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現実味を増す「ブリグジット」  英国の移民:保守党の最も愚かな政策
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/206.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 22 日 05:59:11: cT5Wxjlo3Xe3.
 

JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
現実味を増す「ブリグジット」
英国の例外主義に欧州が我慢の限界
2012年10月22日(Mon) Financial Times
(2012年10月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 英国が欧州連合(EU)から離脱するという話は、近隣諸国の束縛から逃れるのに悪戦苦闘している誇り高き島国の物語として語られることが多い。

 だが、政治力学は変わりつつある。デビッド・キャメロン首相率いる英政権がユーロ危機から生まれた統合の深化を敬遠している中で、英国側の「引く力」が大陸側の「押す力」によって強められているのだ。


英国のEU脱退が現実味を帯びてきている(写真は欧州の地図の上で、ユーロ硬貨に囲まれて立つ英ポンド硬貨)〔AFPBB News〕

 先のEU首脳会議に出席した欧州の指導者たちにとっては、別のことが頭にある。ギリシャ、スペイン、銀行同盟などだ。ユーロの未来はまだ保証されたわけではない。

 キャメロン首相は傍観者の役割を選択している。にもかかわらず、協議の結果は、ことによると英国のEU脱退に向けた重要な一押しを与えるかもしれない。

 キャメロン首相は、再交渉された条件の下とはいえ、今もまだEU加盟を支持していると主張している。

 キャメロン首相は先日のアンゲラ・メルケル独首相との電話会談で、EADSによるBAEシステムズの買収で約束されていた欧州全域の防衛産業の協力がご破算になったと、メルケル首相をやんわりと非難した。

 キャメロン政権で連立を組む自由民主党のニック・クレッグ党首は、自身を筋金入りの欧州統合主義者だと見なしている。労働党のエド・ミリバンド党首は、自ら好んで欧州で孤立していると政府を厳しく非難している。

保守党内の欧州統合反対派の囚人

 だが、キャメロン首相は、自党の欧州統合反対派の囚人になっている。反対派は世論の潮流に乗っているため、キャメロン首相は、EU脱退に代わる選択肢は、取り返しのつかない保守党分裂ではないかと恐れている。

 クレッグ氏は、保守党の敵対心にブレーキをかけるには力不足だったことが判明している。また、ミリバンド氏は、政治資本を欧州に賭けて自身が不興を買う危険を冒すのを拒んでいる。政治の範疇を超えたところでは、英国の投資家は、欧州改革センター(CER)が「Brexit(ブリグジット)」と呼ぶものが意味することに、なかなか気付かなかった。

 国内の議論から抜け落ちているのは、他の欧州諸国における雰囲気の変化に対する認識だ。特別扱いを求める際、英国の歴代政権には、連邦志向の強い欧州諸国が英国の離脱という脅しに屈するだろうという計算が働いていた。それにも一理ある。

 だがユーロ危機のせいで、欧州の指導者たちには、拒否権を振りかざす英国を甘やかすことよりも切迫した優先事項が生じた。

 2010年夏にキャメロン首相率いる連立政権が発足した直後、強硬なユーロ懐疑派の閣僚の1人が、欧州が英国から離れつつあるために、もはや英国が欧州から出て行く必要はないと述べたと報じられた。この見方は、当の閣僚が想像した以上に先見の明があったという結果になっている。

 欧州は、EUの規則の適用除外や免除を求める英国政府の要求にうんざりしている。他国の指導者たちには、ユーロ救済というやらなければならない大仕事がある。今大陸欧州の政治家たちから聞こえてくるのは、英国は離脱したいなら離脱すべきだという声だ。

譲歩を望む英国と、英国の要求にしびれを切らす大陸欧州

 キャメロン首相は、近いうちにこの問題について「重要な演説」を行うと約束している。首相は、新たな関係のための条件を設定したいと思っている。計画しているのは、ユーロ圏が統合を深化させるために必要とする条約改正を英国が承諾する代わりに、一連の譲歩について交渉することだ。その後、英国でこれらの条件の是非を問う国民投票を実施するという段取りだ。

 このシナリオにはいくつか問題がある。最も明白な問題は、政府にとって「手を引く」ものがなくなりつつあることだ。英国はユーロ圏外におり、例えばポーランドと違って、未来永劫ユーロに参加する気はない。英国は財政協定や銀行同盟への参加を拒否してきた。また、キャメロン首相は、EUに対する自国の拠出金をユーロ圏の支出と区別する二重構造の予算を望んでいる。

 英国はこれまでずっと、域内の国境を開放するシェンゲン協定を避けてきた。キャメロン首相は今、犯罪や司法といった事柄に関するEU全域に及ぶ協力体制から手を引くことを計画している。単一市場と対外貿易政策――他のすべての国にとって越えてはならない一線――のほかには、英国が自国を例外扱いできるものはほとんど残っていないのだ。

 もう1つの問題は、他国が柔軟に対応してくれるという前提の中にある。実際には、拒否権は効力を失ってしまった。英国が昨年12月に拒否権を行使した際、ユーロ圏の指導者たちは、単に財政協力に向けた類似の構造を作り出しただけだった。フランスでは、こうした手法を支持する肯定的な熱意がある。

