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シリコンバレーで人材争奪戦 解雇する覚悟がなければ、採用してはいけません 採用基準
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/603.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 22 日 12:27:34: cT5Wxjlo3Xe3.
 

シリコンバレーで人材争奪戦
2012年11月22日(木)  FINANCIAL TIMES

株価が低迷する米フェイスブックから人材の流出が相次いでいる。シリコンバレーで有望な新興企業が続々誕生、才能ある人材へのニーズの高まりがある。大手各社も巻き返しに必死で、新興企業ごと買収したり福利厚生に力を入れたりしている。
 成長著しいオンライン掲示板サイト「ピンタレスト*1」が8月にアンドロイド向け新アプリを発表した時、同社の新規採用者と一部の熱狂的ユーザーが交流する機会があった。
*1=ネットから好きな写真を収集し、おしゃれな「電子スクラップ帳」を手軽に作れ、共有できるのが受け、サービス開始から2年半で世界の利用者が3900万人に達した。今年5月には楽天が出資した
 入社したばかりのモバイルソフト開発者や経営幹部たちは、シリコンバレーで注目の新興企業の一員になれて心を躍らせていると挨拶を交わした。だがそこで多くの口から出たのは、それまで勤めていた別の注目企業名だった。
 「以前はフェイスブックで働いていました」――。自己紹介で何度このフレーズが繰り返されたことか。
 シリコンバレーでは、新世代の新興企業が次々に誕生していることから人材争奪戦が再び激化している。そのために米グーグルや米フェイスブックなど大手は、優秀なエンジニアやデザイナー、モバイル向け商品開発者を発掘し、自社につなぎ留めておこうと必死で、その費用負担は増大している。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121120/239623/ph.jpg
シリコンバレーでは、社員の食事やクリーニングの無料は当たり前となっている(写真:AP/アフロ)
人材流出が相次ぐフェイスブック
 シリコンバレーではトップクラスの人材が、ピンタレストをはじめ、「スクエア*2」「エアB&B*3」「ドロップボックス*4」といったスタートアップ企業に魅力を感じ、これら新興企業に次々と身を転じる動きが加速している。
*2=スマホをクレジットカードの読み取り機に使う決済サービスを提供。店舗は専用端末が要らず導入費用がゼロで、個人も簡単な手続きで使えるため契約者が6月に200万人を超え、取扱額も年60億ドル(約4750億円)に
*3=自宅の空き部屋を簡単に旅行者に貸せるサイト「Airbnb」を運営。貸し手から宿泊料の3%、宿泊者から同6〜12%を手数料として徴収する。既に米国以外に欧州、ブラジルなどにも展開している
*4=情報をデータセンターに預けて、ネット経由で利用するオンライン・ストレージ・サービスを提供する。個人向けが主力で既に5000万人超の利用者を抱える
 こうした企業はあちこちから大量に資金を集めることに成功しているので、気前よく人材を採用できる。一方、ベンチャーキャピタルからは小さな新興企業に資金が流れ続けている。そのため既に限られた人材を巡って争奪戦にさらに拍車がかかるというわけだ。
 上場企業となったフェイスブックは従業員数が今や4000人を突破し、間違いなく成熟した大企業として人材が流出する側に立場が変わった。同社は、自社の開発者がほかの小さなベンチャーから新たな挑戦とより魅力的な株式報酬を提示されると、こっそり転職されてしまう時代に入ったのだ。
 だがフェイスブックもこの事態(及び株価の低落)を打開しようと、積極的な新規採用で巻き返しを図っている。
 同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、株価が半値になって社員の士気が低下し、一部の人材が流出したことを認めている。今年9月には、部屋いっぱいの業界関係者を前にしたトークセッションで、株価下落を埋め合わせるため、新規採用者には支給する株式数を増やしていることを強調する発言をした。
 「最も優れた者は自ら信じる使命のために働こうとするし、大金も稼ぎたいと考えるものだ」
 モバイルの発展など技術の進歩で要求される報酬の水準は跳ね上がっている。フェイスブックのような企業は、こうした技術分野で競争しなければならないが、こうした新技術を身につけたエンジニアの数はこれまで以上に限られつつある。
 フェイスブックは、モバイル技術や、モバイル広告、収益化、広告のターゲティングといった分野の技術を持つ人材の確保を巡っても他社と競っており、引き抜きも辞さない力の入れようだ。
