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2012年11月22日
先週土曜日、シンガポール経営大学で行われた、ほとんど報道されていない講演で、米国のヒラリー・クリントン国務長官は、アジアのみならず対世界的アメリカ経済攻勢の概要を説明した。
オバマ大統領の東南アジア訪問前に演説して、クリントンはこう宣言した。“[アジアにおける]我が国の戦略上および安全保障上の側面での取り組みは良く知られている。しかし、同様に重要でありながら語られていないのは、我が国の経済的関与だ”二つの側面を結びつけ、彼女はこう付け加えた。“この地域における我々の戦略的指導力を維持すべく、アメリカ合州国は経済的指導力も強化する。”
オバマのタイ、ビルマとカンボジア訪問は、中国をだしに、地域全体における戦略的絆を強化することを目指す、いわゆる「ピポット・トゥ・アジア」(アジア重視戦略)の一環だ。クリントン発言は、アメリカの軍事力強化は、外交、経済、戦略のあらゆる面で、アメリカのアジアに於ける優位を維持すべく組み立てられた包括的作戦の一環であるという事実を浮き彫りにしている。
アメリカのアジアに対する経済攻勢の目玉が環太平洋経済連帯協定(TPP)だ。当初これには、わずかな数の太平洋諸国しか加盟していなかった。ワシントンは今やTPPを、アジアにおけるアメリカの国際的な通商と経済的な狙いの手段に仕立て上げた。TPPの条件はこれから最終合意されることになっているが、知的財産権の保護を組み込み、特に国営企業が優勢な分野に対して、アメリカ企業がよりアクセスしやすくなることを確保することをアメリカは切望している。
TPPから中国を具体的に排除しているわけではないが、北京が加盟するには、現在国営企業が優勢な中国の重要な経済部門の開放を含め、多大な経済的犠牲を払わざるをえなくなる可能性を高めるような基準をワシントンは設けている。火曜日、中国の温家宝首相との会談で、二国は通商と投資の為の“明確な交通規則”を確立する必要があるとオバマは明言した。
カンボジアでの東南アジア諸国連合 (ASEAN)サミットを、オバマ大統領は、この地域におけるアメリカの通商と投資を拡大するための米ASEAN拡大経済イニシアチブを立ち上げることと、ASEAN諸国をTPPに取り込む為の第一歩を進めることに利用した。このアメリカの構想はサミットで議論されたいくつかの対抗する通商協定の一つだった。中国はASEANとは既に自由貿易協定(FTA)を結んでいる。
演説の中でクリントンは、カナダとメキシコがTPPに参加したことに触れた。農業部門に対する高関税を廃止するという重大な影響にもかかわらず、最近日本は参加の意欲を表明した。東京の計算は、しかしながら、単なる経済的なものではない。中国との緊張が激化する中、アメリカの戦略的支援継続を確保するのが狙いだ。カンボジアでの会談で、日本の野田首相はオバマにこう語った。“東アジアの安全保障環境が厳しくなる中、日米同盟の重要性が増している。”
アジアが特定標的ではあったが、クリントンは演説で“欧州連合との包括的な経済協定交渉”も含む、より広範な世界戦略の概要を語った。“現在世界でも最も経済成長の早い10ヶ国中の7ヶ国が存在している”アフリカにおける“アメリカの開発目標”への注力、そして中南米の“太平洋同盟”という新集団との交渉だ。
クリントンは、かつて北京と密接に連携していたビルマ政権との絆を確立するためのワシントンの外交努力という経済攻勢についても強調した。“ビルマが開国し、隣人諸国との新たな絆を築けば、ビルマはインドとパングラデシュの市場を東南アジアと結びつける商業上の中枢となり得る”と彼女は説明した。彼女の“新たなエネルギーと輸送インフラによって駆動するインド-太平洋経済回廊”構想は、ビルマの対中国経済依存を和らげ、インド洋から中国南部への回廊という北京の計画を寸断することになろう。
同様にクリントンは、アメリカが率いるアフガニスタン占領の経済目標は“新シルク・ロード、中央アジアのステップ[原文のまま]からインド南端にわたる通商と輸送路線網”を作り出すことにあると強調した。またしてもアメリカの“構想”は拡大する中国産業のエネルギーと原料の源として中央アジアを開拓しようとする中国の取り組みと相いれない。
アメリカの“経済外交”は単に通商と投資条約に留まらず、アメリカ企業に対する臆面もない擁護でもあることをクリントンは説明した。“アメリカ合州国は、270以上の大使館と領事館という我が国のネットワークを活用して、アメリカ企業を擁護する体制を強化し、5年間でアメリカの輸出を倍増させるというオバマ大統領の目標実現を推進する”と彼女は述べた。今年の米ASEANビジネス・フォーラムでのアメリカのCEO達に対する自らのリーダーシップに触れた後、“ボーイングやシェブロンやゼネラル・モーターズや他の多くの企業のために戦うことを誇りに思う。”と彼女は宣言した。
“市場に参入しようとしている企業が、余りに多くの場所で、国境沿いでなく、国境の背後で、高まる貿易障壁を含む抵抗に会っている。そして、こうした障害は、市場の原理ではなく、政治的な選択から生じている、…どこであれ、企業が差別に直面すれば、開かれた、自由で、透明で公正な経済体制というルールの為に、アメリカ合州国は立ち上がるつもりだ。”とクリントンは主張した。
“自由で公正な”経済体制というという錦の御旗を掲げて、グローバル経済のあらゆる部門への、アメリカ巨大企業のアクセスをアメリカは要求しているのだ。クリントンは、一例として、ウォル-マート、ターゲットやコストコ等の“マルチ・ブランド”店を認めるインドにおける最近の市場開放立法に触れた。スーパーマーケット・チェーンがインドの消費者市場を支配し始めれば、競争力の無い何十万もの小規模小売り業は潰れる可能性が高い。
クリントンは国営企業に対するワシントンの懸念に触れてこう述べた。“国営企業は、私企業や投資家であればきちんとしている透明性と結果に対する責任に欠けている場合が多い。また、政治的不一致を理由に、真冬にガス輸出を止めるような国々でみられるように、国家が経済的優位性を濫用して、隣国をいじめたり、競合相手を妨げたりすることで、外交的に重要な課題が生じる。”
ガスを止める国という表現は、もちろんロシアを指している。しかしアメリカは、なによりも、国営企業が銀行や金融を含め、重要な部門で独占を享受している中国に専念しているのだ。しかも大手国営中国企業は、アフリカや中東や世界中でエネルギーや天然資源の入手を巡り、アメリカや他の大国と競合している。“引き起こされる難題”に対応するアメリカ戦略をアメリカ国務省や他の政府機関が練っているとクリントンは述べた。
オバマ政権が、アジアへの攻撃的な戦略的介入と、経済的目標とをより合わせていることは、グローバル資本主義が悪化する危機の中での、増大する緊張と対立関係の根源を強調している。経済的衰退を埋め合わせる為に軍事力を利用するという過去20年間の取り組みを、アメリカは、オバマのもとで劇的に加速している。いわゆる「ピポット・トゥ・アジア」というのは、アメリカがルールを決める世界秩序に中国を無理やり従わせることを目指す総合戦略だ。紛争と戦争への道でしか有り得まい。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2012/nov2012/clin-n22.shtml
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