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アフリカ経済:サブサハラの活況
2012年10月24日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年10月20日号)
サハラ以南のアフリカの活況が先進国から商才に長けた人材を引き付けている。
ある若いアナリストはロンドンの会議でスピーチした後、聴衆の中にいた投資会社の幹部と雑談した。それから幹部2人の後について近くのホテルのロビーに行った。シャブリのグラスを傾けながら、この幹部たちは、世界各地にある自社の贅沢に装飾されたオフィスや多額のボーナスについて熱弁を振るった。そして、このアナリストに仕事の誘いを持ちかけた。
アナリストを驚かせたのは、彼らの興味でも多額の給与でもなく、彼らが手持ちの数百万ドルを投資する手助けをしてほしいと希望した場所だった。貧しい大陸の最も発展の遅れた地域、西アフリカである。
かつてのフランクフルトや東京のように投資家が殺到
投資家はここ数年、あたかもかつてのフランクフルトや東京であるかのように、ラゴスやナイロビに大挙して押し寄せた。先進国で成長が停滞しているため、サハラ以南のアフリカは、資金とその運用担当者にとって魅力的な投資先になっている。
外国からの直接投資は2005年以降、約50%増えた。かつては賭博場だと考えられていた現地の資本市場は、今はリスクが低下しているように見える。JPモルガンは、自行の新興国国債指数にナイジェリアを加えたばかりだ。これまでこのリストに載っていたアフリカの国は南アフリカだけだった。
ナイジェリアに流れ込む資金は、お粗末なインフラの整備に回される見込み(写真はナイジェリア・ラゴスの交通渋滞)〔AFPBB News〕
新興市場債券の引き受け業務で世界最大の銀行であるJPモルガンは、自行のベンチマークにナイジェリアの債券を加えたことで、同国に新たに15億ドルの資金が流れ込むと予測している。
新たな資金は、中国、インド、日本、米国、メキシコ、欧州を合わせた大きさに匹敵する広大な土地を持つアフリカ大陸で、これまでなきに等しかったインフラに注ぎ込まれるだろう。
ビジネスマンの中には、アフリカの長期見通しにまだ懐疑的な人もいる。アフリカの「黄金期」を声高に叫ぶ欧米金融界の宣伝文句は誇張されている。
現地の経営者が派手な車を運転しているとしても、ほとんどのアフリカ人は今も貧しい。本当に悲惨な国々は今も窮状から抜け出せず、ささやかな繁栄でさえ近い将来に達成できる可能性は小さい。最近の調査では、食糧危機を経験する「リスクの極めて高い」世界11カ国のうち、9カ国がアフリカ諸国であるとされていた。
だが、懐疑論者でさえ、アフリカの最新の見通しが明るいことは認めている。国際通貨基金(IMF)は、アフリカ大陸の国内総生産(GDP)が今年5%増加すると述べている。従来予想の5.4%よりは低いが、それでも他の大部分の地域よりはるかに急速な成長だ。2013年には、成長率は5.7%に上昇する可能性がある。
先進国でさらなる経済問題が出てきた場合には、南アフリカに打撃を与える可能性があるが、それより北のアフリカ諸国はそれでも好調が続くだろう。
アフリカ大陸が1つの国なら、既に「中所得国」
世界銀行の2人のエコノミストによる新たな調査報告書は、アフリカが1つの国であったなら、アフリカは既に、国民1人当たり所得が1000ドル超という世界銀行の定義による「中所得国」になっていると述べている。
アフリカ全体の平均所得は1700ドルだ。サハラ以南のアフリカでは、22カ国がまだ極めて低いと認めざるを得ないこの中所得国の基準を超えている。これらの国々の人口は合わせて4億人に上る。その中には、最近まで何年にも及ぶ流血の惨事で荒廃し、不平等がはびこるアンゴラやスーダンといった異常な国々も含まれる。
上述の世銀エコノミストのうちの1人、ウルフガング・フェングラー氏は、アフリカの経済発展の4つの要因を特定している。1つは、アフリカ大陸が正しい人口増加を経験していることだ。大半のアフリカ人は次第に寿命が延びる一方、子供の数が減っており、その逆ではない。
