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(回答先: 日本より重い「日本病」に罹る韓国 中国8月に底を打ち、緩やかな回復 投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 29 日 01:50:30)
【第3回】 2012年11月29日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
「経済大国」の実態が透けて見える中国GDP統計のお粗末さ
中国の国内総生産(GDP)が注目を集めている。経済危機後の2009年から10年にかけては、先進諸国の経済成長率が軒並み落ち込むなかで、景気刺激策に支えられて中国は高成長を維持した。その影響で日本から中国への輸出も増加し、それが10年における日本経済回復の大きな原因になった。
ところが、最近では中国経済の成長率が低下し、そのため日本の対中輸出が減少し、日本の鉱工業生産指数が低下するという事態が生じている。日本経済の命運が、中国GDPの動向に握られてしまっているかの感さえある。
またGDPの成長率は、中国国内でも重視されている経済指標だ。農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の失業率を上昇させないためには、実質GDPで8%の成長率が必要だとされている。
仮に成長率がこれを下回ると、失業率が上昇し、深刻な社会不安に陥りかねない。中国実質GDPの成長率は2001年以降8%を下回ったことがなく、今回のような停滞は、初めての現象だ。これに対応して中国当局がいかなる措置をとるかが注目されている。
そこで、今回は、中国の国内総生産の計数を中国のサイトで調べるという課題に挑戦することとしよう。
8%を下回った実質経済成長率
GDPの数値は、 中国国家統計局が作成している。ホームページから、「統計数値」のセクションを選ぶ。
ここに月次、四半期、年などの分類でいくつかの統計が表示される。GDPは四半期ごとに発表されるので、「 季 度 数 据」(四半期計数)を見る。
GDPは、「 国内生产总值」だ。
最新値は、2012年1−3季度のものだ(図表1)。「1−3季度」とは、第1、2、3四半期の意味である。単位は亿元(億元)なので、35兆3480億元であることが分かる。単純に4/ 3倍したものを年の値と考えれば、47兆1306億元になる。1人民元 = 13.2円で換算すれば、622兆円になる。日本のGDPをかなりの程度上回るわけだ。
比去年同期长(対前年同期比)が7.7%と、8%を下回ったことが注目される。これが日本経済にも大きな影響を与えているわけだ。
なお、この表の注1には、「绝对额按现价计算,长速度按不变价计算」と書いてある。これは、「絶対値は時価(名目値)、成長率は不変価格(実質値)」という意味だ(「现价」は「時価」、「不变价」は不変価格)。注2の「该表为初步核算数据」は、「この表は速報概算値」の意。
なお、以上で述べた項目の文字は、ほとんど日本語に対応しているので、とくに説明しなくとも分かるだろう。表中の文字については図表1と文末の図表4で説明するが、これらの大部分も、おおよその意味は見当がつく。
これは、改めて考えてみると、驚くべきことだ。中国GDP統計を何の準備もなしに中国のサイトで読める外国人は、多分世界中で日本人だけではないかと思われる。
需要面の数字が分からない
中国GDPの統計は、先進国のGDP統計を見慣れている目には奇異に映る。産業別のGDPが示されているのみで、需要項目別の数字は示されていないのだ。
中国のGDP統計は、産業別の生産からのアプローチで作成されている。社会主義経済においては、生産面(とくに製造業)は、国営工場から数字が上がってくるので把握できる。しかし、家計がどうなっているかは把握できていない。中国はいまや社会主義経済とは言えないが、統計面ではそのなごりが残っているのだ。
しかも、中国は膨大な人口を抱える国であり、その半分はいまだに農村地域にいる。そして、農村地域の実態は分からない。農村の状況は、中国の統計にはほとんど反映されていないのではないかと考えられる。われわれが中国について語るとき、ほとんどの場合に、都市しか見ていない。その意味で、きわめていびつな中国像を見ているわけだ。