 ドイツは、かつてなら英国の例外主義に便宜を図る努力をしていただろう。だが、メルケル首相はしびれを切らせた。

 それも決してメルケル首相だけではない。キャメロン首相は、単一市場政策でより緊密な協力関係を築くよう求めたイタリアのマリオ・モンティ首相の呼びかけを無視した。中道右派のスペインの指導者、マリアノ・ラホイ首相は、ロンドンよりもむしろベルリンの方を向いている。フランスの社会党のフランソワ・オランド大統領は、はなから親しい仲間になる見込みがなかった。

 ユーロを支えるあらゆる仕組みに貢献することをあからさまに拒否した英国の姿勢は、スウェーデンのような友好国さえ困惑させている。ほかの国も、自国の問題をどう整理すべきか英国が説教することにうんざりしている。

 キャメロン政権は、政治学者たちが「ソフトパワー」と呼ぶものを失った。善意の貯水池は干上がっている。英国が、新たな銀行同盟が金融規制に対する自国の影響力を低下させないという保証を求めると、他国は、なぜロンドンが今後も欧州随一の金融センターでなければならないのかと問い返す。

英国とEUの関係には過去にも多くの危機があったが・・・

 英国とEUの関係には、過去にも多くの危機があった。今回の危機は、これまでとは大きく異なっているように感じられる。

 銀行規制のための取り決めは、単一市場全体に及ぶ意思決定から英国を事実上締め出す新たな制度体系のための雛形を提供するかもしれない。その結果、英国はノルウェーやスイスのようなEU非加盟国と変わらない立場に置かれるだろう。すなわち、規則に縛られ、拠出金を支払うが、方針を何も形作ることができない立場だ。

 キャメロン首相は、欧州における英国の未来のためのロードマップを描いていると言われている。首相は、同盟強化という別の方向に向けて新たな道を踏み出そうとしているパートナー諸国が、別れを告げても構わないと思っていることに気付いていないのだ。

By Philip Stephens

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36361


JBpress>海外>The Economist [The Economist]
英国の移民:保守党の最も愚かな政策
2012年10月22日(Mon) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年10月20日号)

英国の移民政策が企業と経済の足を引っ張っている。キャメロン首相よ、目を覚ませ。

 英国の与党・保守党の党大会でデビッド・キャメロン首相が10月10日に行った演説には、明白な事実に関する素晴らしい発言が含まれていた。

 キャメロン首相は、英国は過去の栄光を二度と取り戻せないかもしれないと認めた。英国は、自分たちよりはるかに動きの速い競争相手と世界的な競争を繰り広げている。英国の唯一の希望は、規制を削ぎ落とすことで、想像力に富む起業家たちが成功を収め、盛んに貿易できるようにすることだ――。


英国のデビット・キャメロン首相〔AFPBB News〕

 見事な演説だ。では、なぜキャメロン首相率いる英国政府は、煩瑣なお役所手続きを生み出し、起業家を抑圧し、英国の成長を妨げるような移民政策を推し進めているのだろうか?

 英国は事実上、ドーバー海峡の白亜の岸壁に「立入禁止」の看板を立てているも同然だ。

 キャメロン首相がロンドンのシティを世界の金融センターとして擁護し、外国訪問の際に飛行機が満席になるほどの実業家を同行させている一方で、英国政府は、貿易拠点を要塞へと変えてしまいかねないような政策を次々と打ち出している。

 保守党政権はこの2年間に、留学生や外国人労働者とその家族の英国への入国・定住に対する規制を格段に強化した。英国は世界に通用する人材の争奪戦に敗れ去ろうとしているだけではなく、戦いに参加することすらしていない。今では、英国へ来て職に就く人数よりも、英国を去って他国で職に就く人数の方が多い。

小さなイングランドが英国を損なう

 企業が移民制度に不満をもらすのは世界中どこでも同じだ。しかし、英国の移民制度は、3つの点で総合的に劣っている。

 第1に、政策そのものが悪い。キャメロン首相は野党時代に、2015年までに移民の純増数――移入数から移出数を引いた人数――を年間10万人以内に抑えると約束した。最新の数字が21万6000人であることからすると、この約束を果たすのは困難であり、恐らく不可能だろう。

 英国人とヨーロッパ人は自由に行き来できる。人権法は政治的亡命希望者を保護する。そこで、テレサ・メイ内相は、移民労働者と留学生の数を制限した。これらの人々こそ、英国経済を活性化させる可能性が最も高いと同時に、すぐに英国を去る可能性が最も高い人々だ。


今年はロンドン・メトロポリタン大学が留学生ビザのスポンサー登録資格を政府から剥奪され、同大の留学生2000人以上が国外退去処分となる騒ぎが生じた〔AFPBB News〕

