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下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち(内田樹著 講談社)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062138271/aiw-22/ref=nosim/
2007年2月11日の朝日新聞に、この本の書評が載っており、非常に興味深かったので転載する。
「消費社会にしがみつき未来から逃走」([評]学習院大 中条省平氏)
>副題が示す方向へと日本は変わっている。著者はその変質の理由を、経済原理による社会の均質化だという。日本の将来を絶望させるに足る、恐ろしいほどの根源的な洞察だ。
>(中略)今、日本の子供たちは家事を手伝う必要はない。そのかわり、消費者としての自分を確立する。(中略)4歳児でもコンビニで金と好きな商品を交換できる。金は持つ人の身分を問わない。これが金のフェアさだ。
>今の子供はしばしば「これを勉強すると何の役に立つんですか」と聞く。消費者として自分を確立した子供には当然の問いである。消費者にとって、自分がその有用性を理解できない商品は意味を持たないからだ。
>だが、「何の役に立つか」と問う人間は、ことの有用無用について自分の価値観が正しいと思っている。勉強によって自分の価値観そのものがゆらぐことを知らない。幼くして全能の消費者となった立場から、今の自分の役に立たないものを退ける。
>この態度を、今はやりの自己決定論、自己責任論が後押しする。勉強しなくても、自分で決めてそのリスクの責任を負えばよい。未来の自分に目をつぶり、今の自分の無知にしがみつく。役に立たない勉強をやらなくて何が悪い。こうして学習からの逃走が始まる。
>(中略)金による交換は、平等で、透明だ。そこに魅力がある。だが、その交換がスムーズに行われるためには、交換の場を下支えする社会的制度や人間的資質を開発する必要がある。この人間的資質は、教育以前には「何の役に立つか」分からないものだ。教育の場で「何の役に立つか」と問う消費者マインドが、学習からの逃避、労働からの逃避を原理的に支えている。教育者と子供たちが「何の役に立つか」と問いつづけるかぎり、潜在的な人間的資質は開発されず、消費者でしかない子供(将来の大人)が再生産されるばかりだ。(後略)
これを読んで、学級崩壊や、「オレ様化する子供たち」:なんで屋カー工房や、今話題になっている「給食費を払わない親」家庭を聖域にしてはならない)や、ニート超企業類グループの挑戦などがなぜこんなにも増えているのか、かなり有力な手がかりが得られたように思った。
考えてみれば、今や都会の子どもたちは、「消費者」として生まれ、「消費者」として成長する。
蛇口をひねれば水が出るのがあたりまえ。農作物はキレイに仕分けられてスーパーに並んでるのがあたりまえ。欲しいものがあれば、親に連れられてショッピングセンターに行って買ってもらう…。
快適で便利で、金があれば何でも解決する、という都市空間で育つ子どもたちにとって、「誰かに何かを供給する」という体験つまり「供給者になる体験」はなかなかできない。
言うならば、今の都会に住む子どもたちは、生まれながらにして「消費特権階級」である。金を払いさえすれば何でも揃い、どんなサービスも受けられる便利な空間の中で成長して「自己を確立」する。
「消費生活の中で確立した自分」は、金さえ持っていれば、既に用意された数ある商品やサービスの中から自分が価値を認めるものを選択できる(その選択された商品やサービスにそれ相応の代金を払う)。
「消費」という行為に必要なのは「金」だけであって、「状況を把握する能力」、「人の期待を読み取る能力」、「他人と話し合って協力して実現する能力」など、社会に出て何かを誰かに「供給」しようと思ったら必ず必要になる能力は、一切求められることはない(だから、最低限の会話ができる4歳の子供にだって買い物はできるわけだ)。
ひとたび、何かを生産しよう、何かを第三者に提供しよう、と思ったら、ありとあらゆる事象を対象化して頭を使わなくてはならない。自分自身が額に汗しなくてはならない局面もあろうが、一人でできることなどたかが知れている。何か大きなものを供給しようと思えば、周囲の人間と関係を構築して組織をつくり運営していくことになる。それには、いかに一緒に仕事をする仲間に動いてもらうかを考えなくてはならないし、課題をスケジュール化し段取りを組まなくてはならないし、どの役割をどの人に振るのか、人材適性を見極めなくてはならないし、おまけに彼らにいかに活力を出してもらうか(人材の活性化)、ということまで考え尽くさなくてはいけない。
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