 「フェイスブックがグーグルのエンジニアに声をかけないなど考えられないこと」と、人材コンサルティング会社を経営するモーガン・ミッセン氏は言う。同氏はこれまでグーグル、米ツイッター、米フォースクエアで人材採用に携わってきた。
 「もし広告のターゲットのアルゴリズムをいじることでほんの少しでも効果を上げられるエンジニアがいれば、それは企業にとって数百万ドルもの価値があるわけで、そんな人には本当に高給が支払われる」とミッセン氏。
人材確保のため企業を次々買収
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121120/239623/hyo.jpg
 フェイスブックを含む複数の企業は、大学生向けの夏季インターン制度で、より多くの若い就職希望者を獲得しようと力を入れている。フェイスブックはこの夏、昨年の2倍近い500人以上のインターンを受け入れた。この中から着実にフルタイムの従業員を雇用したいという考えだ。
 フェイスブックは、有能な人材をまとめて採用する手法として新興企業の買収も増やしている。「買収雇用(アクイハイアー)」と呼ばれる手法だ。
 最近買収した企業には、顔認識ソフトの開発を手がけるフェイス・ドットコム、モバイルのギフトサービスを展開するカーマ(同サービスはフェイスブック上で既に提供されている)、中古車の価格比較サイトを運営するカーサビがある。
 アクイハイアーは通常の新規採用より高くつく。買収される企業に投資していた者が、その初期投資に対する見返りを求めるからだ。ミッセン氏によると、被雇用者当人への報酬のほかに、総額として10万〜25万ドル(約800万〜2000万円)余計にかかる。
 「フェイスブックはベンチャー投資家との関係は維持しておきたいと考えているので、(買収した企業の)投資家に対しては何らかを支払うようにしている」とミッセン氏は話す。
 給料も上昇している。上場企業と非上場企業の報酬の差は縮小している。米報酬コンサルティング会社ラドフォードのデータによると、非上場の技術系企業で働くソフト開発者の給料の中央値は、過去10年間で44%上昇して13万7500ドル(約1100万円)となり、上場企業と事実上同水準に達している。
 フェイスブックに最近買収されたカーサビの共同創業者ドワイト・クロー氏は、3〜5年の経験を持つエンジニアの友人の中には総額で200万ドル(約1億6000万円)、場合によっては500万ドル(約4億円)もの提示を受けた者がいると言う。
 これほど金額がつり上がると、エンジニアは自分の人脈を非常に大切にするようになる。「誰を知っているか」が自分にとって重要になるからだ。
 「インターネットは事実上、ごく一部の人間によって作られている。それだけに誰とこれまで働いてきたのか、どの評判の人と働きたいと思っているのかといった極めて個人的な情報が重要になってくるからだ。私もどのエンジニアが今の勤め先を辞めそうかといった情報は、株のインサイダー情報以上に大切だから人には言わない」とクロー氏は明かす。
社内に自転車修理店まで登場
 従業員に対する福利厚生も増大している。無料の食事、無料のクリーニング、社内のトレーニングジムなどは今や当たり前。フェイスブックの本社敷地内には、診療所から割引で利用できる理髪店、美容院まである。近く自転車の修理店も登場する予定だ。
 さらに従業員に子供が生まれると、ベビーカーやベビーベッド、ベビー服、よだれかけまで赤ちゃんにかかる費用すべてを賄える「ベビーキャッシュ」4000ドル(約32万円)が支給される。
 フェイスブックは人材争奪戦では安定した立場を維持しているが、従業員の中には、同社ではもう十分働いたと思う者もいる。この1年で幹部を含め多くが同社を辞め、自ら企業を立ち上げたり、ほかの新興企業に移った。友人や元同僚が一緒に移ることもある。
 ピンタレストはビジュアル重視のソーシャルなサービスで急成長し、今、まさに収益化やその方針を検討している。同社には既にグーグルや米アマゾン、米ヤフーから80人以上が転職しているが、フェイスブックで働いてきた人間にとっても、今のピンタレストは願ってもない転職先だろう。
 ドロップボックス事業推進部のトニー・ヒューイ氏はこう話す。「頭の切れる人は頭の切れる人と働きたがるものだ。スーパースターがいれば、そんな人材がいる会社なら自分も働きたいと思い、優秀な人材が集まってくる」。
April Dembosky
(©Financial Times, Ltd. 2012 Nov. 2)
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解雇する覚悟がなければ、採用してはいけません
【第3回】仲間を迎え入れることの意味
2012年11月22日(木)  フィル・リービン

