けるほか、さらに広い意味での金融状況をより緩和させることになろう」

The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months. If the outlook for the labor market does not improve substantially, the Committee will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until such improvement is achieved in a context of price stability. In determining the size, pace, and composition of its asset purchases, the Committee will, as always, take appropriate account of the likely efficacy and costs of such purchases.

「当委員会は、今後数か月間、経済及び金融に関するデータを注意深く監視することになる。もし、労働市場の見通しがそれほど改善することがなければ、当委員会は、国債と住宅ローン担保証券を買い続けることとし、そして、物価が安定しているという条件の下で、そうした改善が現実のものとなるまで適当と思われる他の措置を駆使することになろう。資産購入の額、ペース、そして構成内容の決定に関して、当員会はいつもと同じく、そうした購入に伴うメリットとデメリットを勘案することになろう」

To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee expects that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens. In particular, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that this exceptionally low range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored. The Committee views these thresholds as consistent with its earlier date-based guidance. In determining how long to maintain a highly accommodative stance of monetary policy, the Committee will also consider other information, including additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.

「雇用の最大化と物価の安定を支援するため、当員会は、そうした購入措置が終了し、そして経済が回復した後も、極めて緩和的な金融政策が相当の期間に渡り継続することが適当であろうと予想する。特に、当委員会は、フェデラルファンズレートを0〜0.25%のレンジに維持することを決定しており、少なくても失業率が6.5%以上である限り、そし、て1〜2年先のインフレ見通しが、当委員会の長期目標である2%よりも0.5%ポイント以上上回らない限り、そして、より長期のインフレ予想が落ち着いている限り、この異例に低い金利水準が適当であると今時点で予想する。当委員会は、こうした基準値は、これまでの期限を明示したガイダンス(時間軸政策)に矛盾しないと考える。極めて緩和的な政策をいつまで維持するかを決定するに当たって、当委員会は、労働市場の他のデータや、インフレおよびインフレ予想値に関するデータ、或いは金融市場のデータを含む様々な情報を考慮することになる。金融緩和策を転換すると決定する時には、当委員会は、雇用の最大化と2%のインフレ率という2つの長期的な目標のどちらにも偏らない手法を取ることになる」

 長い文章を読んで頂き、敬意を表します。

 何が重要なのか?

 要するに、バーナンキ議長は、失業率が6.5%に達するまでは、まだまだゼロ金利政策を維持するし、金融緩和の姿勢を弱めることはないと断言しているのです。

 失業率は、今現在が7.7%。当分、米国の超緩和策が続くということなのです。


 <おまけの情報>

 FOMCの声明文のなかで、「当委員会は、住宅ローン担保証券を月400億ドルのペースで買い続ける」という箇所がありますが、正確に言えば、買うのは米連銀(さらに細かく言えば、NY連銀)であって、決してFOMCやFRBが買う訳ではないのです。その当たりに、彼らの精神的動揺が感じられるのですが‥

以上
http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2012/12/13/017869.php

バーナンキ米FRB議長の会見要旨
2012年 12月 13日 05:08 JST
<FRBの柔軟性>

より一般的に、FOMCは、見通しに関する情報および(買い入れ)プログラムの効果とコストに関する情報に基づき、証券買い入れペースの変更について柔軟に対応する意向だ。

<労働市場の著しい改善確認する必要>

第一に、資産買い入れは物価安定の下で労働市場の著しい改善を確認するまで継続すると予想している。(改善の)進展状況を評価する上で、FOMCは失業率や雇用者数、労働時間、労働参加率など一連の雇用指標を検証する。


米FOMC、月額450億ドルの国債買い入れ決定:識者はこうみる
2012年 12月 13日 03:44 JST
[ワシントン 12日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は12日発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、モーゲージ担保証券(MBS)の月額400億ドルの買い入れを続ける一方、年内に期限が切れるツイストオペに代わって、国債を月額450億ドル買い入れる方針を示した。

市場関係者の見方は以下の通り。

●月額450億ドルの長期債購入は追加量的緩和、リスクにプラス

<ファロス・トレーディングのマネジング・ディレクター、ブラッド・ベッチェル氏>

(ツイストオペ終了後に買い入れる長期国債の規模である)月額450億ドルと言う数字は、市場の予想を確認するものだった。これは追加量的緩和(QE)であり、リスクに対しプラスに作用するだろう。

●追加策正当化するほど景気悪化と認識、ドルへの影響軽微

<ワールドワイド・マーケッツの首席市場ストラテジスト、ジョゼフ・トレビサニ氏>

米連邦準備理事会(FRB)は、経済が追加支援措置を十分正当化するほど悪化しているとの認識に立っている。過去4年に行った資産買い入れによる成長支援効果が限定的であることを踏まえると、FRBは出口のない金融政策を余儀なくされている状況だ。景気を改善できないまま、経済崩壊を恐れ、刺激策を縮小できずにいる。

これは既存の政策の延長であり、すでに織り込まれ済みであることから、ドルへの影響は軽微だろう。

●現段階での数値基準の導入に意外感

<イートン・バンスのバイスプレジデント兼ポートフォリオ・マネジャー、エリック・ステイン氏>

声明は非常にハト派的な内容だった。現段階で基準とする数値が文言に盛り込まれたことが意外だった。数値基準の導入は来年まで待つと予想していた。

モーゲージ担保証券(MBS)購入プログラムとともに、「ツイストオペ」についても(短期債)売却なしの(長期債)買い入れを継続する方針を示した。これは大方の予想通りだった。

ただゼロ近辺の政策金利据え置きに関して、2015年半ばまでとしていた時間軸による目安が6.5%の失業率の基準に置き換えられたことはサプライズだ。

●早期の数値基準の導入は驚き

<クレディスイスの金利ストラテジスト、アイラ・ジャージー氏>

これほどまでに早く、エバンズ・シカゴ地区連銀総裁の提案していた数値基準が導入されたことはやや驚きだった。失業率の数値基準は、比較的高い6.5%に設定された。ただ、それ以外には政策スタンスに変化はない。

(新たな国債買い入れが)ツイストオペと異なるのは、7年債の購入を減らし、新たに5年債の買い入れを始めることだ。これにより、長期債の購入額は以前から減ることになる。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE8BB01K20121212?rpc=188


米FOMCで月額450億ドルの国債買い入れ決定、数値基準も導入
2012年 12月 13日 03:36 JST
[ワシントン 12日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は12日発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、モーゲージ担保証券(MBS)の月額400億ドルの買い入れを続ける一方、年内に期限が切れるツイストオペに代わって、国債を月額450億ドル買い入れる方針を示した。

また政策の数値基準を導入し、失業率が6.5%以上で、向こう1─2年のインフレ見通しが2.5%を超えず、長期インフレ期待が抑制され続けている限り、事実上のゼロ金利を維持するとした。

「財政の崖」をめぐる協議で経済見通しの不透明感が高まるなか、雇用の改善ペースに不満を表明、刺激策を増強する方針を示した。

声明は「十分な政策調整がなければ、経済成長は雇用市場状況の持続的改善を創出するのに十分強いものとはならない可能性がある」ことに引き続き懸念があるとした。

米FOMC声明全文
2012年 12月 13日 04:17
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[12日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)が12月11─12日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表した声明全文は次の通り。

10月のFOMC会合以降に入手した情報は、天候に関連した混乱を除き、経済活動と雇用が最近数カ月間緩やかなペース(at a moderate pace)で拡大を続けたことを示唆している。失業率は夏以降、幾分低下した(has declined somewhat)ものの、依然として高止まりしている。家計支出は拡大を続け(continued to advance)、住宅セクターは一段の改善の兆しを示したが、企業による固定投資の伸びは鈍化した。インフレは、主にエネルギー価格の変動を反映した一時的な変化を除き、FOMCの長期目標を幾分下回る水準で推移している(has been running somewhat below the Committee's longer-run objective)。長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。十分な政策緩和がなければ、経済成長が労働市場の持続的な改善を実現するために十分な強さとならない可能性があることをFOMCは引き続き懸念している。さらに国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。またインフレは中期的に、FOMCの目標である2%かそれを下回る水準で推移する公算が大きいと予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と最も整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは、月額400億ドルのエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の追加購入を継続する。また、保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムが今年末に終了した後、FOMCは長期財務省証券を購入する。購入のペースは当初、月額450億ドルとする。FOMCはエージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行MBSの元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資する既存の政策を維持し、償還を迎える財務省証券の入札でのロールオーバーを1月から再開する。こうした措置は長期金利への下方圧力を維持し、モーゲージ市場を支援するとともに、より広範な金融状況を一段と緩和的にする一助となるだろう。

FOMCは今後数カ月間に入手する経済・金融動向の情報を注視する。労働市場の見通しが著しく改善しない(does not improve substantially)場合、物価安定の下でそうした改善を実現できるまで、FOMCは財務省証券とエージェンシー発行MBSの購入を継続し、その他の政策手段を適宜活用する。資産購入の規模、ペース、構成を決定するに当たっては、想定される効果とコストを適切に考慮する。

