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MSもそっぽ 日の丸携帯の危機
2012年10月30日(火) 小板橋 太郎 、 白石 武志
米マイクロソフト(MS)が最新OSを搭載したスマートフォンの日本投入を見送った。海外大手に比べ販売量が2ケタ劣る国内メーカーは「存在意義」を否定された格好だ。進むに進めず、退くに退けない日本勢の凋落ぶりは最終段階を迎えている。
「その販売計画値でノキアやサムスンと同じタイミングで発売させてほしいと言っても無理です」――。
ある国内携帯電話メーカーの幹部は今夏、米マイクロソフト(MS)側からこんな通告を受けたという。「いい製品を作る自信はあるのだが、確かにノキアやサムスンと比べ、我々の1機種当たりの販売量はゼロが2つ違う」とこの幹部は肩を落とす。
この冬にも登場すると期待されていたMSの携帯電話用OS(基本ソフト)「Windows Phone 8」。北米や欧州、中国ではフィンランドのノキア、韓国サムスン電子、台湾・宏達国際電子(HTC)などの有力メーカーから11月以降、搭載スマートフォン(高機能携帯電話)が順次発売される予定だが、日本では販売が先送りされることになった。
「費用対効果合わない」
MSがWindows Phone 8を発表したのが今年6月。国内ではNTTドコモが今冬までの発売を表明し、KDDIも昨年8月に、1世代前のOS「Windows Phone 7.5」を搭載したスマホの販売実績があることから、発売が有力視されていた。
だが両社の冬の新製品発表会にWindows Phone 8搭載機の姿はなかった。ドコモの加藤薫社長は、10月11日の新製品発表会で「山田(隆持・前社長)が『冬には出す』と申し上げたが、いろいろな事情によって、少し遅れる。Windows Phone 8はパソコンやタブレット向けOSのWindows 8とも親和性があり魅力がある。これからも検討を続ける」と話した。
MSの論理は明快だ。ある関係者は「米グーグルのアンドロイドは無償OSだからいくらでも使わせることができるが、Windows Phone 8は端末1台ごとにライセンス料をもらう。お金をもらっている以上は十分なサポートをしなければならないし、技術のすり合わせも入念にしなければならない。販売ロットの少ない日本メーカーへの納入は費用対効果の面で折り合わない」と指摘する。
シャープ、富士通、NEC、パナソニック、ソニー、京セラ――。日本の携帯電話メーカーの世界シェアは2007年に14.2%を確保していたが、米アップルのiPhoneやグーグルのアンドロイドOSを採用した海外製スマホに押され、直近の世界シェアはわずか1.9%にまで落ち込んだ。
「1機種当たりの販売台数は10万台を超えればまずまず。20万台なら大成功」(国内メーカー幹部)。世界では、旗艦モデルである「GALAXY SIII」の1機種で世界販売台数が3000万台に到達しようというサムスンや、年間総販売台数が8000万台を超えるノキアがしのぎを削る。MSから見れば日本市場など「誤差の範囲内」なのかもしれない。
MSの「ジャパンパッシング」はメーカーにとどまらず、ドコモの新サービスの開発にも影を落としつつある。
アップルのiPhoneをソフトバンクモバイルが日本で発売したのが2008年。ドコモやKDDIはこれに対抗する形でアンドロイド携帯を投入し、「iPhone対アンドロイド」という構図が出来上がった。
その後、KDDIもiPhoneを販売するようになると、OSをグーグルに依存するのはドコモだけになり、その弊害が目立つようになっている。ドコモは新製品発表会で、複数の端末から利用できる「ドコモメール」などクラウド戦略の目玉となる各種のサービスを発表したが、新サービスに対応するのは最新のOSを搭載する機種などに限られる。
ドコモは古いOSを搭載したスマホでもバージョンアップなどによって最新のサービスを受けられるようにする考えだが、新製品発表会の時点で対応できたのは一部機種のみ。国内の事情とは無関係に進むグーグルのOS開発に、ドコモのサービス戦略が振り回されているように見える。
Windows Phone 8はこうした2大陣営に翻弄されてきた携帯業界に選択肢を与える「第3の軸」になる可能性もあるのだが、国内発売の延期によって、戦略見直しは必至の情勢だ。
今なお独立独歩に固執?
