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「中国ではもう無理。だからバングラデシュに来たのです」
バングラデシュと日本人(その2)
2012年10月23日(Tue) 姫田 小夏
「『労働ほど尊いものはない。労働が自分自身を向上させる』などと教えても中国人労働者は馬耳東風。私は、中国での生産はこれ以上できないと思っている」――。
中国に複数の工場を持つ日本人中小企業経営者は、こう打ち明ける。賃金の上昇に加え、労働者の権利意識の高まりから、中国での生産体制の維持がいよいよ難しくなってきたのだ。
中国では2010年以来、各地で労働争議が多発している。中国人力資源部(日本の厚生労働省に相当)によれば、2010年に中国各地の仲裁機関が受理した労働争議案件は128万件であり、2005年の40万件に比べると、わずか5年で3倍以上となった。これは、2008年1月に労働契約法が施行されて以降、法的手段に訴え自分の権益を守ろうとする労働者が急増したことに起因する。
だが、労働争議件数の急増や権利意識の高まり以上に問題なのは、「労働意欲の低下」だ。2000年代の不動産バブルを目の当たりにしてきた農村出身の民工たちが追い求めるのは「濡れ手に粟」。もはや「額に汗して」という労働観はない。
日中関係の悪化も「脱中国」に拍車をかけた。日本の尖閣諸島の国有化に端を発した対日制裁は日に日にエスカレートし、中国の日系企業は安定的な生産活動の維持が困難になっている。9月26日には外相会談が行われたが、両国の主張は平行線をたどり、解決の糸口はなかなか見出せそうもない。
今や、アジア新興国へのシフトは、日本の経営者にとって大きな課題となっている。そんな中で、日本人経営者が目を向けるのがバングラデシュなのだ。
バングラデシュの賃金は中国の4分の1
バングラデシュと言えば「ネクスト11」の新興経済国の1つだが、アジアの最貧国のイメージが強く、まだまだ本格的なビジネスの幕開けには至っていない。
それでもここ数年、日本企業の「バングラ詣で」で賑わうようになってきている。2008年、ファーストリテイリング(ユニクロ)がバングラデシュに進出したことは、日本でも驚きをもって伝えられた。「貧困、災害」一辺倒だったバングラデシュへのイメージを変えたのが、ユニクロの進出だった。
ユニクロの現地生産が1つの契機となり、縫製メーカーや商社、工業用ミシンの販売や検品業など繊維産業を中心に進出が続くようになった。現地の日本企業は2012年5月時点で136社(JETROダッカ事務所)にまで増えたと言われている。
日本企業にとってのバングラデシュの魅力は、豊富な労働力と労働コストの安さだ。近年、賃金が急激に上昇する中国とバングラデシュを比べると、実に4倍ほどの開きがある。
JETROの「第21回アジア・オセアニア主要都市/地域の投資関連コスト比較」によれば、北京の法定最低賃金は176ドル、上海で170ドルである。日本を除くアジア・オセアニアの31都市としては、シドニー、オークランド、ソウル、台北、香港、広州に次ぐ高水準だ。
他方、ダッカは42ドル(非熟練工42ドル、準熟練工48ドル、熟練工101ドル)である。ちなみに、多くの日本企業が目を向けるベトナム、インドネシア、タイはそれぞれ79ドル、142ドル、141ドルと、ダッカの2〜3倍の水準だ。
進出は困難だが無視していい国ではない
「Doing Business 2012」より。183の経済圏におけるバングラデシュと中国のランキング(★はバングラデシュが中国を上回って評価されている項目)
世界銀行の「Doing Business 2012」が紹介するバングラデシュの位置づけも興味深い。
これは、183の経済圏における規制や規則がビジネスに及ぼす負担を指標化し、ランキングしたものだ。その中からバングラデシュと中国を抜き出し、比較してみる。
バングラデシュの電力事情は183の経済圏の中で182位と最低水準であるが、投資家保護においては24位という高い位置にランクされている。また会社設立、建設許可についても、中国を上回るアドバンテージを持つ。
