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ニート、派遣、外国人労働者・・・社会と企業ミスマッチを解消する方法
海老原嗣生氏に聞く「日本の雇用」(後編)
2012年11月9日(金) 金野 索一
日本政策学校代表理事の金野索一です。
「日本の選択:13の論点」と銘打ち、2012年の日本において国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識に拘らず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。
政策本位の議論を提起するために、1つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。
今回は前回に引き続き、【雇用】をテーマに海老原嗣生氏(株式会社ニッチモ代表取締役)と対談を行いました。
海老原氏は、産業構造の変化により製造業の仕事が減り、対人折衝能力が必要なサービス系の仕事が増えたことで雇用のミスマッチが起こっていることを関心事として述べられています。
また雇用についての的外れな議論の多さを指摘しており、例えば「正社員の代替で非正規社員が増えた」という定説を否定し、データを示して、雇用問題として取りざたされている論点の多くは論理的でないと指摘しています。
対談の中で「大企業が非正規化させたとか、大企業が悪だという話に行ってしまうから、何も解決しないのでしょう。新卒偏重の超大手が3年既卒OKにしたって、それで救われるのは、一部のエリート大学を出た人のみ。それよりも、普通の学生に、割れ鍋に綴じ蓋なペアが見つかる仕組みが欲しい」と語っており、派遣労働は雇用調整の為に維持し、それぞれに合った仕事をみつける仕組み作りを提案されています。本当は何が問題なのか、読者自身が客観的なデータから日本の問題を考えていただければ幸いです。
(協力:渡邊健、藤代健吾、高橋淳、高井栄輔)
* * *
海老原嗣生
株式会社ニッチモ代表取締役。株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ、株式会社リクルートワークス研究所特別編集委員。大手メーカーを経て、リクルートエージェント入社。人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。著書に、『雇用の常識 決着版:「本当に見えるウソ」』、『女子のキャリア:〈男社会〉のしくみ、教えます』、『「若者はかわいそう」論のウソ』、『日本人はどのように仕事をしてきたか』、等がある。
(前編から読む)
正社員の絶対数が減少しているのが問題
金野:どのように統計をとるかにもよりますが、正社員が減ってフリーター、ニートが増えているということについて、そもそも疑義があるということをおっしゃっているわけですが、そこについてはいかがですか。
海老原:まず非正規は今1700万人もいます。内訳は主婦が900万人です。学生が150万人です。ここまでは直接データです。あとは、僕の方で推計していますが、主婦を除く高齢者が250万人。高齢者は60歳以上で打っています。なぜならば、定年延長した人たちは非正規雇用が多いので。それで出すと250万人。さらに学生が150万人。これら俗に言う「縁辺労働者」を合計すると1300万人です。残りは400万人となる。
残りの400万人にしても、これも全部が今できたかというと、例えば、一般職と言われる事務のお姉さんたちは、1970年代、80年代は差別的境遇で何度も裁判になっています。
例えば、30歳になればやめるという社内規則があったり、整理解雇のときにまず独身女性というのが内規に書かれていたり、そんな差別的な境遇で働いていて、決して雇用が安定している人ではありませんでした。そういう人たちが大体―推算値なのですが―約100〜150万人が派遣や契約社員にかわっている。これは単に名前だけ正社員で、境遇は正社員ではなかった人たちが、非正規契約社員に変わっただけだと思います。
ほかにも、業務請負と言われて、トヨタでも新日鐵でも、造船でもそうですが、1950年代から、工場で働いている労働者のうちの多くは、協力会社や構内請負の社員でした。今でいう派遣です。それがずっと続いてきたのが、現実、これは派遣でしょう、請負というのはおかしいでしょうというので、2003〜2004年から取り締まりが厳しくなりました。この時期に製造業派遣がOKになったので、請負の正社員だった人が派遣にかわっている。
これで請負会社の正社員が、派遣に大体30万人変わっています。先ほどの一般職から非正規に流れた人たちと合わせると、これで150〜200万人ぐらいになる。こうした、「過去も名前こそ正社員だが、待遇は非正規と変わらなかった」人たちが、400万人の中に多数含まれている。