雇用最大化と物価安定に向けた継続的な進展を支えるため、FOMCは、資産買入プログラムが終了し景気回復が強まった後もかなりの間(considerable time)、非常に緩和的なスタンス(highly accommodative stance)が引き続き適切になると予想している。具体的には、FOMCは、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。少なくとも失業率が6.5%を上回る水準にとどまるとともに、向こう1─2年のインフレ見通しがFOMCの長期目標である2%を0.5%ポイント超上回らず、長期インフレ期待が引き続き十分抑制(well anchored)されている限り、FF金利を異例の低いレンジ(exceptionally low range)とすることが適切になると現時点で予想している。FOMCはこれらの数値基準について、期日に基づいた従来のガイダンスと整合性が取れている(consistent)と認識している。極めて緩和的な金融政策スタンスをどの程度の期間維持するか決定するに当たっては、労働市場の状況に関するさらなる尺度やインフレ圧力およびインフレ期待を示す指標、金融動向の見通しを含むその他の情報も考慮する。緩和解除の開始を決定する際には、雇用最大化と2%のインフレ率という長期目標に沿うバランスの取れたアプローチを採る。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、パウエル、ラスキン、スタイン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

反対票を投じたのはラッカー委員で、資産購入プログラムと、FF金利を異例の低いレンジに維持することが適切とする状況に関する文言に反対した。

<10月24日>

9月のFOMC会合以降に入手した情報は、経済活動が最近数カ月間緩やかなペースで拡大を続けた(continued to expand at a moderate pace)ことを示唆している。雇用の伸びは緩慢で、失業率は依然として高止まりしている。家計支出はやや速いペースで拡大(advanced a bit more quickly)したが、企業による固定投資の伸びは鈍化した。住宅セクターは、落ち込んだ水準からではあるものの、一段の改善の兆しがいくらか見られる。インフレは最近、エネルギー価格の上昇を反映し幾分加速した(picked up somewhat)。長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。十分な政策緩和がなければ、経済成長が労働市場の持続的な改善を実現するために十分な強さとならない可能性があることをFOMCは引き続き懸念している(remains concerned)。さらに国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。またインフレは中期的に、FOMCの目標である2%かそれを下回る水準で推移する公算が大きいと予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と最も整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは、毎月400億ドルのエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の追加購入を継続する。また、保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムを今年末まで継続し、エージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行MBSの元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資する既存の政策を維持する。

これらの措置により、FOMCの長期証券保有は今年末まで毎月約850億ドル増加する。こうした措置は長期金利に下方圧力を加え、モーゲージ市場を支援するとともに、より広範な金融状況を一段と緩和的にする一助となるだろう。

FOMCは今後数カ月間に入手する経済・金融動向の情報を注視する。労働市場の見通しが著しく改善しない(does not improve substantially)場合、物価安定の下でそうした改善を実現できるまで、FOMCはエージェンシー発行MBSの購入を継続し、追加の資産購入を実施するとともに、その他の政策手段を適宜活用する。資産購入の規模、ペース、構成を決定するに当たっては、想定される効果とコストを適切に考慮する。

雇用最大化と物価安定に向けた継続的な進展を支えるため、FOMCは、景気回復が強まった後もかなりの間(considerable time after the economic recovery strengthens)、非常に緩和的なスタンス(highly accommodative stance)が引き続き適切になると予想している。具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。少なくとも2015年半ばまで、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、パウエル、ラスキン、スタイン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

反対票を投じたのはラッカー委員で、追加資産購入に反対し、極めて緩和的な金融政策スタンスが引き続き適切であるとする期間、およびFF金利を異例の低水準に維持することが正当化される公算が大きいとする期間に関する文言について異議を唱えた。

<9月13日>

8月のFOMC会合以降に入手した情報は、経済活動が最近数カ月間緩やかなペースで拡大を続けた(continued to expand at a moderate pace)ことを示唆している。雇用の伸びは緩慢で、失業率は依然として高止まりしている。家計支出は拡大を継続している(continued to advance)が、企業による固定投資は減速した(slowed)ように見える。住宅セクターは、抑制された水準(depressed level)からではあるものの、一段の改善の兆しがいくらか見られる。一部の主要コモディティーの価格が最近上昇しているものの、インフレは抑制されている(subdued)。長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。一段の政策緩和がなければ経済成長が労働市場の持続的な改善を実現するために十分な強さとならない可能性があることをFOMCは懸念している。さらに国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。またインフレは中期的に、FOMCの目標である2%かそれを下回る水準で推移する公算が大きいと予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と最も整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは本日、エージェンシー発行モーゲージ債(MBS)を毎月400億ドル追加購入することにより政策緩和を拡大することで合意した。また、6月に発表した通り保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムを今年末まで継続し、エージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行MBSの元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資する既存の政策を維持する。これらの措置により、FOMCの長期証券保有は今年末まで毎月約850億ドル増加する。こうした措置は長期金利に下方圧力を加え、モーゲージ市場を支援するとともに、より広範な金融状況を一段と緩和的にする一助となるだろう。

FOMCは今後数カ月間に入手する経済・金融動向の情報を注視する。労働市場の見通しが著しく改善しない(does not improve substantially)場合、物価安定の下でそうした改善を実現できるまで、FOMCはエージェンシー発行MBSの購入を継続し、追加の資産購入を実施するとともに、その他の政策手段を適宜活用する。資産購入の規模、ペース、構成を決定するに当たっては、想定される効果とコストを適切に考慮する。

雇用最大化と物価安定に向けた継続的な進展を支えるため、FOMCは、景気回復が強まった後もかなりの間(considerable time after the economic recovery strengthens)、非常に緩和的なスタンス(highly accommodative stance)が引き続き適切になると予想している。具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。少なくとも2015年半ば(at least through mid 2015)まで、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、パウエル、ラスキン、スタイン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

反対票を投じたのはラッカー委員で、追加資産購入に反対し、FF金利を異例の低水準に維持することが経済状況により正当化される公算の大きい期間に関する文言を削除することが好ましいと主張した。

<8月1日>

6月のFOMC会合以降に入手した情報は、経済活動が今年上半期にかけて幾分減速した(decelerated somewhat)ことを示唆している。雇用の伸びはここ数カ月間緩慢(has been slow)で、失業率は依然として高止まり(remains elevated)している。企業による固定投資は引き続き増加している。家計支出は、今年これまでよりいく分減速したペースで(somewhat slower pace)増加している。住宅市場は一段の改善の兆しがいくらか見られるものの、依然として低迷している。主に原油・ガソリン価格の下落を反映し、インフレは今年これまでから低下した(has declined)。長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。FOMCは、向こう数四半期の経済成長が引き続き緩やかで(remain moderate)、その後極めて段階的に加速する(pick up very gradually)と予想している。その結果、失業率はFOMCが2つの責務に整合するとみなす水準に向かって緩慢にしか低下しない(decline only slowly )と予測している。さらに国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。インフレは中期的に、FOMCが2つの責務に最も整合すると考える水準かそれを下回る水準で推移すると予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは金融政策において非常に緩和的なスタンスを維持する(maintain a highly accommodative stance)と予想している。具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。資源活用の水準が低く、中期的なインフレ見通しが抑制されているなどの経済状況から、少なくとも2014年終盤まで(at least through late 2014)、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している。

FOMCはまた、6月に発表した通り、保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムを今年末まで継続することを決定した。FOMCはエージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資する既存の政策を維持する。FOMCは今後入手する経済・金融動向の情報を注視し、物価安定の文脈の中で一段と強い景気回復と持続的な雇用環境の改善を促進するため、必要に応じ追加緩和を実施する。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、パウエル、ラスキン、スタイン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

反対票を投じたのはラッカー委員で、FF金利を異例の低水準に維持することが経済状況により正当化される公算の大きい期間に関する文言を削除することを望んだ。

<6月20日>

4月のFOMC会合以降に入手した情報は、経済が今年緩やかに拡大してきた(expanding moderately)ことを示唆している。しかしながら雇用の伸びは最近鈍化し(has slowed)、失業率は依然として高止まり(remains elevated)している。

企業による固定投資は引き続き増加している。家計支出は、今年これまでよりいく分減速したペースで(somewhat slower pace)増加しているもようだ。

住宅市場は一部改善の兆しが見られるものの、依然として低迷している。

主に原油・ガソリン価格の下落を反映し、インフレは低下した(has declined)。長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。FOMCは、向こう数四半期の経済成長が引き続き緩やかで(remain moderate)、その後極めて段階的に加速する(pick up very gradually)と予想している。その結果、失業率はFOMCが2つの責務に整合するとみなす水準に向かって緩慢にしか低下しない(decline only slowly )と予測している。

さらに国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。

インフレは中期的に、FOMCが2つの責務に最も整合すると考える水準かそれを下回る水準で推移すると予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは金融政策において非常に緩和的なスタンスを維持する(maintain a highly accommodative stance)と予想している。

具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。資源活用の水準が低く、中期的なインフレ見通しが抑制されているなどの経済状況から、少なくとも2014年終盤まで(at least through late 2014)、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している。