本来、国民経済計算の消費は家計調査から作成されるものであるが、そのデータが存在しないのだ(中国で消費に関連するデータは、後述の小売り売上額である)。消費が不正確だから、貯蓄も不正確なわけだ。また、投資にしても、公的な投資と民間投資の区別が分からない。
消費と投資のデータ
国民経済計算の需要面に関して、国家統計局のサイトからは、つぎの2つが月次データで分かる。
(1)消費品の小売総額
第1は、 社会消费品零售总额だ。
「零售」は「小売り」という意味なので、これは、消費品の小売総額である。10月の数字は、1兆8933億元になっている。仮にこの9倍が1−9月の数字だとすると、17兆0397億元になる。これは、つぎに示す固定資産投資額25兆6932億元の66%でしかない。中国は、著しく投資に偏った需要構造の国なのだ。
ただし、この数字は、国民経済計算上の「家計消費」ではない。第1に、小売りの中には、企業の購入など、家計消費に含まれないものが含まれている。第2に、農村では自家消費が相当の額あるものと考えられるが、それは小売り額の中には含まれない。
(2)固定資産投資
第2は、 固定资产投资(不含农户)だ。农户は「農家」という意味なので、これは農家を除く計数である。
2012年1−9月では、固定資産投資額は、25兆6932億元だ。これは、同期間のGDP35兆3480億元の72.7%にもなってしまう。
これは、日本を初めとする先進国の国民経済計算で定義する固定資本形成とは異なる値だ。事実、対前年伸び率は20%程度のきわめて高い値になっている。仮にGDP全体の7割を超える需要項目が20%の伸び率で増加すれば、GDPの伸び率も20%近い値になってしまう。
各行业固定资产投资(不含农户)情况には、産業別の数値がある。この表は、多分このサイトでしか手に入らないものだ。そして、投資は中国の経済活動のなかで重要なウエイトを占めているので、これは重要な表だ。
上記総額中、制造业(製造業)が9兆0116億元であり、35.1%という高いウエイトを示している。また、房地产业(不動産業)が6兆5525億元であり、製造業につぐウエイトだ(25.5%)。
それ以外では、电力、热力、燃气及水的生产和供应业(電力、熱力、ガス、水の生産と供給業)が1兆1774億元(4.6%)、交通运输、仓储和邮政业(交通運輸、貯蔵及び郵便業)が1兆9549億元(7.6%)などだ。
需要面からの経済分析ができない
需要面の計数が分からないというのは、分析面で深刻な問題だ。
からである。つまり、輸出や政府支出などの外生的な需要が変動すると、それに合わせて生産活動が変動し、所得が変動して消費が変動する。これが、短期的な経済変動を分析するマクロ的な経済分析の枠組みだ。だから、需要が分からないと分析しようがない。 なぜなら、経済理論は、短期的には経済変動は需要面の変動で起こると考えている
中国の場合には、輸出は分かる(だから、 第1回で述べた税関統計が重要なのだ)。しかし、その他の需要項目が分からない。経済危機後、とくに公共投資の重要性が増したと考えられるが、上述のように、統計上正確に追跡できないのだ。
しかも、中国の統計は不正確で信用できない面がある。経済危機後、水増しではないかと国際的な論争になった。GDPの数字が電力消費などと整合しないのである。しかし、この問題は、結局はうやむやのままだ。
中国のGDP統計が不正確なのは、家計調査などの統計が整備されていないからだ。それに限らず、さまざまな統計が、先進国に比べて大きく遅れている。したがって、われわれは、不十分で不正確な統計で中国経済を見ざるを得ないのである。
程度の差こそあれ、中国の政策当局も、不十分で不正確な統計に基づいた経済運営を強いられている。こうした状況で経済をコントロールしようとすれば、深刻な問題が生じうる。
1958年から1960年にかけて毛沢東が大躍進政策を展開した時、最初は生産が増加していると思われていた。このため、毛沢東は無謀な政策を強行したのだが、生産の数字は経済末端からの過大申告でしかなかったのである。このため、中国は、史上最悪の大飢饉に苦しむことになった。
数字があるからと言って的確な経済運営ができるわけでは必ずしもないが、的確な経済運営は、膨大な統計の上に立って初めて可能であることが痛感される。
大飢饉は過去の話であるが、いま現在、日本が中国の不正確な統計に振り回されているとすれば、それは悲しいことだ。
経済分析のためには
先進国のサイトから見る方が便利
