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ユニクロは中国ナシでは生産も出来なくなる〔PHOTO〕gettyimages
第2部 中国の強みは安い労働力と広大な市場 日本の先端技術はまだまだすごい 中国が仕掛ける日本への「経済封鎖」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33925
2012年11月01日(木)週刊現代 :現代ビジネス
最後に困るのはどっちだ?
「1ヵ月後の指導者の交代を機に、中国は新たな経済制裁を発動するかもしれない」。中国ビジネスに携わる日本企業の共通認識だ。数兆円にも上る経済的損害に、日本は耐えられるのだろうか。
■本当にずるいやり方
「世界のほとんどの国は平和主義であるのに、日本とアメリカは常にトラブルメーカーじゃないか!」
「日本に対していますぐ経済制裁を実施せよ!」
中国最大の国際情報紙『環球時報』のウェブサイトには、怒れる中国人による反日感情剥き出しの意見が次々に書き込まれている。日本が尖閣諸島を国有化してから1ヵ月が経ってもなお、中国人の反日熱は冷める気配を一向に見せない。
中国外交部の洪磊副報道局長は、そんな中国人民の怒りを煽るかのように「問題を大きくした責任は日本にある」と繰り返し、そして今後中国が・対抗措置・を取る可能性を示唆している。
周知の通り、中国はすでに日本に対する「経済制裁」をいくつも実施している。それは最も軽いところから始まっており、日本の輸出入品に対する貨物検査率の引き上げや日本製品の不買運動などが公然と行われている。ソフトブレーンの創始者で、現在北京に在住する宋文洲氏がその実態についてこう明かす。
「貨物検査率の引き上げによって通関に影響が出始めているため、モノが市場に流通する動きが遅くなっています。これが日系企業に深刻なダメージを与えています。日本からの部品や材料が予定通りに入ってこないため、中国の工場では生産のスケジュールが立たなくなっているのです。
さらにはワーキングビザを発行するスピードが遅くなっている、とも聞きます。ヒト、モノの流れが大変遅くなっているので、今後日系企業の活動に抜き差しならない影響を与えていくと思われます」
不買運動も日系企業の頭痛のタネとなっている。ネットを中心に広まる「不買運動」は、反日暴動が収まったいまでも、とどまるところを知らない。現在中国国内では「この日本企業の商品は買ってはいけない」という不買リスト≠ェ出回っており、ソニー、キヤノン、資生堂、武田薬品などの名前があがっているという。
「特にアサヒビールやパナソニック、第一三共などの企業のイメージは中国国内では最悪です。8月下旬、これらの企業が『釣魚島に日本人を上陸させる計画の資金的援助をしている』『右翼組織に献金している』という報道が中国内で流れたからです。もちろんこうした報道に根拠はないのですが、一度ネガティブな報道がなされれば、ネットを通じていつまでも拡散することになるので、これらの企業は今後中国で苦戦するでしょう」(在中国日系メーカー社員)
さらには中国中央テレビをはじめとしたメディアで、日系企業の広告や特集番組・記事などを流さない、という一種のボイコットも起こっているという。中国は国をあげて日系企業のブランドイメージを低下させようと躍起になっているのだ。
中国国内だけではない。日本の観光業のダメージも深刻だ。昨年、日本には100万人以上の中国人観光客が訪れ、約2000億円を日本に落としている。しかし、JPモルガン・チェースの試算では、尖閣問題の影響で'12年に日本を訪れる中国人観光客は昨年比で70%も減少し、日本の観光収入は670億円減少するとなっている。
「日本航空にはこの9月から11月だけで、約2万1000人の団体客のキャンセルが、全日空においては同期間で約4万6000席のキャンセルが出て大打撃を受けたため、中国路線の便数を減らすなどの対応を迫られています。さらに9月に富士山を訪れた中国人の数が通常より90%も減ったという話もあります。北海道から沖縄まで、日本の観光業はあまねく被害を受けています」(大手旅行代理店関係者)