FOMCはまた、保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムを年内いっぱい継続することを決定した。具体的には残存期間が6─30年の財務省証券を現在のペースで購入し、残存期間およそ3年以下の財務省証券を同額売却もしくは償還する。

この残存期間の長期化プログラムは、長期金利に下向きの圧力を加えるとともに、広範な金融環境をさらに緩和的にする一助となる見通し。

FOMCはエージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資する既存の政策を維持する。

FOMCは物価安定の文脈の中で、一段と強い景気回復と持続的な雇用環境の改善を促進するため、一段の措置を適切に講じる用意がある。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、パウエル、ラスキン、スタイン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

ラッカー委員は残存期間の長期化プログラムに反対票を投じた。

<4月25日>

3月のFOMC会合以降に入手した情報は、経済が緩やかに拡大してきた(expanding moderately)ことを示唆している。労働市場状況は最近改善した(improved in recent months)。失業率は低下したが、依然として高止まり(remains elevated)している。家計支出および企業による固定投資は引き続き増加している。

住宅市場は一部改善の兆しが見られるものの、依然として低迷している。主に原油・ガソリン価格の上昇を反映し、インフレは幾分加速した(picked up somewhat)。だが長期インフレ期待は引き続き安定している。

法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。FOMCは、向こう数四半期の経済成長が引き続き緩やかで(remain moderate)、その後段階的に加速する(pick up gradually)と予想している。その結果、失業率はFOMCが2つの責務に整合するとみなす水準に向かって徐々に低下する(decline gradually)と予測している。

国際金融市場の緊張は、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスク(significant downside risks)となっている。

今年に入っての原油・ガソリン価格の上昇がインフレに及ぼす影響は一時的なものにとどまるとみられ、その後はFOMCが2つの責務に最も整合すると考える水準かそれを下回る水準でインフレ率推移すると予想している。

一段と力強い景気回復を支援し、インフレが時間の経過と共に確実にFOMCの2つの責務と整合的な水準になるよう支えるために、FOMCは金融政策において非常に緩和的なスタンスを維持する(maintain a highly accommodative stance)と予想している。

具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。資源活用の水準が低く、中期的なインフレ見通しが抑制されているなどの経済状況から、少なくとも2014年終盤まで(at least through late 2014)、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している。

FOMCはまた、9月に発表した、保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムを継続することを決定した。

FOMCはエージェンシー債(政府機関債)とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の元本償還資金をエージェンシー発行MBSに再投資し、償還期限を迎える財務省証券を入札でロールオーバーする既存の政策を維持する。

FOMCは、物価安定の文脈の中で一段と強い景気回復を促進するために、保有証券の規模と構成を定期的に見直し、適切に調整する用意がある。

今回の決定に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ダドリー副委員長、デューク、ロックハート、ピアナルト、ラスキン、タルーロ、ウィリアムズ、イエレンの各委員。

ラッカー委員は、FF金利を少なくとも2014年終盤まで異例の低水準に据え置くことが経済状況によって正当化される公算が大きいとは予想していないと主張し、反対票を投じた。

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE8BB01O20121212?sp=true


08. 2012年12月13日 17:15:20 : IOzibbQO0w

焦点:外為取引縮小で銀行は利益捻出に苦戦、人員削減の動きにも直面 さらなる賃金抑制目指せば逆効果の危険、ILO報告など警告 ブラジル通貨安政策のジレンマ
2012年 12月 13日 13:14 JST  

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[ロンドン 12日 ロイター] 外国為替市場での取引は今年半ば以降、ボラティリティ低下を伴って縮小が続き、銀行は利益を捻出するのに苦労している。これはユーロ圏危機の一服などが原因だが、取引高は来年さらに落ち込む可能性が大きく、ディーラーは人員削減の動きに直面している。

UBS(UBSN.VX: 株価, 企業情報, レポート)でグローバル為替・貴金属共同責任者を務めるジョージ・アタナソプロス氏は「取引高の減少は外為市場関係者のだれにも、そしてどこの銀行にも影響を及ぼしている」と語った。

世界経済の減速がしばらくの間、外為取引の取引高押し下げをもたらした上、多くの国が超低金利となっていることも響いている。通貨の買いを引き寄せる魅力が低下したからだ。

さらに欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が7月、恐らくは意図せざる形とはいえ「ユーロ防衛のためにあらゆる措置を取る」と発言したことで、取引縮小傾向に拍車がかかった。総裁発言に続いてECBが新たな国債買い入れプログラムを打ち出すと、市場に落ち着きが戻ってユーロの下げ幅を制限。外為ディーラーにとって典型的な儲けの種である通貨の変動が小幅になってしまった。

多通貨決済システムのCLSにおける取引高は8─11月で前年比11%減少した。2大外為電子取引システムのEBSとトムソン・ロイター(TRI.TO: 株価, 企業情報, レポート)の取引高の前年比減少率はそれぞれ約40%と25%となった。

バークレイズ(BARC.L: 株価, 企業情報, レポート)の欧州為替責任者、アドリアン・マクゴワン氏は「業界全体の取引高は減っている。今年は為替相場に方向感が見当たらず、多くの参加者にとってより厳しい1年になった」と指摘した。

<取引高回復は期待薄>

CLSのデータで1日の平均取引高が5兆ドルを上回った昨年までは、外為取引は着実に拡大していたが、今年になって下向きに転じた。そしてこの先もほとんど持ち直す見込みはない。 スウェーデンの銀行SEB(SEBa.ST: 株価, 企業情報, レポート)のグローバル為替責任者、ロバート・セルシング氏は、来年の取引高は10─20%減少する可能性があると予想する。

将来の相場変動予想を示すインプライドボラティリティはここ数カ月、主要通貨間取引でみてリーマン・ショック以降の最低水準で推移している。取引高の減少に加えて値動きが狭くなったことで、超高速取引で儲ける機会も少なくなった。

取引高減少が続けば銀行は、既に近年、電子取引の拡大で規模が小さくなっている外為取引部門の人員を一段と削減しかねない。

ロンドンの人材あっせん会社幹部によると、銀行は他の部門ほどのペースでないものの、これまでにも外為関連の人員を減らしてきたが、今後はトレーダーよりもセールスの人員削減が増える可能性が大きい。その理由は単純に、トレーディング部門が既に少人数になっているからだという。

<利幅が縮小>

SEBのセルシング氏は、同社が外為関連の情報技術(IT)コストと人件費を向こう3年で10─20%削減する計画だと述べた。「状況に適応しなければならない。さもないとコストが高くなり過ぎて、儲からなくなる」という。

外為市場の取引を奪っているのは、電子取引プラットフォームに積極的に投資して顧客に有利な価格設定ができる大手銀行だが、そうした価格提供は利益を損なう。

ドイツ銀行(DBKGn.DE: 株価, 企業情報, レポート)の外為セールス・トレーディングのグローバル責任者を務めるケビン・ロジャース氏は「業界にとって利幅は圧縮されつつあり、われわれの前年比の収入はやや減少するだろう」との見通しを示した。ユーロマネーの調査で8年連続外為取引部門第1位になっているドイツ銀行でさえ、このような状態だ。

今年のユーロマネー調査で第2位になったシティ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)のG10外為グローバル責任者、ジェフ・フィーグ氏も、シティの取引高は今年20─30%増加した見込みなのに利幅は大きく縮小したと打ち明けた。

<楽観論>

より規模が小さいSEBは、今年の取引高が4%程度増えたとみている。ユーロ圏危機で北欧通貨の需要が高まったため。ただ、セルシング氏によると、収入は昨年を下回り、利幅の圧縮は「よりひどくなる」恐れがある。

それでも楽観論を維持する向きもある。HSBCの外為キャッシュトレーディング責任者、マーク・ジョンソン氏は「これまで25年にわたって、外為取引が減少したと関係者が口にする場面を多く目にしてきた。しかしいずれも取引高が増加して市場は復活してきた」と主張する。

取引高が増えるためには、きっかけが必要になる。例えば世界経済や貿易の改善だ。ギリシャがユーロ圏を離脱したり、ユーロが完全に解体すれば、より多くの通貨が生まれる。もっともこのシナリオは外為取引以外には、何のプラスももたらさないとみられている。

(Jessica Mortimer記者)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8BC02M20121213?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true

焦点:さらなる賃金抑制目指せば逆効果の危険、ILO報告など警告 
2012年 12月 13日 13:43

[ロンドン 12日 ロイター] 所得格差の拡大が、世界的な金融危機の少なくとも一因だったとすれば、世界各国の政府と企業は、財政再建や自らの資金繰りのために賃金をさらに押し下げようとすることに慎重になるべきだろう。

金融危機に至る過程では、家計は債務を積み上げることで、富裕層との対比で徐々に落ち込む所得と消費を支えた。しかし、簡単に融資を受けることができなくなった今、賃金をさらに押し下げようとすれば、家計の消費を後退させるリスクがあり、社会的な結束を危機に陥らせることにもなりかねない。