バングラデシュでの会社設立登記はどれほどスムーズに行えるのか。それを知るために、JETROダッカ事務所の鈴木隆史所長を訪れた。
「会社設立登記そのものは簡単ですが、それだけでは事業はできません。ビジネスの内容に応じて許認可取得が必要になります。その際、日本人ビジネスマンのみならずバングラデシュ人ビジネスマンもアンダーテーブルで苦労しているのが現状です」
JETROダッカ事務所の鈴木所長
事業をオペレーションに持ち込むまでの手続きがネックの1つになっているようだ。手続きはスローで、時間がたっぷりかかることを覚悟しなければならない。
一方、建設許可については、むしろ土地の取得がネックとなるとも。鈴木さんは「土地の取得は現地法人を設立すれば外資系企業でも可能ですが、地権者の登記が統一的に管理されていない状況のため、土地収用の際は権利関係の複雑さが必ず問題となります」と話す。共産党国家の中国やベトナムのように号令一つで立ち退かせることができないのだ。
また、政府は外資の進出を「基本的には歓迎」する姿勢だが、一部のアジアの国に見るような外資を優遇するような法律やインセンティブは1つもない。国内産業や地場資本が強く、財閥系が牛耳るのがバングラデシュ経済だとも言える。また、国内同業者からの外資への抵抗も根強い。
「進出が簡単でないのは事実。ただ、長期的視野で考えるなら、無視できる国ではない。特に、低廉で豊富な労働力と、アパレル関連の裾野産業を有するのは強い。アパレル関連産業は前向きに検討した方がいいでしょう」
鈴木さんはこうも付け加える。「日本との距離から見ても、これより西に日本の労働集約型産業が出ていくのは難しいのではないでしょうか」
バングラデシュよりも安い賃金の国が世界にどれだけあるかを数えてみれば分かる。アフリカは遠すぎるし、賃金は決して低くはない。中東には中国資本の労働集約型産業が入り込んでいるが、日本からはやはり遠い。すると、バングラデシュがギリギリの場所となるというわけだ。
縫製工場をバングラに開設した小島衣料
バングラデシュは、政治の不安定さゆえに経済発展を促す政策が乏しく、産業構造が多角化しにくい。またインフラ整備も立ち遅れたままだ。そのためとても2桁の経済成長は見込めず、6〜7%の水準で推移している。
だが、幸か不幸か、これがバングラデシュの「安価で豊富な労働者」の維持を可能にするのである。「50年経ってもバングラデシュに縫製は残るのではないか」「中国のように瞬時にして労働者が消えることはないはずだ」と見る日本人もいる。
小島衣料ダッカ工場。赤い服の人物が小島オーナー。
さて、冒頭で登場した中小企業経営者とは、縫製工場を動かす小島衣料(本社:岐阜県岐阜市)オーナーの小島正憲さんだ。
小島衣料は1990年に中国生産を開始し、中国で4工場を動かしている。一時は5工場で8000人体制を築いていたが、現在は4工場で3500人体制に縮小した。
その理由は、「賃金の上昇と人手不足、労働紛争の頻発」に他ならない。小島さんに限らず、現地の日本人経営者たちは「中国で労働力を調達するのは困難になった」と声を揃える。
その小島さんが言う。「中国ではもう無理だと思った。だからバングラデシュに来たのです」
小島さんがダッカに工場を開設したのは2010年のことだ。バングラデシュ政府には、外資誘致政策を提唱して挙国一致体制でそれを実行するようなリーダーシップはない。だが、こんな魅力があった。
「バングラデシュには労働意欲の高い労働者がたくさんいます。カンボジアやミャンマーはバスで連れてこないとダメだが、バングラならば蟻が群がるように労働者が工場に通勤してくるのです」
早速、筆者は小島衣料のダッカ工場を訪れることにした。(つづく)
バングラデシュの労働者の群れ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36300
急拡大するモンゴル経済にビジネスチャンスあり!
