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「会計の崖」から落ちたシャープ(繰延税金資産の解説)
2012/10/26 (金) 14:44
突然ですが、「会計の崖」という言葉をご存じでしょうか?
言っときますが、「財政の崖」ではありません。多分、ご存知ありませんよね。もちろん知らなくて当たり前。そんなことを言う人は今まで誰もいなかったからです。
では、「会計の崖」とは一体何を意味するのか? 或いは、「税効果会計の崖」と言ってもいいかもしれません。
少し匂ってきましたか? そうなのです、繰り延べ税金資産が関係しているのです。
話がまどろっこしくなって恐縮です。会計の崖とは、個別企業が企業会計の不合理な扱いによって翻弄されることを言うのです。
例えば、来期は黒字であると予想されていた企業が、いきなり大幅な赤字に転落してしまうような‥
黒字から大幅な赤字に転落するということで、まさに崖から突き落とされたようなものなのです。そして、そうなった原因が税効果会計にあるので、「会計の崖」と呼びたいのです。
私は、何を言いたいのか?
今、国民から大いなる関心を持って見つめられているシャープ。一体全体シャープは生き残ることができるのか、と。
それほど心配されているシャープの2012年9月の中間決算における赤字が4000億円ほどに倍増しそうだというのです。
では、何故そのようなことになるのかといえば、主な理由は、繰り延べ税金資産を1000億円ほど
取り崩すためなのだ、と。
皆さんの中には、繰り延べ税金資産と聞いただけで、もうギブアップしている人がいるかもしれません。そうなんです、繰り延べ税金資産とか税効果会計って、難しのです。
では、繰り延べ税金資産とは何か?
分からないならネットで調べればいい。その気さえあるなら、そして労を惜しまないのであれば、だいたいの意味はすぐ分かります。
例えば、次のように説明されているのです。
・繰延税金資産は、税効果会計を適用した際に認識される資産
うーむ‥これでは何も分からない!
・企業会計上の費用が税務上の将来減算一時差異(当期には税務上の損金と認められないが、
将来時点では損金と認められる費用)として否認され、税務上の課税所得や納付税額が増加する場合に生ずる資産
益々分からない!
では、何と説明したらいいのか?
皆さんは、企業会計というのと税務会計という二つの会計があるのをご存知でしょうか?
企業会計とは、一般的な企業会計のことであり、それに対して、税務会計というのは、徴税の観点から認識される会計です。
では、これらの二つが具体的にどう違うかと言えば、企業会計の方は、企業の利益を合理的に、そして客観的に認識しようとするのに対して、税務会計の方は、課税を確保する観点から利益を幅広く捉える傾向があるのです。例えば、企業の方からは、ある支出が営業のための必要な経費(損金)だと主張しても、税務署の方からみれば、そのような支出が簡単に経費(損金)として認められるとは限らないのです。
もし、税務署がなんでもかんでも経費(損金)として認めてしまえば、どんなに儲かっている企業の利益も限りなくゼロに近づいてしまうのです。
ということで、企業の側からみれば経費扱いされてしかるべき不良債権の償却処理についても、国税当局が示す厳格な要件を見たしていなければ損金扱いされることがなく、課税所得が膨らむことになるのです。
で、そうして課税所得が大きくなればなるほど支払う法人税の額も大きくなり‥そうなると、当然のことながら当期純利益が小さくなってしまうのです。何故かと言えば、当期純利益は、法人税等の税金を支払った後の最終利益であるからです。
しかし、利益の額が小さくなったり、或いは赤字になったりするのは、企業の経営者としては、受け入れたくない、と。
それはそうでしょう。赤字になれば、経営者の責任問題に発展してしまうからなのです。それに、
本当に赤字になったと企業経営者自身が認識しているのであればともかく、そうやって税務署との認識の違いで多額の法人税を支払ったから赤字になったというのでは、黙っている訳にはいかないのです。
だってそうでしょ?
沢山法人税を納めているのに赤字になっているなんて、どう考えてもおかしいのです。
一方、税務署の方は、税金さえ支払ってもらえば、後はどのような当期純利益になろうとも痛くも痒くもない訳ですから、当期純利益の計算については、企業側に任せているのです。
ここで、繰り延べ税金資産を整理してみます。
・企業が、例えば不良資産や不良在庫を償却した結果、企業会計上の利益がゼロになったとする。
・では、利益がゼロになったから法人税は支払わないで済むのか?