米国、英国をはじめとする先進国や発展途上国の富と賃金の不平等にあらためて一般大衆の注目が集まっているという現象は、5年たってもまだ消えない金融危機の余波の1つだ。米国で所得階層全体のわずか1%である「スーパーリッチ」を取り上げたノーベル賞受賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏の著作や、ウォール街から世界に広がった「占拠せよ(オキュパイ)」運動などはいずれも、今や企業や金融機関、政府のエリートたちが無視できなくなった事実を浮き彫りにしている。

米国の国内総生産(GDP)に占める賃金・給与の比率が1970年に比べ10%ポイント低下して43%となっているのに対し、企業の税引き後利益の比率は逆に2005年の2倍の12%に拡大している。HSBCはこれを「金融における最も冷酷な部類のチャート」と評した。

ベアリング・アセット・マネジメントのマリノ・バレンサイス最高投資責任者(CIO)は先月下旬の「ロイター2013投資アウトルック・サミット」で、「米国がかつてこれほど不平等だったことはない。『アメリカン・ドリーム』は過去20年間で『アメリカン・ナイトメア(悪夢)』になってしまった」と嘆いた。

同氏は、所得格差の代表的指標である「ジニ係数」の急上昇と、米国の所得の中央値が20年前を超えられずにいることに言及し、所得格差に起因する社会的・政治的リスクは自身にとって今後5─10年間の大きなテーマだと考えている。

こうした状況は米国にとどまらない。経済協力開発機構(OECD)が掌握している30カ国のうち26カ国で1990年以降、国民総所得に占める労働分配率が低下している。また国際労働機関(ILO)のデータによると、所得の最上位10%と最下位10%の格差は1995年以降、31か国中23カ国で拡大した。

しかし「原因と結果」、「リスクと対処法」を見極めるのは簡単ではない。例えば、簡単に融資を受けられたこととグローバル化が格差を拡大させたのか、あるいはその逆なのかだ。

ILOが先週公表した「世界賃金報告2012─13年版」は、労働分配率の低下を信用バブルの一因に挙げている。金融危機の前の10年間に労働分配率が低下したことが、借り入れによって消費を維持しようとする家計の債務積み増しにつながったという。

<生産性/賃金分析>

ILOによると、1999年から2011年までの間に世界の先進国においては、平均労働生産性は賃金上昇率の2倍以上のペースで向上した。技術革新や労組の組織率低下、世界貿易の拡大などがその理由に挙げられているが、ILOは、株価と住宅価格の上昇や金融のグローバル化、融資基準の緩和も、家計にとって借り入れを賃金に代わる消費の資金源とすることを促したと説明している。

報告は「もしも、米国の土台をなす99%への労働分配率低下が、借り入れによる消費で埋め合わされていなければ、世界の経済成長はもっと低いものになっていたか、もっと早く成長が止まっていただろう」との見解を示した。

英国やオーストラリアにも同様の現象が認められるし、アイルランドやギリシャ、ポルトガル、スペインといったユーロ圏周縁国では、経常収支や貿易収支の赤字を膨らませる結果を招いている。

金融危機以降、賃金環境はさらに悪化している。世界の実質平均月間賃金伸び率(中国を除く)は2007年の2.3%から、昨年はマイナス0.2%に落ち込んでいる。ただ、その一因は労働時間の減少と雇用確保の見返りのワークシェアリングにある。それによって失業率の上昇に歯止めがかかっているとすれば、債務の返済に苦闘する家計にとって良いことだったといえる。

しかし、これから先はどうだろうか。ユーロ圏をはじめ先進国の経済成長と企業収益に不安が続く中で、国のバランスシートを立て直すため、あるいは企業の収益率を維持するために、賃金にさらなる圧力がかかることは明白だ。だが、今回は所得と消費への打撃を相殺する信用供与の支援は期待できない。従って、労働者の所得に対する新たな打撃がもたらす社会的・政治的な影響は一層強烈になるだろう。

そしてILOも指摘するように、世界経済は1つの閉鎖空間なのだから、すべての国が黒字を確保することはできない。全員がさらに賃金に下げ圧力をかけようとすれば、破壊的な結果を招きかねない。

ILOの報告は「世界の多くの国が同時並行的に賃金の引き下げあるいは抑制を追求すれば、競争面のプラス効果は消えてしまい、消費に及ぼす悪影響が世界の総需要の低下を招く恐れがある」と警告している。

(Mike Dolan記者) 
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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8BC02X20121213?sp=true

コラム:ブラジル通貨安政策のジレンマ=村田雅志氏
2012年 12月 13日 14:09  
村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト

[東京 13日 ロイター] ブラジルレアル(以下レアル)が11月以降、対ドルでの動きを大きくしている。レアルは9月から10月末まで1ドル=2.01―2.04のレンジ内で推移していたが、11月半ばには2.08ちょうど近辺まで下落。同国のマンテガ財務相が11月23日、レアル安の動きを容認する姿勢を示すと、下値の目安とされていた2.10を突破し2.11台後半まで一時急落した。

その後、ブラジル中央銀行が通貨スワップを通じたドル売り介入を実施したこともあって2.08台で落ち着きを見せたが、11月30日に発表された同国の第3四半期の国内総生産(GDP)が前年同期比0.9%増と市場予想を大きく下回ると、2009年5月上旬以来のレアル安水準である2.13台後半まで下落した。

しかし、週明け12月3日には2度にわたり計21億ドル相当のドル売り介入を実施。ブラジル政府が6%の金融取引税(IOF)の対象となる外国からの融資の満期を従来の2年以内から1年以内に短縮すると発表したことで海外からのレアル建て融資が増えるとの見方も強まり、2.07―2.08付近で落ち着いた動きとなっている。ブラジル当局によるレアル安容認姿勢は、国内景気に対する危機感の表れと見ていいだろう。

これまでのブラジル当局であれば、恐らく利下げによって個人消費の拡大を目指していた。しかし、同国中銀は昨年8月末から利下げを続け、今年10月までに政策金利を12.50%から7.25%まですでに引き下げている。この結果、個人消費は第3四半期に前年同期比3.39%増と堅調な結果となったが、11月の同国自動車販売が前年同月比3.0%減を記録するなど個人消費が鈍化する兆しも見られる。

家計向け銀行貸出は貸倒率の高止まりを背景に減速傾向が続いており、これ以上、利下げを続けても個人消費の押し上げ効果は限定的となる可能性が強まっている。一方、利下げにより落ち着きを見せていたインフレ圧力が再び強まるリスクもある。ブラジル当局は、さらなる利下げに対して慎重にならざるを得ない。

一方で、輸出の低迷を通じた製造業景気の悪化が目立っている。第3四半期の輸出は前年同期比3.22%減と2四半期連続の前年割れを記録。業種別にみると製造業が同1.76%減と5四半期連続の前年割れを記録しており、輸出の低迷が製造業の景気を下押しする構図となっている。また、10月の鉱工業生産は前年同月比2.3%増と13カ月ぶりの前年超えとなったが伸びは低いまま。ブラジル当局としては、輸出や製造業に直接働きかけるレアル安政策を進めたほうが合理的といえる。

<当局の想定レンジは1ドル=2.05―2.10か>

しかし、ブラジル当局が行き過ぎたレアル安を望んでいないのも事実だ。11月のブラジルIPCA(消費者物価指数の一つ)は前年同月比5.53%増と同国中銀が定める目標レンジ(4.5%を中央値として上下2%ポイント)の範囲内に収まったものの、6カ月連続で上昇した。

内訳を見ると、伸びが高まりやすい傾向にある食品・飲料価格だけでなく、住居や衣服など広範囲にわたってインフレ圧力の強まりが観測される。こうした状況下でレアルの下落が進み過ぎると、輸入物価の上昇を通じてインフレの加速ペースが拡大する可能性が高まる。

また、レアル安期待が強まると、同国の経常赤字をファイナンスする海外からの直接投資が縮小するリスクも高まる。ブラジル当局はレアル安を進めることで製造業をサポートしたいが、行き過ぎたレアル安には歯止めをかけたいという(やや都合のよい)意向を持っていると推察していいだろう。

実際、11月以降、2.04台のときにレアル高をけん制する口先介入を始める一方で、2.10を超えるとドル売り介入などでレアル安を抑制している。つまり、当局の事実上の目標レンジは、1ドル=2.05―2.10ということなのだろう。しかし、彼らが望ましいと考えるレアルの水準は同国景気の状況次第であり、今後さらに景気の減速感が強まれば、レアルをさらに下落させようとする可能性もある。

ブラジル景気の先行きは楽観視できない。同国中銀の最新の週次サーベイによると、13年の成長率見通しは3.50%と4週連続の下方修正となり、政府が目標にしているとされる4.0%を下回る結果となった。上述したように家計向け銀行貸出は減速が続いているほか、雇用の拡大ペースも鈍化している。小売売上高も減税が延長された自動車を除くと伸びが弱く、自動車などに対する減税措置が終了する13年に個人消費が失速する展開も考えられる。輸出についてはレアル安の効果や底堅く推移する米国景気への期待感があるものの、ブラジル最大の輸出国である中国の景気回復ペースは緩慢で、対中輸出が短期に急拡大するとは見込みにくい。

