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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
財政の崖に突き進む米議会に産業界が待った
2012年10月30日(Tue) Financial Times
(2012年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
まるで映画「理由なき反抗」のジェームス・ディーンとコリー・アレンのように――先におじけづくのはそっちだと言いながら――、米議会の共和党議員と民主党議員が「財政の崖」に向かって突き進む中、米国の企業経営者がブレーキを踏もうとしている。
彼らがどんどん近づきつつある「崖」は、2つの出来事が重なる経済的に危険な事態だ。つまり、ジョージ・ブッシュ前大統領の下で制定された減税の失効と、米国の連邦債務の法的上限を引き上げる取り決めの一環として合意された公共支出の削減だ。議会がこれを回避する計画に合意できない限り、どちらも1月初めに実施される。
チキンレースに危機感募らすCEO
だが、政治家が方向性を巡って揉める一方、マイクロソフトやUPS、JPモルガン・チェース、ゼネラル・エレクトリック(GE)といった企業の経営者を含む80人以上のCEO(最高経営責任者)は先週、米国の政府債務を抑制する長期計画を求めるロビー団体「キャンペーン・トゥー・フィックス・ザ・デット(債務正常化運動)」を支持する姿勢を公にした。
CEOたちは米国財政の構造問題に対する行動を求めている。中でも最も深刻な問題が、医療費の増大だ。
しかし、CEOたちが今声を上げることにした動機は、今後数十年ではなく今後数カ月で生じかねない脅威だ。彼らの取り組みの成否は、米国企業の来年の見通しを左右する。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)によると、財政の崖を避けられなければ、歳出削減と増税は政府の借り入れに即座に影響し、借り入れが国内総生産(GDP)比3.7%減少するという。そうなればほぼ確実に、米国は景気後退に逆戻りするだろう。
全米製造業者協会(NAM)は、この問題を巡る不確実性は既に、企業に採用と投資を思いとどまらせており、今年の米国のGDPを0.6%下振れさせると話している。さらに、もし米国が崖から落ちたら「その影響は、これよりはるかに深刻なものになる」と言う。
「政治家は今回、ニトログリセリンで遊んでいる」
GEのジェフリー・イメルト氏を含むCEO数人は、議会は崖っぷちから引き返すだろうと話している。引き返せないと、あまりに深刻な結果を招くからだ。
債務正常化運動の中心人物の1人、ハネウエルのデビッド・コート氏は、昨年、債務上限の引き上げにもたついた時に政治家が火遊びをしていたのだとすれば、「今回はニトログリセリンで遊んでいる」と言う。
加えて、もし議会が財政に関して合意できなければ、「米国は、私の見るところ、現在(誰が)予想しているよりもずっと深刻な景気後退に陥る恐れがある。なぜなら、それは我々の統治能力に対する審判になるからだ」と述べている。
CEOたちは合意を求めて動いているが、失敗した場合に起きる事態への準備も進めている。米国が実際に景気後退入りするかどうかは、議会が合意に至らない状況がいつまで続くかによって決まる。増税と歳出削減は正式にそれぞれ1月1日と1月2日に始まることになっているが、全面的なインパクトはすぐには感じられない。
怖いのは金融市場の混乱
米国最大の防衛企業ロッキード・マーチンのCEO、ロバート・スティーブンス氏は先週、国防総省からは、同省の契約は恐らく3カ月間は影響を受けないと聞いていると語った。
ワシントンの多くの人が予想しているように、新年早々に合意が成立すれば、最悪の影響は防ぐことができる。だが、あっという間に影響を及ぼしかねないことが1つある。金融市場の混乱である。
増税が行われ、歳出が削減されると、財政赤字が減り、景気後退の脅威が増すことから、米国債の金利が低下する可能性が高い。一方で、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミストらによると、崖を回避しつつ、長期的な財政問題に取り組む兆しが見えない短期的な合意は、逆に金利を押し上げる可能性があるという。
長引く政治論争は、社債の金利も上昇させる可能性が高い。米連邦準備理事会(FRB)の分析では、債務上限を巡る議論が行われた昨年夏に投資家のリスク志向が低下したことが分かっている。財政の壁に関する意見の不一致がもたらすインパクトはもっと大きいかもしれない。