質問:社員10人程度のベンチャー企業を経営しています。少人数でプロジェクトを進めていくスタートアップでは、共にがんばる仲間が成長のカギを握るといっても過言ではありません。
 フィルさんに聞きたいのは、共に働く仲間をどのように見つけているかということです。私の場合、信頼のおける仲間は基本的に友人の紹介で探しています。エバーノートではどのように仲間を見つけていますか?(経営者、20代、男性)
フィル:こんにちは、フィル・リービンです。前回、部下は自分より優秀でなければならない、というお話しをしました。では、そんな優秀な人材をどうやって採用しているのか。今回は、採用に関する僕なりの考えをいくつかお話ししましょう。
 先にお断りしておくと、一番重要な話は最後にとっておきます。若干、厳しい話をしなければなりませんから。

(写真:村田 和聡)
友人や社員の推薦に勝るものはなし
 たとえ社員5人のスタートアップでも、5万人の巨大企業でも、経営者にとって最も大事な仕事は、社員を1つのチームにまとめ上げることだと僕は考えています。そして、チームの結束は、個々の優秀なメンバーなしにはあり得ません。
 採用についてですが、僕も、質問された方と基本的には同じです。いわゆる、口コミですね。一番頼りにしているのが、親しい友人からの推薦です。信頼する仲間から「あいつなら間違いないよ」と言われれば、これほど心強い言葉はありません。
 そんな推薦だけで人が集められれば、素晴らしいのですが、現実は甘くありません。優秀な人材は誰もが欲しがりますし、本人の意志も尊重しなくてはなりません。そこで、僕は口コミの範囲を「友人推薦」から、「社員推薦」に広げました。優秀な社員の推薦なら、きっと優秀な人が入ってくれる可能性が高いですよね? だから、日頃から社員にはこう繰り返しています。「いい人材がいたら、エバーノートに応募するように勧めてよ。その人が実際に採用されることになったら、気前よくボーナスを弾むからね!」。
 僕は、エバーノートを経営する上で、できるだけ自分より優秀(あるいは担当している職務にかけては自分よりも優秀な)な人材を雇うというルールを決めました。これを実現するには、口コミは欠かせません。本当に、人脈は何ものにも代えがたい財産だと思います。
文章で分かるコミュニケーション能力
 あまり他ではお話ししたことはないのですが、僕は社員を採用する際に簡単な作文のテストをしています。あるテーマについて、その人が仕事で使う言語を使って、文章を書いてもらいます。
 最近のテーマは例えば、「Evernoteアンバサダー(親善大使)への手紙」といったものがありました。エバーノートには、Evernoteの普及促進をボランティアで手伝ってくれる熱心なユーザーたちがいて、彼らをアンバサダーと呼んでいます。もしあなたが、このアンバサダーたちに感謝の気持ちをしたためるとしたら、どんな内容がふさわしいか、といった内容を提出してもらいます。
 なぜこんな課題を与えるかというと、作文は書き手の性格がとてもよく理解できるんです。表現力、説明力、意気込みなど、ほんの数段落の短い文章でも、長々と口頭で面接するより、僕の場合、はるかに正確に人物を把握できます。