「正社員のクビを切って非正規をふやした」は間違い
一方で、正社員がどれだけ減ったか。最盛期の1996〜1997年に3800万人いました。今は3400万人で、減っているのは400万人です。非正規が1700万人も増えたのと、この400万人では、帳尻が合わないでしょう。1700万人ふえたのは、明らかに主婦労働、高齢者、学生などです。昔は高卒で働いていたから大卒のアルバイターはそんなにいなかった。という意味で、今まで働いていなかった人の労働参加の方が圧倒的に多い。決して正社員の代替ではありません。
それでも正社員は400万人減っています。これは正社員のクビを切って非正規をふやしたと表面的に見て語る人はいますが、これは間違いです。どう間違いかというと、非正規を雇っているわけではなくて、衰退産業、例えば、建設業、工業は、どんどん小さくなってつぶれて、人を雇わなくなっただけです。それから、定年退職によって自然減しながらどんどん小さくなっていく会社もたくさんあります。
それは何と連関しているかというのを見ると、一番連関しているのは生産年齢人口です。要は、おじいさんたちがやめた後、補充しない。おじいさんたちがどっとやめる、生産年齢人口から外れていくと、正社員は減っていく。生産年齢人口、65歳までの人口が減れば、当然そこにいた衰退産業はそれで雇用を終えるから、それで終わりで正社員は減っていく。非正規に代替するわけではなくて減っていく。それでいうと、生産年齢人口は1996年のピークから600万人減っています。つまり、正社員が400万人ぐらい減る要因は十分そこにある。
そのような話で整理して考えれば、若者が非正規になった、正社員の代替で非正規ができたという話は論拠が薄弱で、そして、それが若者にしわ寄せされているという話は明らかに行き過ぎです。
若者と企業のミスマッチは仕組みを作らないと解消しない
金野:対人能力が余りない人がニートになっているとおっしゃっていますよね。
海老原:そこは2つの意味があると思って欲しいんです。引きこもりと言われている人たちは、100万、150万という話ですが、それは非正規の数とは全く違う小さい─小さいと言ったら失礼ですが―かなり桁の違う数字です。こういう人たちは今の社会のせいで生まれていると僕は思っています。それが1700万だと言われたら困りますが、100万、150万だとわかったら対処できると思います。彼らには雇用問題でとどめず、社会復帰するようなプログラムをつくってあげないといけない。この問題がすごく大きいから直さなければいけない。日本型雇用とは関係ない話です。
どうして引きこもるようになってしまったか? それこそ産業構造の変化です。その昔は、自営業、農業、建設業、製造業、そして家族経営の小規模法人。こうした「知らない人とは口を利かないで過ごせる」産業がいくらでもありました。それが、前述のように、グローバル化、効率化の波で消え去り、今は、自営・家族経営法人が減り、そして、サービス接客産業が産業人口の7割を超えるほどになった。もう、「対人が苦手」という人の行き場がない構造となっています。
だから、本気でここに対処していかないと。
ミスマッチで社会に出られない人も多い
2つ目にあるのは、本来ならきちんと働ける、ハートもそんなに弱くないのに、ミスマッチで社会に出られない人も、非常に多い。ただ、よく見ると、そういう人が、合うような企業は、意外にあるのです。例えば、ワンマンな社長がいる中小企業。一見怖いけど、部下は、リーダーシップとかとる必要はない。言うがままでいい。
こういう企業だって、われ鍋に閉じ蓋で「そこがいい」という人はいるでしょう。同様に、老舗の和菓子屋さんとかで、給料は極端に低い、年収250万円くらいだけど、暇で、楽で、残業もない、という会社も知っています。社内環境が緩いから、低給でも誰も辞めません。で、夫婦で働くと、年功昇給もあるため、世帯年収は600万円位維持できる。しかも、残業もないから、子育ても楽。無理に「グローバルエリートになれ!」と尻を叩くより、ワークライフバランス重視なら、こういう企業もいい。
ほかにも、お爺さんばかりの特産品屋さんでいいもの売っているけど販路が伸ばせない、なんて会社に、ネットオタクが就職して、口も利かずにECサイトを立ち上げて、売り上げを倍増させて、社内で救世主となった、なんて話もあります。
そう、リーダーシップがなくとも、残業がいやでも、口下手なITオタクでも、受け入れてくれる企業というのは、どこかにあるんです。ただし、その分、マイナスも覚悟しなきゃなりません。それは、怖いワンマンオヤジに使われる、とか、超低年収とか、高齢者ばかりの環境とか。つまり、何か、を我慢すれば、自分がどうしても譲れない、という部分だけは実現できる会社があるのです。
