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■ 「バーナンキの背理法」の証明
FRBのバーナンキ議長が3期目を否定しています。
とうとう、「ヘリコプター・ベン」も白旗を掲げるのでしょうか?
バーナンキ議長は、通貨供給を徹底的に行えば、やがては景気が回復すると主張していました。
この説を証明する「バーナンキの背理法」というものがあるそうです。
「量的緩和をしても、インフレが起こらないと仮定する。すると、中央銀行はいくらでも紙幣を増刷できる。しかも、物価は上昇しない。ならば、お金を刷るだけで、政府の歳入をまかなえるから、徴税する必要がなくなる。こうして無税国家ができる。……しかし、そんな馬鹿なことがあるはずがない。ゆえに、最初の仮定は誤り。つまり、量的緩和をすれば、いつか必ずインフレが起こる」
現在世界の中央銀行は、量的緩和を繰り返しており、インフレを待ち望んでいます。
量的緩和の結果、経済が回復して金利上昇が始まれば、バーナンキの主張が証明されることになります。
■ 流動性の罠
リーマンショック以降、世界の中央銀行は量的緩和を繰り返しています。
しかし、未だににアメリカも日本もEUも景気が回復しません。
1 景気の先行きが不安定な為、消費が回復しない
2 消費の先行きが不透明な為、企業の投資意欲が低い
3 企業の投資意欲が低いので、民間の資金需要が増えない
4 量的緩和で供給されて資金は、金融市場に滞留して、実体経済の回復に寄与しない
これは「流動性の罠」と呼ばれる現象です。
「流動性の罠」を克服しなければ、量的緩和の効果は限定的です
■ 金融機関のリスクテイクの限界
世界の中央銀行は量的緩和を継続していますが、その規模が適切で無いので、景気が回復しないのでしょうか?
例えば、もっと大胆にマネタリーベースを拡大すれば景気は回復するのでしょうか?
例えば、資金需要を大きく上回る通貨を供給したらどうなるでしょう?
金融機関が中央銀行から供給された資金を運用するときもリスクは意識します。
金融機関は「過剰なリスク」を取らないので、運用資金の規模には限界があります。
単純に考えれば、余ったお金は市場に出回る事無く、金融機関に滞留します。
実際には中央銀行の当座預金口座に「ブタ積」になります。
一時は隆盛を極めたヘッジファンドの多くが、規模を縮小したり、店仕舞いしています。
ジョイジ・ソロスのクオンタムファンドも解散しています。
現在の金融市場はリスクが高すぎるので、ヘッジファンドのビジネスモデルは破綻しています。
アメリカの投資銀行はヘッジファンドに大量の資金を提供して来ましたが、
リスクを積極的に取りに行く資金需要は枯渇しています。
この様に、中央銀行が量的緩和を続けたにも関わらず、市場はむしろ不安定になり、リスクの増大が資金需要の低迷を引き起こしています。
■ 中央銀行が直接リスクを取る時代
QE3は、FRBによるMBSの金融機関からの買い入れです。
日銀の量的緩和はもっと踏み込んでいて、株EFT市場や、不動産RIT市場を直接買い支えています。
既に金融機関がリスクを負いきれなくなった為に、中央銀行が直接リスク市場に資金供給する異例の事態になっているのです。
■ 「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」
バーナンキが主張する、量的緩和の結果の「金利上昇」は、景気の回復に伴う「良い金利上昇」です。
要は、資金需要が回復して、金利が上昇する。
ところが、米国債金利は低下傾向が続いています。
しかし、細かく観察していると、ピョコ、ピョコっと金利が上昇する時があります。
これは、量的緩和の後に起こる様で、国債金利の上昇時には、株価が上昇しています。
どうやら、FRBの資金供給によって市場がリスクを取り出すと、米国債市場から資金が流出する様です。
ところが、米国債の金利が上昇して暫くすると、株式市場の下落が始まり、資金は米国債市場に還流するのか国債金利が又下落の転じます。
金融市場のリスクテイクによる金利上昇は、実態経済の回復を伴わないので、継続性に不安があります。
一通り稼いだ後は、一気に市場から資金が逃げ出す恐れがあります。
