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[真相深層]日銀、融資支援に打ち出の小づち
官製「円キャリー」促す? 海外勢が関心、円高修正効果も
日銀がデフレ脱却に向けた追加の金融緩和を決めた。銀行などが貸し出しを増やした場合、希望すれば日銀が増加分の全額を低利で長期間融資する――。そんな基金の創設も打ち出した。国内の資金需要が乏しいなか、結果的には海外へのマネー供給の打ち出の小づちになるかもしれない。
金額が青天井
預金などで集めた資金を企業や家計に貸し出すというのが、普通にイメージする銀行の姿である。ところが、日銀が今回打ち出したのは銀行貸し出しを増やすための元手を全額、面倒みるというものだ。
英中央銀行のイングランド銀行が7月、金融機関の融資のための資金調達支援に踏み切ったが、貸し出し増の見込み額は800億ポンド(約10兆円)。日銀自身が阪神大震災後に実施した復興支援の貸し出しも金額は限定的だった。今回の貸し出し支援は金額が青天井だ。
米連邦準備理事会(FRB)に比べて緩和が遅れ気味で小出し。そんな批判を受けがちな日銀にしては、清水の舞台から飛び降りるような決定である。だが10月30日の政策決定会合後の記者会見で、白川方明総裁は慎重な言い回しを重ねた。
ほかでもない。肝心の銀行融資がどれだけ増えるか、日銀自身が「確信を持てずにいる」(幹部)からだ。別の幹部は「政府と一緒に貸し出し大号令をかけるという意味だ」と語るが、長引くデフレと低成長で国内融資の伸びは期待薄だ。
いきおい新制度を活用するのは、外貨建てか海外向けの貸し出しということになる。この点は白川総裁も承知のうえだ。
「内外の区別なく、金融機関あるいは企業の活動を支援していくことが最終的に日本の成長につながる」。会見でこんな表現を繰り返した。
確かに日本企業は設備投資の軸足を海外に移している。海外企業に対するM&A(合併・買収)も大型化。企業がグローバル展開に生き残りを賭けているのを踏まえれば、今回の支援策の意味は小さくない。
政策委員たちもそう考えたのだろう。30日の決定会合で経済・物価の展望リポートの表現方法を巡っては異論が飛び出したのに、新制度に疑問の声は出なかった。
間口を思い切り広げた結果、内外の資金の流れにどんな変化が起きるか。米ヘッジファンドなどは早くも制度の細目に関心を寄せている。
「日本に支店を持つ金融機関なら、日銀から年0.1%で最長4年の融資を受け、海外で投融資を拡大できるって? 素晴らしい収益機会だ」。31日に会った大手ファンド幹部は目を輝かせた。
効果は未知数
新制度の対象は金融機関向けを除く対民間貸し出し。ならば、ノンバンク向け融資はどうか?
日銀の担当者の答えは「イエス」。クレディ・スイス証券の水野温氏副会長は「ノンバンクを通じて海外のファンドなどに日銀資金が流れる事態も考えられる」という。
「今回の制度は官製の円キャリー(借り入れ)取引を促すかもしれない」と元財務官。円キャリー取引とは、量的緩和でふんだんに供給された低利の円資金を元手に、高金利通貨などに投資する取引で、2000年代半ばにかけて膨らんだ。
今回は海外でも貸し出しを増やした銀行には、日銀がまるまる低利の資金を供給する意味で、資金の流れに対する当局の関与が強まる。
日銀関係者は「世界的に金融機関の自己資本が傷ついているので、円資金が奔流のように流れ出すことはない」という。
10月に実施した日銀による成長基盤支援のためのドル資金供給では、銀行向け貸出額が7億ドル強にとどまった経緯もある。ただ金融環境が変われば、資金流出が後押しされ、円高修正につながる可能性も否めない。
政策効果は未知数とはいえ、白川総裁が任期の終わり近くになってルビコンの川を渡ったのは間違いない。
(編集委員 滝田洋一)
[日経新聞11月2日朝刊P.2]
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