レアルの実質実効為替レートは12年10月時点で86.9と、09年5月以来の水準まで低下しているが、インフレターゲットを導入した99年7月以降の平均に対し依然として3.7%程度のレアル高水準にある。仮にブラジル当局がレアルの水準をさらに3%程度引き下げようと考えると、レアルのレンジは1ドル=2.10―2.15程度に上方シフトすることになる。

ブラジル当局によるレアル安誘導は、輸出の拡大を通じた製造業支援策の一つと考えられることから、輸出や製造業関連の経済指標が相場の先行きを占う上で重要となる。月初に発表される鉱工業生産や製造業購買担当者指数(いわゆるPMI)に加え、毎週発表される貿易収支の動向がレアル相場に大きな影響を及ぼすと予想される。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。 

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8BC01Z20121213?sp=true


コラム:「1ドル90円台」への遠い道のり=唐鎌大輔氏
2012年 12月 12日 15:17 JST

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唐鎌大輔 みずほコーポレート銀行 マーケット・エコノミスト

[東京 12日 ロイター] 2007年夏以降、約5年半にわたり続いてきた円高局面はついに終焉を迎えたとの声が日増しに強くなっている。現状、日本の政治要因などを受けて実現の疑わしい政策期待を踏まえながら円相場が下落している面もあって、足許の円安の勢いをそのまま鵜呑みにするのは危険だ。しかし、過去5年半と照らして、「今までとは違うこと」がいくつか散見されるのも確かで、相場の転換点を検討すべき時期に差し掛かっていることは否めない。

結論から言えば、円安基調に至るための「帆」は拡がりつつあるが、その基調を加速させるための「風」が不足している。拡がりつつある「帆」にたとえられるのは圧倒的な貿易赤字に根ざした需給環境の変化だ。これに応じて変化しつつあるIMM通貨先物取引やリスク・リバーサルなどに現れる市場参加者のリスク認識、各種テクニカル指標そして国内政治環境なども「帆」の一角をなしている。

だが、円安基調を加速させるための「風」にあたる日米金利差が決定的に小さい状況が続いており、円安一辺倒の動きがどこかで止まる可能性も考慮したほうが良いだろう。

<貿易赤字は通年で史上最大に>

過去5年半と現状を比べて「今までとは違うこと」を挙げるとすれば、第一に貿易収支の赤字定着は外せない。前回のコラム「需給の変化が迫る円安シナリオ」(here)で述べたように、基礎的需給の円安方向への傾斜が昨今の円安相場の主因と考えて差し支えないだろう。

年初来の貿易赤字(1―10月)は約5.3兆円で、すでに昨年通年の約2.5兆円の倍に達している。10月時点までの合計で過去最大であり、日本の対外経済部門には「今までとは違うこと」が明確に起きていると言って良い。

海外市場参加者は「貿易赤字」の次に「経常赤字」、そして「国債暴落」という三段論法に飛びつきやすく、後述するIMM通貨先物取引などに現れる海外投機筋の円売りには強いモメンタムを感じる。まずは、来年1月24日に公表される12年通年の貿易赤字発表に伴い「過去最大の貿易赤字」とのヘッドラインが飛び交い、海外時間に入った後に円売りが加速するような展開を警戒したい。

ちなみに、足許の円安の主因になっている感の強い貿易赤字だが、これは国内政局の動向とも完全に無関係ではない。貿易赤字の定着には2つの要因がある。海外経済の減速に伴う輸出の減少と、原子力発電所停止に伴う鉱物性燃料輸入の増加である。

このうち後者の要因に関しては次期政権の原発政策次第によっては弱まるかもしれない。現状、政権を担う可能性が高い自民党は「独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先」「再稼動の可否については、順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指す」としており、再稼動に含みを残している。

再稼動判断が順次なされていけば、現状よりも後者の要因に基づく貿易赤字は押さえられるだろう。とはいえ、前者の要因は残るため、貿易黒字への復帰は難しく、需給環境が円安相場を支持するという状況に大きな変化はないと思われる。円安反転を考える向きにとって、需給環境の変化は大きな材料であり続けそうである。

<2007年7月以来の円売り水準>

また、投機筋の円売りにも、金融危機後では久方ぶりの勢いを感じる。12月4日時点のIMM通貨先物取引における対ドルの円ショートポジションは07年7月24日以来の水準(約138億ドル)に膨れ上がっており、円キャリー取引が最も活発だった時期と同程度の水準に迫りつつある。

これは、安倍総裁の言葉を借りれば「次元の違う金融政策」への期待を織り込んだものと推測され、確固たる日米金利差に基づいた動きではない。政権交代後、これまで掲げてきた政策の実現にこぎ着ければ、さらにショートは積み上がる可能性があるが、逆にすでに議論の俎上にのっている金融政策が順次撤回される流れになれば、一時的に円高への振れは避けられないだろう。

だが、07年当時は月2兆円前後の経常黒字を筆頭に需給環境が圧倒的に円高を支持する中で円ショートが積み上がったという経緯があり、そこに危うさがあった。現状は需給環境が明らかに円安を支持する中での円ショートの積み上がりであり、巻き戻されるにしても、新たに円ロングを構築する動きに至るのは難しいかもしれない。

なお、07年7月以来の円ショートとはいえ、最大で200億ドル弱まで膨れ上がっていた07年6月頃の水準にはまだ距離があり、そこに伍するようなショートの積み上げが見られて初めて、本格的に円安反転の材料が増えたと考えるほうが無難だろう。現状の130億ドル程度の円売りは、今年2―4月の水準(最大で102億ドル)に近く、「金融危機後に全く見られなかった」と言い切れるほどの円売りではまだない。

参考までに、IMM通貨先物取引のデータを基に円売りの持続力をイメージすることもできる。07年7月以降で、最も長く続いたIMM通貨先物取引の円売りは今年の2月28日から5月29日までの14週間で、これに次ぐのが10年3月30日から6月15日までの12週間だった。結局のところ、「日米金利差拡大を伴わない投機の円売りの持続期間はせいぜい3か月間」というイメージで、まずは足許の円売りが「14週間」以上続くか否かに注目しておく必要がある。

<最長4年にまで及び始めた円プットオーバー>

加えて、リスク・リバーサルなどに現れるオプション市場参加者のリスク認識も変わり始めている。これまで短期(1年未満)においても珍しかった円プットオーバー(リスク・リバーサルがプラス。円を売る権利の方がドルを売る権利よりも高い状態。または円を買う権利の方がドルを買う権利よりも安い状態)が長期でも見られており、現状、最長4年までが円プットオーバーになっている。

周知の通り、円相場では歴史的に円コールオーバー(円を買う権利の方がドルを買う権利よりも高い状態。または円を売る権利の方がドルを売る権利よりも安い状態)が常態化してきた経緯があり、円安よりも円高をヘッジするニーズの方が高いのが常識であった。過去を振り返っても、円高方向への振れの方が円安方向への振れよりも激しいという事実や、日米金利差でみれば常に米国が日本を上回る状態であったこと(金利平価説に基づけば、金利差の分、将来円高が進行するという考え方)、そして何より巨額の貿易黒字が当然視されていたことなどが円コールオーバー常態化の背景として存在した。

むろん、リスク・リバーサルは決してドル/円の先行きを予測するものではなく、足許の相場変動を受けて揺れ動く面があるため、これをもって円安基調への転化を展望することはできない。だが、市場参加者のリスク認識が、これまでに経験のないほど円安方向に傾いているのは事実であり、円安材料に敏感に反応しやすい地合いが醸成されつつあるとの認識は持ったほうが良いかもしれない。

<200日移動平均線の上振れ>

円安局面がある程度持続してきたことの結果論ではあるが、テクニカル面でも「今までとは違うこと」を見出すことが可能だ。200日移動平均の上振れがその典型例である。これは今年2月末から3月初旬に底打ちし、金融危機後では初めて上向いている。

過去200日の平均をつないだものが上向いている以上、少なくとも今年3月以降の9か月間は円安相場だったと言える(この点、安倍自民党総裁の発言が材料視されるよりもずっと前から円安が進んでいたことが分かる)。

むろん、重要なのはこの持続性だが、最近になって一段と加速した円安相場を踏まえれば、200日移動平均線が再び右下がりとなるにはかなりの円高相場が必要になる。それをもたらすのは、たとえば米議会の財政交渉が頓挫し、「財政の崖」がストレートに訪れる(GDP比4%弱の歳出削減が発生する)展開などが考えられるが、今のところそうしたシナリオをメインとすべきか否かは見方が分かれる。

<肝心の日米金利差は「今までとは違わない」>

以上、「今までとは違うこと」を4つほど例示したが、次元の違う金融緩和を公然と求める次期政権も入れれば5つになるだろうか。もちろん、他にもあるかもしれない。ある程度円安の動きが続いた結果、事後的に確認される200日移動平均線の上振れはやや趣が異なるが、その他のことは円安基調が緒につくためのお膳立てとなりそうである。

需給環境が円安方向に緩んで、投機筋を含む市場参加者の相場観がかつてないほど円安に傾いている以上、基調的な円安はいつ始まってもおかしくはない。また、全く良い意味ではないが、日本の政府債務の持続性などに対する不透明感も加味すれば、なおのこと、その見通しは強まるだろう。