景気後退が現実的な可能性になった場合、その影響は一段と大きくなるだろう。バーティカル・リサーチ・パートナーズのジェフ・スプレイグ氏によれば、米国製造業の最大手クラスの企業でさえ、いまだに売上高のほぼ半分を自国市場で稼いでいるという。
妥当な合意がなされれば世界経済の刺激になるが・・・
短期的な危険を避けつつ、長期的な債務状況に関して一定の安心感を与える合意は、米国企業に大きな弾みを与える可能性がある。前出のコート氏の言葉を借りるなら、「我々は世界に刺激策を与えることができる」という。懸念されるのは、議会がそう考えるようになるまでには、しばらく時間がかかるかもしれないことだ。
GEのCFO(最高財務責任者)のキース・シェリン氏は、来年2月に償還を迎える50億ドルの社債を借り換えした最近の動きについて説明する際に、金融市場が「荒れる」可能性があると述べた。シェリン氏はまるで乗客に、行く手に待ち受ける恐ろしいドライブを覚悟させるドライバーのように聞こえた。
By Ed Crooks, the Financial Times' US industry and energy editor
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36425
9月米個人消費:前月比0.8%増、貯蓄率は昨年11月以来の最低
10月29日(ブルームバーグ):9月の米個人消費は予想を上回る伸びだった。消費が加速した一方で、可処分所得が低迷したため、貯蓄率は昨年11月以来の低い水準に落ち込んだ。
米商務省が発表した9月の個人消費支出(PCE)は前月比0.8%増と、2月以降で最大の伸びを記録した。前月は0.5%増だった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は0.6%増だった。個人所得は前月比0.4%増で、3月以来で最大の伸びだった。
ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は、「住宅市場は最悪期を脱したようだ。消費者心理も改善しつつあり、支出が若干増えている」と述べた。
一方、9月の貯蓄率は3.3%と、昨年11月以来の低水準。前月は3.7%だった。賃金・給与は0.3%増加(前月は0.1%増)した。ただ実質ベースでの可処分所得は前月比ほぼ変わらずだった。
インフレ調整後の実質ベースでのPCEは前月比0.4%増で、前月の0.1%増から加速した。
PCE価格指数は前月比0.4%上昇。前年比では1.7%上昇した。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.1%上昇。前年比は総合指数と同様1.7%の上昇だった。
原題:Consumer Spending in U.S. Increases by Most in SevenMonths (2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2012/10/29 23:40 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCNN0E6TTDTM01.html
JBpress>海外>The Economist [The Economist]
財政再建と景気回復:近道はない
2012年10月30日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年10月27日号)
深刻な危機の直後に短期的な緊縮財政を実施すれば、予想以上の痛みを伴う恐れがある。
映画で言えば、これは最もありきたりの展開の1つだ。ヒーローが敵を1人倒し、別の敵に注意を向けると、実は最初の敵がまだ生きており、反撃を企てているのだ。
2年前、先進国は世界的な景気後退は終わったと考えていた。一連の財政、金融面での景気刺激策の前に退散したと思っていたのだ。政策立案者は景気後退の問題に背を向け、刺激策の結果残された政府債務の処理に着手した。
2011年と2012年の2年間で、先進国の構造的財政赤字は国内総生産(GDP)比0.75%ほど削減される見込みだ。2013年にはさらにペースが上がると予測されている。しかし、経済を覆う闇はまだ消えていない。それどころか、財政再建によって闇はさらに深まったように見える。
支払い能力に対する不安に駆り立てられて、景気刺激策は緊縮財政へと転じた。2009年終盤に市場はギリシャ国債の購入意欲を失い始めた。多くの政府は、次は自分たちの番かもしれないと恐れた。
