http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/216.html
Tweet |
【日曜経済講座】
日銀政策転換待ったなし 包括緩和こそ超円高・デフレの元凶
編集委員・田村秀男
2012.10.21 14:30
東京で開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会では、ラガルドIMF専務理事が日銀への金融緩和強化に期待を表明した。国内では自民党の安倍晋三総裁が日銀に量的緩和を求め、民主党側も前原誠司経済財政担当相が日銀資金による外債購入を迫っている。来年4月就任の次期日銀総裁候補と目される財務官僚OBたちは「緩和手段は山のようにある」などと言い出した。
以前から大胆な量的緩和を日銀に求めてきた小欄のような少数意見がいつの間に主流になったのかと、怪しむほどの内外エリート世論の変わりようである。だが、日銀は一般的な「金融緩和」要請に屈するほど柔くはない。日銀首脳は「すでに十分に緩和している」と抗弁しつつ、圧力具合をみながら小出しの緩和策を追加してはその場をしのぐ手法を繰り返すだろう。
東京・日本橋の本店の建物と同様、堅固な日銀の守りを崩すには、まず日銀政策の誤りの核心をつく必要がある。
基金内外の帳簿操作
日銀は4年前のリーマン・ショック後、お札を刷って国債など金融資産を購入する米欧の量的緩和政策に背を向け、2009年10月までは米欧とは逆に資産を減らす量的引き締め策をとり、デフレ不況を深刻化させた。
同年秋からようやく前年比で国債購入を増やし始め、10年10月には「資産買い入れ等基金」の枠を日銀のバランスシート内に設け、基金の枠内で国債などの金融資産を追加購入する仕組みをつくった。基金の枠内にある資産は増やすが、基金外の日銀資産は減らし、資産全体の増加を抑えるという、一種の帳簿操作である。日銀はそれを「包括緩和」という新造語で呼び、「量的緩和」の効果を否定する白川方明総裁の立場に執着する。
平たく言えば、国債など金融資産の相場を引き上げるために日銀資金を市場に流しては民間銀行の利益を増やすが、企業や家計を苦しめるデフレ退治のためにお札を継続的に刷る量的緩和ではない。この変則的な緩和政策に沿って、日銀は小出し方式で当初35兆円だった基金枠を漸次追加し、この9月には80兆円に増やした。デフレは止まらず、日銀が掲げる「1%の物価上昇のメド」は来年も達成できそうにない。今月末にはさらに基金枠を増やすよう検討中のようだが、相も変わらぬその場しのぎの無駄打ち手法である。
日銀包括緩和政策はなぜ、こうも効果がないのか。その謎を解き明かすために作成したのが、このグラフである。データは、日銀の国債保有、外国からの対日債券投資と円ドル相場を比較した。外国の対日債券投資の9割以上は短期、中長期の日本国債で占められ、財務省統計では各月ごとの売り買いの差額(純投資)が公表される。日銀の国債資産の月ごとの前年比増減額(年間増減額)と対比するために、外国の債券投資は各月までの1年間合計の増減額とした。
対日債券投資を呼ぶ
円相場は総じて、外国の対日債券投資が増えると円高になり、逆に減ると円安に振れる。外国の日本国債買い(売り)は外国為替市場で円買い(売り)を伴うからである。外国の債券投資は他方で、日銀の国債購入につられて増減する傾向がある。まさに日銀が包括緩和政策を打ち出した10年10月から対日債券投資は増え続け、円相場を押し上げてきた。
外国の投資は減り始めても日銀の国債買いが増えると勢いを取り戻す。理由は簡単、日銀の国債買いは国債相場を押し上げる。外国の投資ファンドは安心して国債を買える。そして円高と国債価格上昇の両面でもうける。こうして日銀の資産買い入れ枠追加は円買いの材料と市場で受け取られる。今年初めから外国投資は減り始め、円相場も3月まで下落したが、翌月からは日銀の国債買い増加に合わせて円高に反転している。
日銀は「金融政策を用いて直接的に為替相場に影響を与えることは一切考えていない」(山口広秀副総裁)と、ぞっとさせられるほど冷淡だ。しかし、超円高はデフレ圧力を高める最大の要因であることは常識と言っていい。
もう一つ、米欧の量的緩和政策の表向きの目的はデフレ防止と金融市場の安定だが、副産物がドルやユーロ相場の下落である。日銀だけが金融の量的拡大を抑制し、米欧がお札の供給をリーマン前に比べて2、3倍も増やすなら、円の希少価値が上がる。金融政策と円相場の関係を無視する「包括緩和」を投機ファンドは商機ととらえる。基金を追加するほど円高が進み、デフレ不況がこじれるのだ。
どうすべきか。日銀に包括緩和政策を破棄させ、米欧に負けないほどの明確で大胆な量的緩和政策に踏み切らせることだ。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121021/fnc12102114310001-n1.htm
2012年10月22日 10:51 経済
田村秀男氏の間抜けな「どマクロ」経済学
リフレ派の間抜けな言説は枚挙にいとまがないが、きのうの産経新聞の田村秀男氏のコラムは、ネタかと思ってしまった。彼は日銀の包括緩和をこう批判する。
外国の投資は減り始めても日銀の国債買いが増えると勢いを取り戻す。理由は簡単、日銀の国債買いは国債相場を押し上げる。外国の投資ファンドは安心して国債を買える。そして円高と国債価格上昇の両面でもうける。こうして日銀の資産買い入れ枠追加は円買いの材料と市場で受け取られる。今年初めから外国投資は減り始め、円相場も3月まで下落したが、翌月からは日銀の国債買い増加に合わせて円高に反転している。
おっしゃる通り。日銀の国債購入は邦銀の国債投資の利益を保証して国債バブルを膨張させ、外人の円買いを誘って円高の原因になっているというのは、マーケットの常識だ。この論理的帰結は、日銀が国債購入をやめるべきだということになる。
ところが田村氏はなんと「日銀に包括緩和政策を破棄させ、米欧に負けないほどの明確で大胆な量的緩和政策に踏み切らせろ」というのだ。日銀の包括緩和には量的緩和が含まれており、FRBのQE3の大部分は国債購入である。両者は同じものだが、リフレ派の脳内ではアメリカの量的緩和は日本とは違ってききめがあるらしい。「原発の放射線は自然放射線とは違う」という反原発派みたいなものだ。
田村氏にも「非不胎化介入」の意味を理解していない高橋洋一氏にも共通なのは、金融政策とは金利調整だという事実を理解していないことだ。彼らが依拠しているのは、マネタリーベースが増えると物価が上がるという19世紀の貨幣数量説で、資金需給が金利で動学的に調整されるという現代のマクロ経済学を理解していない。
くわしいことは今週のメルマガ「どマクロ経済学はなぜ間違っているのか」を読んでください。
「経済」カテゴリの最新記事
• 田村秀男氏の間抜けな「どマクロ」経済学
• 日銀の外債購入は意味があるか
• 日韓通貨スワップ協定を破棄せよ
• 「反グローバリズム」で人々は幸福になるのか
• 法人税は間違った税である
• 租税競争で地方は活性化する
• 経済学者の意見の違いは大きくない
• 馬淵澄夫氏はなぜデフレと不況を混同するのか
• デフレは不況の原因ではない
• 「デフレ脱却」なんて意味がない
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51817860.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。