 留学生ビザの発給件数は1年間で21%減少した。政府は留学生の就職を困難にしている。このせいで今後は外国の学生が留学の申し込みを躊躇するようになるだろう。

 国際教育という、英国の最重要輸出産業であり、英国が極めて大きな競争力を有している分野が、学生を集められなくなろうとしているのだ。

 理屈の上では、英国の扉は、金持ちや極めて高い技術を持つ労働者には開かれている。だが、実際には、移民制度の第2の悲惨な側面、すなわち官僚支配のせいで、開かれているとは言えない。

煩雑な制度に振り回される企業

 ビザの申請を処理するのに、あまりにも時間がかかりすぎる。大企業なら、インドのデリーから労働者を異動させるのに伴う煩わしい手続きに大方は耐えられる。だが中小企業には無理だ。急成長中のハイテク企業は、世界中の才能ある移り気な人材を求めて競争しているため、最も不利な立場にある。

 お役所手続きという迷路をなんとか切り抜けている労働者たちは、1つの会社に縛り付けられ、生産性を徐々に失っていく。英国は、そのわずかな労働ビザの割り当てすら分け与えていない。特別な才能を有する人々を対象とする割り当て枠は、年間の上限が1000件と定められている。2011年に、この枠で発給された労働ビザは37件だった。

 第3に、保守党を中心とする英国の政治家たちは、最大限の努力で外国への敵意を発信し、国民を惑わせている。議会は9月、英国の人口を7000万人以下に抑えるために「必要な措置をすべて」講じるという動議を採択した。

 野党・労働党のエド・ミリバンド党首は、2000年代半ばの労働党政権下における東欧から英国への移民について、党を代表して謝罪した(ポーランド人など、働くために移民してきた人々の大半が、社会保障給付などほとんど求めず、国の税収に誰よりも多額の貢献をしてきたことなど、気にも留められていない)。

 キャメロン首相は、欧州連合(EU)域内での移動の自由を保障している規則を見直すことを約束した。この権利を撤回するには恐らく、英国がEUを脱退しなくてはならないが、英国には当面脱退の意思はない。

 この話を持ち出すことで達成できるのは、「立入禁止」の標識にネオン灯を付け加えることだけだ。どこにでも行き先のある才能ある人々は、そのメッセージの意味を理解することだろう。

ポピュリズムの逆説

 有力政治家の中には、英国の移民政策は破滅的だと内輪の席では認める者もいる。ビジネス意識を持つ一部の保守党議員は、英国の移民戦略が成長戦略を徐々に蝕んでいると不満を口にし始めた。野心家でリベラル志向のロンドン市長、ボリス・ジョンソン氏は、そういう政治家たちを煽り立てている。

 しかし、一体何ができるというのか、と政治家たちは反問する。英国人は移民規則の緩和を認めないだろうと、彼らは不快感を露わにする。それに、政府は約束を守らなければならない。

 簡単な答えがある。もし移民純増数の目標設定のように英国に大きな害をもたらしている政策があるのなら、その政策をきっぱり捨て去るべきだ。そして、その理由を説明すればいい。残念なことに、キャメロン首相がそういう大胆な方針転換をする可能性は低い。しかし、政治的にもう少し小さな施策を試みる余地はある。

 確かに移民は嫌われている。英国人は、欧州のどの大国の住民よりも移民に強く反対している。移民のせいで元々の英国人が職を得にくくなると考えている人は62%にも上るのに対して、欧州全体の平均は45%だ。英国人の4分の3は、移民が公共サービスに負担をかけすぎていると主張する。

 しかし英国人は、政府首脳が考えるほど外国人嫌いではない。熟練労働者や留学生は、ほかの移民ほど嫌われていない(それどころか、欧州の基準からすると、英国人はとりわけ敏感に、こうした望ましい移民とそれ以外の移民を区別する)。

 さらに重要なことに、英国人は、政府の政策が機能していないことを知っている。移民に関する保守党の評価は、完全に失敗した医療分野での評価よりもさらに低い。もし移民純増数の目標値を達成できなければ、英国民の怒りは増すだろう。

 キャメロン首相がこの愚かな目標値を撤回できなくても、政府にはいくつか有効な手があるはずだ。

 例えば企業内の転勤者や留学生など、一部の移入者を目標値から除外することができる。政府は、少なくとも最高学府の留学生に関しては、就労条件を緩和すべきだ。一流大学に留学できる者はほぼ間違いなく、英国にとって有用な人材であるはずだ。

 政府はまた、ビザの発給を迅速かつ簡素化しなければならない。政府は、企業を縛り付けてきた煩瑣なお役所手続きの多くに大なたを振るってきた。移民規則についても同じことをすべきだ。

両足の靴紐を結び合わせたまま走る英国

 新興国が成長するにつれ、若く才能ある外国人は、英国の大学で教育を受けたり、英国の比較的豊かな消費者に自分たちの商品を売り込んだりしようという熱意を薄れさせていくだろう。

 それでも当面は、世界における英国の人気は大きな利点だ。だが英国政府はそれを食いつぶそうとしている。世界は競争の場だ。英国はその世界で、両足の靴紐を結び合わせたまま走ろうとしている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36360  

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