2010年10月、国際通貨基金(IMF)は各国に緊縮財政を呼びかけ、これが与え得る影響について算定を始めた。しかし、この方向転換には賛否両論があった。IMFは、緊縮財政は痛みを伴うが必要なことだと主張した。一方、一部の学者は、緊縮財政は利益より害の方が大きくなるかもしれないとの見方を示した。
財政の乗数を巡る議論
議論の中心は、経済学において「乗数」と呼ばれる変数の値を巡るものだ。財政の乗数は、税制および支出政策の変化に起因するGDPの変化を表している。例えば乗数が1.5の場合、政府が支出を1ドル削減すれば、GDPは1.50ドル減る。乗数が0.5の場合、支出を1ドル削減しても、GDPは50セントしか減らない。
乗数は双方向に働く。景気後退の局面では、一定規模の刺激策で期待できる景気浮揚効果について、専門家たちが議論を交わした。しかし現在、専門家の頭を占めているのは緊縮財政の影響だ。
単純な例を使って乗数の重要性を説明しよう。ある国の経済が年1.5%のペースで成長しており、政府の財政赤字がGDP比1%だったとする。乗数が2の場合、赤字を解消できる規模の支出削減を行うと、削減が実行された年にGDPは縮小する。痛みの甲斐もなく、当年末のGDP比債務残高は年初より上昇する。
一方、乗数が1.5以下の場合、経済はゆっくりながらも成長し、年末時点での債務残高は減少している。
財政の乗数に関する試算は、実に多岐にわたる。ハーバード大学のアルベルト・アレシナ氏とシルビア・アルダーニャ氏のように、財政再建は成長率を高める、それも短期間で押し上げる可能性があると主張する専門家もいる。しかし、数年前の大方の一致した見解は、乗数は多くの場合1前後で、もう少し低いこともあり得るというものだった。
IMFのエコノミストは2010年の分析で、政府がGDP比1%相当の債務を削減すれば、短期的にGDP成長率が約0.5%の打撃を受けると考えていた。つまり、乗数は約0.5ということだ。
この見方は、予算削減による打撃はほかの要素で相殺できるという考え方を前提としている。支出を削減すれば、民間部門の活動に「クラウドイン」効果をもたらすかもしれない。もし政府が限られた資本と労働力を使い果たしているのだとすれば、緊縮財政は、民間企業に拡大の余地を与えるという理屈だ。
開かれた経済では、輸入の縮小という形で緊縮財政の打撃を他国に転嫁できる。何より重要なのは、金融政策が財政政策を埋め合わせる力になり得るということだ。支出削減によって成長率が望ましいレベル以上に落ちる恐れがあれば、金融緩和が促され、乗数は抑えられるというわけだ。
これはつまり、実施の時期によって緊縮財政が与える痛みの程度が変わってくるということだ。
カリフォルニア大学バークレー校のアラン・アウアーバック氏とユーリ・ゴロドニチェンコ氏は2010年の論文で、財政の乗数は好景気時にはマイナスになり、支出の削減がかえって成長率を高めている可能性があると主張している。一方、景気後退の局面では、乗数は2.5まで上昇することもあり得るという。
いかにもタイミングの悪い緊縮財政
ノースウェスタン大学のローレンス・クリスティアーノ氏とマーティン・アイケンバウム氏、セルジオ・レベロ氏による研究では、通常時の乗数は1前後で推移するが、金利がゼロ近くまで下がり、中央銀行の行動の余地が狭まると、3を超える可能性もあると示唆している。
今回の危機後の緊縮財政導入は、タイミングとしてはこれ以上ないほど悪かった。第1に、多くの国が一斉に予算を削減したため、緊縮財政が成長に及ぼす影響をよそにそらすのが容易ではなかった。特に貿易上のつながりが強固で、各国が自らの通貨を切り下げられないユーロ圏で、これは大きな問題だ。
第2に、通常であれば、財政支出の削減には公的部門が手放したリソースを民間に開放する効果が期待されるが、失業率と貯蓄率が高い時期にはこれは大きな効果を発揮できなかった。
第3に、英国や米国などの安全な避難先では既に借り入れコストが最低水準になっていたため、これをさらに引き下げ、緊縮財政が需要に与える影響を相殺する余地はあまり残されていなかった。最後に、大多数の金利がゼロに近づいていたため、金融政策を講じる余地も少なくなった。
まさにホラー映画
公正を期すために言っておくと、IMFは2010年時点で、まさに今挙げたような理由から、緊縮財政には通常より大きな痛みを伴う恐れがあると警告していた。それでも、IMFは予算削減による打撃を過小評価していた。
