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トヨタ、好調タイに2つの懸念 現代自、拡大路線に暗雲
2012年11月22日(木) 上木 貴博
トヨタはタイの年産規模を100万台へ増やす。中国市場が厳しくなる中、日系各社はタイ生産を拡大している。だが、人手不足とバーツ高が成長に水を差す恐れもある。
トヨタ自動車子会社のトヨタ・モーター・タイランド(以下タイトヨタ)が11月8日に開いた設立50周年式典。同国副首相を含む招待客1800人を前に、豊田章男社長は「近い将来、年産規模を100万台へ引き上げたい」と語った。
増産に沸くタイトヨタの工場でも、人手不足の懸念が広がっている
今年の生産台数は過去最高の88万台に達しそうだ。これは現行能力の上限を超えるペースで、今年から残業や休日出勤などで増産対応をしてきた。タイ国内向けだけでなく、輸出も増えている。このため、来年半ばにタイ東部のゲートウェイ工場で169億円を投資し、第2工場を稼働させる。
国内需要増の背景には、洪水からの復興需要や、クルマを持たない消費者に一部車種の購入を補助する政策がある。この政策は年内予約分で打ち切られるが、人気車種は納車まで半年待ちという状態なので来年夏までハイペースの生産が続きそうだ。タイトヨタの棚田京一社長は「消費者の所得増が需要を拡大させている」と見る。中国市場が日本製品の不買運動などで厳しくなる中、タイに牽引役になってほしいという期待もにじむ。
働き手の奪い合いも
だが、日系自動車各社がタイで相次ぎ増産を始めたのに伴い、今後の成長のボトルネックになりそうな懸念材料も見えてきた。1つは人手不足だ。
トヨタに部品を納入するデンソータイランドは今年に入り、増産に対応するために東北部の農村へ担当者を出向かせて働き手を探している。期間工の紹介会社も新たに開拓した。これまで男性が多かった製造現場で女性を積極的に採用し、頭数を確保している。同社の朝岡龍治副社長は「人の取り合いは確実に激しくなってきた」と語る。
人の取り合いは自動車業界だけにとどまらない。農機大手クボタが今年10月にタイで稼働させたエンジン工場の従業員の半分は女性。「必要な人員を男性だけで賄うのは難しい」(クボタエンジンの小林成典社長)。座りながら軽作業ができる妊婦専用の生産ライン導入も検討しており、労働環境の改善により人員の確保を目指す。
人手不足に伴い人件費も上昇している。今年4月、首都バンコクを含む7県で法定最低賃金が約4割引き上げられた。来年は賃上げが全国に広がる予定だ。賃上げは消費者の購入意欲を高める一方、生産コストを上昇させ、輸出競争力などに打撃を与える。
もう1つは為替の問題だ。今年6月には1ドル=32バーツ近くで推移していたが、11月10日現在で1ドル=30.6バーツまで上昇してきた。トヨタはタイから約100カ国へ輸出している。輸出比率は現在4割台で、タイトヨタの棚田社長は「理想は海外向けとタイ国内向けは半々」。だが「バーツ高が続くなら輸出基地として苦しくなる」。
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タイの自動車市場は日系メーカーがシェア9割を占めている。その中でトヨタは生産を増やしているものの、シェアは低下傾向にある。今後はタイ市場を狙っていると見られる韓国勢などとの競争が激しくなる可能性もある。
中国での売り上げ急減で経験したように、特定市場への依存度を高めすぎると、そこが減速した時の痛手も大きい。タイ市場で一段と足場を固めるとともに、さらに新しい市場の開拓も急ぎ、それぞれの国のリスクに全体の収益が左右されにくい体制を作ることが求められている。
上木 貴博(うえき・たかひろ)
日経ビジネス記者。2002年に日経BP入社。「日経ビジネス」「日経情報ストラテジー」を経て、2010年春から再び日経ビジネス編集部に所属。趣味は野球(やる、読む、観る)と献血(2011年7月現在で通算140回)。相撲二段。好きな作家は後藤正治。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121120/239625/?ST=print
現代自、拡大路線に暗雲
2012年11月22日(木) 吉野 次郎
韓国・現代自動車が米当局から燃費の過大表示を指摘された。日本車に負けない燃費を宣伝し販売を伸ばすも、ぼろが出た。研究開発体制を抜本的に立て直す必要がありそうだ。