世界一の経済成長率が示す将来性(前篇)
2012年10月23日(Tue) 村田 博信
私はこれまで国際開発協力会社の主任研究員として、途上国などの開発協力に関わる調査をしてきていますが、その一環で今春、モンゴルにおけるビジネスチャンスの調査に行ってきました。
日本の約4倍の国土に、人口はたったの280万人(大阪市と同規模)という、国連加盟国の中では世界で最も人口密度の低い国が今、世界から注目されつつあります。
世界ナンバーワンのGDP成長率
モンゴル国家統計委員会によると、2011年の国内総生産(GDP)成長率は17.3%と急成長。さらにシティバンクのリポート「Global Economics View 2011年2月」(PDF)によると、「2010〜2015年のGDP成長率トップ10カ国」「2010〜2030年のGDP成長率トップ10カ国」ともにモンゴルは第1位にランクされています。
Global Economics View 2011年2月拡大画像表示
Global Economics View 2011年2月拡大画像表示
2011年のモンゴルのGDPは約86億ドル。これは世界で133位ですが、2025年にはこの10倍まで成長するとの予測があります。また、その頃には1人当たりのGDPが2万ドルに達すると予想されています。
これは2011年の韓国やサウジアラビア、台湾など世界40位前後の国々に比肩し、国民の購買力急増が見込まれるなど、現在のモンゴルはまさに40〜50年前の高度経済成長時代の日本に近いステージにあると言えます。
さらに国民の半数が25歳以下という非常に若い国で、企業や政府などの各ポストのキーマンも30〜40代が中心です。そのような若手が「自分たちがこの国をつくっていく」という気概にあふれ、国全体が活気づいていることが肌身に感じられます。
日本の内向き志向と言われる若手ビジネスマンも一度モンゴルに行かれると刺激を受けるのではないでしょうか。実際日本人の若手事業家でたくましくビジネス展開している方々もいて、エネルギッシュに活躍しています。
なぜモンゴルなのか、6つの理由
モンゴル市内の様子(筆者撮影、以下同)
さて、改めてビジネスの観点でモンゴルの魅力について6点ほど挙げてみたいと思います。
(1)経済成長の高いポテンシャル
先述しましたが、モンゴルの経済成長率は世界でも屈指です。アジア開発銀行の最新の予想では、2012年が15%、2013年が17.5%の成長とあります。
モンゴル国家発展改革委員会によると、今後4年間でGDPが3倍、2桁成長が10年間は続くだろうと予想しています。
その主なエンジンは大鉱物資源鉱床の開発です。世界の3大銅・金鉱床の1つを有し、石炭は世界7位の埋蔵量を誇ります。
2013年にはオユントルゴイ銅・金鉱山(埋蔵量3000万トン、可採年数50年)からの輸出が開始され、さらには未開発石炭鉱山では世界屈指の規模のタバントルゴイ石炭鉱山(埋蔵量64億トン、可採年数200年超)の本格開発が始まります。
この2大鉱山のほかにも中規模の銅鉱山、石炭鉱山も開発に入り、一部では輸出が始まっています。さらにウラニウムやモリブデンなどのレアアースも豊富に埋蔵されているようです。
そして政府はこれらの鉱物資源開発で得られる収入を第1次〜第3次産業の育成に投資する計画を立てており、長期的な視野で鉱物資源に依存しすぎない国づくりのもと、戦略的工業地区の開発も進めつつあります。
(2)モンゴルは親日国
モンゴルにおける対日世論調査(2004年)
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少々古いデータですが、2004年の外務省による「モンゴルにおける対日世論調査」では、「今後モンゴルが最も親しくすべき国はどこだと思いますか」という問いに対し、日本がナンバーワンに挙げられています。
この背景として、日本が国際社会における対モンゴル支援で常にイニシアティブを発揮してきたことが一因であると思われます。
1991年に先進国首脳として初めて日本の海部俊樹総理がモンゴルを訪問し、同年日本の提唱で第1回「モンゴル支援国会合」を東京で開催しました。
さらにODAを通じてこれまでにも様々な援助を実施してきました。金額ベースでは2010年までに無償資金協力が942億円、有償資金協力が758億円、技術協力実績331億円に上ります。
