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日本国債の回転木馬に現れた亀裂
2012年10月29日(Mon) Financial Times
(2012年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ふと立ち止まって考えると、日本の政府債務はかなり恐ろしいものだ。1000兆円を超える政府の債務と保証債務の残高は、国民1人当たり約800万円にもなる。
しかも、国内総生産(GDP)比235%に相当する残高は増え続けている。過去4年間、財務省は毎年、税収よりも多くの金額を国債発行で集めてきた。恐らく来年度もそうするだろう。
ディーラー側が財務省に要請した異例の会合
政府が物事をうまく回し続ける方法は、誰も立ち止まってこの状況について考えないようにすることだ。すべての国債入札は毎回、財務省が実施されると言った時に必ず行われる。2〜3カ月に1度、国債の発行で入札を義務付けられている有力債券ディーラー25社が財務省に招かれ、どうすれば発行プロセスを円滑に進められるか話し合う。
だが今回は、ディーラー側が自分の方から押しかけてきた*1。これは政府にとって非常に憂慮すべきことかもしれない。
赤字国債法案――2012年度(2013年3月までの会計年度)予算92兆円の約40%の資金を政府が調達することを認めるもの――を巡る政治的な行き詰まりが妥協以外のもので終わるとは誰も思っていない。
野田佳彦首相は総選挙を行うという今夏の約束を守るだろうし、野党は11月に臨時国会が閉会するまでに赤字国債発行法案を通過させるだろう。
結局のところ、誰も国の年金支払い能力を脅かしていると見られることは望んでいない。「政治家はそれほど馬鹿ではない」とある債券トレーダーは言う。
もし国債発行が停止されたら・・・
だが、日本の財政に当てられたスポットライトは熱くて不快なものだ。東京のディーラーは、それが本当に起きると思っていないとしても、来年1月に次の通常国会が開かれるまで国債発行が停止されるというシナリオと向き合わざるを得なくなっている。
1つの結果は、市場の頼みの綱である日本の大手銀行、生命保険会社、年金基金が、急激に限られたものになる資産のプールを追いかけることによって、国債価格が急騰することかもしれない。逆に、赤字国債発行法案が最終的に成立した後の大量発行で入札が失敗に終わるのではないかという不安に駆られて、国債価格が暴落することかもしれない。
*1=財務省と金融機関の会合は通常、財務省が召集をかけて開催されるが、10月26日の会合はディーラー側の要請を受けて臨時に開催された
どちらにしても、打撃は避けられない。だが、支出の凍結が日本の不安定な経済にさらなるダメージを与える――野村証券の試算では、場合によっては昨年の地震と津波の影響の3倍も厳しい打撃になる恐れがある――との理解が広がる日はそう遠くないかもしれない。このような事態になれば、それ自体が相場急落の引き金になる恐れがある。
外国人投資家の役割については言うまでもない。過去数十年間の大半の期間、外国人投資家は、日本の債券市場で通行人の役を演じてきた。今は、もっぱらユーロ圏危機からの安全な避難先を求めて資金が流れ込んでいるおかげで、外国人が日本国債のほぼ10分の1を保有している。
外国人投資家を遠ざけてしまうリスク
その資金の多くは、ただ短期国債に逃げ込んで、欧州で何らかの解決が見られるのを待っているだけだが、ボラティリティーが低いために珍重されている長期国債に流れ込んでいる資金もかなりある。価格下落に促されるにせよ、ただ価格下落への不安に促されるにせよ、そうした外国人投資家の資金が大量に引き揚げられれば、摩擦を起こす可能性がある。
三菱東京UFJ銀行の平野信行頭取は、今月東京で行われた国際通貨基金(IMF)のイベントでうまいことを言った。外国人が日本国債を買っているのは、日本国債が良い投資先だと思っているからではなく、「将来の安定した経済と恐らく安定した社会への期待」からだ、と述べたのだ。
東京で広がる不安は、世界最大の債券マシンがガタピシいう音に関心を引き付けることによって、政府が外国人投資家を追い払ってしまう恐れだ。
By Ben McLannahan
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36417
日銀よ、「“希望”リポート」を放て
市場が期待する「ハロウィーン緩和」の中味とは?
