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スペインの悲劇
2012年11月14日(Wed) Financial Times
(2012年11月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
スペインでは住宅ローンを払えずに立ち退きを迫られた人の自殺が相次ぎ、大きな話題になっている(写真は11月12日、マドリードの与党・国民党本部前で住宅差し押さえに抗議する人たち)〔AFPBB News〕
スペインのメディアは、自宅からの立ち退きを迫られた人が2人自殺した件に釘付けになっている。このような自殺は悲劇ではあるが、極端なケースだ。
しかし、何千人もの人が差し押さえのリスクに直面している今、スペイン政府が銀行による住宅差し押さえを困難にする対策を検討していることは正しい。
大規模な差し押さえには、広範に及ぶ社会的、経済的代償が伴う。自宅を失うことは、個々人のドラマにとどまらない。国にも負担がかかる。
空き家は近隣の活気をそぐだけではない。周辺の不動産価値も低下させ、自己強化的な悪循環を生む。
差し押さえを制限する対策を
流れを反転させるためには、協調的な取り組みが必要だ。だからこそ、超党派の合意をまとめるために野党・社会労働党へ働きかけることにした与党・国民党の決断は歓迎される。両党の取り組みは、弱者を立ち退きから守るという差し迫った危機に焦点を合わせるべきだ。
その第一歩は、差し押さえを制限することでなければならない。だが、返済猶予制度を一律に適用すべきではない。例えば、まだ仕事があって転居できるが、分不相応なローンを組んでしまったような人が恩恵を受けるべきではないだろう。
危機時に国有化された銀行については、政府は即座にルールを設定できるはずだ。特定のケース――例えば、自宅の価値がローン残高を下回る状態にある失業者など――ではローンの返済条件の再交渉を求めるべきだ。もう1つの選択肢は、差し押さえを実施したうえで、住宅ローンの借り手が手頃な家賃を払い賃借人として住み続けられるようにすることだ。
民間銀行について言えば、業界団体が12日に、困窮に陥っている場合には自主的に返済猶予に応じる措置を発表した。これは歓迎すべきことだ。
しかし過去の経験は、国の圧力がないと、あまり成果が上がらないことを物語っている。結局、差し押さえの制限に関して以前合意された自主規制は概ね無視されている。このためスペイン政府は、返済猶予の実施状況について、定期的な報告を求めるべきだ。
現実を直視しなければ、犠牲はさらに拡大
確かに、こうした対策により銀行の評価損が膨らむ可能性がある。だが少なくとも、銀行はこれでようやく、一部の銀行融資、とりわけ住宅ローンの毀損の度合いを認めざるを得なくなる。
自己欺瞞に陥っているのは銀行だけではない。政府は国内銀行を支援するために欧州安定メカニズム(ESM)からたった400億ユーロの融資を受けることを検討している。これは実際に必要な額に届かない。
銀行危機には人的損失が伴う。既に高すぎる代償を支払った人もいる。スペイン政府と銀行が現実に向き合わなければ、代償は大きくなる一方だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36539
JBpress>海外>中国 [中国]
中国は「失われた20年」に突入した
バブル崩壊で日本と同じ道をたどる理由
2012年11月14日(Wed) 川島 博之
中国のバブルが崩壊し始めた。中国政府が掲げる今年度の経済成長目標は7.5%だが、その達成は難しいようだ。これまで中国政府は農村部から都市部へ出てくる人々の雇用を確保するために年率8%の成長が必要であると言ってきたのだから、7.5%は控えめな数字なのだが、その達成さえも危ぶまれている。バブルが崩壊し始めたと考えてよい。
筆者の研究室には中国からの留学生がいるが、その学生によると、現在、中国では大学を卒業しても、条件の良い就職先を見つけることが極めて難しいそうだ。多くの若者が低賃金労働に甘んじている。それは米国や日本に留学した学生も同じで、当研究室の学生も帰国してからの就職を心配している。
経済が年率7〜8%で成長している国の就職事情とはとても思えない。もし、本当に経済が7〜8%で成長しているならば、大卒は引っ張りだこだろう。
日本がバブル景気に沸いてきた頃を思い出してもらいたい。バブル最盛期の1988年の経済成長率は7.2%であったが、その頃、多くの学生は複数の会社から内定をもらって、内定を断ることに苦労していた。中国政府が発表する経済成長率にはウソが含まれている。
ついこの前まで、ヨーロッパの高価なワインはほとんどが中国で消費されているなどと言われていた。今もその余韻は残っているようだが、ちょうど日本の90年代の初頭のように、多くの人々が経済の潮目が変わったことに気づき始めた。