 さらに大きいのが、文章を通じてコミュニケーション能力が分かることです。短い文章で、自分の考えを簡潔に相手に伝える。これが仕事の上では非常に大事になんですね。
 どんなポストであっても、僕はコミュニケーション能力が最も重要な資質だと思っています。この能力がちょっと足りないなと少しでも感じたら、たとえ専門性、技術力があったとしても、僕は採用しないようにしています。エバーノートではコミュニケーション能力は必須です。
採用だけでなく、解雇の覚悟も必要です
 採用について、もう1つ大事なお話しをしなければなりません。
 経営者には、採用と並んで大事な仕事がもう1つあります。それは、人を解雇するということです。日本では、解雇という考えはあまり馴染みがないかも知れません。しかし、「必要な時にはその人を解雇する」という覚悟がなければ、絶対に人を採用してはダメです。
 これはもう全く楽しくない。けれど、経営者には避けては通れない、いえ、避けてはいけない道なのです。
 冒頭に申し上げた採用の話しとは矛盾するかも知れませんが、どんなに信頼のおける友人の紹介で、かつあなたが優秀だと感じた人材でも、社員にしてみると失敗だった、ということはあるでしょう。けれど、その時に解雇を躊躇してはいけません。特に小さなチームでは、判断が遅れるほど、皆が混乱に陥り、組織全体をダメにしていきます。大企業であっても、本質は同じです。
 世の中の出来事は、大抵矛盾をはらんでいます。口コミの紹介は、優秀な人材を迎え入れる喜ぶべきチャンスでもありますが、同時にその人を解雇するという冷静な覚悟を持っておかなければなりません。もちろんそんな経験をする機会は少ないに越したことはないのですが……。
 では、どんな状況になったら解雇を考えなければならないでしょうか? これはもう、本当に難しいですね。国によっても、業種によっても違うと思います。僕の場合は、何かのきっかけで、その人に「去ってもらわないといけないかも知れない」と考えるようになったら、すぐに決断しています。単刀直入に、けれど心配りをして、本人には真実を話します。
 厳しい話かも知れませんが、僕の20年の経験で、社員を解雇したことで後悔したことは1度もありません。むしろ「もっと早く解雇すべきではなかったか?」と思ったこともあります。こうして書くと、日本の皆さんは衝撃を受けるかも知れません。おそらく起業家としてもっとも苦しい経験が、社員の解雇だと思います。特に親しい友だちが該当者の場合は本当に辛い。
 けれど、部下の適性に疑念が生じたら、解雇以外に選択肢はないと考えてください。私が知る成功した起業家のほとんどが、一度は親しい友人を解雇した経験を持っています。とても厳しい現実です。とはいえ、信頼する友人とはまったく仕事をしないというのも、本末転倒に思えます。これは非常に難しい問題ですね。
 ただ、僕は、こうも考えられると思っています。確信をもって一人を解雇できるなら、もっと確信をもってたくさんの人を採用できる――。非常に不快な決断であっても、覚悟と確信をもって下せるようになれば、楽しい決断にはその100倍もの確信をもって臨めるはずです。採用の巧者になれたなら、きっと採用された人々も成功し、あなたに感謝するでしょう。