国連は、2055年にはナイジェリアが米国を抜いて、インド、中国に次ぐ3番目に人口の多い国になるが、人口増加と同時に出生率が低下する可能性があると述べている。
携帯電話の登場で、電話の普及率が一気に高まった(写真はナイジェリア・ラゴス市内)〔AFPBB News〕
2つ目は、急速な都市化で効率が改善し、首都に投資が引き付けられていることだ。これらの首都は繁栄し始めており、人口密度の高まりで輸送時間が短縮され、小規模な工業化が促進されている。
3つ目は、非常に低い地点から出発したために、科学技術がどの地域よりも大きな影響をアフリカに与えていることだ。
電話を利用する人口の割合は過去10年間で急増し、固定電話回線がひどかった時代の0.7%から、携帯電話の登場により70%まで上昇している。アフリカは、特にほとんどの人が伝統的な銀行業務を利用できない状態のため、携帯端末による銀行業務で世界的な草分けになっている。
4つ目の要因は、役人による統治や経済運営が、これまた非常に控えめな出発点から、改善していることだ。アフリカのソブリン債の人気が高まっているのは良い兆候だ。
「現在の傾向が続けば、2025年にはほとんどのアフリカ諸国が中所得国になるだろう」とフェングラー氏は言う。だが、同氏は、状況は難しくなると警鐘を鳴らす。最近の成長の多くは、よく知られた西側やアジアの考え方や慣行が根付くのに伴って遅れを取り戻すキャッチアップだった。
カネ儲けをする最も簡単な方法が既に開拓されてしまったと言う人もいる。今の急成長を持続させるつもりなら、アフリカはこれから、依然時代遅れのインフラを整備し、企業を多様化させる必要がある。そのためには、2つのことが是非とも必要になる。より多くの資本と熟練労働者である。
どちらも、金利が低く、雇用見通しが暗い西側にふんだんに存在する。そのため、ロンドンやニューヨークでアフリカ投資会議が急増しているわけだ。アフリカのどこなら工場を建設できるのかとか、どこなら債券を買えるのか、といった話で持ち切りだ。
アフリカで働く人材を探せ
だが、同じように優先度の高い話題は、アフリカを含め、世界中から人材を確保することだ。運用担当者たちは、引き抜くための人材や、アフリカで役立つ可能性のある、他の新興市場での経験を持つ投資専門家を求めてランチテーブルを探し回っている。
ウォール街の大手企業のある幹部によると、アフリカで職に就いた場合の給与は過去1年間で30%増加しているという。
「アフリカ大陸は本格的に離陸しつつあるが、カネ儲けをするにはまだ用心しなければならない場所だ」とこの幹部は言う。「政治リスクが高く、契約を履行するのが難しい。成功はしばしば、現地市場の魅力よりも人材の質に負うところが大きい」
西側の有力ビジネススクールもこのゲームに参加している。ロンドン・ビジネス・スクールは5月、植民地時代の記憶がまだ新しかった時代には考えられない「アフリカ:テイキング・オーナーシップ」という題名の付いた「アフリカデー」を開催した。
フランスのINSEAD(インシアード)には、アフリカ大陸に移住したいと思っている元経営コンサルタントや投資銀行家でいっぱいのアフリカクラブがある。「あまり経験がなくてもシニアレベルで働ける機会」を彼らが嗅ぎつけているからだとある人は言う。彼らにとって、「アフリカは10年前のインドや中国のようなものなのだ」。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36375
欧州の新たな首都ベルリンへようこそ
財政支援の代償はドイツで定めた規則の順守
2012年10月24日(Wed) Financial Times
(2012年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ブランデンブルク門などは、プロシアの王の遺産〔AFPBB News〕
ドイツの首都ベルリンは帝国都市のような感じはしない。首相府や連邦議会、外務省などの新しい庁舎は、透明性と民主主義を強調するために、ガラスと自然光をふんだんに使った設計になっている。