整備された統計は、先進国の証拠である。中国の経済統計を見ていると、中国が発展途上国であることを、今更ながらに実感する。
中国のサイトでは、数字が分かっても時系列データとして整理されていなかったり、ダウンロードができないなどの問題がある。したがって、過去の値などを用いた経済分析には、英米、日本などの先進国のサイトから見た方がよく分かる場合が多い(ちなみに、日本のデータも、アメリカのサイトから見る方が便利な場合がある)。
具体的には、JETRO、世銀、IMFなどでデータを入手する方が便利だ(ただし、得られるデータはかなり限定される)。図表2に示した実質GDP成長率の推移も、図表3に示したGDP中の固定資本形成の推移も、IMFのWEO(World Economic Outlook)のデータベースにあるデータから作成したものである。
なお、今回述べた統計に関しては、中国国家統計局のサイトに英語のページも準備されているので、それで見ることもできる。
http://diamond.jp/articles/print/28609
2013年の為替展望を探る
G20がたたみ掛けるように発動した財政金融政策
2008年、リーマンショックで世界経済は大きく落ち込みました。100年に一度の危機的状況でしたが、これに対してG20(主要20ヵ国)がたたみ掛けるように財政金融政策を発動して景気を押し返しました。その上下動が非常に大きく、この戻りだけでもリスクラリーと呼ばれる一大相場となりました。政策によって強引に押し返した金融相場だったわけですが、一旦回復したように見えても、大規模な金融危機の後には債務処理、バランスシート調整が何年も延々と続きます。
バランスシート調整は、日本も90年代以降ずっと苦しんできたように、一朝一夕では片付きません。その間、経済の自律回復メカニズムは働かず、どんな政策を打っても「ぬかに釘」のようにだれてしまう展開が続きます。
米国では景況感や相場が再び下がったところで、QE2やブッシュ減税の継続などで下支えしました。そうして再び持ち直させたものの、まただれてきて、今度はQE3で支えました。こうしたことを繰り返す中、政策は徐々にメリハリが利かなくなってきます。しかし一方で、時間の経過とともに少しずつバランスシート調整も進んでいます。経済も市場も下がったり持ち直したりを繰り返し、相場に例えると段々と上値と下値を狭めていく「三角保合い」のような状況です。そして昨年から今年にかけて、この三角保合いの頂点に近づき、どん詰まり状態の閉塞感が世界に蔓延しました。
三角保合いの頂点ならば、上放れ、下放れの可能性があり得ます。しかし現在の経済に上放れの可能性はほとんどないでしょう。バランスシート調整が進んだと言っても、斑模様の白い部分が増えた程度で、経済の足枷として重く残っているからです。現時点で想定される最も可能性の高いシナリオは、頂点からの上放れではなく、じわりと良くなっていくまでです。
逆に下放れるストーリーはいくらでも描けます。例えばユーロ圏が危機対策に失敗する、中国の不均衡やバブルの調整が連鎖的に広がる、アメリカが自律回復に頓挫して財政の壁で落ち込む、といった具合です。ただし、三角保合いがどん詰まってきたことは政策当局にも同様であり、逆に下振れを容認する余地がほとんどないのが現状です。つまり下抜けのリスクは政策的に抑止せざるをえないのです。
債務問題に苦しむユーロ圏は、利害の異なる国家間の合議で政策対応を決めるため、先手を打てないという欠陥があります。しかしそんなユーロ圏も、下放れのシステミック・リスクが見えてきたことで、金融機関・国家を破綻させないための3年物融資、南欧国債の無制限買い入れと、従来のタブーを超える政策をECBが打ち出しました。
米国では、バーナンキFRB議長が必要であれば次の手を打つと表明し続けています。米国はこの年末年始に、これまで景気を支えて来た財政政策の減税や支出が期限を迎え、それを放置すれば来年前半に景気後退に陥ります。しかし、この「財政の崖」のように、誰の目にも明らかなリスクを放置してリセッションになりました、という選択をすることは、通常メイン・シナリオにはなり得ません。2010年末のブッシュ減税の継続を決めた時のように、「財政の崖」はおそらく期限ぎりぎりで解決の目処が立ち、それを境に米景気見通しは一段上方修正される可能性があります。米国のバランスシート調整は少しずつ進んで、経済指標もじわり改善しつつあるというのが現在たどっている道筋です。
米国経済が自律回復力、新興国の外需が復活するか?