10月に入って発表された最新の「世界経済見通し(WEO)」の中で、IMFのチーフエコノミストを務めるオリビエ・ブランチャード氏と、ダニエル・リー氏は過去の予測を検証している。両氏が先進28カ国を対象にした2010年の予測を分析したところ、GDP比1%の財政赤字を削減した場合の成長率を概ね1%ほど過大評価していたことが明らかになった。
当初の予測では景気後退以降の財政の乗数を0.5としていたが、実際は0.9から1.7の間だったようだと、両氏は書いている。つまり財政の改善は予想ほど進まず、経済の苦境は予想以上に厳しかったということだ。
サンプル数の少なさを考えると、これらの結論も慎重に扱われるべきだろう。それでも、ブランチャード氏とリー氏による一連の検証により、IMFが新たにはじき出した数字は、金融危機などを考慮すると有効であり、ギリシャやポルトガルなど、IMFの支援プログラムの適用下にある国々を除外した場合は統計的に有意であることが明らかになっている。
早急な緊縮政策は赤字を減らしてくれるかもしれないが、IMFが予想していた以上に成長を阻害する。緊縮財政に反対する人々は、IMFは以前にもこの映画を見ているはずだと批判する。こういう展開になることは分かっていたはずだ、というのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36418
10月の独インフレ率2.1%、前月と同水準−予想は鈍化
10月29日(ブルームバーグ):ドイツでは10月のインフレ率 が前月と同水準を維持した。エネルギーの値下がりを食料価格の上昇が打ち消し、インフレ率は事前予想を上回った。
独連邦統計庁が29日発表した10月の消費者物価指数(CPI)速報値は、欧州連合(EU)基準で前年同月比2.1%上昇。ブルームバーグがまとめたエコノミスト18人の予想中央値でインフレ率は2%への低下が見込まれていた。物価は前月比 では0.1%上昇した。
世界的な景気減速で需要が抑えられたことから、原油相場は過去1カ月で約7%下落した。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は先週、極めて緩やかな回復が2013年に始まるまで、ユーロ圏景気は弱い状態が続くとの見通しを示した。景気低迷の中で企業は、コスト上昇分を製品価格に転嫁する余地が限られている。
ベレンベルク銀行(ロンドン)のエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は「ドイツのインフレが低下傾向にあるのは間違いない」として、「これはECBにとっても朗報だ。国債購入計画に対する支持をドイツで取り付けるのに役立つ」と語った。
原題:Germany’s Inflation Rate Remains Unchanged at 2.1% inOctober(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Gabi Thesing gthesing@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2012/10/29 22:41 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCNNOA6TTDTM01.html
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松葉杖を手にしたが、完治にはほど遠いユーロ圏
2012年10月30日(Tue) Financial Times
(2012年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ圏の危機の急性期は明らかに終わった。今のところはそう言える。銀行間市場には正常化の兆しがいくつか見受けられる。国債間のスプレッド(利回り格差)も縮小した。イタリアもスペインも、来年までの財政赤字を埋める資金を何とか調達できるだろう。
欧州中央銀行(ECB)の長期資金供給オペ(LTRO)は銀行を支えている。新たに導入された「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」プログラムは、仮に発動されることがあれば、ユーロ加盟国政府を下支えするだろう。
流動性の危機か、支払い能力の危機か?
ユーロ圏の危機は、ひとまず落ち着いたように見えるが・・・〔AFPBB News〕
政府と銀行が共倒れになりかねない様子は、酒場で互いの身体を支え合う2人の酔っぱらいのようだったが、ECBはこの2人に別々の松葉づえを手渡した格好だ。
おかげで今ではどちらも歩けるようになっている。しかし、これをもって危機は去ったと言えるのだろうか?