検査率の引き上げ、不買運動、そして訪日自粛。こうした「制裁」だけで、日本のGDPは1兆円程度下がるとの試算もある。中国は「真綿で日本経済の首を絞める」つもりなのだ。
だが、この程度の「制裁」では、中国人民の溜飲は下がらないようである。ネット上では「中国政府はなぜ弱腰なのか。震災で弱りきった日本経済を壊滅させることぐらいはできるはずだ」と、政府の姿勢を批判する声まで出てきているのだ。
そして実際に中国が次の一手≠打つ恐れは大いにある。信州大学経済学部の真壁昭夫教授は、11月に中国で指導者が交代した後、中国の新指導者たちは国民の対日強硬論を抑えきれず、さらなる経済制裁を実行するのではないか、と指摘する。
「次期指導者となる習近平は、中国の国民に『お坊ちゃま』という印象をもたれているため、強いリーダー≠ニいうイメージを作り出す必要があるのです。そして、その演出をするための絶好のターゲットが日本なのです。11月以降、中国がさらに強気な姿勢で日本に経済制裁をしかけてくる可能性は十分にあります」
さらに、中国在住の日本人ジャーナリストがこう付け加える。
「習近平は台湾に近い福建省を統治した経験から、台湾に太いパイプを持っている。そのため、部品や原材料などは日本ではなく、台湾からの調達で賄おうとする可能性があります。最初はこうした・日本外し・で攻めて、次第にその攻撃の手を強めていくのではないでしょうか」
■ユニクロが危ない
仮に中国が日本との経済関係を一切断つと決めた場合、いったい日本経済にはどれだけの影響があるのだろうか。
昨年の対中貿易額は、日本の貿易額全体の21%、3450億ドルに達している。さらに中国に進出している日系企業は2万5000社を突破している。日本の「対中依存度」は、著しく高い。
個別の「対中依存度」をみても、日本企業がいかに中国に首根っこを押さえられているかがわかる。たとえば日産、ホンダ、パナソニックの中国での売り上げは、全体の10%を超えている。前出の真壁氏が補足する。
「自動車などの日本製品に対する不買運動が起こっていることは周知の通りですが、日本企業の中には中国での販売の急速な落ち込みから、生産調整を始めているところもあります。一方の中国は現在供給過剰になっていますし、今後はさらに日本からの輸入を減らす動きが、必然的に起こるでしょう。そうなれば日本の企業は苦境を迎えることになる」
もしも中国が「対日経済封鎖」を決め、国内から日系企業を完全に閉め出し、日本との輸出入をストップしたら---。'11年度の日本の対中輸出額は約1600億ドル。単純に考えても約12兆円が失われてしまうことになる。
「中国市場の売り上げ比率が高いコマツ、パナソニック、日立、日産などの大手企業、百貨店やコンビニなどは相当な打撃を受けることになるでしょう」(真壁氏)
売り上げだけではない。部品や原材料などを中国で生産している企業、たとえば100円ショップや製薬会社は、製品の根幹部分を調達できなくなってしまう。
最も大きな損害を被る代表例はユニクロだろう、と前出の経済部記者は推測する。
「売上高1兆円を目指すユニクロは、公表こそしていないが、ヒートテックやウルトラライトダウンをはじめとする製品のほとんどすべてを中国で生産しています。急速なスピードで世界展開を進めているユニクロですが、もし中国から排除されれば、そもそも『売るものがない』状態になってしまいます。そうなれば今後営業活動を続けることは不可能になります」
中国で反日暴動が起こったとき、店頭に「支持釣魚島是中国固有領土」(尖閣は中国のもの)という紙を貼ったり、逆風の吹く中で、あえて9月下旬に上海店をオープンさせたりといった行動に出たのは、ユニクロが中国なしでは成り立たないということの証左なのである。このように、中国に「命綱」を握られている企業は、経済封鎖が行われれば一瞬で「生命停止」となってしまうのだ。
やはり、勢いで勝る中国と「経済戦争」を戦えば、日本は完膚なきまでに叩きのめされてしまうのだろうか。
だが、中国経済に精通する専門家の間からは、「中国にとって対日経済制裁は諸刃の剣。むしろ中国の方が大きな経済的損害を被るのではないか」との声が聞こえてくる。ビジネス・ブレークスルー大学教授で、中国経済に詳しいエコノミストの田代秀敏氏は、「中国には日本企業を追い出す、という選択肢はとれないはずだ」として、その理由を次のように説明する。