確かに、財務省はドイツ空軍の旧本部ビルに入っている。だが、ウンター・デン・リンデンやブランデンブルク門などの最も荘厳な建造物の大半は、プロシアの王たちの遺産だ。近代ベルリンはより快適な趣を備え、観光客を引きつける場所になった。
だが、ベルリンは意図的に帝国の象徴を避けてきたものの、実際のところ、ベルリンは次第に欧州連合(EU)の事実上の首都になっている。もちろん、EUの主要機関である欧州委員会と欧州理事会はブリュッセルに本部を構えている。だが、重要な決断は次第にベルリンで下されるようになっている。
ブリュッセルからベルリンへ権力が移転
ギリシャはユーロから離脱しなければならなくなるか? これは最終的にドイツが判断する問題だ。政治家は南欧諸国に対する追加の救済策を支持するか? これに関する極めて重要な議論は、欧州議会ではなく、ベルリンの連邦議会で行われることになる。
国際通貨基金(IMF)がユーロ危機に関して電話する相手は誰か? 最も重要な対話は、欧州委員会ではなく、ドイツ政府およびフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)との間で行われる。
このようなブリュッセルからベルリンへの権力の移転は、ユーロ危機によって加速された。当然、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はまだブリュッセルの首脳会議に参加し、合意をまとめなければならない。先週もブリュッセルに行ったばかりだ。だがユーロ危機は、メルケル首相が今、交渉のテーブルで飛び抜けて重要な指導者であることを意味している。
規模が大きいその他EU諸国の指導者は皆、様々な理由から弱い立場でブリュッセルを訪れる。スペインとイタリアは自国の債務危機に苦しめられている。それゆえ両国は嘆願者となった。
英国は単一通貨に参加しておらず、ユーロ圏が計画している新たな仕組みへの参加も見送った。それゆえ英国は隅に追いやられている。ポーランドもユーロに参加していないうえ、経済規模が比較的小さい。
となると、残るはフランスだ。伝統的に、EUのどんな取り決めでも仏独同盟が軸となっていた。長年にわたり、EUの首脳会議に先立って、仏独首脳会議が別途開催され、両国による共同書簡が出された。
ニコラ・サルコジ前大統領がまだエリゼ宮の主だった頃、メルケル首相との関係があまりに緊密だったため、「メルコジ」という言葉が欧州の支配的なコンビを指す略語となった。
当時でさえ、仏独同盟に懐疑的な人はいた。あるEU幹部は「フランスは自国の弱さを隠すためにドイツを必要とし、ドイツは自国の強さを隠すためにフランスを必要としている」と一蹴した。今では、隠すこともなくなった。
仏独の力の差が拡大、妥協が難しい根本的問題で同盟にヒビ
メルケル首相(左)とオランド大統領は溝を埋めていけるのか?〔AFPBB News〕
直近のEU首脳会議の前には、仏独両国の共同書簡が出されなかった。
その代わり、フランソワ・オランド大統領はメディアのインタビューに応じ、欧州の債務相互化と銀行同盟の創設について譲歩するようメルケル首相に圧力をかけようとした。しかし、首脳会議の場では、ドイツは急かされる気がないことが明白になった。
一部には、仏独同盟は常に難局に見舞われてきたし、両国は必然的に再び手を組むと主張する向きもある。だが、今回は違うかもしれない。フランスとドイツの力の差が一目瞭然となり、両国を分かつ問題が根本的すぎるからだ。
ユーロ共同債や銀行同盟、EU全域でのインフラ投資、共通の社会制度に向けたフランスの様々な提案は、ベルリンでは深い疑念をもって受け止められる。ドイツ国民は、これらの提案を結びつける肝心な点は、ドイツの納税者にフランスを援助させたいという望みではないかと疑っている。
しかし、EU加盟国の予算は欧州委員会の委員の管理下に置かれるべきだとするドイツの対案は、パリでは国家主権の侵害だとして一蹴される。
伝統的には、フランスとドイツの妥協がまとめられてきた。だが、今回の問題はあまりに基本的なため、妥協策は簡単に見いだせないかもしれない。その場合、ドイツ経済の相対的な強さが決定的な要因になる可能性がある。ベルリンの多くの関係者が思っている通り、フランスが深刻な経済危機に向かっているのだとしたら、なおのことだ。
