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【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】
財政健全化に必要な最高税率の引き上げ
【政治・経済】
2012年10月19日 掲載
欧米諸国は舵を切った
財政状況が厳しくなっている欧米先進国で、富裕層への課税を強化する動きが活発になっているようだ。
例えばオバマ米大統領は、大統領選の候補者討論会などで「高所得者にもう少し負担をしてもらわなければならない」と訴えている。対立候補のロムニー氏は一律減税を主張するが、大統領は富裕層への課税強化が持論。米国のメディアは「オバマ優勢」と伝えている。下馬評通りに再選となれば、金持ち優遇は見直される公算が大きい。
危機が強まっている欧州ではさらに顕著だ。イタリアは年収30万ユーロ(約3000万円)以上の富裕層に対する3%の特別課税を導入したし、フランスは年収100万ユーロ(約1億円)超の最高税率を75%にする課税強化案を打ち出した。ほかの国々でも、似たようなプランが検討されているそうだ。財政の危機を救うため、まずは富裕層に負担をしていただこうという発想である。
至極当然の流れだろう。
一晩に100万円をポンと使う金持ちもいるそうだが、そんな酔狂な人たちは例外として、高所得者と低所得者で、生きていくのに避けられない基本的な支出がベラボーに違うわけではない。普段の食事や衣服にかける費用は似たり寄ったりだ。ただ、高所得者は、生活必需品を買っても資金が余る。だから贅沢が可能になるわけだが、それでも使い切れないカネは少なくない。残りは自動的に蓄えられるだけだ。その一部を税として徴収しても、フトコロはさほど痛まないだろう。
ところが、欧米諸国と同じように財政健全化が急務の日本では、消費税増税だけが先行し、富裕層への課税強化は置き去りにされてしまった。いまやるべきは、所得税率を元の水準に戻すことである。
日本の最高税率は、かつて所得税と住民税の合算で93%だった。そこから段階的に下げられて、小渕政権の99年に合算で50%となっている。その後、政権に就いた小泉首相は、「格差がない社会の方がおかしい」「成功者をねたみ、能力のある者の足を引っ張る風潮は慎むべきだ」と格差拡大の旗を振った。米国かぶれの竹中平蔵氏を先頭に立てて、弱者切り捨てを強行している。これが大間違いだった。
国の財政は逼迫(ひつぱく)しているのだ。かつてのように富裕層に負担を求めるのは当たり前である。
【高橋乗宣】
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