・税務署は、企業の利益(課税所得)を税務署の観点で認識する。つまり、費用(損金)を厳しく認定するため、企業の利益がゼロではなく大きな黒字になることが起こり得る。
・その結果、企業は、税務署の認定した課税所得に従って税金を納める。
・このため、企業会計上の利益はゼロでありながら法人税を支払い、当期純利益が赤字になって
しまうことがあり得る。
・一方、企業は、当期に実施した不良債権等の償却処理が、将来、経費(損金)として認められる可能性がある。そうなれば、そうして認められた額だけその期の利益が圧縮され、従って、その期に納める税金の額が減額される。
・ということになれば、当期に支払った税金は、将来に支払うべき税金を前払いしたものだと認識することができる。従って、その前払い分を繰り延べ資産として計上することができる。
・繰り延べ税金資産が計上されれば、その分、当期純利益が膨らんで見える。
如何でしょう? 繰り延べ税金資産の意味が少しはお分かりになったと思うのです。
ここで話はシャープに戻りますが、では何故シャープは、過去に計上した繰り延べ税金資産を取り崩す必要があるのか?
実は、繰り延べ税金資産は、資産という文字がついているのですが、その資産の性格が大変ファジーなものであるのです。
例えば、通常の資産は、当然のことながら他人に売却して、お金に換えたりすることも可能です。
一方、この繰り延べ税金資産というのは、将来の税金を差し引いてもらう権利とでも認識していい訳ですが、当然のことながら他人に売却することできる権利ではないのです。
しかし、問題はそれだけではないのです。この資産は、将来当該企業が利益を計上し、税金を納めることになって初めて意味を有するものであるので、仮に将来赤字が続き税金を納める必要もないとなれば、その繰り延べ資産が用をなすこともないのです。
つまり、シャープは当面、黒字に転換するようなことはなかなか期待できないと思われるために、繰り延べ税金資産を計上することが適当ではないと判断されているのです。
結論を言います。
将来も確実に黒字が継続するとみられる企業であれば、こうした繰り延べ税金資産を計上しても殆ど心配することはないでしょう。
しかし、将来も赤字が続くであろうと思われるような企業が繰り延べ税金資産を計上することは、
投資家のみならず自分たちをも欺くことになるのです。
何故ならば、本来計上すべきでない繰り延べ税金資産を計上した分、その期の利益がかさ上げされて見えるからです。
そして、そうして繰り延べ税金資産という名の資産を一時計上したとしても、将来黒字に転換する
可能性がないと思われるとそうした資産の取り崩しが求められ、そうなると企業業績が一気に悪化してしまうのです。
過去、りそな銀行が繰り延べ税金資産を否定されて、一気に自己資本比率が低下し、国有化される原因にもなったのです。
繰り延べ税金資産の計上を認めれば、取り敢えず決算を取り繕うことができるのかもしれないのですが、その代り後日却って大きなツケを支払わされることが多いのです。
以上
http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2012/10/26/017459.php
米国の量的緩和策第3弾以降、長期金利が上昇しているという事実
2012/10/25 (木) 13:29
米国の公開市場委員会が、昨日、これまでの金融緩和策を維持することを決定しました。
つまり、これからもゼロ金利政策と、長期国債や住宅ローン担保証券の購入を続けるということになったのです。
まあ、景気の現状からすれば、そうした結論に至るのも当然でしょう。まさかこの時期に金融引き締めに転じる訳にもいかない訳ですから。
いずれにしても、9月に決定した量的緩和策第3弾の効果がどうなっているかということなのですが、貴方はどのようにお思いになるでしょう? というよりも、次のような問いを私は投げかけてみたくなるのです。一体全体、量的緩和策、言葉を換えれば、長期国債を連銀が購入することの目的は何なのか、と。
さあ、如何でしょう?
もちろん量的緩和策、つまり長期国債を購入することは、景気を下支えること、ひいては雇用の回復を目的としたものなのですが、では、どのようなメカニズムで景気を下支えすることができるのか?
如何です?