大手は、どこも平均点美人ばかりだから、こんな「割れ鍋に閉じ蓋」関係は無理でしょう。逆に、中小は法人成りしているだけでも、270万社もあるから、どこかに、うまいペア相手がいる。ピッタリとは言えないでしょうが、「我慢できる」くらいの、ね。そのペアが、うまく見つけられず、行き場がなくなっている人たちが多いと思うのです。
結局、若者たちは長い間、自分とぴったりの企業に行き当たらない。悪いことには、ネームバリューだけはあるようなブラックで、自分の主義信条と真反対の企業に往々にして入ってしまって地獄を見る。ここが問題だと思っています。普通の企業対普通の人たちという結びつけがちゃんとぴったりにパズルのピースみたいに合わせられるような仕組みができれば、相当解決すると思っています。
マスコミが取り上げる「中小企業」の特徴
それでもマスコミがよくやってしまうのは、中小でもこんなにいい企業がある、こんなにきらりと光る企業があるという特集。世界に羽ばたいているとか、シェアがすごいとか、そういう話になる。それは大企業のカーボンコピーです。そこで採用される人というと、学歴もよくて、頭もよくて、ハートも強くてという人ばかり。これじゃ、割れ鍋に閉じ蓋の、ピースとピースが合わない話です。
金野:まさにミスマッチですね。
海老原:中小というのは千差万別のそれぞれのピースが合うようなマッチングの仕組みがしっかりあればいいのに、ないのが問題です。そういう問題なのに、大企業が非正規化させたとか、大企業が悪だという話に行ってしまうから、何も解決しないのでしょう。再度言います。新卒偏重の超大手が3年既卒OKにしたって、それで救われるのは、一部エリート大学を出た人のみ。それよりも、普通の学生に、割れ鍋に綴じ蓋なペアが見つかる仕組みが欲しい。
年功給を絞れば 欧米型のジョブ型社員、職務型社員が広がる。
金野:後半部分では、ある意味で対策というか、制度的な部分も含めての話に移りたいと思います。大卒総合職モデルからの脱却というところからお願いしたいんですが。
海老原:それでいうと、ジョブ型社員、欧米型職務雇用という話になって、うまく言わないとまた薄っぺらくなってしまう。要は、それはあくまでの大企業の話です。つまり、圧倒的多数はそこに入っていないから、その小さな存在の中での改革案でしかないわけです。
例えば、ジョブ型社員、職務型社員と言われているような人たちは、職務限定だからその職務がなくなったらクビです。若しくは、地域限定で雇っているので、地域で事業所がなくなったらクビです。そういう仕組みをつくれば、総合職のエリートではないですから確かに、入りやすくなるだろうし、それは職務レベルで採用されるわけだから、中途でもよくなるだろうし、入り口は広くなるでしょう。
同時に、人気企業に採用されたけど職務限定社員だと言われた場合に、それなら中小で幹部候補になった方がいいと、中小に人が流れるかもしれません。そういう意味で、そんなものがあったらいいのではないかと思ってはいます。
ただ、大手企業には、まだ年功給が余りにも残存している。仕事のできない人でも今は、100%、係長までは行ける。係長まで行くと、例えば、係長というのは、今、成果主義の範囲に入っていない企業が多くて、定期昇給がまだついている。上がりっぱなしなので、50歳にもなれば年収800万円ぐらいになってしまう。本当に仕事ができない人でも全員係長にして、全員、若者の2倍、給与を与える。これは違うのではないか。
確かに昔は課長に全員したのが、課長になれなくなりました。今後は、係長にさえなれなくするのが筋ではないかというのが、僕の見ているところです。そうやって壊せばいい。そうすれば、35〜36歳までに係長になれなかったら、「おまえ、ちょっとうちには向いていないよ。でも、現場職として、営業としてヒラでずっと残るんだったらいいよ」と。ヒラで営業で働いてくれたら、年収も今は500〜600万円だから、新卒と余り変わらない。
新卒と余り変わらなくて10年選手だったら、新卒よりよほど稼ぐから、それだったらいてくれていい。この形になってくると、欧米と同じノンエリートという形で、職務給に近くなる。今、課長関門があるところをもう1ランク下げて、係長関門ができれば、これは欧米型にまた近づくと思います。若しくは、「おれはヒラはいやだ!」というなら、新天地に転職するのもいい。この年齢ならまだ十分に転職市場に出られるし、何より、給与もそれほど高くないから、中小規模の法人でも、それほどの年収差とならず、受け入れがなされるでしょう。
派遣は雇用の調整弁。派遣基金でセーフティネットとキャリアアップを両立
金野:派遣労働の維持と公的派遣制度というのをおっしゃっていると思いますが、それについてはいかがですか。