 結果として、多くの新しい仲間を増やせると、僕は信じています。
(翻訳:滑川 海彦)
エバーノートこぼれ話(3)
社員には最高の寿司ランチを!
 エバーノートの社員は食べることが大好きだ。フィル・リービンCEOが来日すると、エバーノートでChief Food Officerの別名を持つエバーノートジャパンの外村仁会長とともに、実に様々な飲食店に足を運んでいる。そのこだわりは半端ではなく、様々な料理をEvernoteに保存していくためのスマートフォン向けアプリ「Evernote Food」を開発したほどだ。
 また、エバーノートの社食では、毎週水曜日は寿司職人を呼んで開催する寿司ランチが恒例となっている。下の写真のように、寿司職人が訪問して握り寿司を提供している。本社の200人を超える社員は、無料でランチを楽しめる。
 ケータリング会社に委託するのではなく、本格的な寿司職人に直接依頼して作る寿司ランチは、シリコンバレーでも珍しい。ランチの内容にこれほど力を入れる背景の一つには、こんなリービンCEOのこんな考えがある。「社員が創造性を発揮するためには、なるべくその障害を取り除く」。つまり、社員のクリエイティビティーを引き出せる環境を用意することが、最高の結果を出すことにつながると信じている。エバーノートでは無料でランチを提供しているほか、勤務時間についても柔軟に調整が可能。結果さえ出せれば、あとは自己管理が推奨されている。
(中川 ヒロミ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121121/239715/ph003.jpg
エバーノート本社の社員食堂の様子(写真:外村 仁)

水曜日恒例の寿司ランチで腕をふるう宮崎県出身のハワードさん(写真:外村 仁)

フィル・リービン
エバーノートCEO(最高経営責任者)。世界に4000万人超のユーザーを抱える「すべて記憶する」サービス、「Evernote」を提供するエバーノート社の創業者、CEO(最高経営責任者)。エバーノート設立前にも、起業家、経営者として2社のインターネット企業のEngine5とCoreStreetを創業し、成功させた経験を持つ。Engine 5はボストンに本拠を置くインターネットソフトウェア開発企業だったが、2000年にVignette Corporation(VIGN)に売却、CoreStreetも2009年にActivIdentity(ACTI)に売却した。日本食を愛してやまない日本通でもある。



エバーノートCEO シリコンバレー流を大いに語る!
新しいシゴトの作り方――。閉塞の時代に何よりも必要な力の引き出し方を、シリコンバレーの第一線のベンチャー経営者、フィル・リービン エバーノートCEOが解説します。閉塞の時代には、新たな地平を切り開く、イノベーターが必要です。人々を感動させる製品。業界の常識を打ち破るサービス。明日の展望が描き難い時代、新しい仕事を作る人間が求められているのは、世界共通の課題でしょう。その課題に対して、リービンCEOは、シリコンバレーでの数々の起業経験を基にヒントを示してくれます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121121/239715/?ST=print

マッキンゼーの元採用マネジャーに聞く「人材の条件」 【前半】
2012年11月22日 伊賀泰代,酒井譲
「今晩なに食べたい?」
これに答えるのがリーダーシップ

『採用基準』刊行記念 酒井穣×伊賀泰代対談【前編】

いまの日本にリーダーが足りないと言われるが、それは本当だろうか。先ごろ、『採用基準』を刊行したマッキンゼーの元採用マネジャー、伊賀泰代氏と、フリービット取締役で人材教育の第一人者、酒井穣氏がリーダーシップをテーマに語り合ってもらった。

リーダーシップは自分の価値観そのものである


酒井穣(以下、酒井):伊賀さんの『採用基準』を手にして、どうせなら批判的に読もうと思ったのですが、昨年僕が書いた『リーダーシップでいちばん大切なこと』と通ずる部分が多く、あまり僕として批判するところもなく、わかるなあという印象が強かったです。


伊賀泰代(以下、伊賀):ありがとうございます。酒井さんの本はベストセラーになった『はじめての課長の教科書』を含め何冊か読ませていだいているのですが、その本はまだ読んでいませんでした。ごめんなさい(笑)。

酒井:いえいえ。僕も、伊賀さんが書かれている「一人一人がリーダーになる」という点について、イチロー選手の発言を引き合いにして書きました。日本が2009年のWBCに優勝したとき、イチロー選手は「リーダーなんか誰もいない。みんなが好き勝手にやっていただけだ」という趣旨の発言をしています。最初は、これはリーダーシップ論に対する挑戦だと感じましたが、読み方を変えれば、自律的に動く参加者は、全員がリーダーだと解釈すれば、このイチロー選手の意見も納得できます。

