自然利子率についての誤解 〜塩崎も 世界は財政緊縮先送りへ
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/239.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 24 日 02:26:32: cT5Wxjlo3Xe3.
民主党政権はもう余命いくばくもないので、世間の関心は次の政権が何をするかに移っている。安倍内閣の官房長官をつとめた塩崎恭久氏は、次の政権のキーパーソンの一人だろう。日銀出身の彼が合理的な経済政策をとれば、日本経済も立ち直れるかもしれない――と思っていたが、きょうの現代ビジネスで彼がこう書いていたのには唖然とした(テクニカル)。 成長率や物価上昇率がマイナスになれば、政策金利を「マイナス金利」とすることは不可能であることから、財市場での均衡をもたらす名目金利(自然利子率)より政策金利の方が高い状態が続くことになる。つまり、金融緩和が不十分ということになるわけだ。
論理的には、日銀がやるべき事は、「政策金利を下げる」か「予想(期待)物価上昇率を上げる」か「自然利子率を上げる」かのいずれかの政策、もしくはそうした政策の組み合わせということになる。
これは学生の答案なら0点である。肝心の
自然利子率の定義を間違えている上に、それを日銀の操作変数としているからだ。自然利子率r
nはインフレもデフレも起こらない
均衡実質金利であり、次のように定義される:
r
n=ρ+σ
-1G
p
ここでρは時間選好率、σはリスク回避度、G
pは潜在成長率である。これらはすべて
実物変数なので、自然利子率は実物要因だけで決まり、日銀が操作することはできない。これはさらにρがG
pに比べて相対的に小さく、σが1に近い場合は、
r
n≒G
p
と近似できる。つまり自然利子率は潜在成長率に近い。日銀が潜在成長率を上げることができないのは、いうまでもないだろう。もちろん政策金利を動かすことによって実質金利を自然利子率に近づけることはできるが、
流動性の罠では両者を同一にはできない。
自然利子率を上げることは重要だが、そのためには生産性を上げるしかない。政治家が「**さえやれば日本経済は回復する」といいたいのはわかるが、現在の日本の不況は欧米のような金融危機ではなく潜在成長率(生産性上昇率)の低下だから、即効薬はないのだ。「安倍総裁は2%程度のインフレ目標を示唆している」そうだが、目標を設定することとそれを実現することは別だ。いっそ「潜在成長率2%」を目標にしてはどうだろうか。
「経済」カテゴリの最新記事
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51818226.html
世界は財政緊縮先送りへ
2012年10月24日(水)
松村 伸二
、
馬場 燃
48年ぶりに東京で年次総会を開いた国際通貨基金(IMF)・世界銀行。世界景気に回復の兆しがうかがえず、積極的な財政健全化路線を軌道修正した。「脱・緊縮」は消費税増税など日本の財政再建の議論を揺さぶりかねない。
「力強く立ち上がっている東北の方々の勇気と協力の精神はまさに今、我々が必要としていることだ」
国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会期間(9〜14日)の最初に開いた関連会合の「防災と開発に関する仙台会合」に出席したクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事は仙台市の被災地を視察した際、復興に携わる人々の姿を、世界経済の立て直しに向けた各国の取り組みに重ね合わせた。
ラガルド氏が世界経済に対して協力的と評価したのが日米欧の中央銀行だった。欧州中央銀行(ECB)が南欧諸国などの国債を新たに買い取る策を決定したほか、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)を導入。日銀もこれらに呼応して資産買い入れ基金の増額を決めるなど、総会直前の9月に中央銀行の政策変更が相次いだ。
ただ、ラガルド氏には協力的な行動がなお一部にとどまると映るようだ。「もっとたくさんのプレーヤーの参加が必要で、協力的なゲーム展開によって参加者全員が得をする『プラスサム・ゲーム』に持ち込むことができる」。
言うまでもなく、視線の先には欧州がある。ユーロ圏の債務危機は小康を保っているとはいえ、スペインの銀行問題などの火種がくすぶり続ける。日本開催の総会の主役を演じたのはやはり欧州だった。
欧州問題がもたつく間に世界経済は減速感を強めている。IMFは総会に合わせて発表した2012〜13年の世界経済の成長率見通しを前回7月時点から下方修正した。世界全体では2012年が7月より0.2ポイント低い3.3%、2013年も同0.3ポイント低い3.6%とした。主要国で修正幅が大きかったのが欧州。ユーロ圏は2013年に同0.5ポイント低い0.2%に落ち込む見込みだ。