2000年代前半に10社以上あった国内携帯電話メーカーの数は、合従連衡によって現在、6社にまで集約が進んだ。ただし、撤退を決断したのはもともとシェアが低かった重電メーカーが中心。家電や情報通信大手同士の再編は手つかずのままで、業界関係者の間では「一段の再編は不可避」という声が根強い。
国内の電機大手でいち早く携帯電話市場に見切りをつけたのは2004年にカシオ計算機と設計開発部門などを統合した日立製作所だ。2010年にはNECとも携帯電話事業を統合。3社の事業を継承したNECカシオモバイルコミュニケーションズへの日立の出資比率は現在、10%弱まで低下している。
2008年にはFA(ファクトリーオートメーション)事業などの法人ビジネスに舵を切る三菱電機が携帯電話事業からの撤退を発表。事業を他社に譲渡することもなく、約600人いた携帯電話事業の従業員は別の部門に配置転換するという、文字通りの「完全撤退」で注目を集めた。
2010年には半導体と原子力発電プラントを事業の2本柱に据える東芝が富士通と携帯電話事業を統合。東芝はその後、富士通との事業統合会社から出資を引き揚げるとともに、携帯電話の開発拠点だった日野工場(東京都日野市)を閉鎖している。
こうした重電メーカーとは対照的に、家電やパソコンなどの民生機器を主戦場とする弱電メーカーは今もなお、独立独歩の携帯電話事業に固執しているフシがある。スマホが家電全体のキーデバイスとなる中、自社ブランドを容易には捨てられないという事情があるようだ。
ただし、各社とも海外展開には成功しておらず、いずれ縮小が避けられない国内市場にしがみついて事業を存続させているというのが現状だ。
ある機関投資家は「電電ファミリー時代からのつき合いに縛られ、キャリアからも端末メーカーからも撤退を申し入れることができず、互いの首を絞め合っている状態だ」と批判する。
日の丸携帯は、誰も決断をせず「生かさず殺さず」のままフェードアウトするつもりなのか。
小板橋 太郎(こいたばし・たろう)
日経ビジネス編集委員。
白石 武志(しらいし・たけし)
日経ビジネス記者。
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121026/238611/?ST=print
ダウンジャケットで「ユニかぶり」再来の恐怖
ロゴまでユニクロそっくり、西友の商品は売れるのか
2012年10月30日(火) 南 充浩
大手スーパーの西友が10月17日に発売したダウンジャケットが大きな話題となっている。ある一般週刊誌からこのことに関して電話取材を受けた。
ダウンジャケットについて言えば、既にユニクロが今秋冬のウルトラライトダウンの販売量を国内外で700万枚と見込んでいると発表している。今回発表した西友は昨年の2倍の売り上げを見込む。ユニクロのウルトラライトダウンの価格は昨年同様、5990円。一方、西友は2000円安い3990円で販売している。
西友が10月17日から販売しているダウンジャケット
西友はユニクロにそっくりなロゴを掲げ、このダウンジャケットの発売会見を行った。赤い正方形に白字のロゴが2段に並んでいるものだ。さすがに売り場ではこれを使わないというものの、「コピーだ」「パクリだ」との声が多数聞かれ、筆者自身にもそう見えた。きれいにいうと「ユニクロへのオマージュ、リスペクト」ということにでもなるのだろうか。
ユニクロのダウンジャケットを見ない日はない
はっきり言って軽量・低価格のダウンジャケットはもう飽和市場だと思う。今秋冬、ユニクロは国内外で700万枚の販売計画を掲げているが、もし計画通りに推移するとなると、一時期のフリースジャケットと同様にかなりの高確率で「ユニかぶり」現象が起きるが推測される。昨年の秋冬もウルトラライトダウンを着用した人を見ない日はないというくらいだった。
今秋冬で700万枚の販売計画なのだから、当然昨年の販売実績はそれよりも少なかったと考えられる。その状態で毎日数人以上のウルトラライトダウン着用者を大阪市内で見かけていたのだから、もし今秋冬、計画通りに販売されれば昨年の比ではないくらいの着用者を毎日見かけることになる。これはもう、フリースブームに沸いたころの「ユニかぶり」現象である。この「ユニかぶり」現象が影響し、つまりはフリースジャケットが行き渡りすぎて、フリースジャケットを起点とした第1次ユニクロブームは終わってしまった。
今回は、当時のようにユニクロの売上高が急減してしまうようなことはないと思う。しかし、フリースジャケットがファッション的価値を無くしたように、軽量ダウンジャケットがファッションアイテムではなくなり、ルームウェア・ホームウェア的アイテムになる可能性があるのではないだろうか。そうでなくてもユニクロのウルトラライトダウンはすでに複数年に渡って売られているのだから。
付け加えるならユニクロ以外にもイオン、イトーヨーカ堂などが昨年秋もかなりの数量の類似商品を店頭に出しており、今年もまた販売を開始している。ユニクロと大手量販店がこれだけ販売しているのだから、先述したように飽和市場であろう。
電話取材をしてきた一般週刊誌の方からは「西友のダウンジャケットのデザインどう思われますか。ユニクロそっくりですが」と尋ねられた。確かに、商品のデザインを模倣しているのではないかと感じられる要素がある。横1列に走ったキルティングの縫い目などはほぼ同じように見える。一方で、両脇のポケットの口にファスナーが付いているところなどがユニクロとは異なる。