(3)日本企業による積極的な進出
また、これまでにも日本の商社や中小企業を中心にモンゴル進出がなされてきましたが、今年に入って大手の動きが活発のようです。
例えば、三井物産が石炭輸入事業に取り組みだしたり、ソフトバンクが風力発電事業に名乗りを上げ、双日では建設から運営まで一貫した発電事業に乗り出しています。
(4)潜在能力の高い人材層
モンゴル人の能力の高さも魅力の1つです。
●理数系が強い
社会主義時代の徹底した詰め込み教育が今でも残っており、物理や化学などは小学校高学年で日本の中学生並みのレベルを教えています。そのため論理力やプログラミング能力などにも長けており、日本のIT企業にはモンゴル人を意図的に雇用しているところもあります。
日本式教育を取り入れている学校
●技術習得に対する意欲が高い
自ら新しいものを学ぼうとする意欲が強く、技術の習得に対しても積極的です。
●語学能力が高い
記憶力がよく、物怖じしない性格のため、語学力が高いと言われています。実際、英語やロシア語以外に日本語も話せたりと、学生や社会人にはマルチ言語の習得者が結構います。
●就学率が高い
2010年度には、実に全国民の26.3%が教育機関で学んでいることになっています。GER(総就学率)は初等教育で98.6%、中等教育で94.7%、さらには義務化されていない保育園や幼稚園へも77.6%もの子供たちが通っているほどの高水準ですし、一方で6〜14歳の中退率は0.8%と低水準です。
●日本への留学生数が増加
モンゴルから日本へ留学する学生の数は増えており、2010年5月1日時点で1282人が高等教育機関に在籍しています。出身国(地域)別では11位に位置するほどです(出典:在モンゴル日本国大使館ウェブサイト)。
それとともに「日・蒙の架け橋になりたい」というモンゴル人経営者やビジネスマンも増え、あらゆる面で日本企業への期待が高まっています。
●女性の社会進出が活発
また、モンゴルの中小企業庁に所属するアドバイザーによると、起業の相談に来るおよそ8割が女性とのことでした。今後女性の能力がますます発揮されるようになってくると、産業界もより活性化してくると思われます。
(5)魅力的な市場
●市場占有率の高さ
人口の40%が住んでいる首都ウランバートル市は都市のあらゆる機能が集積するコンパクトシティで、広範な活動をせずに市場占有率を高めることも可能です(実際、コカ・コーラやユニ・チャームなどは競合不在の中、高いシェアを誇っています)。
●高い利益率
急速な発展に商品やサービスの供給が追いついていないため、過当な価格競争のリスクが低い中で高い利益率の確保も期待できます。
●可処分所得が高い
ウランバートル市にあるルイ・ヴィトンの店舗
海外への出稼ぎや大家族世帯が多く、世帯の可処分所得が高いです。実際、高級化粧品や高級家電、高級ホテルなどの顧客の大半がモンゴル人です。
私が現地へ出張中にBBCでモンゴル特集が放映されていましたが、ウランバートル市のルイ・ヴィトンで、モンゴル人のお客が現金で買い物をしている様子にリポーターが驚いていました。
(6)近隣大国へのアプローチ
モンゴルは人口が280万人ほどの小さな市場ですが、モンゴルを起点として他国へのリーチも考えられると思います。
●ロシア市場
ロシア語を話せるモンゴル人も多く、適切なパートナーと組めばロシア市場への進出も見込まれます。
●中国人へのアプローチ
モンゴルに年間19万人ほど(2010年度)訪れると言われる中国人観光客向けのビジネスもあり得ます(日本への中国人観光客数は45万人ほど=2011年度)。
●EU市場へのアプローチ
7000品目以上を対象にEUへの輸出関税が免除される「GSP+(Generalized System of Preferences Plus)」が2006年から適用され、カシミヤ製品などの輸出促進につながっています。今後幅広い品目に活用されることが期待されています。
以上、モンゴルにおけるビジネス環境を見てきましたが、次回は業種別のビジネスチャンスについて言及したいと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36332
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