日本は2012年が同0.2ポイント低い2.2%、2013年が同0.3ポイント低い1.2%。来年に向けた落ち込みが目を引く。
中国やインド、ブラジルなど、リーマンショック後に世界経済の回復を牽引してきた新興国の成長鈍化も鮮明になり、欧州問題が次の段階に入りつつあることを強く印象づけた。
債務問題でも「フロントランナー」
IMFもこれまでの財政再建路線を軌道修正し、景気配慮の姿勢を示し始めた。諮問機関の国際通貨金融委員会(IMFC)がまとめた共同声明は、財政健全化などの政策課題について「効果的かつタイムリーな実施が重要」と指摘。財政再建のペースについては各国で判断すべきだとの考えを示し、アクセルを緩めることを認めた。
特に米国に対しては、年末から訪れる大型減税の期限切れや歳出の強制削減が米経済に悪影響をもたらすという「財政の崖」を回避するよう要請。バラク・オバマ米大統領の主要経済スタッフだったピーター・オルザグ・米シティグループ副会長も米財政再建について「景気刺激策を先にやって、労働市場をまず強くしてからだ」と主張した。
もっとも、緊急避難の措置とはいえ、この「脱・緊縮」の国際協調ムードが広がれば、日本の消費税増税の議論が大きく揺れ動く可能性がある。
衆院解散後の次の首相候補として取り沙汰される、自民党の安倍晋三総裁がデフレ下での増税に慎重な姿勢を示すなど、与野党の中には増税への慎重論が潜む。IMF総会開催直前の内閣改造で急遽、ホスト国の財務相に就いた城島光力氏も、中長期的に経済成長と財政規律の2つを進める必要があるとしながらも、「景気を下支えするためにも、財政政策を通じた景気刺激策を取ることも必要だ」と述べ、IMFの姿勢に歩調を合わせる格好になった。
これには反論もある。財務省の中尾武彦財務官は総会の関連会合で、過去20年もの間、低成長が続いた背景にある債務問題でも日本を「フロントランナー(先頭走者)」と位置づけ、「財政の持続可能性を高めることが強い政府の機能の基礎」と力説した。
アピールの好機を生かせず
確かに日本もデフレによる景気低迷に長らくあえいでいる。しかし、海外投資家の間では、欧州や新興国の景気失速に比べた経済の安定性による消去法的な日本国債のニーズがうかがえて久しい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121019/238282/02.jpg
右のグラフにあるように、GDP(国内総生産)比で200%をはるかに超える、突出した日本の公的債務残高の多さが懸念される中で、日本も財政再建の先送りに安易に流れれば、日本国債の格下げ観測が再燃し、日本売りを浴びかねない。
世界経済が曲がり角を迎え、欧州を中心に金融システムが綻びを見せる中で迎えた48年ぶりの東京での総会。バブル崩壊をくぐり抜けてきた日本が存在感を示す好機だったとも言える。しかし、せっかくの機会を逃してしまったという指摘もある。
「結局、日本の金融界にソフトバンクの孫正義社長やファーストリテイリングの柳井正社長のようなカリスマがおらず、日本の立場や主張をアピールする好機を生かせなかった」。邦銀出身のある物流機器幹部はこう断じる。
あるメガバンク幹部は、日本が国際的な金融センターとして存在感を高めるには「アジアの債券市場の整備を先導するなど、中国を中心とした周辺国との関係強化が欠かせない」と話す。
しかし、その中国金融関係者は、尖閣諸島問題などによって訪日をやめた人も少なくなかった。「世界に対し日本が中国と金融市場で“協調”できるとメッセージを発する総会にできたはずだが、実際には足元で円と中国人民元の直接取引が陰る悪影響が出ている」(メガバンク幹部)という。
11日に東京都内で講演した東芝の西田厚聰会長は円高や高い法人税率といったこれまでの「六重苦」に加え、「日本企業にとって、(尖閣諸島の国有化をきっかけに)中国リスクが七重苦になり、将来の設備投資計画が立てにくくなった」と語った。
東日本大震災からの復興を世界にアピールするなど、日本開催の総会が果たした役割は小さくはない。しかし、晴れやかな舞台は、日本経済が直面する課題もまた浮き彫りにした。
松村 伸二(まつむら・しんじ)
日経ビジネス記者。
馬場 燃(ばば・もゆる)
日経ビジネス記者
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:
次へ 前へ
▲このページのTOPへ
★阿修羅♪ > 経世済民78掲示板
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/
since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの
引用、転載、リンクを許可します。
確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
▲このページのTOPへ
★阿修羅♪ >
経世済民78掲示板