ちなみに、11月30日時点の日銀の総資産残高が156兆円と過去最大となったことも「今までとは違うこと」の1つには違いないが、量的緩和と円安相場の因果関係が怪しいことは当座預金とドル/円相場を1つの図にプロットして見れば明らかであり、円安反転の材料としていまさら特筆すべきことではないだろう(ただし、昨今の政治方面の金融政策議論を踏まえれば、中銀の信認が毀損する格好で円安が進む懸念はある)。

だが、多くの市場参加者がドル/円相場の道標としてきた日米2年金利差は0.14%程度(12月12日現在)で年初の0.10%からわずか0.04ポイント程度しか拡大しておらず、ほぼ皆無と評価して差し支えない。消費税増税を14年4月以降に控えた日本はもとより、いまだ潜在成長率付近で緩やかに推移する米国においても、金融政策の出口を模索するのは随分先になりそうであり、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文を額面通り受け止めれば、「少なくとも15年半ば」まで利上げは見込めない。

5つの兆候を円安基調に至るための「帆」だとすれば、内外の資本フローに本格的な方向感を与えるための金利差はさしずめ「風」といったところだろうか。「帆」は拡がっても、「風」が吹かなければ90円や95円といった見通しを出すのはまだ難しい状況なのかもしれない。

*唐鎌大輔氏は、みずほコーポレート銀行国際為替部のマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より現職。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。

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去りゆくわれらの「スーパーマリオ」に贈る言葉−社説

  12月12日(ブルームバーグ):イタリアのマリオ・モンティ首相の辞意表明を受けて、同国株と国債は週明けに一斉売りに遭った。「スーパーマリオ」が去った後のイタリアを想像し、投資家は青ざめた。
当然ながら、多くの投資家とイタリアの企業経営者は、2月の公算が大きい選挙にモンティ首相が出馬し続投することへの期待を表明した。選挙を経れば今度こそ、イタリア国民からの負託を受けた首相となるからだ。高級車メーカー、フェラーリのルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼモロ会長は、自身のシンクタンクを政党に転換してモンティ首相の出馬を支えるとまで言い出した。
われわれも、モンティ首相のファンではあるし、スーパーマリオが去った後のイタリアの運命を憂いている。しかし、モンティ首相は出馬についてはよく考えるべきだろう。
モンティ首相はベルルスコーニ前首相が残した混沌(こんとん)の後片付けをするため、2011年11月に登板した。その後の1年1カ月でイタリア政府が何をするか分からないというイメージを払拭(ふっしょく)して安定性を取り戻し、借り入れコストをほぼ半分にした。
ベルルスコーニ前首相はこの間の大半を、首相特権によって免れていた訴訟への対応に費やした揚げ句、現政権への支持撤回宣言という爆弾を落としてモンティ首相から辞意表明を引き出した。この驚異的に無責任な行為によって、ベルルスコーニ氏は政治の表舞台に復帰し、市場を震え上がらせた。
国内人気は高くない
ただしモンティ首相は国内では、海外ほど人気がない。演説が退屈な上に、不人気な緊縮策の旗手である同氏が総選挙に出馬した場合、10%の票を得るのも難しいかもしれない。むしろ、選挙で票が割れ明確な勝者が現れない場合、モンティ氏が実務型内閣の首相として再び登板する可能性はある。これはイタリア選挙の最悪の結果ではないものの、非常に望ましいということでもない。
選挙で選ばれたわけではないモンティ政権はもともと、長期に国政を担うべき政権ではなかった。モンティ氏の首相就任は民主主義における例外であって、その代替ではない。イタリア国民は既に、首相の緊縮政策に対して民主的に物を言う機会がないことにいら立ち始めている。ベルルスコーニ前首相の反ドイツ・反緊縮のスローガンはこんな国民の不満を意識したものだし、コメディアンから政治家に転身したベッペ・グリッロ氏の政党がシチリア州選挙で健闘したのも同じ流れだ。
モンティ首相にとって良い方法は、選挙後に辞任すると表明しているナポリターノ大統領の後任に就くことだ。イタリアの大統領権限は大きくはないが、争いに巻き込まれることなく影響力を行使できるし、選挙の結果どの政党も組閣できない場合は大統領として好みの首相を選ぶこともできる。
当面は選挙に出馬しない自由な立場を生かして、この選挙が厳しい選択であることを国民に訴えるのが良い。ベルルスコーニ、グリッロ両氏のような大衆迎合派は緊縮のほか労働市場などの改革の中止を約束するだろう。彼らは、そのような後戻りの政策がデフォルト(債務不履行)と救済、さらなる緊縮をもたらすリスクについては語らない。選択肢のもう一方は、国民の痛みを感じながらもイタリア経済の競争力強化と赤字抑制が必要だと認める政党だ。
モンティ首相は既にこうした構図を提示する役割を果たし始めているようだ。首相はオスロで10日、選挙で「極めて責任感の強い」政権が生まれるだろうと、投資家の不安鎮静化に努めた。ベルルスコーニ政権を念頭に置いていなかったことは確かだ。
原題:Mario Monti Is Super, But Shouldn’t Run for PrimeMinister: View(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Marc Champion mchampion7@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Gibney jgibney5@bloomberg.net
更新日時: 2012/12/12 07:30 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MEUZ596TTDUD01.html


09. 2012年12月13日 17:23:25 : IOzibbQO0w
EU財務相理事会:ECB中心の銀行監督一元化に関して合意

  12月13日(ブルームバーグ):欧州連合(EU)の財務相らはユーロ圏の銀行全ての監督権限を欧州中央銀行(ECB)に付与する計画について合意に至った。域内救済基金から銀行への直接支援に道が開かれた。
EUの行政執行機関である欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)によれば、新たな監督機関は2014年3月1日までに完全に整備され、約200の銀行が自動的にECBによる直接監督下に入る。それまでの間は5000億ユーロ(約55兆円)規模の救済基金、欧州安定化メカニズム(ESM)が独自の手順に沿って、ECBが監督引き継ぎを求められた銀行を直接支援できるという。
バルニエ委員は13日、ブリュッセルでの14時間にわたる協議の後に記者会見し、合意は「欧州の金融安定を支える基礎的要素」だと説明した。同委員によれば、ECBは銀行に関するあらゆる情報を得る権限を持つ。共同の監督制度に加わるユーロ圏外の銀行も域内銀行と平等に扱われる。
銀行一元監督は債務危機解決に向けた最新の取り組み。EU首脳らは13日からブリュッセルでの会議で、経営難銀行を安定化させるコストの分担方法など、銀行危機と国家財政の連鎖を断ち切るための次の措置について話し合う。
ドイツのショイブレ財務相は会合後に「2014年に発足予定の欧州の銀行監督制度の最重要点で合意ができたと思う」と語った。新しい監督機関の法的枠組みは来年2月末までに整備が可能で、ECBは新たな責務を開始するまでに1年間の準備期間を持つことになる。この日の合意を受けて欧州議会との交渉が始まる。
この合意の下では、ユーロ圏財務相らが全会一致でECBに問題銀行の監督を引き継ぐことを要請すれば、ESMが当該銀行に直接、資本注入することができる。財務相らはどのような場合にそうした要請をするかの指針をこれから策定する必要がある。
財務相らはまた、新制度の下でECBが直接監督する銀行の規模についても合意。資産が300億ユーロ、または籍を置く国の国内総生産(GDP)の20%を超える銀行を対象とした。また、「特別な状況によって正当化される場合」以外は各国内で上位の3行をECB直接監督の対象とするとの指針も示した。
合意が発表された後のブリュッセル時間午前8時3分現在、ユーロはドルに対して前日比0.2%高の1ユーロ=1.3096ドル。
記事に関する記者への問い合わせ先:ブリュッセル Rebecca Christie rchristie4@bloomberg.net;ブリュッセル Jim Brunsden jbrunsden@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net
更新日時: 2012/12/13 16:59 JST


10. 2012年12月15日 16:34:02 : mHY843J0vA
1
世界金融危機と金融工学
―効率的市場仮説の蹉跌―
東京国際大学商学部 教授
渡辺 信一
1 問題の所在
2008 年のリーマン・ショック以降、金融業界に逆風が吹いている。それは、過去すさまじい勢い
で伸びてきたデリバティブ取引の想定元本の残高が、ここ数年、減少していることに表れている。
図表1は、日本のクレジット・デフォルト・スワップの想定元本の残高を示している。2008 年の
リーマン・ショックで一時的に残高は減少したが、依然として、高水準にある。しかし、図表1から
明らかなように、かつての勢いは見られない。
図表1 日本のクレジット・デフォルト・スワップの想定元本の残高