直近の動きから目を離して全体を俯瞰すると、必ず同じ疑問に戻ってくることが分かる。これは流動性の危機でしかないのか――もしそうなら、これまでに取られた対策で十分なはずだ――、あるいはソルベンシー(支払い能力)の危機なのか、という疑問である。
もし支払い能力の危機だとすれば、ECBの支援は期待できない。ECBはその根拠法により、保有する債権を償却したり債務再編に参加したりすることを認められていないからだ。
もしどこかの国が無秩序なデフォルト(債務不履行)を起こせば、その国はECBとの取引ができなくなり、恐らくはユーロ圏を離脱せざるを得なくなる。ECBのプログラムは、そういう事態にはならないという想定の下に組み立てられている。
ブラックホールに陥ろうとしているポルトガル、スペイン
しかし、トロイカ――国際通貨基金(IMF)、欧州委員会およびECBの総称――の仮報告書が示しているように、ギリシャの債務は、楽観的な想定の下でさえ明らかに持続不可能である。ポルトガルはブラックホールに陥ろうとしている。
もしスペイン政府が民間セクターの債務問題を公的セクターの緊縮策で解決しようとし続けるなら、スペインも同様にブラックホールにはまってしまうだろう。国内総生産(GDP)比で10%近い財政調整が(数年に分けて)実行され、かつ財政乗数が1.5である場合、GDPは少なくとも15%減少する。
スペインの場合は、恐らくもっとひどくなるだろう。銀行セクターの損失が恐慌でさらに拡大するだろうし、損失を吸収する余力はもう残っていないからだ。
筆者をはじめ、これは支払い能力の危機だと考える者から見れば、欧州の状況はこの半年間それほど変化していない。せいぜい、近いうちに事故が起きる小さなリスクをECBが取り除いた程度だ。昨年最も酷使された例えにもう1つ付け加えるなら、ECBはOMTで我々が蹴っている缶を大きくした*1ということになるだろう。しかし、我々はいまだにこの問題を先送りしている。
あくまで支払い能力の危機を否定するユーロ圏
流動性危機を止めようというユーロ加盟国政府の決意に匹敵するのは、同じユーロ加盟国政府が支払い能力の危機が生じていることを認めようとしない姿勢だけだ。ECBとユーロ加盟国は、債務の繰り延べに応じる辛抱強さはあっても、例えばギリシャ国債やスペインの銀行の債務などについて損失を認識するつもりはないようだ。
筆者がそのことに気づいたのは、ドイツにはギリシャの財政調整プログラムを2年延長する案を受け入れる用意があるものの、新規融資は行われないだろうという話を読んだ時だった。この場合、不足する資金はギリシャが自ら調達することになるが、それはまるで実現の見込みがない。
欧州安定メカニズム(ESM)がスペインの銀行に資本を直接注入することは認めないという態度も、これと同じ部類に入る。スペインで発生した債務は、最終的な保証人であるスペインという国家の債務であり続けるのだろう。
解決とは、支払い能力がある状態への復帰を保証する政策が講じられることを意味する。支払い能力というのは分析概念であり、金利や経済成長についての想定、そして(当然ながら)負担する債務の総額次第で変わってくる。
財政乗数の大きさ、世界経済、さらには構造改革が経済成長に及ぼす影響について非現実的なほど楽観的な想定を行えば、どんな債務でも帳簿上は消し去ることができる。しかし、それが続けられるのは、想定の誤りが露見するまでのこと。永遠に続けられるわけではない。
最新の景況感調査の結果はひどいもので、緊縮財政は2013年の経済成長に大変な悪影響を及ぼすという筆者の見立てに符合している。ギリシャを含む南欧の景気後退は恐らく、少なくとも2014年までは続くだろう。その頃になっても、GDP比の債務残高は現在のそれと似たような水準にあるだろう。
*1=先送りする問題のサイズを大きくした、の意
緊縮策を次から次へと何年もの間積み重ねれば、最終的には効くのかもしれない。だが、それは政治的な意味で非現実的な提案だ。例えばポルトガルは既に、合意されている財政赤字削減目標を達成するために、非常に貧しい人々への生活保護手当を減額している。
従って筆者は、危機はまだ解決されるはずだと信じているが、その状態にほんの数歩でも近づいている証拠は全くないと考えている。恐らく、ドイツの総選挙が終わった後でも、この状況は全く変わっていないだろう。
何も変わっていないのに楽観に転じたのはなぜ?
危機がひとりでに解決されることはないから、この状況の根本的な変化は全く見られない。これまでに変わったのは、本当に、短期的な事故のリスクをECBが取り除いたことぐらいなのだ。
これは次のように言い換えることができるだろう。事態を楽観的に見ている人は、現在の状況を流動性危機として扱っているに違いない。そして、半年前にもそう信じていたに違いない。そういう見方は間違っていると筆者は思うが、少なくとも、内部的には一貫性のある見解だと言えるだろう。
ただ筆者にどうしても理解できないのは、つい数カ月前に悲観的だった人が今になって楽観的になっているのはなぜなのか、ということだ。どなたか説明していただけないだろうか?
By Wolfgang Munchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36430
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