米環境保護局(EPA)は11月2日、韓国・現代自動車と傘下の起亜自動車が燃費性能を過大に表示していたと発表した。対象となったのは、2010年後半から両社が米国で販売した自動車の35%に相当する90万台。EPAは「2000年以降、燃費の訂正を求めたケースは2件あったが、今回のように大規模な事例は初めて」と言う。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121120/239629/01.jpg
現代自の韓国本社の広報担当者は「燃費試験の方法にミスがあった。北米以外では正しく表示していた」として、意図的な燃費操作を否定する。
世界5位に浮上するも…
現代自は2009年頃から世界で急速に販売台数を伸ばしている。2011年は660万台に達し、米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、仏ルノー・日産自動車連合に次ぐ、世界5位の自動車グループに成長した。
現代自はグループの成長を牽引する米国市場で2009年後半にリーマンショック前の水準まで販売を回復させると、2010年からはほぼ半期ごとに過去最高の売り上げを更新した。だが、その原動力の1つが誇張された燃費性能であった可能性がある。
現代自動車の「エラントラ」。米国で燃費性能を過大に表示していた車種の1つだ
米国では1ガロン当たり40マイル以上の燃費性能を持つ自動車が、一般的にエコカーと見なされている。日本車の中ではトヨタのHV(ハイブリッド車)「プリウス」や、ホンダの小型車「シビック」などがこの基準を達成している。
今回、問題が指摘された現代自と起亜の合計13車種のうち、6車種で最高燃費40マイルを達成したとされていた。日本メーカーなど競合他社に負けない燃費性能を宣伝するために公表値を意図的に水増ししていた、と疑う向きもある。現代自の広報担当者は、「販売への影響度合いを判断するには時期尚早」と言うが、米国市場での信頼低下は免れないだろう。
日本への技術依存に限界
今回EPAの指摘によって、現代自の「ソナタ」のHVモデル(2012年型)や、起亜の「オプティマ」のHVモデル(同)でも、40マイルを達成できていないことが明らかになった。
このように多くの車種で燃費性能が引き下げられたことから、日本の自動車業界からは「現代自の研究開発力の低さが露呈した」との声が上がる。現代自の研究開発費は売上高の2%程度にすぎず、トヨタやホンダの5%前後を大きく下回る。その代わりにマーケティングやデザイン部門、工場の自動化設備などにより多くの費用を割り当てている。
現代自の研究開発部門はコストをあまりかけない一方で、日本の自動車メーカーを退職した技術者を積極的に雇用して、技術指導などを受けている。ホンダのあるOBは、「現代自から『研究開発部門の要職として迎え入れたい』との誘いを受けている」と明かす。ただし、日本の技術をそのまま取り入れるだけでは、日々進歩を重ねる日本車を性能面で超えることは難しい。
現代自は来年からフルモデルチェンジする車種を増やして、世界市場で攻勢を強める計画だ。とはいえ、燃費性能は消費者が自動車を選ぶ際に最も重視する項目の1つになっている。今よりもさらに上を目指すには、研究開発体制の抜本的な見直しが避けて通れなくなるだろう。
吉野 次郎(よしの・じろう)
日経ビジネス記者。1期生として慶応義塾大学環境情報学部を卒業。1996年に日経BPに入社し、通信業界の専門誌「日経コミュニケーション」で2001年までNTTと新電電の競争や業界再編成を取材。2007年まで通信と放送の専門誌「日経ニューメディア」で、通信と放送の融合やデジタル化をテーマに放送業界を取材。現在は「日経ビジネス」で電機やIT(情報技術)業界をカバーする。好きな季節は真夏。暑ければ暑いほどよい。お腹の出っ張りが気になる年齢にさしかかり、ダイエット中。間もなく大型バイク免許を取得する予定。著書に『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』(日経BP)。
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時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
なぜ生産性を高めるほど経済は没落するのか
プレジデント 11月21日(水)14時0分配信
写真・図版:プレジデントオンライン
http://amd.c.yimg.jp/amd/20121121-00007866-president-000-1-view.jpg
なぜ「お受験エリート」は間違えるのか