2012年10月29日(月) 松村 伸二
日銀はあす30日、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する。今年2月14日の「バレンタイン緩和」の際、事実上のインフレ目標となる「中長期的な物価安定の目処」を導入して以降、金融政策を担う日銀自身が先々の物価をどう見通すかに対し、市場の注目度は最高潮に高まっている。
日銀の玄関先に押し掛ける政治家たち
今回の展望リポートに対する最大の関心事は、初めての公表となる2014年の物価見通しだ。消費者物価(CPI)上昇率の先行きについて、日銀は最近まで「2014年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い」としてきた。このことは、「当面は1%」という物価安定の目処を、早ければ2014年にも達成する蓋然性の高さを示したものだった。
ところが、日銀は9月19日、大方の意表を突いて、国債の買い入れ額増加を柱とする追加金融緩和を決定。このとき、白川方明総裁は「10月の展望リポートを待たずに一段の金融緩和が必要と判断した」と明言した。その後、今月4〜5日の会合では追加緩和を見送ったものの、白川総裁は「(9月会合の時点で)景気、物価の基本シナリオを明確に下方修正した」と打ち明けた。
最近の白川総裁は「当面、ゼロ%近傍で推移する」(22日の日銀支店長会議でのあいさつ)と発言するなど、2014年度の物価見通しが「1%」に満たないことは確実視されている。
日銀自身が物価見通しを下方修正し、物価安定の目処の達成がなお見通せない以上、日銀は自らの判断で金融緩和を強化せざるを得ないということを、市場はすでに織り込み始めている。2月の「バレンタイン緩和」に続き、10月末に向けて街中で盛り上がりを見せるイベントを重ね合わせ、市場参加者は「ハロウィーン緩和」と名付けて期待を募らせている。
政治サイドからのプレッシャーもさらに大きくなっている。野田佳彦首相が17日に開いた臨時閣議で、関係閣僚に緊急経済対策の策定を指示したことを受け、日銀にも政策の足並みを一層そろえるよう圧力をかけた格好だ。
もっとも、指示した対策のうち、19日に締め切られた第一弾の事業規模は国と地方の財政出動を合わせ7000億円台。中小企業向けグループ補助金の増額や老朽化校舎の改修など、およそデフレ脱却や円高阻止に即効性のある対策とは言い難い内容だ。
結局のところ、目先の景況感を支える役回りが、引き続き日銀にゆだねられる構図に変わりはなさそうだ。今月5日の日銀金融政策決定会合に閣僚として9年半ぶりに出席した前原誠司・経済財政相が再度、会合の場に直接プレッシャーを掛けに来ることも考えられる。
「もっと積極的に金融緩和をしないと、日銀法を改正するぞ」。
円安を促す効果をもたらしたバレンタインデーの贈り物を野田政権へ送ったはずの日銀の玄関先には、政策運営能力を逸した懲りない政治家たちがゾンビに扮して押しかけようとしている。
政治サイドからの次のプレッシャーに日銀はどう応えるか?
「銀行券ルール」の形骸化で日銀株は27年ぶり安値
日銀は「国際的に見ても極めて緩和的な金融環境が実現している」(白川総裁)と強調する。中でも、中心的な政策手段として国債の買い入れを徐々に増やしてきた。政府が発行を増やす国債を、買い入れ策で消化してしまうことのないよう、長期国債の保有残高が銀行券(紙幣)の発行残高を超えないようにする「銀行券ルール」を日銀自ら定めてきた。しかし、今年8月、この約束事が事実上、破られた。
日銀がほぼ10日ごとにまとめる営業毎旬報告によると、日銀が保有する長期国債の残高は8月10日時点で80兆9697億円と、銀行券の発行残高(80兆7876億円)を初めて上回った。直近の10月20日時点では、長期国債の保有残高が83兆5791億円と、銀行券残高を約2兆9000億円上回る。ルールの対象外としている「資産買い入れ等基金」による臨時措置に伴う購入が増えていることが起因しているとはいえ、市場では財政規律の緩みを懸念する声が多い。
資産が膨れあがり、日銀のバランスシートの劣化を反映するかのように、日銀株(出資証券)の価格は今月半ばに3万1000円まで下落。1985年11月以来、約27年ぶりの安値を付けた。
不信感が広がって久しい政治の対応に比べれば、日銀はそれなりに身を切る政策判断をしてきたことを象徴する現象だ。
ポジティブ・サプライズをもたらす追加緩和策とは?