 僕の『リーダーシップでいちばん大切なこと』で追及しようとしたユニークネスは、「リーダーシップとは何か」という部分を深堀りすることでした。その過程で、リーダーの語源を探っていくと、リースというラテン語にたどり着きました。で、リースには「敷居を越える」とか「死ぬ」という意味はあるのですが、フォロアーのような「誰か他人を引っ張る」という意味はなかったのです。

 よく考えてみたら、リーダーというのは、最初のフォロワーがつく前から、リーダーらしさをもっているし、フォロアーがつく前後で、何も変わっていませんよね。極端かもしれませんが、フォロワーがいなくてもリーダーシップがあると考えれば、リーダーとは自分の価値観そのものであることがわかります。

 もっと正確に言えば、リーダーとは価値観そのものであり、自分とは、その価値観の最初のフォロアーであるわけです。他人から何と言われようと、自分自身の価値観に従って生きていくのがリーダーシップと言えるのではないでしょうか。

伊賀:そうですね。日本人は大きな組織や特別なプロジェクトを率いる人だけをリーダーとイメージしがちですが、たとえ2人だけのミーティングでも、リーダーシップを発揮する人と、そうでない人がいます。酒井さんのおっしゃるように、自分自身の価値観さえしっかりと持っていれば、日常的な場面や小さな集団でもリーダーシップは発揮し得るものだと思います。

 ところでイチロー選手の発言は、周囲から「イチロー選手は、リーダーとして本当にすばらしかった」という称賛の言葉を受け、それに応えてのものだったと思いますが、この答え方は日本人に特徴的な回答方法です。

 日本では、リーダーシップを発揮して成果を上げた人が周りから称賛された時に、「僕はリーダーじゃない。みんなの力です」と述べることが、模範的な答え方とされています。おそらく、そう語ったほうが人徳があると思われるからでしょう。

 ところが、マッキンゼーを始めとする欧米コミュニティでは、こういう場合の答え方が少し違います。周囲の人はプロジェクトを成功に導いたリーダーに「グレートリーダーシップ!」という賛辞を贈り、それを受けた本人は、まず「ありがとう!」と答えます。

 そしてその後、「もちろん私も頑張ったが、実はあの人も○○の分野で素晴らしいリーダーシップを発揮してくれた。また、目立たない部分で○○さんのリーダーシップも驚くべきものだった」などと、他の人のリーダーシップを褒めるのです。

 日本式の回答だと、まるでリーダーがリーダーシップ自体の価値を否定しているかのようにも聞こえますが、後者の場合は、様々な人がリーダーシップを発揮したことをお互いに称え合うというスタイルです。この点が日本的組織と外資系組織の大きな違いで、日本でもこうなれば、リーダーシップが肯定的なものと捉えられるようになるはずです。私が変えたいのは、このようにリーダーシップがややネガティブに捉えられていることなんです。

協調性を醸成するだけの人がトップに立っていいのか

酒井:ビジネスの世界で高い成果を出すリーダーは、一般の人が見たことのないような人かもしれません。自分のビジョンや理念という価値観を優先するので、誰かに好かれようなどと思っていないのです。一般的な日本人はコンフリクトを避けようとしますが、リーダーシップを持った人たちは、ビジョンや理念を達成するために、毎日でもコンフリクトを起こすような人ですね。

伊賀:コンフリクトを起こさないと成果が出ないということをわかっているので、そうなることをまったく怖がらないし、避けないですよね。

酒井:その通りだと思います。日本人は集団で成果を出すよりも、和を求めるからリーダーシップを嫌うという意見がありますが、僕はそう思いません。日本人が「和を以て貴しとなす」という行動原理で動いていない証拠を見つけるのは簡単でしょう。個人的には「和を以て貴しとなす」というのは、日本人とは何かということを考えるときの「仕組まれた思考停止」で、そう教えたほうが、為政者が国民を統治しやすくなるからぐらいに思っています。そもそも、日本人は11万年ぐらいかけてアフリカから日本にたどりついた人々の子孫です。開拓者精神はかなり旺盛なはずだと思いますよ。