私、日銀にさらなる緩和策を求める与党野党の政治家のなかで、この問いに納得のいく説明を与えることができる人がどれだけいるのか、と思うのです。
前原大臣はどう答えるのか? 安倍総裁はどう答えるのか?
これが日本の場合であれば、多分政治家は次のように答えると思うのです。
「デフレから脱却させるため」
では、どうやってデフレから脱却させることができるのか?
「中央銀行が大量に長期国債を購入すれば、市場に出回る通貨の量が増えるから必ず物価が上がるはずであり、そうなればデフレから脱却できる」
貴方も、そのように考える口ですか?
では、米国についてはどうなのでしょう。
米国では今は誰もデフレのことなんか心配はしていません。というよりもインフレになっては困ると心配する人が多いのです。だから、そのような観点で連銀が行っている長期国債の購入策についても批判されることが多いのです。
そのような状況にあって、何故FRBは長期国債の購入を行うのか?
もちろん、彼らは予め批判を予想して、インフレが起きる恐れは殆どないと言うのです。
その点は、私も異論はないのですが、だからといって何故長期国債を購入するのか?
バーナンキ議長の答えは、そうして連銀が長期国債の購入を行うことによって、長期金利の低下が促され、従って、景気の下支えができるからというものなのです。
私としては、日本の場合にも、もっと長期金利を引き下げることが景気を下支えするために必要だからと言うのであれば、それなら理屈がとおると思うのですが、実際には、今の日本の長期金利が高すぎ、それが景気回復の足かせになっているという主張は殆ど聞くことがないのです。(実質金利でみると高いから、という議論は稀に聞きますが‥)
では、再び米国の方に話を戻すとこととして‥米国では9月13日のQE3決定以降、バーナンキ議長の思惑通り長期金利が低下しているのかと言えば‥次の数値をご覧いただきたいと思うのです。
<米国の10年物国債の利回り>
9月4日 1.59%
9月5日 1.60%
9月6日 1.68%
9月7日 1.67%
9月10日 1.68%
9月11日 1.70%
9月12日 1.77%
9月13日 1.75%
9月14日 1.88%
9月17日 1.85%
9月18日 1.82%
9月19日 1.79%
9月20日 1.80%
9月21日 1.77%
9月24日 1.74%
9月25日 1.70%
9月26日 1.64%
9月27日 1.66%
9月28日 1.65%
10月1日 1.64%
10月2日 1.64%
10月3日 1.64%
10月4日 1.70%
10月5日 1.75%
10月9日 1.74%
10月10日 1.72%
10月11日 1.70%
10月12日 1.69%
10月15日 1.70%
10月16日 1.75%
10月17日 1.83%
10月18日 1.86%
10月19日 1.79%
10月22日 1.83%
10月23日 1.79%
(資料:FRB)
これでお分かりになったように、確かに9月末にかけて長期金利が1.6%台にまで下落した局面があるのですが、その後は、再び以前の水準を上回っているのです。
それに、今言ったように一時期長期金利が低下したことについても、その主な原因は、ユーロ危機が意識されたことによるものと解釈した方がよさそうに見えるのです。
いずれにしても、このようにして中央銀行による長期国債の購入が如何なる意味を有するのかがはっきりとしないまま、米国や日本では中央銀行による長期国債の買入れが続けられているのです。
このように私が言うからと言って、私も、そのような措置の結果、自国通貨安を引き起こす効果があるということは、十分承知をしているのです。
でも、中央銀行による長期国債購入の狙いは、自国の通貨価値を引き下げ、それによって輸出を促進することにあるというのであれば、それならそれで堂々とそう宣言すべきではないでしょうか?
でも、実際には、バーナンキ議長を含めFRBとしては、今の金融政策が通貨安を引き起こすことを狙いとしているなんてことは一言も言っていないのです。
いずれにしても、長期金利を強引に下げようと思って中央銀行が長期国債の購入に動けば動くほど、インフレ懸念が高まり、そしてその結果長期金利はむしろ上がってしまうということがあるということを忘れてはならないのです。
それにしても、米国では、このように長期金利はむしろ上がるような状況になっているのに、誰も文句を言う人がいないのは何故なのでしょう?
結局、今のアメリカの長期金利の水準は十分に低いと認識しているからで、それ以上下げることがどうしても必要なんだ、なんて考えている人は殆どいないのでしょう。
http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2012/10/25/017443.php
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