ドイツに着実に集中していく権力は、ベルリンでは相反する感情をもって受け止められている。言うまでもない歴史的な理由から、戦後ドイツは一度として欧州における支配的な役割を求めなかった。東西の再統一以来、ドイツの目標は常に「ドイツの欧州ではなく、欧州のドイツ」だと言われてきた。
欧州全体のアイデンティティーにドイツの利益を沈めようとする本能は今でも強い。だが、その他欧州諸国のルール違反や財政規律のなさに憤慨し、ドイツ国民はより「ドイツ的」な欧州の必要性を訴えることに以前ほど尻込みしなくなった。ドイツによる財政支援の代償は次第に、ベルリンで定められた規則と法律を受け入れることになってきている。
ほかのユーロ圏諸国から孤立した豊かさ
この手の権力は奢りにつながることがある。筆者は先週ベルリンで、傲慢なスペイン人、高飛車な英国人、妄想に暮れるフランス人、堕落したギリシャ人に対する怒りの言葉を時折耳にした。だが、議論の全般的なトーンは真剣で、辛抱強く、責任あるものだった。ドイツ国民は、自分たちはユーロとEUに完全にコミットしており、うまく機能させる決意だと話している。
問題は――もし問題が存在するとしたら――、ベルリンの生活があまりに甘美だということだ。ドイツは裕福な国で、ベルリンは快適でファッショナブルな都市だ。ギリシャやスペインの苦闘は、遠くかけ離れた場所の出来事のように思える。「力への意志」ではなく、その他ユーロ圏諸国からのこうした孤立こそが、ベルリンが欧州の奇妙な首都であり続ける理由だ。
By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36377
インド流通、やっと外資規制緩和
2012年10月24日(水) FINANCIAL TIMES
外資の小売業に対する規制の緩和を昨年11月に決めたものの、棚上げしたインド政府。経済成長の鈍化からこの9月、外資小売りに対する一連の規制緩和を決定した。だが政界における外資開放への反発は根強く、国政選挙を控え状況は予断を許さない。
インドの首都ニューデリーの地下鉄のシーランプー駅に隣接する仏カルフールの大型店舗「キャッシュ・アンド・キャリー」では、現金で払えば食料品から衣類、靴、冷蔵庫までインドの一般家庭のあらゆるニーズを満たせる。
インドで2店舗を展開するカルフールは、同国では表向きは卸売業者だ。同社と取引があるか商業用免許がないと店舗で買い物できない。しかもニューデリーの店舗では毎回、1000ルピー(約1500円)以上買うことが条件だ。月額最低賃金6600ルピー(約9900円)の同都市で、これは高いハードルだ。
51%出資が可能になったが…
インド政府はこのほどようやく、卸売業だけでなく、一般小売りへの外資企業の参入も認めた(写真:AP/アフロ)
カルフールは、インドの小売業界の大半を占める家族経営の零細店舗より5〜55%安く商品を販売している。割引価格は「顧客の節約」のためというより、「卸業」として転売する際の顧客の「利益を保証する」という位置づけだ。とはいえ買い物客の何人かは自宅用の買い物をしていると認めている。
カルフールのみならず米ウォルマート・ストアーズ、英テスコ、独メトロなど世界的な小売り大手各社は、卸売業という2006年に外国企業の参入が許されたニッチな分野でインド市場を静かに試している状況だ。各社とも一般小売業への進出が認可されるまでは、こうした形でインド市場の感触をつかもうというわけだ。
インド政府は9月、ついに複数のブランドを扱う総合小売業に対して、外資の出資を最大51%まで認めることを決めた。この決定は、近代的小売店による売上高が全小売売上高の6%しか占めていない同国において、大変革をもたらす可能性がある。
政府は単一ブランドを扱う外資小売業に対しても、単独で進出しやすくなるように現地調達比率の条件*1を緩和した。だが海外の大手小売り各社は依然として、注意深く事態の推移を見守る必要がある。インドの政治は複雑かつ不安定で、小売業界の市場開放には政界でまだ根強い反対があるからだ。