なぜ「お受験エリート」は間違えるのか――。「『皆が言っていること』を鵜呑みにして『事実』を見ようとしないからだ」と『デフレの正体』著者・藻谷浩介さんはいう。全国をくまなく歩き、現場を知悉する理論家が、日本経済に関わる疑問に答える。
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日本政策投資銀行 特任顧問 藻谷浩介(もたに・こうすけ)
1964年、山口県生まれ。88年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経て、10年参事役、12年より現職。11年4月には政府の復興検討部会の委員に選ばれた。
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「労働生産性」とは、労働者1人当たりのアウトプットのことだ。「付加価値額」を労働者数で割ったものが労働生産性となる。
労働生産性を上げるには、分子である付加価値額をブランド向上などの努力で増やすか、分母である労働者の数を機械化などで減らすという方法がある。ただし、前者は容易ではない。このため結果的に、「生産性を向上させる」=「人員削減を進める」という単線的な考え方が広まってしまった。
この問題を理解するには付加価値額について正確に知る必要がある。付加価値額とは、企業の利益に加え、企業が事業で使ったコストの一部を足したものだ。
企業の利益が高まれば付加価値額は増えるが、最終的に収支がトントンでも、途中で「地元」に落ちる人件費や貸借料などのコストが多ければ、付加価値額は増える。
なぜ利益だけでなく、地元に落ちるコストも付加価値に算入するのか。
地域経済全体で見れば、大きなプラスになるからだ。地域経済が元気になれば、結局巡り巡って自分の業績も伸びる。江戸時代の商売人は直感的にこのことがわかっていて「金は天下の回り物」と言った。自分が使ったお金は誰かの儲けに回り、その儲けがお金として誰かに使われることで、自分の儲けに戻ってくる。これこそが、「経済感覚」である。
江戸時代の日本人も、付加価値の定義を考えた西洋人と同じ経済感覚をもっていたのである。
■人件費削減は付加価値率も下げる
ところが日本で行われている生産性向上は、この逆である。「いくら生産年齢人口が減少しようとも、労働生産性さえ上げられれば、GDPは落ちない」という間違った命題が流布している。多くの企業は、人を減らし、人件費を減らし、コストダウンに邁進している。それは労働生産性の向上には結びつかない。ましてやリストラや雇い止めも当然であるかのような風潮は、経済感覚の欠落を意味している。それは、自己を破壊する行為なのだ。
例を挙げよう。図版に7つの産業を並べている。このうち、付加価値率の最も高い産業はどれだろうか。
正解は7番の「サービス」が最も付加価値率が高く、一番の「自動車」の付加価値率が最も低い。「ハイテク=高付加価値」と思いこんでいる人は多く、講演でこのクイズを行うと、ほとんどの人が間違える。実際には、多くの人間を雇って効率化の難しいサービスを提供しているサービス業が、売り上げのわりに一番人件費がかかるので、付加価値率が高くなるのである。
労働者の数を減らすのに応じて、1人当たりの人件費を上昇させ、人件費の総額を保つようにすれば、付加価値額は減らない。あるいは人件費の減少分が企業の利益(マージン)として残れば、付加価値額の全体は減らない。しかし生産年齢人口の減少を迎えている現在では、自動車や住宅、電気製品といった人口の頭数に連動して売れる商品では、マージンは拡大するどころか下がっていく。
退職者の増加に連動して会社の人件費総額を下げるのは当然のことになり、収益率と人件費率、すなわち付加価値額と付加価値率も下がり、生産性の向上は阻害されてしまう。
日本企業が生産性を上げるには、人手をかけブランドを向上させることで、マージンを増やす方向に進む必要がある。
※すべて雑誌掲載当時
日本政策投資銀行 特任顧問 藻谷浩介 構成=上阪 徹 撮影=永井 浩
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最終更新:11月21日(水)14時0分
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121121-00007866-president-bus_all
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