(出典:日本銀行 HP、(http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exyosi.htm/))
筆者は、このような状況の背景には、金融市場の根本的な問題が影響しているのではないかと考え
ている。
本稿では、世界金融危機と金融工学の関係を、記号化、相対化というキーワードで探ってみたい。
あらかじめ本稿の結論を述べると、以下のようになる。
第一に、デリバティブは、原資産の価格差を対象にした取引である。すなわち、デリバティブ取引
は、原資産価格の持つファンダメンタルな情報を一切捨象し、価格差にのみ注目する点にその特徴が
ある。
第二に、これは、デリバティブ取引のレバレッジ効果の源泉であるが、同時に、欠点でもある。デ
リバティブは、原資産のリサーチ・コストを他に転嫁するフリー・ライダーなのである。
第三に、これは、デリバティブの専売特許ではない。格付会社の行う信用格付けも、投資家がコス
ト負担をしないという意味では、一種のフリー・ライダーであるし、株価指数を対象としたインデッ
クス運用も、対称となる株価指数は、個別証券の価格を合計しただけの数値(=インデックス)であ
り、個別証券のリサーチ・コストを負担しないという意味では、フリー・ライダーである。
第四に、フリー・ライダーの存在は、必ず、モラル・ハザードを伴って顕在化する。デリバティブ
の場合は、行き過ぎたデリバティブ取引が、市場の錯乱要因となることである。信用格付けの場合は、
それが、発行体に有利な指標となっていることに、投資家が気が付かない点、あるいは、投資家がそ
のことに気が付いた結果、情報伝達が行われず、市場が崩壊する可能性があることである。
第五に、株価指数を対象としたインデックス運用の場合は、個別証券が正しくファンダメンタルズ
を反映したものであり、同時に、指数の指標性が確かなものであるかどうかを誰も問題視しなくなる
ことである。2
2 デリバティブの意味
金融工学の生み出した商品である金融デリバティブ取引が原資産の取引と異なる最大のポイント
は、デリバティブ=原資産価格の一次微分である点にある。言い換えれば、あらゆるデリバティブに
共通の要素は、「原資産の動きの差」を対象にしているということである。
オプションの場合、決済は、権利行使価格と原資産価格の差で行われるし、先物の場合、決済は、
購入(売却)価格と満期日の清算価格との差で行われる。そして、「原資産の動きの差によって決済
されること」こそがデリバティブのレバレッジ効果の源泉である。同時に、「原資産価格とデリバテ
ィブ価格がパラレルに動くこと」が、デリバティブ取引によって原資産の価格変動リスクをヘッジで
きる理由であった。
ところが、皮肉なことに、この特徴こそが、デリバティブの落とし穴であった。原資産価格は、一
次微分された結果、文字通り、「原資産から派生した単なる価格差」を示す値になり、原資産の属性
は、この値から捨象されてしまったのである。
しかしながら、それでも、個別株オプションや、株価指数オプションの場合は、デリバティブ市場
におけるボラティリティの変動を、原資産市場に市場にフィードバックする機能がある。つまり、事
前に、原資産市場が何らかの異変を知り、原資産市場の市場価格に織り込むことで、ショックを吸収
することができるという点で、それなりの役割を果たしていたと言えよう。また、クレジット・デリ
バティブの場合は、投資家が予想する将来の倒産確率を市場に伝達する機能を果たしていたと言えよ
う1。
しかし、OTC デリバティブの場合は、相対取引が主体であるため、この種の市場に対するフィー
ドバック機能は希薄であった。この観点からは、デリバティブは、できるだけ取引所で取引されるこ
とが望ましい。取引所取引がすべての投資家のニーズを捉えることはできないから、ある程度、OTC
取引に依存することは止むを得ない。しかし、OTC 取引は、決済リスクの他に、市場に対する情報
伝達機能が期待されないという問題を抱えている点を十分に認識する必要があるだろう。
3 記号化された原資産
ところで、原資産の動きの一部を切り取って別の商品を作るのは、デリバティブの専売特許ではな
い。格付会社が行う信用格付けは、本来は絶対的な数値である企業の倒産確率を、記号化することで
相対化する仕組みである。相対化することで、格付会社は、ある程度のフリーハンドを手にすること
が可能になる。
格付会社の行う格付けの基準が明確でないことは、格付会社の経営戦略と関係がある。アカロフの
中古車市場に関する分析によれば、情報の非対称性があるとき、外部の情報を持たない消費者は、全
体の平均値で商品の品質を評価する。
格付けに関しても、同じである。外部の投資家は、同一カテゴリー内の発行体は、同じ品質である
と期待する。その結果、格付会社の収益の大半は、同一カテゴリー内の平均以下の内容の企業からも
たらされる。カテゴリー内の平均以下の企業は、平均以上の企業と同じカテゴリーに区分されること
でメリットを受けるからである。
したがって、独占的な格付会社にとっては、起債企業全体を一つのカテゴリーとして格付けし、格
付けを有する企業と有しない企業の間で差別化することが、理論上は最適な行動になる。このことは、
格付けの情報提供機能を大きく阻害するが、この場合、格付会社の収益は最大化される。
しかしながら、この状況は、別の格付会社の新規参入を招く原因となる。なぜならば、平均以上の
内容の企業は、平均以下の企業と同一カテゴリーに格付けされることを嫌うからである。この場合、
これらの優良な企業をそうでない企業と差別化する方法で格付会社の新規参入が、行われる。

1 株価指数先物の場合は、先物価格がプレミアムかディスカウントかを投資家に伝達することによって、現物
市場の乱高下をフィードバックする機能が、スワップ取引の場合は、スワップ・レートを債券市場に伝達す
る機能が期待される。なお、Grossman(1988)によれば、投資家が株価指数オプションを利用せず、ダイナミ
ック・ヘッジングの手法によってプット・オプションを合成したことが、現物市場に対するフィードバック
機能を失わせたとして、合成オプションの持つ問題点を指摘した。3
すなわち、既存の格付会社の尺度よりも厳しい尺度を採用することで、平均以上の内容の企業を顧
客化することができる。これが、最高格付けのみを採用するレートショッピングが可能であるにも関
わらず、一部の企業が複数格付けを取得する理由でもある。
Doherty, Kartasheva and Phillip(2007)は、新規参入に規制がない保険会社に対する格付けを例に
して、上記の主張を検証した。その結果、新規参入した S&P の格付けは、A. M. Best Company よ
りも厳しく、モデルの主張が正しいことが証明された。
ところで、アカロフの中古車市場は、最終的に崩壊する。なぜならば、この市場には、平均以上の
品質の中古車は来ないから、そのことを消費者が知れば、誰もこの市場で中古車を買わないからであ
る。格付業界が、アカロフの中古車市場ようにならない理由は、格付会社の新規参入がないからなの
である2。
4 増加するヘッジ・ファンド
前節では、「倒産確率と言う本来は絶対的な数値を相対化することで投資家にカテゴライズされた
倒産確率を提供する信用格付け」の問題を指摘した。そこにおいては、相対化のプロセスで、ファン
ダメンタルな情報が格付会社によって加工される際の問題点を指摘した。この問題は、アクティブ運
用とパッシブ運用の問題においても顕在化する。
低迷する国内の資産運用を横目に置いて、一時、ヘッジ・ファンドが高い運用利回りを上げた。図
表2は、世界のヘッジ・ファンドの運用金額の推移を示している。ヘッジ・ファンドの運用額は、1990
年よりも約 50 倍の増加を示し、2011 年第一四半期には、2兆ドルを超えた。
図表2 世界のヘッジ・ファンド運用残高の推移

39 58
96
168 167 186
257
368 375
456 491
539
626
820
973
1,105
1,465
1,868
1,407
1,600
1,917
2,020
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
(10億ドル)
(出典:HFR, 2011, “Presentation to US Department of Labor Advisory Council on
Employee Welfare and Pension Benefit Plans,”
(http://www.dol.gov/ebsa/pdf/heinz071911.pdf))
このようにヘッジ・ファンドへの投資額が増加した背景には、彼らが高い運用利回りを上げたこと
の他に、インデックスとの「相対リターン」を運用目標とするインデックス・ファンドに対して、ヘ
ッジ・ファンドが「絶対リターン」を目標としたことが挙げられる。
機関投資家を別にすれば、大多数の投資家の運用目標は、絶対リターンである。そして、「絶対リ
ターン」を投資方針に掲げるヘッジ・ファンドの運用方針は、それに合致していた。
一方、マーコヴィッツに始まる「現代ポートフォリオ理論」に基づけば、「個別の証券分析が十分
に行われた結果」、インデックス運用が最も効率的な運用となる。