*1=インド政府は単一ブランドを扱う外資の小売りに対しては当初、販売する商品の30%をインド国内の中小企業から調達することを義務づけていたが、そうすることが「望ましい」という形に緩和した
米コンサルティング会社A.T.カーニーのパートナー、デバシシュ・ムケルジー氏は「紆余曲折を経て何とか一定の合意には達したが、だからといって約束がすべて守られるとは限らない」と警告する。
規制緩和の判断は各州に委ねる
米コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーがインドの小売販売額は5年以内に年間7000億ドル(約55兆円)を突破すると予測するなど、インドは大きな可能性を秘めている。だが同社のプリンシパル、ラガバ・グプタ氏は「明確にすべきことがまだ多くある。再び後戻りするかどうか分からないが、多くの人はこの点を懸念している」と指摘する。
国民会議派主導の連立政権は昨年11月に一度、小売業に対する外資の規制緩和を決めた。だが野党に加えて与党内からも激しい抗議を受けたため、数週間後にこの方針を「棚上げ」した。
政府は今回は揺らいでいない。各州に外資小売企業の出店を許可するかどうかの判断を委ねることで、政治的抵抗を回避しようとしている。今のところ、28州のうち8州(そのすべては国民会議派が与党)が賛成している。
だが、国政選挙を2014年に控えており、中核支持層に5000万もの零細店舗の店主を抱える野党インド人民党は、同党が政権を取った場合、小売業への外国からの直接投資を認める国民会議派の決定を覆すとほのめかしている。州選挙も迫っている。
このためムケルジー氏は海外の小売り大手各社は、「慎重に微調整を図りながら出店を計画すべきだ」と考えている。「各社とも統計学的な学習を重ねて実績は上げるだろうが、一気に10億ドル(約786億円)の事業を構築しようなどと考えてはならない」。
海外の大手各社がインドで最初に直面する問題は、パートナーに適切な現地企業を見つけられるかだ。ウォルマートやテスコなど、既にパートナーと深い関係を構築した企業もある。州によって外資への開放の度合いが異なるため、パートナーとの共同出店も複雑なものになるだろう。
とはいえ、小売り分野への外資の直接出資を認めた8つの州は、インドの総消費高の50%を占めており、インド最大の都市であるニューデリーやムンバイも含まれている。ムケルジー氏は、インドに進出しようという小売企業にとって、当面はそれだけで「十分な規模だ」と語る。
出店候補地を巡る競争も
出店候補地を見つけることも、悩みの種となりそうだ。インドには空きスペースの目立つショッピングモールが多くあるが、こうした物件は設計が悪いか、管理がひどいかのどちらかだ。そのため、良い立地の確保を巡っては競争が激しくなることが予想される。
「インドで小売り向け不動産物件に質を求めるのはまだ難しい。小売りのニーズに合った建て方がされていないか、立地が悪いかのどちらかだ」と、世界的に不動産業を展開する米ジョーンズ・ラング・ラサールのパートナー、パンカジ・レンヘン氏は言う。
外資系小売業に対して政府が課している様々な条件も、事業運営上の足かせとなりそうだ。外資は進出から3年以内に最低1億ドル(約80億円)を投資することが義務づけられており、その半分を食品加工施設や物流・配送設備、倉庫といったインフラの整備に振り向けなくてはならない。
またインド政府は外資系が販売する商品の30%をインド国内で現地調達することを定めている*2ため、サプライチェーン管理も複雑になるだろう。
*2=複数ブランドを扱う外資の小売りにはこの条件が義務づけられている
グプタ氏は、「やろうと思えば達成できるが、効率を高めるには限界がある」と言う。そして、外資の小売りはインド特有の食材や農産物、生鮮食品を現地の零細商店から仕入れて、この要件を満たそうとするだろうとつけ加えた。
インド政府は、外資系小売りによるインドにおける電子商取引も禁じた。つまり、実店舗と並行して電子商取引事業は展開できないのだ。
