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25日付け日本経済新聞1面紙面記事(7面に関連記事あり)が大変興味深いのです。
中国のレアアース対日輸出停止、損失拡大の誤算
需要急減、12年の生産半減へ
2012/10/25 2:00日本経済新聞 電子版
【重慶=多部田俊輔】中国のレアアース(希土類)最大手、内蒙古包鋼稀土高科技は24日までに一部工場の稼働を休止した。1カ月間、停止する。2010年の沖縄県・尖閣諸島を巡る日中対立で中国当局がレアアースの対日輸出を止めたことから、日本企業が代替品の開発を進め、需要が急減した。中国のレアアース生産量はピーク時の06年に16万トンあったが、今年は半減する見通しだ。
(後略)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2405X_U2A021C1MM8000/?dg=1
会員限定記事扱いなので全文引用を避けますが、中国が「外交カード」として対日輸出を止めたりしてきたレアアースの政治利用が、結果的に日本企業の驚異的な技術革新に火をつけてしまい、日本へのレアアース輸出が急減、中国企業がレアアース生産停止に追い込まれると言う、中国政府にとって大いなる「誤算」を招いてるということです。
10月4日付け毎日新聞記事も指摘していますが、2年前には効果的だったレアアース対日輸出規制ですが、「対抗措置として対日輸出を規制したが、今回はレアアースというカードを切っていない」、つまり驚異的な日本の技術革新の前に「外交カード」としての力を失いつつあるというのです。
レアアース:中国規制せず…日本の調達先分散で効果薄れ
毎日新聞 2012年10月03日 20時45分(最終更新 10月03日 23時54分)
家電製品やエコカーなどの素材として重要な資源である「レアアース」。日本への最大の供給元の中国は、10年の沖縄県・尖閣諸島沖漁船衝突事件で、対抗措置として対日輸出を規制したが、今回はレアアースというカードを切っていない。中国は00年代に世界の供給量の大半を握っていたが、大口需要家の日本企業などが代替品の開発や調達先の分散を進めた結果、需給バランスが変化し、輸出が減少したことが背景にある。今後の中国の対応が注目される。【北京・井出晋平、立山清也】
(後略)
http://mainichi.jp/select/news/20121004k0000m020049000c.html
さて、この毎日記事がデータソースにしている財務省貿易統計をもとに、この2年で起こっていることを数値でしっかりと検証いたしましょう。
財務省貿易統計
中国がレアアースの対日輸出規制のカードを切って日本経済が大慌てした2010年のレアアースの輸入先は以下の通りです。
通年ベースで総輸入量28564トンのうち中国が23422トン、82%を占めていました。
実はこれでも2009年まで中国からの輸入が90%を越えていた事を考慮すると中国のシェアは落ち始めてはいますが、それでも82%です、これが一時的に輸入停止されたのですから日本企業が慌てたのも無理からぬところでした。
あれから2年、日本は、中国以外の国からの輸入を増やすべく商社を中心にレアアース輸入国の多様化を進めつつ、自動車産業などはレアアースを使用しない代替の技術開発を驚異的なスピードで成し遂げていきます。
今年の1〜6月の半年のレアアースの輸入実績をもとに概算した2012年の通年輸入状況(見込み)は以下の通り、激変しています。
わずか2年のうちに、通年ベースで総輸入量28564トンが12204トンと約2/5に急減しつつ、中国の輸入シェアが82%から49%まで落ち込んでいることがわかります。
この2年で、日本は中国以外の輸入国を増やしながら、徹底的な技術革新でレアアースの輸入量そのものを大きく減らし、中国のシェアを大きく下げることに成功しています。
実際、数値で比較するとわずか2年で驚異的なことが起こっています、日本の中国からのレアアース輸入量に注目すると1/4に急減しているのです。
・・・
まとめです。
日経記事によれば中国のレアアース生産量は、ピークの06年の16万トンから今年は半減する見込みです。
現在中国のレアアース会社は約300社ありますが、約25%が稼動停止、操業中の企業も稼働率は3〜4割に低迷、「経営破たんした企業も出た」(江西省の企業幹部)という大変厳しい状況を招いています。
価格の下落も歯止めが掛からず、一部の中国企業からは「政府はレアアースの管理強化方針を放棄し、もっと市場に任せるべきだ」(日経記事)との政府批判も出始めています。
中国政府にとって大きな誤算となったのは、最大の輸入国であった日本が、これほど短期に驚異的な技術革新を実現し中国依存だけではなくレアアースそのものの依存からの脱却技術を相次いで実現し、中国からの輸入を2年で1/4まで減少させたことでしょう。
そしてこれらの技術革新は後戻りすることは決してない、それどころか日本ではさらなる技術革新が続いています、中国企業の願い虚しく、日本へのレアアース輸出量が回復することはまず期待できないでしょう。
中国政府はレアアース対日輸出禁止という「外交カード」を乱用したことで、日本企業に「チャイナリスク」の恐ろしさを気づかせそして本気にさせてしまったのです。
日本にとっても中国のレアアース対日輸出規制という「外交カード」を無効にしたことは、今後のよい教訓となることでしょう。
やはり資源のない島国日本は、高い技術力を維持し続けることが一番の「外交力」なのだとあらためて認識しました。
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