2 アカロフの中古車市場が崩壊しない理由は、保証契約の存在や、中古車業者が信用を考慮して、平均以下の
品質の中古車を市場に出さないからである。4
個別の証券分析が十分に行われれば、世の中のすべての情報は証券価格に反映されるから、投資家
は個別の銘柄を分析しなくても、流動性に優れ、リスク分散が十分になされたインデックス・ファン
ドを購入すれば良いからである。この場合、運用目標は、「できるだけインデックスに連動させるこ
と」、すなわち、「相対リターン」の追求になる。
このような「現代ポートフォリオ理論」の帰結なのかどうかは、正直なところ、分からないが、ア
メリカでは、図表2のとおり、2000 年以降、インデックス運用が増加した。
図表3は、米国のパッシブファンドの純資産額の推移を示している。2001 年と 2011 年を比較する
と約4倍になっている。
図表3 米国のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移
(出典:モーニングスターHP、
http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2011/3q/MFA120110714.html
しかし、問題は、果たして、「個別の証券分析が十分に行われた結果」という前提が守られている
かどうかである。筆者の見るところ、ヘッジ・ファンドの隆盛は、世界各国でインデックス・ファン
ドが増加したことの裏返しの現象である。
インデックス運用が増加するにつれて、投資家は、個々に証券分析を行うインセンティブを失う。
「効率市場」を前提とすれば、自分で証券の分析をしないで、すなわち、面倒な作業は他人に任せて、
自分はリターンだけを享受した方が合理的になる。その結果、市場は非効率化し、「証券分析」が儲
かる余地が生まれる。
一方、ヘッジ・ファンドの方は、世界中のデータを集めて、少しでも非効率な事象が発見されれば、
直ちに市場に参加する運用スタイルを取っている。ヘッジ・ファンド自体は、自らリスクを取ってい
る訳ではないが、その根底には、「証券分析」がある。幸い、コンピューターの発達や情報網の進化
に伴い、そのような非効率を発見することは容易になった。さらに、ヘッジ・ファンド業界の高い報
酬水準は、世界中の優秀なクオンツをこの境界に送り込んだ。
ところで、ベンジャミン・グレアムは、1934 年にデビッド・ドッドとともに『証券分析』を書い
たが、それは、1929 年の大暴落で大きな損失を被った投資家に、ファンダメンタルズ分析の重要性
を説いたものであった。
ところが、「重要な事実を慎重に分析してその本来の価値以下の安値に放置されている株式や債券
を見つけだす」ことは、ヘッジ・ファンドの投資手法に近いのである。また、「本書は不確実な未来
にいたる時の経緯という試練にも耐えられるだろう」という彼らの残した言葉は、ヘッジ・ファンド
によって達成された。5
このように、「皮肉なことに」、ヘッジ・ファンドの運用スタイルは、「証券分析の父」と呼ばれる
ベンジャミン・グレアムの主張に忠実な運用スタイルなのである。
これに対して、インデックス・ファンドは、特別の運用スキルを必要としないので、当然のことな
がら、運用手数料は少なくて済む。そのことが、運用利回りを高め、流動性を増加させる。もともと、
銘柄分散は最高度に達成されるので、リスクの削減効果は、インデックス・ファンドが最大となる。
しかし、インデックス・ファンドには、大きな落とし穴がある。「証券分析」という重要なプロセ
スを他人に依存する結果、市場が非効率であれば、運用結果も非効率なものになる。インデックス・
ファンドは、市場の効率性を前提に、証券分析を他人に任せるフリー・ライダーなのである。
これに対して、一時、議論されたエンハンスト・インデックス運用は、インデックス運用の欠点を
補い、市場の非効率性を収益化することを目指したものであった。しかし、その反面、インデックス
運用の簡潔性と流動性を損なうものであった。
その対極にあるのが、ヘッジ・ファンドである。彼らは、クオンツ的な手法に基づくものの、彼ら
の運用手法は、『証券分析』に近いのである。「現代ポートフォリオ理論」に忠実なインデックス運用
よりも、ヘッジ・ファンドの方が基本に忠実だと言うのも皮肉な話である。しかし、世界のヘッジ・
ファンド運用残高の推移が示しているように、投資家に支持されているのは、後者なのである。
世界中で、ヘッジ・ファンドの運用残高が増え、しかも、彼らが高いリターンを得ているというこ
とは、市場が効率的でないことの明らかな証拠である。その意味では、ファンダメンタルズ分析の必
要性を説いたグレアム&ドッドの精神は、テクノロジーが格段に進化した今日に引き継がれていると
言って良いだろう。
5 日本におけるパッシブ運用
一方で、日本では、インデックス運用の普及率は今一つである。図表4にあるように、国内でのシ
ェアは、ここ10年間で約3分の1に低下した。
図表4 国内のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移
(出典:モーニングスターHP、
http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2011/3q/MFA120110714.html
日本で、インデックス運用が増加しないのは、なぜだろうか。よく言われるのは、「運用業界が、
運用手数料の高いアクティブ型の投資信託を推奨するから」、あるいは、「投資家が、実績配当型の投
資信託を望むから」である。
しかし、筆者は、日本でインデックス運用が普及しないのは、「業界の誘導や、配当利回り重視の
投資家の姿勢」が主な理由ではなく、「証券分析」が十分でなく、「アクティブ運用が儲かる余地があ
るから」なのではないだろうかと考える。
第一に、オリンパスを初めとする相次ぐ上場企業の不祥事を見ると、日本市場が、本当に透明性の6
高い市場なのか、疑問が湧く。
第二に、ゼロ金利政策は、投資家のリスク許容度を麻痺させ、債権者にリスクを押し付けるレバレ
ッジの増加は、債権者から株主への富の移転を可能にした。「金融工学」の発展は、投資家に、低リ
スク高リターンな証券が組成可能であると言う幻影を抱かせた。
第三に、その結果、日本市場では、本来のリスク負担機能が消滅し、資金提供機能は低下し、将来
予測機能は麻痺した。このような市場で、インデックス投資が効率的な手法であるとは、決して言え
ないのではないだろうか。
第四に、川北(2003)も指摘するように、景気が悪化する局面では、不振企業を見分けることは
それほど困難ではない。景気が上向く時に、将来有望な企業を発掘するのにかかるコストと比べて、
「証券分析」のコストが相対的に低くなる。
第五に、東証一部に上場された企業が、本当に、日本を代表する企業なのかという点も疑問である。
現在の大企業が、リストラを進め、新しい企業として蘇る可能性が高ければ、それも言えようが、現
在の低迷する経済状況の中で、TOPIX に連動させたインデックス・ファンドが、今後、高いリター
ンをもたらすとは、とても思えないのである。
第六に、インデックス運用は、非上場企業を含めない運用である。経営者が自社株を購入して市場
から退出する非上場型 MBO(Management Buy Out)が増え、将来有望な企業が、市場を去りつつ
ある現在、果たして、インデックス運用が、効率的な運用なのかと言う点に関しては、疑問が湧く。
このように、市場が効率的であれば、リサーチ・コストが少なく、最もリスクの低いインデックス
運用が、効率的な運用手法であることに異論はないが、今日の日本市場が、そのような状況にあると
は、とても思えないのである。
6 結論
本稿では、デリバティブ取引、信用格付け、株価指数を対象としたインデックス運用に共通の要素
として、フリー・ライダー性とモラル・ハザードを上げ、それらの問題点を指摘した。格付会社の行
う信用格付けも、投資家がコスト負担をしないという意味では、一種のフリー・ライダーであるし、
株価指数も、原資産の集合体という意味では、フリー・ライダーである。
フリー・ライダーの存在は、必ず、モラル・ハザードを伴って顕在化する。デリバティブの場合は、
行き過ぎた取引が、市場の錯乱要因となることである。信用格付けの場合は、それが、発行体に有利
な指標となっていることに、投資家が気が付かない点である。株価指数を対象としたインデックス運
用の場合は、指数の指標性を誰も問題視しなくなることである。
デリバティブ取引、信用格付け、株価指数を対象としたインデックス運用に関して見られる共通の
問題点をあえて指摘すれば、「効率的市場仮説」の問題に行き着く。「効率的市場仮説」とは、市場で
取引される証券価格には世の中のすべての情報が反映されるはずであるから、投資家は、証券価格の
正当性を疑うことなく信じて取引すればよいという予定調和的な仮説である。
この仮説の欠点は、いったいだれが「市場で取引される証券価格には世の中のすべての情報が反映
される」ことを保証してくれるかが不明確である点である。筆者の考えでは、それは証券アナリスト
である。この問題に関しての詳細な議論については、拙著(2013)を参照されたい。
いずれにしても、金融商品には、いくつかの根本的な問題が常に存在することを投資家は知らなけ
ればならない。そして、規制当局は、「市場の失敗」をどうすれば防げるかという点を念頭に、金融
規制を行うべきである。7
参考文献
1 Doherty, Neil A., Anastasia V. Kartasheva and Richard D. Phillips, 2007, “Competition
among Rating Agencies and Information Disclosure”
http://aria.org/rts/proceedings/2008/PhillipsDohertyKartasheva.pdf
2 Grossman, S., 1988, “An Analysis of Implications for Stock and Futures Price Volatility of
Program Trading and Dynamic Hedging,” Journal of Business, 61, pp.275-298
3 HFR, 2011, “Presentation to US Department of Labor Advisory Council on Employee Welfare
and Pension Benefit Plans,” (http://www.dol.gov/ebsa/pdf/heinz071911.pdf)
4 川北英隆、2003、「株価回復は本物か、インデックス運用ブームに異議あり」、
http://www.nikkeibp.co.jp/style/bizinno/reborn/article20030624.shtml
5 グレアム・ベンジャミン/デビッド・ドッド、2002、『証券分析【1934 年版】』、パンローリン

6 日本銀行 HP、(http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exyosi.htm/
7 モーニングスターHP、
http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2011/3q/MFA120110714.html
8 渡辺信一、2013、『世界金融危機と金融工学―効率的市場仮説の蹉跌―』、日本評論社

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