「2011年の中国の輸出額は1兆8986億ドル。これは世界一の数字だが、中身を分析してみると、うち52%の9953億ドルは、中国国内にある外資系企業関連の輸出によるものです。この数字をみれば中国がいかに外資に頼っている国かがよくわかるでしょう。しかも中国でまともに法人税を払っているのは外資系企業です。
こうした状況下で日系企業を追い出せば、生産面でも雇用面でも中国側が受けるダメージは非常に大きいはずです」
田代氏は続けて、「中国は日本の技術を欲しているため、そう簡単に・日本切り・などできるはずがない」とも指摘する。
「日本企業にとって中国の魅力は、発達した産業インフラと広大な市場。一方の中国は、『世界の工場』とは言われるものの、やはり技術的にはまだまだ未熟なのです。中国がいま特に欲しがっているのは、日本の中小企業が持つ技術です。図面を入手しても、その通りに製品を作るには熟練した職人の技術が必要です。その点では日本の方にアドバンテージがあるのです」
■共産党が倒される
中国情勢に詳しいジャーナリストの富坂聰氏も、中国の対応に世界の視線が注がれているいま、経済強硬策をとれば世界が中国を見放すだろう、と指摘する。
「今後中国は、中国に進出している日本企業のうち、あまり中国に利益を還元していない企業に対して、税の徴収を強化する、あるいは工場を造る際の設置基準を厳しくするなどの措置を執ることは考えられる。しかし、あまりに締め付けを厳しくすると、欧米諸国が『チャイナリスク』を強く意識するようになり、中国への投資に慎重になってしまいます。それは中国にとって大きなマイナスです」
実は、水面下で始まっている「日中経済戦争」において、日本はすでに勝利を収めている、という見方もある。毎月中国を訪れ、各地を取材して回っているジャーナリストの宮崎正弘氏はこう指摘する。
「中国での日本製品不買運動や訪日観光客減ばかりが報じられているが、訪中する日本人も急速に減っており、北京や上海で流行っていたナイトクラブも、上客だった日本人が来なくなったので、閉店が相次いでいます。また日本の投資家が、中国株の投資信託を次々と解約しており、9月だけでも300億円近くが解約されたといいます。中国経済のひとつの指標となる『上海総合指数』は、今年9月に2000ポイントを一時下回りました。これは5年前の3分の1以下で、いかに中国経済が疲弊しているかを物語っている。その上日本からの投資が鈍れば、中国の経済はさらに減速してしまうでしょう」
10月18日に中国国家統計局が発表した7~9月期のGDPは、前年同期比で7・4%。成長率は7四半期連続で低下の一途を辿っている。長期的な景気減速に直面している中国のホンネは、「これ以上マイナス要因を増やしたくない」というところだろう。
宮崎氏はさらに、「日系企業が現地で多くの中国人を雇用しているという重大な事実を見逃してはいけない」と指摘する。
「日本企業が雇用している中国人は1000万人以上、下請けなどの間接雇用も含めれば、3000万人から5000万人ともいわれるが、この半分でも失業したら、中国の治安は大混乱に陥るでしょう。その不満は日本に向かうのではなく、中国政府に向かいます。そうなれば中国の政権は倒れることになる。確かにやせ我慢をすれば、経済的な面では日本を排除することが可能かもしれない。しかし、その結果体制が揺らぐようなことに繋がるのなら、結果的には中国が受けるダメージのほうが大きいでしょう」(宮崎氏)
国内の不満を収めようと日本企業を痛めつければ、今度は別の不満が噴出する。中国政府は、深刻なジレンマを抱えているのである。
もし熾烈な日中経済戦争が起これば、それは「勝者なき戦い」となるだろう。中国経済の専門紙『中国経済新聞』は10月15日、「対日経済制裁は中国の利益にならない」と題した社説を掲載したが、はたして中国の指導者たちはこうした冷静な声を受け止めることができるのだろうか。
「週刊現代」2012年11月3日号より
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