海老原:先ほどの、割れ鍋に閉じ蓋のピースを探す、普通の人たちと普通の中小企業を結びつける仕組みは、結局、働いてみなければわからないというのが現実だと思っています。例えば、ここで働いてみて、違ったというので、やめて次へ行くとすると、ブランクもできるし、だれも斡旋してくれないし、その上に、例えば、転職歴5社、6社というと、日本人だといまだに嫌がられる。それならば、そこを派遣という形で、あそこへ行ってみる?ここへ行ってみる?という形にすれば、転職歴はゼロだし、もしやめたとしても、次のところを紹介してもらえる。そういう意味で、公設民営型派遣というものはあっていいのではないかと思っています。
最近、地方へ行くと―広島で県の顧問とNPOの両方をやっているのでその話が主流になってしまいますが―50〜60人の従業員数の企業があるとして、そういうところはそれなりに採用できる。採用した後に、自分の取引先で、従業員5人・10人の小さな会社で、どうしても繁忙期で人が足りないというと、そこに人を貸したりしている。若しくは、そういう会社で雇ったけれども、1人は要らないけど0.5人ぐらい欲しいというときに雇ってしまって、余った人を貸し借りしている。
例えば、地域人材協議会、地域人材コンソーシアムといった仕組みをつくって、そこで特定派遣の形で、足りなくなったところに行かせてあげる。そうすれば、企業側は繁閑差の調整ができるし、働く側としても、例えば、中小企業で20人の企業に入ったらいろいろな仕事の経験ができるようになる。もっといえば、中小の場合、上司やオーナーと合わなかったら、もうどうにもならないですが、それも、うまく解消できる。大企業といっても、結局は小さな課の集まりだと考えれば、その小さな課が中小企業になったわけで、それを人材供給公社が結びつければいいのではないか。これを特定派遣型でやればいいのではないかと思っています。そういう話です。
金野:その御意見と連動する形で、セーフティネットとステップアップを両立するという意味での派遣基金の話をされていると思います。そこはまさに究極、派遣労働そのものをどうとらえるかという3パターンで、そもそも派遣というのは3年以内の短期と割り切って使う会社、中小企業のように人材募集機能として使う会社、基金にお金を払ってでも雇用の調整弁として使う企業、そういう3つのところで考え方を分けて、ベースとなる部分で派遣基金でセーフティネットとステップアップ、キャリアアップを両立させるようなインフラにしていこうというお考えだと認識しています。
海老原:そういうことです。
移民法は議員連盟でもうまくいかない。
金野:外国人労働者の受け入れについては?
海老原:人口が減っても、ホワイトカラーの採用数が変わらないとすると、そのしわ寄せが来るのが、ブルーカラーや販売・サービス・建設業などにいく。産業衰退で製造と建設はいいでしょうが、販売・サービスはまだまだ人がいる。ここに対してどうするのか。
方法としては、高齢者の活用、女性の労働力率のアップがあげられます。ただ、高齢者も就労可能性が高い前期高齢者は既に相当な労働力率であるし、あと10年もすると、ここも人口減少となる。女性は今でも7割を超える労働参加で、そのほとんどが、非正規であり、今後は総合職を主に、質を上げていくべき時でもある。つまり、この2者では、もはや販売サービス業の担い手としては不足することになります。
そこで、手を打たなければいけないのが、外国人労働の問題です。
移民法は議員連盟をつくってもうまくいかない。だから、国は裏口を考えたようですね。留学生30万人計画がそれに直結しているわけです。留学生30万人というのは、文部科学省と外務省で作ればいい話なのに、それに経済産業省と国土交通省が入っている。要は産業人口の政策が相当入っている。
すごく面白いのは、文部科学省的には、少子高齢化はもう胸突き八丁まで来ていて、あと1割です。もともと18歳人口は人口が200万人いたのが、今は120万人まで減っています。この後、110万人弱まであと1割しか減らない。もう4割減ってしまったから、少子高齢化のほぼ胸突き八丁まで来ている状態です。産業人口的には1割の問題ですが、大学はこの1割が減ると200校つぶれると言われているわけです。この200校をつぶさないためには、外国人留学生を1学年5万人欲しい。そうすると、5万人、外国人留学生が入ってくると、これはピース的に埋まる。文部科学省はこれで万々歳なわけです。
ここに、経産省が入って、外務省と一緒にまとめているのが、今はどの学校種別の留学生でも、週28時間、長期休暇中は40時間までバイトできるようになりました。日本の学生は、コンビニや居酒屋は、ハードなので、なかなか働いてくれない。塾とか、イベントとか、そういう高給で、いいものがあるから。そうすると、日本語が余りうまくできなくて、塾やイベントができないような、外国人留学生が、こういう販売・サービス業でものすごく働いてくれている。30万人分の学生バイトの雇用が1つ生まれる。これが1つの目の受け皿です。