日銀の姿勢が評価されたとは言い難いが、市場の一部ではインフレ期待がにわかに高まってきている。
市場の物価予想を反映した代表的な指標に、日本相互証券が公表する「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」がある。固定利付国債の利回り(名目金利)から物価連動債の利回り(実質金利)を差し引いた値だ。物価連動債は流動性が低いため、BEIは必ずしも正確な期待インフレ率とは言えないが、2月に約3年半ぶりとなるプラス圏に浮上した後も上昇を続け、25日には72.0ベーシスポイント(=0.720%)と、約6年ぶりの高水準で推移している。
しかし、日銀があす、追加緩和に踏み切る場合の政策の中味について大方の市場の声を拾うと、10兆円規模の長期・短期の国債買い入れ増額や、社債や上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などの購入枠を2兆円程度拡大するといった、従来の延長線上の選択肢に限られているようだ。これでは、物価見通しを下方修正するという負の余韻の方が波紋を広げかねない。
たとえ「展望リポート」が物価と成長の先行きに不透明感を示したとしても、それを受けて、ポジティブ・サプライズをもたらすような政策発動につながることを市場は期待しているはずだ。仮に「“失望”リポート」と受け取られるようなことになれば、かえって円高に拍車を掛けかねない。
では、市場にポジティブ・サプライズを与えるような政策とはどのような内容だろうか。
金融界からは、アナウンスメント効果の重要性を強調しつつ、「日銀が金融緩和に対して常に積極的であるという姿勢を、(これまで)十分やったということではなく、これからも必要であれば継続していくという意思を示し続けることが大事だ」(全国銀行協会会長の佐藤康博・みずほフィナンシャルグループ社長)などと、将来に時間軸効果を波及させることが急務だとする意見が多い。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストも、市場にポジティブな意外感を誘う追加緩和の選択肢として、「長期国債の購入額を20兆円増額。長期国債の購入完了時点を2014年12月末まで延長」と指摘。来年1〜2月にも、国債買い入れオペ(輪番オペ)の増額に加え、「『1%程度のCPI上昇率が持続的に達成されたことが確認されるまで、長期国債を毎月X兆円購入する』などといった新たな金融政策のフレームワークが注目される」とみている。
「展望リポート」が、市場にポジティブ・サプライズを与えるような政策姿勢を打ち出すきっかけになる「“希望”リポート」と位置づけられることを、市場参加者の多くは願ってやまない。
松村 伸二(まつむら・しんじ)
日経ビジネス記者。
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121023/238484/?ST=print
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
ユーロ危機でフィンランドの「並行通貨」に現実味?
2012年10月29日(Mon) Financial Times
(2012年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ危機は依然くすぶり続けている〔AFPBB News〕
ここ数年、ユーロ圏の危機が次々展開する中で、世界の投資家はユーロ圏の端に位置する小国ギリシャに釘付けになってきた。投資家はもう1つの小国から目を離さないようにした方がいいだろう。フィンランドである。
というのも、フィンランドはまさにユーロ圏屈指の強国であるがゆえに、あまりドラマを生んでこなかったが、現在、興味深い議論がいくつか繰り広げられているからだ。
中でも注目すべきは、ユーロ圏の危機がくすぶり続ける中で、一部のフィンランド企業や政府高官が内々に通貨同盟から離脱する手順を検討していることだ。
フィンランドでは、いつかは離脱があり得るにせよ、近く実現すると思っている人はいない。実際、大半の政策立案者は離脱という考えに断固反対している。
だが、フィンランド地方自治体保証機関(MGB)を率いるヘイッキ・ネイメライネン氏は「我々は離脱プロセスを始めるという意味ではなく、ユーロ離脱の仕組みについてオープンに議論し始めた」と言う。そして、これが興味深い経済的議論に火をつけている。
小国ながら強いフィンランドが独自通貨を復活させたらどうなるか?