新興国経済も12年後半になって下げ止まり、緩慢ながらも回復方向にあります。この軌道を補完する上で、米国経済が自律回復力を取り戻し、新興国にとっての外需が伸びることが重要です。米国はここ数年、バランスシート調整の足かせで「ぬかに釘」状態だったと言いましたが、いくらかそのぬかが固くなって来ています。
米国の雇用、住宅投資、設備投資、個人消費のグラフを見ると、金融緩和政策に最初に反応するはずの住宅部門が、09年以降も債務調整の圧迫でマイナスのままでした。しかし政策による手厚い下支えの甲斐あって、住宅の不良在庫が徐々に減り、住宅投資は最近プラスの領域に出てきています。
個人消費も、だれてはいますが底堅く、やや持ち直しつつあります。雇用が増えて所得が増えれば消費もしっかりしてきます。企業は今年夏まで、米景気の低迷、欧州危機への不安、中国景気見通しの下方修正という状況で、活動を慎重化させてきました。設備投資や発注も落ちています。しかし秋口から米国と新興国の経済指標に持ち直しの兆候が出てきています。「財政の崖」という不確実要因がクリアされて先行きの視界が広がれば、企業部門も再始動するところが出てきて、雇用、賃金、消費の改善へじわりつながると見ています。
内外経済が良い時には円安気味
為替は、内外経済が良い時には円安気味になります。牽引役になるべき米国経済の自律回復力が今一つの状態では、なかなか円安見通しも強調できませんでした。しかし米国と新興国がじわり好転しつつある今、来年、再来年と円安方向に振れるとの期待を強めています。外貨建て資産投資をそろそろ考えても良い場面に入りつつあると注視しています。
ドルは基本的に経常赤字を積み上げてきた債務国たる米国の通貨です。貿易など経常取引で赤字分を借金しなければならないのです。一方日本は長年経常黒字を積み上げて来た世界最大の対外債権国ですから、ドル円は貸す側と借りる側の通貨ペアということになります。半年、1年、2年程度の為替変動のダイナミズムは、国境を越えた金融マネーによってもたらされる部分が大きく、日米の貸す側と借りる側の対称的関係から、ドル円相場も金融現象としての変動が典型的に現れます。
米国景気の加速〜成熟局面は、好景気、株高に加え、借金国である米国の金利が日本より早く上がるため、ドル高になります。米国が円滑に借金できるからです。お金を貸す側の日本では、好景気や株高でリスクを取って投資しようという動きになり、海外の高金利商品にお金が出て行くことで、円安になりやすくなります。景気が内外ともに良いときは、通常好景気の債務国通貨が上がり、債権国通貨が下がる基本パターンがあります。
米景気回復局面でまだFRBの金融緩和が続いている間は、2年など中期金利の動向にそってドル円は動く傾向があります。米経済指標が改善し、金融緩和が終わるとの見方が浮上するに連れて、向こう2年をカバーする2年物金利はじわり上昇し、ドル高・円安に動くのです。来年の米国経済が想定通りに堅調さを増すなら、ドル円は80台を上っていくでしょう。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
ドイツ証券
グローバル マクロ リサーチ オフィサー
田中 泰輔
11月12日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら
その他の記事を読む
日米欧が取り組むべき課題
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20121128_130012.html
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/20121128_kawase_mini.jpg
田嶋智太郎の外国為替攻略法
2012年11月28日
投機筋の取引状況から明日のドル/円相場を読む
ここにきて徐々にドル/円の上値が重くなってきました。
前回(11月21日更新分)も触れたとおり、野田首相が衆院解散を宣言した11月14日以来、順調に上値を切り上げてきたドル/円は、先週22日に82.84円の高値をつけて反落し、執筆時は82.00円を割り込む水準までの調整を見ています。
それは、一つに米国で感謝祭を通過し、議会が本格的に「財政の崖」回避に向けた協議を再開したものの、いまのところ大きな進展は見られておらず、少々先行きが案じられるということもあるでしょう。もちろん、来月16日の選挙で自民党が政権を奪回し、日銀への追加緩和要求が強まるとの期待は根強くありますが、いまだ選挙戦の行方は未知数ですし、選挙後に発足する政権の政策運営が期待通りに運ぶかどうかもわかりません。
それでも、やはり自民党の「安倍発言」は相場に大きく影響しました。下の図を見てもわかるように、投機筋の動向を示すシカゴ通貨先物市場の取引状況(ポジション)は、11月20日時点で5万1389枚の円売り越しとなっており、ここにきてヘッジファンドなどの海外投機筋が大きく円売りにポジションを傾けたことがうかがわれます。
ちなみに、投機筋が円買い越しから円売り越しに転じたのは10月23日時点からであり、これは10月14日まで日本で開催されていた国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会において日本が世界に円高是正への理解を強く求めたこととも大いに関わりがあることと思います。加えて、その頃から日本国内では「年内解散」が意識されはじめ、仮に解散となれば自民党が政権を奪回し、強力な金融緩和論者である「安倍首相」が誕生するとの思惑もくすぶっていました。