伊賀:おっしゃる通り、日本人にリーダーシップがないはずがありません。だた、この国にはリーダーシップをポジティブに捉えたくないという人がいるんです。リーダーシップは、年功序列などの制度と、必ずしも親和性がよくありません。「部下は上司の言うことには、問答無用で従え!」と考えている人にとって、部下に強いリーダーシップがあることは好ましい事ではないですからね。

 そしてそういう人が「和を以て貴しとなす」という言葉をはじめ、「船頭多くして船山に上る」など、リーダーシップなんて発揮しないほうがいいと言わんばかりの格言をすぐに持ち出すんです。

 日本にだって今まで、各分野でリーダーシップを発揮した人たちがたくさんいました。だからこそアジアで唯一、西洋と伍して先進国の地位を獲得できたのに、リーダーシップという言葉がタブーのようになってしまっているのはかなしい限りです。

 世界では、リーダーシップを持たない人が組織のトップに立つのは困難です。一方の日本では、和を以て貴しとなすという言葉を言い訳に、リーダーシップを持たない人、組織の和ばかり気にしている人がトップに立ち、思い切った判断ができないために迷走を続けている組織がたくさんあります。

 チームの協調性が不要だとは言いませんが、本当に、協調性を醸成できるだけの人がトップに立っていていいのでしょうか。リーダーシップをネガティブな概念と捉えたまま、日本がこの先世界の中でやっていくのは難しいと言わざるを得ません。

酒井:日本にも、リーダーシップの概念はあるはずですよね。でも、リーダーシップという概念を表す日本語は思いつきません。一番槍とか、切り込み隊長とかいう近い言葉はありそうですが、どうもイメージと違います。

これからは自分の好きなことは何かが問われる

酒井:突出したリーダーを引きずり下ろすのは、ぶ厚い中流層が存在して初めて合理性があることだと思います。中流でいてそこそこの人生が送れるのであれば、それを破壊しようとする存在を排除しようとする力が働くからです。ところが今、このぶ厚い中流層がなくなりつつあります。産業革命がブルーカラーの仕事を奪ったとするなら、IT革命はホワイトカラーの仕事を奪うのです。知識の偏在によって仕事をする時代は終わり、今後生き残るのはコンピュータが苦手な仕事、つまり新規性や進歩性に秀でた仕事だけになるでしょう。でも、こうした仕事はほんの一握りの人にしかこなせないので、いわゆる格差はますます広がる社会に向かっていくのだと思います。

酒井穣(さかい じょう)

フリービット株式会社取締役。NPO カタリバ理事。1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg大学TiasNimbasビジネス・スクール経営学修士号(MBA)首席(The Best Student Award)取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事した後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、2000年にオランダへ移住。2006年末に各種ウェブ・アプリケーションを開発するベンチャー企業である
J3 Trust B.V.を創業し、最高財務責任者(CFO)としての活動を開始。2009年4月、フリービットに参画するために帰国し現職となる。主な著書に『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『リーダーシップでいちばん大切なこと』(日本能率協会マネジメントセンター )『きみたちはどう迷うか』(大和書房)などがある。
伊賀:よくわかります。昔は全員で食料を作っていたのに、今は2%程度の人が食料を作れば国中の人が食べられます。工場で働いてモノを作る人もどんどん減っていますが、それでも全員の欲しい物が供給できる社会になっています。技術革新やオペレーション改善により、生産性がものすごく高くなったからです。これが進めば、100%の人が働かなければ社会が維持できなかった時代から、半分ぐらいの人が働いてくれれば今と同じ程度の生活が維持できる社会がくる、というのは非現実的な話ではないですよね。

 そしてそれがもっと進むと、本当に自分がやりたいことと、お金を稼ぐために行なう仕事が分離される時代がやってくると思います。産業革命以降の先進国では、マズローのピラミッドに表れる欲求は、すべて仕事によって手に入れていくという感じでした。しかしこれからは仕事はお金を稼ぐためのものにすぎず、社会的認知や自己実現などは、社会活動や職場以外での人とのつながりの中から得るというようになり、仕事一つからすべてを得るという感覚はなくなっていくような気もします。