西友のダウンジャケットを見て、「模倣デザインで便乗して売るつもりか」と受け取ることもできなくはない。しかし、個人的な印象で言うならそこまでの「積極的意思」はないと感じられる。むしろ「オリジナルデザインにしたら売れないかも」と消極的に考えたのではないだろうか。
例えば、軽量インナーダウンを業界に先駆けて開発したモンベルの昨年秋冬の商品は、縦横にマス目状の縫い目が走っていた。デザインは変えようと思えばいくらでも変えられるのである。
西友の場合、ユニクロほど莫大な販売枚数は見込んでいないだろうから「計画通りに売れれば良い」というあたりが落とし所ではないだろうか。
10月21日に西友に行って、実際の商品を触ってみた。ついでにユニクロのウルトラライトダウンも触って比べてみた。表地の生地はユニクロの方が滑らかで柔らかく、高密度で圧倒的に優れている。西友の商品は何だかパリパリした触感である。使用している糸は明らかに西友の方が太い。生地の触感だけで結論を出すのは性急だが、ユニクロのウルトラライトダウンの方が高品質だと考えられる。3990円くらいに値引きされればかなりお買い得感がある。
「ユニクロで売れているから」で後追いする量販店
量販店各社がユニクロの後追いをしてまで、どうしてダウンジャケットに固執するのか理解に苦しむ。すでに専門店・百貨店向けアパレルブランドでは、昨年秋冬物から「シンプル・ベーシックなダウンジャケットはユニクロには価格競争で勝てない」と考え、ウールコートやレザーブルゾン、ダウンジャケットを売るにしてもデザイン物へとシフトしている。今秋冬物でもその傾向は継続している。血眼になってユニクロの後追いをしているのは量販店だけである。
この疑問について、OEM事務所を経営する友人がこう指摘した。「カットソーやジーンズなどの年間活用できるアイテムは毎月の需要予測が難しいが、ダウンジャケットは前年実績ベースの需要予測を立てることが比較的ラクにできる」という。なぜなら、ダウンジャケットの需要は1月末でほぼおしまいだからだ。
2月は投げ売りされた商材がそれなりに動くが、3月には店頭から姿を消し、販売数量は確実にゼロになる。10月に店頭投入するにしても8月までに企画内容を決め、販売数量予測を立てれば良いわけだから、毎月需要を予測しなくてはならないカットソーやジーンズよりもある意味でラクだろう。しかし、これはダウン以外のフリースなどの防寒着にも共通していえることではないだろうか。
数ある防寒着の中で量販店各社がとくに軽量ダウンジャケットに固執する理由は「ユニクロが売れているから」以外に見つからない。「ユニクロが売れているから、同じような商品を提案している当社も売れるはずだ」と考えているのだろうが、実際はそうではない。
もしそうなら、今頃量販店各社の衣料品部門はとっくに復活しているはずだ。量販店各社はフリース以来、ユニクロの後追い企画しかできないことを世間に公表しているようなものである。量販店各社がユニクロの需要を奪いたければ、後追い企画ではなく、先んじて新企画を仕掛けることが求められる。
しかし、量販店各社の社員はそういう活動には向いていない場合が多い。なぜなら衣料品を扱いたくて入社する若者など昔も今もほとんどいないからである。筆者は昔、量販店系列の衣料品テナントチェーン店に勤務したが、その当時の専務は親会社の食品担当部門から出向してきた人だった。衣料品好きが集まることが良いとは思わないが、衣料品を扱いたい人間がほとんどいないとファッション的な企画はなかなかに難しい。
ダウンジャケットの話に戻ると、軽量・低価格ダウンは今後もそれなりに売れるだろう。ちょうどフリースジャケットが今でも販売されているのと同じように。しかし、ユニクロの商品も含めてそれらは「ファッションアイテム」ではなくなるだろう。ファッションアイテムとして注目されるのは、同じダウンジャケットでも中価格以上でデザイン変化のある物や高機能商品だけになるだろう。ただ、その数量はそれほど大きな物ではない。
残念ながら「ダウンジャケット=低価格品」という構図がそろそろ定着するのではないだろうか。近年の軽量・低価格ダウンジャケット販売戦争を見ていると、フリースの二の舞になるのではないかと思えてならない。
(この記事は、有料会員向けサービス「日経ビジネスDigital」で先行公開していた記事を再掲載したものです)
南 充浩(みなみ・みつひろ)
フリーライター、広報アドバイザー。1970年生まれ。洋服店での販売職・店長を経て繊維業界紙に記者として入社。その後、Tシャツメーカーの広報、編集プロダクションでの雑誌編集・広告営業を経て、展示会主催業者、専門学校広報を経て独立。業界紙やウェブ、一般ファッション雑誌などに繊維・アパレル業界に関する記事を書きつつ、生地製造産地の広報を請け負っている。
「糸へん」小耳早耳
普段、私たちが何気なく身に着けている衣服の数々。これらを作る世界では何が起きているのか。業界に精通した筆者がファストファッションから国内産地の実情まで、アパレルや繊維といったいわゆる「糸へん」産業にまつわる最新動向を鮮やかに切り取る。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121029/238721/?ST=print
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