ここで、あらためて図をよく見ていただけますでしょうか。 思えば、今年の2月7日時点において5万枚を超えていた投機筋の円買い越しが、後に急減して2月28日に時点で売り越しに転じ、3月27日時点ではなんと6万7622枚もの売り越しとなったのです。お分かりの通り、これは2月14日に日銀が「当面1%の物価上昇率のめど」を打ち出したことに起因しており、これをきっかけにドル/円は2月1日安値の76.02円から3月15日高値の84.17円まで大きく値を上げたことが思い出されます。
その後、5月下旬から6月にかけて再び円は買い越しとなり、その買い越しがピークに達したのは9月11日時点の3万2773枚でした。思えば、ドル/円は9月13日に77.13円の安値をつけ、そこから徐々に値を戻す展開となりました。
このように、シカゴ通貨先物市場における投機筋のポジションとドル/円相場には浅からぬ関係性が見出せることがわかります。その意味で、今再び円売り越し枚数が5万枚を超えてきたという事実は、ここでドル/円がしばしの調整を余儀なくされる可能性に対して一定の警戒を要するということになるでしょう。
もちろん、ここに見る投機筋のポジションというのはあくまで参考データの一つに過ぎませんし、まだ円売り越しが5万枚を超えたばかりという状況であり、今後、円売り越しのレベルがしばらく高止まりを続ける可能性も十分にあります。どのみち、今後もこうした重要なデータのチェックは怠らないようにしたいものです。
前の記事:いよいよドル/円の上方視界が大きく拡がってくる!? −2012年11月21日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/11/28.html
2012年11月28日 ザイ・オンライン編集部
ジム・ロジャーズの2013年投資戦略(2)
中国、ミャンマー、北朝鮮…
これから有望な新興国はここだ!
ジムが居住するシンガポールは、観光立国をめざし、急速な開発を続けている 撮影/和田佳久
ザイ・オンライン編集部は約4年6カ月ぶりに世界的投資家ジム・ロジャーズのシンガポールの自宅を訪れた。4年前には、サービスアパートだった彼の住まいは、今は近郊の高級住宅街の一軒家となっていた。前回から2回にわたって、ザイ・オンラインの独占インタビューによる、ジム・ロジャーズの2013年の世界経済予測、そして投資戦略を掲載する。
[参考記事]
●世界的投資家ジム・ロジャーズが語った(1)2013年のアメリカ経済と通貨の行方を大予測!
―新興国に投資する際に必要な条件はありますか?
ジム・ロジャーズ 御年70歳。一貫して、米国経済の凋落を予測。早くから中国の成長に注目し、娘が誕生したことを契機に英語と中国語が学べるシンガポールに移住。自宅のプールサイドにて。 撮影/和田佳久
新興国投資で成功するには、まずその国が原油、もしくは金、鉛などの鉱物か、肥沃な土地に恵まれた資源国であること、そして安価な若い労働力があることが重要な条件です。そして、投資のタイミングとしては社会主義から資本主義に移り変わる時期の国が投資対象として最高のタイミングですね。
―例えば、どの国ですか?
例えば、ミャンマーですね。数年前から民主化の動きが見えていたので注目してきましたが、最近、私はミャンマーに投資を始めました。
今まで軍に支配されていた資源や市場が民間に開放される方向に向かっています。これは言わば1978年、経済開放に向かった頃の中国のような大チャンスなのです。
イギリスに支配されていた頃、当時ビルマと呼ばれていたのですが、ビルマはアジアで最も豊かな国で、日本や韓国よりも豊かだったのです。それが、1962年に軍事政権によるクーデターが起こって、社会主義国家になってからはあっという間に貧しい国になってしまいました。
あれから50年が経ってようやく軍事支配から解放されたのです。これは、大チャンスです。
ミャンマーは原油や鉱物などの資源が豊かで、7000万人の人口、教育を受けた労働者、安価で規律正しい労働者がたくさんいますので、新興国としての投資条件を満たしていますし、更に社会主義から資本主義に向かう『変化』が始まったという意味でもベストタイミングです。
それに加えて、近隣にはタイや中国などの経済的に豊かな新興国もあるので経済活動の拡張もしやすいでしょう。
―例えば、ミャンマーのどの会社に投資されたのでしょうか?
ミャンマーはまだ株式の取引所が無いので外国人がオープンには株が買えないという困難さもありますが、それでも一社に投資することができました。
それは、シンガポールのSGXに上場しているYomaというミャンマーで不動産や農業、車のディーラーを行っているホールディングスです。
数年前にYOMA.siを0.06SGD(シンガポールドル)で買いました。(2012年11月13日で0.55 SGD --すでに10倍近くに!--)将来的に、ミャンマーでも株の取引所が開かれれば、もっと投資をするチャンスが生まれるでしょうし、外資を惹きつけてますます繁栄していくでしょう。
編集部注: ヨマ・ストラテジック・ホールディングスという、ミャンマーで不動産や農業、車のディーラーを行っている会社で、シンガポール(SGX)に上場しています(ティッカーはYOMA、日本でも楽天証券で取引可能)
―他に注目されている新興国はありますか?