酒井:それは間違いないでしょうね。僕は今、人間が「好きな場所」で「好きな人」と「好きなこと」をして暮らしていく人を増やすことに興味を持っています。これまでは、その3つの要素は分かちがたく一体のものでした。しかし、これからはそれぞれを別々に追求できる社会になっていくはずで、そうなると、自分にとって「好き」とは何かということが、これまで以上に問われるようになってくる。自分が「好き」とおもう事象に、できるだけ忠実に生きることこそが、リーダーシップと非常に近いものなのではないでしょうか。

今日のご飯を決めるのがリーダーシップの第一歩

伊賀:よく誤解されているのは、好きなことをして生きる、そのためにリーダーシップを発揮するというのが、ごく一部の人にのみ可能なことだと考える人が非常に多いことです。

 そして、「ほとんどの人はリーダーシップを発揮することなく粛々と生きていくのだから、全員がリーダーシップを持つべきだなどと煽らないでくれ」と言うのです。それについてはどう思われますか。

伊賀 泰代 (いが やすよ)

キャリア形成コンサルタント。兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにて、コンサルタント(アソシエイト、エンゲージメント・マネージャー)、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立。 現在は、キャリアインタビューサイト MY CHOICEを運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動に従事する。
酒井:そうした考えは、前の時代のものだし、古いと思います。本にも書きましたが、個が強調される時代に、リーダーシップを持たないでどうやって生きていくというのでしょうか。無理だと思います。日本で1番高い山は富士山です。これは誰でもわかると思いますが、2番目はどの山か答えられる人はそういないはずです。何らかの社会問題に対して活動すれば、誰でも価値は出せると思います。しかし、その価値がどこかの段階で1番にならない限り生きていけなくなると思います。

伊賀:すべての人に“同じ”レベルのリーダーシップが必要だと言ってしまうと、最初から拒絶する人が出てきてしまうのが難しいところです。世界や日本で1番でなくてもいいから、自分の手の届く範囲で1番手になり、リーダーシップを発揮することが大事ですよと言ったほうが、納得してもらいやすいかもしれませんね。

酒井:あくまでも一般論ですが、これまでは、国家が企業を統治し、企業が個人を統治するヒエラルキーが存在しました。しかし、グローバル化とともに国家と企業の結び付きが弱まり、経営者は政治家をほとんど相手にしなくなっています。さらに、SNSのような新しいコミュニケーション手段の出現が、企業と個人の間の結びつきを弱めることで、国家と企業と個人が互いに醒めた目で見る状態が完成しつつあるのです。そうなると個人は自由になりますが、自由だからこそ自分は何をしたいのかということが問われるのだと思います。ですが、自分が何をしたいのかというのを考えるのは、結構な苦痛だったりしますね。それこそ、自分の好きな食べ物を問われて、それに答えるようなことでも、なかなか大変です。

伊賀:たしかにそうですね。「私はこれが好きだ、これが食べたい」と、自分がやりたいことを明確にするのが、リーダーシップの第一歩ですよね。今日はこれを食べると決めることは、自分が達成すべき成果を明確にすることで、そこから行動が始まります。

『採用基準』にも書きましたが、リーダーの最初のアクションは「成果目標を自分で決める」ことです。4人集まって何を食べるか決めるときに、全員「何でもいいよ」と言ったら何も決まりません。何が好きで、何をしたいのかを持っていない人に、リーダーシップを発揮するのは難しいです。

酒井 「今晩なに食べたい?」と聞かれたとき「なんでもいいよ」と答えるのは、相手に選択を任せる心の広さを示しているようですが、要するに結果に責任を持たないということですよね。逆に「なんでもいいよ」と言われたほうは、色々と悩むことになり、大変です。バカバカしい例かもしれませんが、リーダーシップは、今晩の食事を決めるというレベルから、それを発揮することが本当は求められていると思います。(この続きは11月26日に公開予定)

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