そこで、昨年の米国債金利の上昇局面(株価の回復局面)で、ガイトナーは、「米国の景気回復は本調子でない」的な発言を繰り返し、景気回復の芽を自ら摘んでいまいた。
バーナンキも同様に、株式市場の過熱を牽制する発言をしています。
これらは、過剰なリスクテイクによって、株式市場が暴落する事を牽制している様でした。
量的緩和によって発生する過剰流動性が、市場を不安定にしている事に彼らは自覚的です。
過剰なリスクテイクによって市場が再び崩壊した場合、米国債の信任が揺らぐような事があれば、米国債が売られ、「悪い金利上昇」が発生します。
既に、米国債は過剰に発行されているので、一度不安が広がれば、売りが売りを呼び、国債が一気に暴落する可能性もあります。
FRBの量的緩和は、実態経済を回復させる事無く、市場の不安定性だけを増大させている様に思えます。
■ 財政を拡大出来ないアメリカと日本
リフレ論者は日銀の緩和希望が小さすぎるから景気が回復しないと主張します。
しかし、アメリカも日本も、過剰な量的緩和は市場を不安定にします。
これが、流動性の罠による、量的緩和の限界なのでしょう。
そこで、今度は財政の拡大によって、景気を直接刺激する政策を求める声が高まっています。
確かに、昨年の日本の震災復興予算は、さまざまな策略によって、震災以外の目的に流用され、結果的に日本の経済を底支えしました。
財政出動は、景気の回復に即効性がある事は事実です。
しかし、問題は、どの程度の規模と期間、財政出動による景気刺激を続ければ、継続的な景気回復軌道に経済を乗せられるか不明な事です。
バブル崩壊以降、日本政府は数々の財政出動を試みましたが、結果的に日本経済は低迷を続け、政府の債務は1000兆円に迫ろうとしています。
アメリカも似た様な状況です。
結果論から言えば、中途半端な財政出動は、債務を増やすだけの結果を生みます。
では、もっと本格的な財政拡大を行ったらどうなるでしょう?
多分、景気は一時的に回復しますが、同時に、財政破綻の聞きがクローズアップされ、国債金利が上昇に転じると思われます。
これは「悪い金利上昇」です。
「悪い金利上昇」がコントロール出来るのかどうか、その手綱は「市場」が握っています。
特に、米国債は、アメリカ以外での流通量も多く、市場がアメリカ国債にリスクを感じたら、一気に米国債金利が上昇するでしょう。
日本国債の金利の変動傾向は、見事に米国債金利の変動に追随していますから、米国債金利の上昇は、日本や世界の国々の国債金利の上昇を伴うでしょう。
アメリカも日本も、財政拡大に消極的なのは、国債の大量発行によるリスクを無視出来ないと考えているからでしょう。
■ 米国債をファイナンスする日本 ■
アメリカ国債はドルの次の信用力を誇ります。
しかし、実際には米国債を買い支えているのは中国と日本です。
最近、中国は米国債の保有量を減らしています。
その分を日本政府があの手この手で買い支えています。
度重なる為替介入で、兆円単位の米国債が買われています。
これらは、不胎化介入なので、日本の景気を潤す事はありません。
さらに、前原氏などは、日銀が米国債を直接買う様に圧力を掛けています。
日本国債の消化ですら大変な時期に、他国国債を買い支えろというのですから、正気の沙汰ではありません。
しかし、もうすこし穿った見方をするならば、米国債が崩壊したら、日本も一蓮托生な訳ですから、日銀の米国債購入は、日本の国益に繋がるとも言えます。
尤も、責任ある政治家の口から、こんな発言が出るのですから、米国債市場がどれ程不安定になっているかが伺い知れます。
(前原氏が責任ある政治家かどうかの問題は別として)
■ 「バーナンキの背理法」のインフレは「悪いインフレ」で終わりそう
「量的緩和によってインフレが発生すれば、バーナンキの背理法は正しい」と主張する人が多い様ですが、どうやら、発生するのは「悪いインフレ」では無いかと邪推してしまいます。
「悪いインフレ」が発生すれば、経済は破綻します。
そこら変を薄々と感じ取っての、バーナンキの引退予告の様な気がします・・・。
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