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2012年11月04日(日)ドクターZ 週刊現代
財務省が10月22日に発表した9月の貿易収支は5586億円の赤字だった。赤字は3ヵ月連続、赤字額は9月としては過去最大だった。
輸出額は5兆3598億円で、前年同月比10・3%減と4ヵ月連続マイナス。内訳を見ると、自動車や船舶、電子部品が減少しており、地域別では反日デモが影響しているのか、対中国が14・1%減と大きく落ち込んだ。一方、輸入額は5兆9183億円。同4・1%増で2ヵ月ぶりのプラス。原油、LNG等が増加した。
かつて黒字が当たり前の「貿易立国」「輸出大国」だった日本だが、最近はすっかり赤字傾向になってしまった。
この影響が典型的にかつて隆盛を誇った輸出企業に出ている。特に電子部品、家電産業では輸出不振からリストラが加速され、企業城下町を直撃している。
たとえば栃木県矢板市ではシャープの工場が大幅縮小、地元では雇用確保のため「シャープ製品を買ったら助成金」なる制度が開始されている。かつて誘致合戦を繰り広げた自治体の成長モデルは、貿易立国、輸出大国を前提にしていた。それが崩れた現在、地方自治体はどうしていいのか途方に暮れている。
シャープなどの個別企業の不振は、しばしば特定の経営者の問題として片づけられる。マスコミも、この経営者があの時に行った過剰投資が失敗だったというステレオタイプのストーリーを書く。
しかし、シャープ以外でも電子部品、家電産業の企業はおしなべて低調だ。自動車産業もかつてほどの勢いがない。
ということになると、経営者の資質だけでなく、外部環境にも問題があると考えたほうがいい。特に輸出企業にとっての命綱は、為替レートである。
円高になれば、輸出企業の収益は下がる。たとえば1円の円高によって、パナソニック=25億円、日立=60億円、キヤノン=78億円、トヨタ=350億円、日産=200億円、ホンダ=170億円の利益が吹っ飛ぶ計算である。
円高は収益を下げるだけではない。国内への設備投資も減少させる。このため、円高がいきすぎると、国内の工場の新増設がなくなるばかりか、工場の閉鎖・事業縮小も出てくる。
国内はデフレ、海外に対しては円高---これでは企業は日本を見捨てて海外展開するしかない。本コラムの読者ならご存じだろうが、実は「デフレ」も「円高」も同じ、円が少ないことによって起きる現象だ。
国内のモノに対して円が少ないと、モノは相対的に多くなって希少価値が下がるのでデフレになる。海外のドルに対して円が少ないと、ドルは相対的に多くなって希少価値が下がるのでドル安、つまり円高になる。
このようにロジカルに考えると、円が少ないことによって企業が苦しみ、企業城下町が荒廃していることがわかる。その打開策は、日銀がもっと円を刷ることだ。これで円安にできれば、輸出産業全体の外部環境が整う。
さらにいえば、地方には財源も権限もない。中央政府が握っていて、わけのわからない成長戦略を作ってカネを地方にばらまいているのが現状だ。
日銀が円を刷るだけでなく、地方分権・道州制を進めれば、各地域で企業誘致合戦が始まる。地域の実情に合わせ、産業ごとにきめ細かな規制緩和ができる。もちろん施策のうまい下手は、首長さんの実力次第になるのだが。
『週刊現代』2012年11月10日号より
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