インドのコンサルティング会社テクノパックのアーヴィンド・シングハル氏は、規制が多いとはいえ、だからといってインド進出を断念する外資の小売り大手はまずないと言う。「政策や土地の手当てなど問題は多い。だが、市場シェアを獲得するために熾烈な競争を強いられるような強烈なライバルはほぼいない。ほとんどの小売企業にとって、恐らくインドは足を踏み入れる価値のある場所だ」。
Amy Kazmin(©Financial Times, Ltd. 2012 Oct. 9)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121022/238416/?ST=print
中国ソーラー業界の落日
2012年10月24日(Wed) Financial Times
(2012年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
施正栄(シ・ジェンロン)氏にとって厳しい時代がやって来た。世界最大の太陽光発電パネルメーカー、サンテックパワー(尚徳太陽能電力)の創業者である施氏は、かつては中国有数の富豪だったが、彼の帝国は今や大変な混乱状態に陥っている。
サンテックパワーは太陽光パネルの生産を40%削減している。同社の株価は今年に入って60%も下落しており、ニューヨーク証券取引所からは上場廃止もあり得るとの警告を受けている。
多額の借入金を抱えたパネルメーカーの苦境
たった10年で世界最大の太陽光パネルメーカーにのし上がったが・・・(写真は江蘇省無錫にあるサンテックパワーの工場)〔AFPBB News〕
純債務が16億ドルあり、ギアリング比率(自己資本に対する債務の比率)が200%を超える同社は先日、本社がある江蘇省無錫市から融資に関する支援を受けた。来年3月には社債の大量償還が控えている。
サンテックパワーの災難は、世界最大の太陽光パネル生産国である中国でソーラー業界の大転換が進んでいることを物語っている。
同業界はここ数年、常に割安なパネルを世界中に大量供給することで急成長を遂げてきたが、多額の借入金を抱えたパネルメーカー各社は現在、減産やレイオフ、場合によっては経営破綻の可能性にも直面している。
全盛期のソーラー業界からは、中国で最も裕福な起業家たちのリストに名を連ねる経営者が何人も生まれたが、そうした大物の多くは――施正栄氏も含めて――今月更新されたフォーブス誌の「中国長者番付」から姿を消している。
「これは生き残りを懸けた戦いだ」。シティグループのソーラー業界アナリスト、ティモシー・ラム氏(香港在勤)はこう語る。
まるで「生命維持装置に支えられている患者」
ラム氏の推計によれば、中国と台湾の太陽光パネルメーカーの現在の設備稼働率は50〜80%にとどまる。各社が損失を最小限に抑えようとしていることと、パネルの価格下落が続いていることがその背景にあるという。
もっと恐ろしい予測もある。中国のエネルギー政策立案者のトップ、李俊峰(リー・ジュンフォン)氏は、中国の太陽光パネル業界は「生命維持装置に支えられている患者」のようだと形容している。
李氏の見立てによれば、資金を容易に借りられた過去5年間に太陽光パネルの生産能力が過大になった業界が足元の「危機」から立ち直るには、世界全体の生産能力が半分に削減されなければならないという。
「今の状態では、銀行融資がストップしたら1社も生き残れないだろう」と李氏は述べている。
世界中の太陽光パネルメーカーが痛みを伴う調整期に直面している――既にドイツのQセルズとソロン、米国のソリンドラやエバーグリーン・ソーラーなどが経営破綻した――ことから、太陽光パネル業界の今後の見通しは中国の国内についても国外についても、ほとんど中国政府の動向次第になるだろうとアナリストたちは見ている。
世界市場に影響を与える中国の政策
中国の政策は、世界の太陽光パネル市場に2つの経路を通じて影響を及ぼすことになる。1つはパネルの国内需要の押し上げであり、もう1つは、国内パネルメーカーの破綻回避を目指した支援策の提供である。
中国は今年、ドイツに次ぐ世界第2位の太陽光パネル市場になると見られている(写真は中国・寧夏回族自治区にある太陽山太陽光発電所)〔AFPBB News〕
中国政府は、国内の太陽光パネル導入量を増やして余剰生産能力の一部の吸収につなげようとしている。