でも、これだけだったら大しておいしくない。これに対して2つ目の受け皿として、彼らが日本で就職した場合は就労ビザをおろすという方向に舵を切りました。そして、さらに言うと、彼らがもし就職できなくて新卒無業になってしまった場合、就学ビザが終わった後の特定ビザという形で、1年間は日本にいていい。その間に就職活動をしなさいということで、1年間、猶予期間をくれるという法改正も行っています。この間もバイトをしながら就職活動ができる。そして、就職すれば、やはり就労ビザがおりる。
こうして、日本の滞在期間が10年を超えれば、それで国籍の問題とは別に永住権を獲得できる。大学時代4年間いると、あと6年です。これをトータルで考えれば、第2の移民法、第3の移民法と言えるでしょう。そういう仕組みをうまく作った。
販売・サービス業は、留学生受け入れがうまく進んでいます。大学時代に店舗でバイトしてもらって、マニュアルやオペレーションはほぼ100%覚え、その中から、「よかったら、うちに来ない?」と、勤態もよくて能力も高い人に声をかけると、彼らは日本ではなかなか採用されないから、喜んで入社してくれる。そんな実務ベースでの採用プロセスだと、面接ではわからない人柄や勤態もよくわかるから、外れがありません。
さらに、彼らは2年以上の店舗経験者で、さらに内定が出た後4年の間─4年生も働いていいわけですから―、今度は店員ではなくて副店長として、店舗運営まで覚えてくれる。そうして入ったときには、3年経験のある即戦力になっている。入社後に、さら1年ぐらいは店長を任せ後に、SVなどを経験すれば、25〜26歳でもう7〜8年選手のベテランとなっています。彼らを、中国進出やインドネシア進出のときに先兵となってもらうと、100人力となります。こんな、すごくいいサイクルになっている。
販売サービス業は今後も伸びる
今、留学生が12〜13万人だと思いますが─14万人かな―、これが倍増するから、ますます販売・サービス業は伸びます。日本の販売・サービス業は世界に冠たる能力があるのに、日本で食っていけるから、出ていなかった。
例えば、コンビニはいち早く気づいて出ました。それから、例えば、ネットカフェなんて信じられないでしょう。世界にいっても、あんなものはないでしょう。マッサージチェアがついていて、カラオケがついていて、さらに飯は何でも頼んだらすぐに来て、外で食べるより安い。シャワーブースがあって、こんなものが日本ではあの安さで運営できてしまうわけです。回転寿司もすごいでしょう。牛どん屋が280円だってすごい。アメリカではマクドナルドがすごいと言って、世界じゅうでていきました。その、海外分の連結決算や、ロイヤリティ収入で、アメリカはサービス業の所得収支も相当大きい社会となっています。
日本もじきにそうなってくる。その入り口にこの留学生政策がある。政府というのは、けっこう頭がいいなぁと、僕は思っています。
注釈:マトリックス表、論点表における有識者、政党の見解、ポジションについては、各有識者・政党の公表されている資料や著作物、発言等を参考に、著者と日本政策学校専門チームが、独自のフレームワークで分析・推察したものです。
金野 索一(こんの・さくいち)
日本政策学校 代表理事
コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程修了。
政策・政治家養成学校、起業家養成学校等の経営、ベンチャーキャピタル会社、教育関連会社、コンサルティング会社等の取締役、公共政策シンクタンク研究員を歴任。
このほか、「公益財団法人東京コミュニティ財団」評議員など。
《主な著作物》
・『ネットビジネス勝者の条件ーNYシリコンアレーと東京ビットバレーに学ぶ』(単著:ダイヤモンド社)
・『Eコミュニティが変える日本の未来〜地域活性化とNPO』(共著:NTT出版)
・『普通の君でも起業できる』(共著:ダイヤモンド社)
13の論点
2012年の日本において国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識にこだわらず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。政策本位の議論を提起するために、1つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121101/238885/?ST=print
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