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亀井静香郵政・金融担当大臣(09年当時)〔PHOTO〕gettyimages
金融円滑化法廃止で6万社が倒産の危機!? ノンバンク株急騰の裏で設立が相次ぐ金融庁公認「先送りファンド」の実態とは
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34185
2012年11月29日(木)伊藤 博敏「ニュー氏の深層」 :現代ビジネス
消費者金融業・アイフルの株価が急騰している。出来高を伴って急伸、10月26日の終値210円は、1ヵ月後の11月27日に382円と倍近くになった。
この間、安倍晋三自民党総裁が、金融緩和とインフレターゲットを宣言、「次期首相の最有力候補」の大胆発言を証券市場は好感、株価は上がったが、アイフル株の高騰は、それだけでは説明がつかない。
なにしろアイフルは、グレーゾーン金利の撤廃と過払い請求という「サラ金潰し」に抗することができず、2009年9月、事業再生ADRを活用して私的整理による再建に入った企業である。
■円滑化法廃止後の受け皿として
将来性の見えない消費者金融株に「買い」が集まったのはなぜか。
ひとつには、「庶民と中小零細企業を痛めつける悪の権化」としてサラ金と商工ローンを追い詰めた改正貸金業法が、さらに改正され、上限金利などが緩和されそうなことである。すでに、自民、民主の両党で「小口無担保金融」の必要性が話し合われており、改正気運は整っている。
それに加えて、2009年末、民主党と連立政権を組んだ亀井静香郵政・金融担当相(当時)の肝いりで施行された中小企業金融円滑化法が、来年3月に廃止されることである。後述するように、廃止による倒産予備軍は6万社。借りる先のない企業が、駆け込む受け皿として、アイフルに代表されるノンバンク人気が高まっている。
早くからこの事態を予想していた株式評論家の山本伸氏は、ポスト金融円滑化法を見越した再生関連株として、アイフルのほか、オリエントコーポレーション、イー・ギャランティ、レーサム、ケネディクスなどを推奨、確かにいずれも株価は上っている。
しかし事態は、一部業種の一部企業を潤して終わるほど単純ではない。日本経済全体を揺るがすほど深刻である。
■「飛ばし」の容認を始めた金融庁
「情の政治家」である亀井氏は、優勝劣敗を貫く小泉政権下で、何人もの後援者が自殺する状況が耐えられなかった。だから、連立政権を組む時、リーマンショック後の「貸し渋り」が続いていたため、返済条件の変更要請を金融機関に義務付ける中小企業金融円滑化法を成立に持ち込んだ。
時限立法なのに、連立を組み続けていることをいいことに、国民新党主導で、2度、延長し、来年3月に廃止される。その延長期間の間に、当初から予想されていた「先送りのツケ」は、より大きなものとなっている。
兆候は表れている。円滑化法の終了を見越し、金融機関が貸出先の債務者区分の見直しをスタートさせており、倒産件数が増え始めた。現在、円滑化法を利用している中小企業は約30万社。そのうち2割は「法の庇護」がなくなれば倒産は免れないと目されている。だから6万社だ。
「6万社倒産」は、日本経済を揺るがす衝撃を秘めているが、金融庁が恐れているのは、「先送り」の間に劣化した地方の金融機関に、「6万社倒産」に耐える体力がないことだ。そこで金融庁は、「飛ばし」の容認を始めた。不良債権化した企業を、再生ファンドに押し込み、金融機関のバランスシートに"害"が及ばないようにする。
金融庁とともに、ショックを和らげようとする『日本経済新聞』は、このファンドのことを「地域ぐるみで中小企業を再生させるファンド」と書き、辛口の本音が持ち味の経済月刊誌『FACTA』は、「公認痰壷ファンド」と呼んだ。
■名ばかりの「再生ファンド」
地銀が何行か集まって共同で再生ファンドを設置する動きが急ピッチで進んでいるが、呼称はどうあれ、「先送りファンド」という実態は変わらない。
ファンドに不良債権化した企業を移す時の価格はどうなるか。「時価」ならば、飛ばしファンドを設置する意味がない。自行で処理すればいいだけの話。「簿価」での移転が想像される。
その間に、経営が再建さされればいいが、金利支援を受け続け、延命してきただけの企業に体力は残っていない。「再生ファンド」は名ばかりで、「痰壷」に時期が来るまで閉じ込めておくのだろう。
円滑化法の適用を受けた貸出条件緩和先の貸出額は、地銀・第2地銀103行で26兆円(12年3月末)。信用金庫、信用組合まで加えれば40兆円は下らないという。
これだけの金額に、先の倒産予備軍の「2割ルール」を当てはめれば、8兆円が即座に不良債権化、その額は時間とともに大きくなり、それを飛ばし続け、先送りしていいのかという問題が生じる。
一部銘柄の急騰に先送りファンドの設立。来年3月までの間、見かけは「悲喜こもごもの企業群」ということになるが、当然ながら、それで済ませられないほど問題の根は深い。
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