例えば、北欧の大手銀行ノルデアが最近出したリポートを見るといい。このリポートは、仮にフィンランドが「並行通貨」制度を導入することにしたら一体何が起きるのか、という問題を取り上げている。
ノルデアが説明しているように、この議論の裏にあるのは、ストレスがかかった時には、国が2つ以上の通貨単位を持つことが有益に見えることがあるという考え方だ。
中でも、どこかの国がある通貨から離脱しようとする場合には、当該国は一定期間、第2の通貨と併せて元の通貨を法定通貨として維持することで、古い契約を順守し、ひいてはテクニカルなデフォルト(債務不履行)を回避できるはずだ。
例えばギリシャの場合、一部のエコノミストが、正式なデフォルトを避けつつユーロから離脱するテクニックとして、ドラクマと並びユーロを法定通貨として維持する案を提起していた。このコンセプトは過去にも、ワイマール共和国(1923年)やソビエト連邦(1990年代初頭の崩壊時)、より最近では一部新興国などで使われたことがある。
だが、フィンランドではコンセプトが異なる。ギリシャのような国がユーロと並行して独自通貨を導入しようとしたら、政府は弱い立場で行動することになり、恐らく市民にドラクマの所有を義務付ける必要があるだろう。
だが、「フィンランドの自発的な離脱は、ギリシャの離脱とは異なる。均衡の取れた国家経済は、理論的に言えば長い移行期間にわたって2つの通貨を持ち、移行期間中は新しいマルカをユーロに対して1対1でペッグ(固定)できるかもしれないからだ」とノルデアは論じている。
何より、(強さに基づく)このシナリオの下では、フィンランドの中央銀行は事実上、どちらの通貨を使いたいか消費者や顧客に選ばせることができる。
「ユーロは自動的にマルカに転換されない。預金者が自分たちの預金をすべてマルカ建ての口座に移し、あらゆる取り決めの関係者が契約を修正し終えるまでは、すべての預金、債務、契約がユーロ建てのまま残される」とノルデアは書いている。さらに「移行期間の間は、フィンランド銀行(中央銀行)は売りでも買いでも、ユーロとマルカを1対1で交換する」という。
マルカが対ユーロで変動相場になるのは、もっと後のことだ。また、ユーロは理論上、法定通貨であり続けることもできる。
復活したマルカの行方
フィンランドのユーロ離脱が噂になると、フィンランドのユルキ・カタイネン首相(41歳)は否定してきたが・・・〔AFPBB News〕
この理論上のシナリオの下で、フィンランド人が手持ちのユーロを交換することを「選ぶ」かどうかは、マルカ相場がどこへ向かうと考えているかによって決まる。
現時点では、大半の投資家はマルカが急騰すると見るだろう。何しろこの1年というもの、フィンランドは安全な避難先と見られていた。
その状況が続けば、「投資家の大量移動が生じ、その結果、実体経済の状態が正当化する以上のレベルまで通貨が上昇する可能性がある」という。
しかし、別のシナリオを想像することもできる。2000年ごろまで、フィンランドは金融が不安定化する時期を何度か経験しており、新しいマルカ建て市場の規模の小ささが資本逃避を引き起こす可能性もある。
「ユーロ導入後にフィンランドに投資された資金の大部分は、安全なユーロ建ての投資先を探しており、主流でない小規模な通貨に伴う為替相場のリスクを取りたくないと考えている投資家の資金だった」。ノルデアはリポートでこう書いている。
「もし外国人投資家が去れば・・・フィンランド・マルカ建ての上場株式・債券市場の流動性が低下する一方、リスクプレミアムが上昇し、価格の大きな振れがより頻繁に生じるようになるだろう」
また、欧州中央銀行(ECB)が激しい相場変動を静めてくれることは誰も当てにできない。結局のところ、どんな並行通貨体制であれ、並行通貨の大きな問題の1つは、責任者が本来誰なのか(責任者が存在すると仮定しての話)、あるいは、誰が損失の責任を取るのかが不透明なことだ。
そう考えると、並行通貨が長期にわたってうまく機能した例がめったになく、厳格な資本規制なしで成功したことがないのも、さして意外ではないだろう。
さて、上記の通り、ノルデアのリポートのような議論はまだ仮説にすぎない。実際、フィンランドのある有力投資家は最近、ニューヨークの投資家たちに「経済界と政治家はユーロからの離脱を非常に恐れている・・・我々が離脱する可能性は低い」と話していた。
救済を嫌うフィンランドを忘れるな
だが、大半のフィンランド人が例のECBの救済策を忌み嫌っていることは覚えておいた方がいい。自国の歴史上、創造的破壊を受け入れてきたフィンランド国民は今、清教徒のような熱意をもってモラルハザードを憎んでいる。そして、ユーロ圏の危機が長引けば長引くほど、かつて想像もできなかったことを想像するのが容易になる。
もしかしたら、ECBのマリオ・ドラギ総裁は今こそヘルシンキを訪れるべきなのかもしれない。ほかのことはともかく、ノルデアのリポートは少なくとも、サプライズをもたらす力を持っているのは今やギリシャとスペインだけではないということを思い出させてくれるタイムリーな材料だ。
By Gillian Tett
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36411
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