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http://biz-journal.jp/2012/10/post_771_2.html
日本政府が尖閣諸島を国有化したことをきっかけに、日中関係の緊張が高まっている。日中関係は「政冷経熱」から「政冷経寒」の氷河期に突入したといえるだろう。
東京株式市場では、日本企業の株式を大量に買い漁っていた中国の政府系ファンド「OD05・オムニバス」が、どう出るかに注目が集まる。同社の正式名称は「SSBT OD05 OMNIBUS ACCOUNT−TREATY CLIENTS」(以下オムニバスと略)。名目上の本拠地はオーストラリアのシドニーにあり、香港上海銀行東京支店が常任代理人を務めている。配当を受け取るための信託上の名義で実際の株主の素姓は、もう一つはっきりしない投資ファンドなのだ。
尖閣諸島問題によって、オムニバスが持つ日本企業の株を叩き売ればどうなるか。市場関係者の間には“尖閣暴落”と呼んで、これを懸念する声がある。日経平均株価は7000円。最悪のシナリオだと5500円〜6000円まで崩落する。
東洋経済の「大株主調査」(2012年7月24日付)によると、12年3月期末時点で、オムニバス名義の株主が登場した日本企業は238社にのぼった。3月期決算の会社のうち、11社に1社が株式を保有されている勘定になる。オムニバスが初めて登場した07年3月期はわずか5社だったが、その後、5年間で238社に達し、保有する株式の時価総額は3兆5000億円を超えた。
同社の保有比率は、12年3月期に新たに登場したトヨタ自動車(保有比率1.9%)では第9位の大株主。日立製作所(同2.9%)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(同2.6%)、三井物産(同2.4%)は3位、ソニー(2.4%)、NTTドコモ(同0.9%)、オリックス(同3.8%)は4位。武田薬品工業(同2.2%)が5位、コマツ(同2.5%)が6位、ホンダ(同2.2%)は7位の大株主となっている。
銀行、証券、商社、自動車、機械、医薬品、建設、不動産などの有力企業を総なめしている。しかもここに挙げたのは、ベスト10に登場した企業に限ってのこと。公表されていない11位以下の企業も含めると投資額はさらに膨れる。
では、オムニバスとは、一体何者なのか? 中国政府が国庫から資金を出している政府系ファンドというのが大方の見方だ。中国は輸出振興のため元高を避けたい。そのため巨額のドル買い元売りの市場介入をしている。
中国の外貨準備高は、円換算で世界最大の300兆円を誇る。これを国家外為管理局と国策ファンドの中国投資有限責任公司が運用している。前者は米国債で運用し、後者は株式や債券などで運用。オムニバスは、中国投資有限責任公司の別働隊と見られている。中国政府は08年頃に「将来は幅広く日本企業の株式を買い集めたい」と発言、この時期からオムニバスの名義が出てきた。
中国政府系のファンドは何をしようとしているのか。運用方針は不明だ。「何をするかわからない」と不安を抱いている企業もかなりある。これまでは配当金を受け取るだけの“物言わぬ株主”だったが、これからは違う。中国は政治が主、経済が従のお国柄だ。これまでも投資を常に政治のカードとして使ってきた。
そして、いまや米国債を一番多く保有しているが中国。欧州の通貨危機ではギリシャやスペインなどの国債を買い集めた。狙いは中国の存在感を高めて、国際的にイニシアチブを握ることだ。
「中国は、米国債の最大の保有者となったことを外交カードとしてフルに使った。中国が米国債を売れば米国債は大暴落し米国経済は崩壊する。だから、米国政府は中国に強くモノを言えなくなった。国債の大量保有は、米国の大統領の喉元にアイクチをつきつけたようなものだ」(在米の証券アナリスト)
日本では国債の代わりに大企業の株式を大量に買った。日中の緊張が高まるなか、このカードを使って揺さぶりを仕掛けてくるのは必至だろう。
「オムニバスが保有している株式を一斉に売却すれば、東京市場の株価を暴落させることも可能でしょう。中国から撤退の意向を示す企業に対しては、『株を叩き売って企業価値を下げるぞ』と、恫喝することだってできる。産業人&経済人をパニック状態にするために有名企業の株式を買い増して経営権を握ることだってやりかねない。日本経済を根底から揺さぶるために、かなり荒っぽい手口を使ってくることが予想される
尖閣諸島を国有化した日本政府に、政治や外交だけでなく経済・産業面でも圧力をかけてくる。その有力なカードが、オムニバスが保有している大量の日本企業の株式であることは間違いない。
フリーキックのボールは中国側が握っている。日本側に尖閣暴落を防ぐ手立てはあるのか。中国政府系ファンドに翻弄されっぱなしになる懸念すらある。
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