次にホットなのは北朝鮮です。北朝鮮も2500万人の人口を有しているということ、資源国であるという条件を満たしています。
安い労働力と資源は何にも勝る投資先ですし、中国もそれに目をつけて投資を始めています。北朝鮮はほんの数ヶ月前から中国に対して投資セミナーを開いていますので、チャイナマネーを取り込んで経済を拡張させるためにかなり積極的に動いています。
私の予想では、ここから数年で北朝鮮は韓国に合併されて一つの国となるでしょう。そうなることによって、韓国の資源不足が解消され、安価な労働力で競争力のある生産増強が測れるし、北朝鮮にも経済的なメリットが得られます。
この南北二つの国が合わされば人口は7500万人という大きな国になります。それは、日本にとって脅威かもしれませんが、これからこの国が経済開放に向かって行くという事実に目を向けるべきでしょう。
ただし、まだ先日経済開放が始まったばかりなので、投資対象となるような会社もまだ設立されていないので、私自身はまだ投資はしていませんがチャンスはいつも伺っています。
―中国の指導者が変わりましたが、政権交代によって何が起こるでしょうか?反日運動は中国経済にマイナスに働くのでは?
次のページ>> 中国はまだ発展するのか?
新しい指導者習近平になっても、これまでの中国の政策と大きくは変わらないでしょう。
私は、中国が次の数十年、世界の大国として君臨すると見ていると著書でも言及しましたが、その考えは変わっていません。
かつて、中国大陸をベンツで走破した時の通行許可証。 撮影/和田佳久
次に世界経済を握るのは、アメリカや日本ではなく、中国でしょう。もちろん、中国は反日運動を起こして中国国内の日本の工場を破壊したりしていますが、それは過去数百年起こってきたように一部の政治家が煽って、民衆は煽動されているだけです。そもそも中国人は日本の文化が好きですし、歌だって、ファッションだって漫画だって、日本のことはなんでもよく知っていますよ。小さな島々のことで戦わずに、中国とは良好な関係をキープするべきでしょう。
―どのように良好な関係を築いたらいいでしょうか?
中国が尖閣諸島を問題にして争う原因は、そこに原油があると観測されているからです。
もしも原油があるなら、共同で開発して利益をシェアするというのはどうでしょうか。中国の資本を取り入れて、日本が開発をして、そこから上がった収益を中国と分かちあえばいいのです。
そうすれば、お互いWIN-WINの関係が築けるのではないでしょうか。これから台頭してくる大国と、手を組むべきであって、戦うべきではありません。
私は娘たちに中国語を話せるように教育していますが、それは娘達が大人になった時に英語しか喋れず、アメリカで無職にならないようにするためです。
日本人の皆さんも、今、アメリカから学ぶべきではありません。中国から学ぶべき時がやってきたのです。
私の考えでは、娘たちが中国語を話せるようになっておけば、将来、中国人とビジネスをして、親孝行な彼女らは父親の老後を見てくれるようになるでしょう。
もちろん、娘たちは既に投資家で、スイス銀行に口座を持って商品や通貨に投資もしていますが(長女12歳)、私は娘を甘やかすつもりはないですし、将来、中国でチャンスを手にして欲しいと望んでいます。
―最後に、読者に成功へのコツをお願いします。
次のページ>> 海外投資の基本とは?
投資をする前には宿題をするのが非常に大事です。
まずは新聞を読み、雑誌を読み、貨幣の供給量を調べ、資源の受給も常に知っておくことですね。需給が価格を支配していますから、需給を知っておくことが、全ての物の将来価格を予想するうえで重要になります。
そして、海外投資をする際には綿密な調査が必要ですから、投資先の国には必ず赴くことです。現地のことを知るには、ウェブや新聞だけでは不十分で、そこまで自ら飛んでいかないといけないんですよ。そこが例え、北朝鮮でもです。
そして、忘れていけないのは、週刊ダイヤモンドと、ザイ・オンラインを欠かさず読むことです!(笑)
(構成/深田萌絵)
長女・ルル(9歳)と。 撮影/和田佳久
http://diamond.jp/articles/-/28214
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