アナリストの間では、中国が今年、前年実績の2倍に当たる4GW(ギガワット)〜5GWを導入することでドイツに次ぐ世界第2位の太陽光パネル市場になるとの見方がもっぱらだ。
また中国は今年に入って、2015年の太陽光パネル導入量の目標を21GWに引き上げた。この値は、中国で2010年に導入済みだった太陽光パネルの累積設備容量の25倍に相当する。
しかし、太陽光発電プロジェクトのためにフィード・イン・タリフ制度(固定価格買取制度)という魅力的な仕組みが昨年導入されたにもかかわらず、今年期待されていた太陽光パネル需要の大半は実現していない。送電網の制約ゆえに、新規の太陽光発電プロジェクトの伸びが抑えられているのだ。
金融大手バークレイズ・キャピタルの調べによれば、中国の太陽光パネル導入量は今年10月半ばまででわずか1GW〜2GWにとどまっている。通期予想の半分にも満たないうえに、世界全体の余剰生産能力に比べても小規模である。
さらに、中国の開発業者は国内パネルメーカーへの代金支払いが遅れたり実行できなかったりすることが多く、国内販売は海外販売に比べると利幅がかなり小さいという。
恐らくこれ以上に重要で、間違いなくこれ以上に議論を呼びそうなのは、中国政府がどのような方法で国内の太陽光パネルメーカーを支援し、この苦境を乗り切れるようにするかだろう。
業界の幹部やアナリストたちの間では今年、中国の国家開発銀行から優先的に融資を受けられそうな「六大六小(大手6社と中小6社の意)」のパネルメーカーのリストが広く出回った。しかし、そのようなリストが存在するのかという問いに対し、国家開発銀行は回答しなかった。
一部の太陽光パネルメーカーは既に、本社がある地方の政府から、より直接的な支援を受けている。
パネルメーカーを支援する地方政府
多額の借入金を抱えたパネルメーカーは、価格下落が続く中で資金繰りが厳しくなり、地方政府に支援を要請している〔AFPBB News〕
今年7月にはLDKソーラー(賽維LDK)が8000万ドルもの債務の返済について、江西省新余市に支援を要請した。
その2カ月後にはサンテックパワーが無錫市に支援を求め、同市はサンテックが地元の銀行から金融支援を得られるようにするための委員会を立ち上げた。
さらにLDKソーラーは10月22日、新余市を後ろ盾とする投資ファンドから追加支援を得たと発表した。このファンドは、同社の株式20%を購入したという。
「中国の地方政府はあまり政府らしくない。どちらかと言えば企業のような存在だ」。政策立案者の李俊峰氏はそう語る。
「当初は、無錫市がサンテックパワーの筆頭株主だった。だから、この件には非常に神経を使っている。新余市はLDKソーラーの筆頭株主だから、同様に非常に神経を使っている。しかし、地方政府の行動が中央政府の行動を示しているわけではない」
製鉄や石油化学など国有企業が牛耳っている中国のほかの業界とは違い、ソーラー業界を形成する太陽光パネルメーカーはほとんどが民間企業だが、地方政府が少数株主になっているケースが多い。
下げ止まらない価格、淘汰進むまで膨らみ続ける損失・・・
地方政府から一時的に支援を受けられるとしても、サンテックパワーやLDKソーラーなどパネルメーカー各社の見通しはまだ不透明だ。太陽光パネルの価格が回復しなければ(回復の公算は小さいとアナリストたちは見ている)、体力のないメーカーが淘汰されるまで損失は膨らみ続けるだろう。
「これらの企業は事実上、国の監督下に置かれることになる。少なくとも、多くの企業がそうなるだろう」。証券会社CLSAのソーラー業界アナリスト、チャールズ・ヨンツ氏は中国の太陽光パネルメーカーについてこう話している。「最終的に破綻してしまうまで、穴をふさぐ粘着テープが次々に貼られていくことだろう」
中国の再生可能エネルギー促進策の花形だったこの業界にとって、これは何とも悲痛な末路だ。
By Leslie Hook
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36379
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