上海の株価指数は既に大きく下落している。不動産価格についての情報はまちまちだが、大きな目で見れば下落傾向にある。現在の中国の経済状況は90年代初頭の日本によく似ている。
中国にもいる「団塊の世代」
それでは、今後、どうなるのであろうか。中国は90年頃の日本とは大きく異なり発展途上にあるから、もし景気が後退しても再び成長軌道に戻ると見る向きも多い。だが、筆者はそうはならないと考えている。それは中国で急速に少子高齢化が進行しているためだ。
下の図を見てもらいたい。これは全人口に占める65歳以上人口の割合を示したものである。2010年の日本は22.7%だが、中国は8.2%に留まっている。しかし、今後、中国の高齢者人口割合は急速に上昇する。
全人口に占める65歳以上人口の割合
ここで、図の日本の線を25年ほど右に移動させると、中国の線に重なる。つまり、中国の高齢化の進行は日本より25年ほど遅れていることになる。
「なーんだ、ずいぶん先の話だな」と考える人はちょっと甘い。日本の25年前を思い出していただきたい。87年になるが、その頃、日本はバブル景気に酔っていた。しかし、直ぐに「失われた20年」に突入した。
日本で急速に少子高齢化が進行しているのは、団塊の世代が引退する年齢になったからである。そして、中国における高齢化の進行が日本によく似ているのは、中国にも団塊の世代がいるからである。
日本の団塊の世代は戦争直後の4年間に生まれているが、中国の団塊の世代は1960年代の約10年間に生まれた。毛沢東が強行した大躍進政策の失敗によって、58年から60年頃にかけて多くの人が餓死したことが、60年代に中国で多くの人が生まれた原因のようだ。戦争などで多くの人が死んだ後には、多くの子供が生まれる時代が来る。それが団塊世代を作る。
現在、中国の団塊世代は40代になっている。日本もバブルに踊った頃、団塊世代は40代であった。バブル景気と団塊の世代の年齢は関係がある。40代と言えば働き盛りである。働き盛りが多いから、当然のこととして経済が活性化する。また、それまでは社宅などに暮らしていても、40代になるとそろそろ自分の家が欲しくなる。それが不動産バブルを起こす。
どこの国でも、団塊世代が40代に差しかかると、経済活動が活発化するとともに不動産バブルが発生する。現在の中国はまさにそのような時代である。
既得権益層になってしまった都市部のインテリ層
そんな中国は、日本の後を追う可能性が高い。つまり、「失われた20年」に突入する。
なぜ、バブル崩壊の後に「失われた20年」に突入するのだろうか。その原因については既に多くのことが語られているが、一口で言えば、果断な改革ができないためだ。
バブルが崩壊するまでの成功体験が大きいために、果断な改革を実行できない。そして、奇跡の成長が各種の既得権益を生み出すことも大きい。既得権益が重なり合うために、改革を行おうとしても「総論賛成、各論反対」になってしまう。
現在の中国もまさにバブル崩壊後の日本にそっくりである。そして、中国の既得権益層の得ている利益は日本のそれを大きく上回っている。清廉とのイメージを振りまいてきた温家宝首相の周辺が巨額の不正に関わっていたというニュースが流れたばかりである。
中国の貧富の格差は極限にまで拡大している。改革の必要性はバブル崩壊後の日本以上になっている。だから、日本以上の気迫を持って改革を断行しなければならないのだが、昨今の状況を見ると、中国において大胆な改革が行われることはないだろう。
現在の中国を変えるには、旧ソ連が崩壊したような、大きな変革が必要になる。そして、大きく政治を変えるには、天安門事件がそうであったように、都市部に住むインテリ層が立ち上がらなければならない。
しかし、現在、都市に住む中国のインテリ層は、過去20年ほど続いた好景気の中でそれなりの成功を収めて中産階級になってしまった。団塊世代の多くは奇跡の成長の中でそれなりの成功を収めて既得権益層になった。だから、彼らが第2の天安門事件を起こすことはない。
今後、経済の低迷が始まれば、中国政府も改革を試みることになるが、それは過去の日本のように「総論賛成、各論反対」の抵抗に遭う。そして、何も決定できない。それは、日本の過去20年と瓜二つである。その結果、中国は政治面でも経済面でも失速する可能性が高い。
ここでは、紙幅が限られるために中国が今後どのようになる可能性が高いかを十分に論じることができないが、拙著『データで読み解く中国経済 やがて中国の失速が始まる』(東洋経済新報社、税込1890円、11月9日発売)に詳しく述べたので、この記事と併せてお読みいただければ幸いである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36496
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