★阿修羅♪ > 経世済民78 > 204.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
IMF・世界銀行総会とホスト国日本の存在感
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/204.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 21 日 22:53:28: cT5Wxjlo3Xe3.
 

『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』

   Q:IMF・世界銀行総会とホスト国日本の存在感

   ◇回答 
□中空麻奈  :BNPパリバ証券クレジット調査部長   
   
    


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今回の質問【Q:1282(番外編)】

 IMF・世界銀行の年次総会が48年ぶりに日本で開催されました。ホスト国として、
日本は存在感を示すことができたのでしょうか。

----------------------------------------------------------------------------
                                  村上龍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■ 中空麻奈 :BNPパリバ証券クレジット調査部長

 48年ぶりに東京で開かれ、188か国が参加したIMF・世界銀行総会が13日に主な日程
を終えました。冒頭に印象をお話しすることからはじめたいと思います。全体的には
あまりぱっとしなかったと思いますし、アメリカや中国などの影が薄かったのに対
し、ラガルドIMF専務理事ばかりが目立っていたように思います。新聞記事を見て
も、一面を華々しく飾ったのは、中国が出席しないということに関する指摘ばかりが
目につきました。今般のIMFの意義がどこにあったのか、そのメッセージが響かな
かったことが恐らく今回のIMF総会の評価を可もなく不可もなくといったものにし、
特色を出せずに終えてしまったことの背景なのではないかと考えます。

 私が属する金融機関も例外ではありませんが、多くの同業他社がこの機に乗じて、
セミナーばかり行っていました。IMF・世銀総会には金融の世界では重要なキーパー
ソンや錚々たるメンバーが世界中から東京に集まった稀有なチャンスであったことは
間違いないため、人の輪を広げようという最低限の課題を課して、多くの方々が集っ
たと聞いています。どれだけの成果につながるかは、誰にもわからないところではあ
りますが、あちこちで、様々なセミナーやらミーティングが行われた大変忙しい週に
はなったわけです。

 日本のアピールという意味では、日本と書いたセンスを使った参加者の様子が微笑
ましくニュースで放送されていましたし、鏡割りや日本的な催しについても、日本と
いうイメージづくりに寄与したはずだと思います。宮城は仙台では「防災と開発に関
する仙台会合」が特別イベントとして開催され、被災地域の悲惨な様子と復興の力強
さ、支援の要と驚愕の回復の両方がうまく主張できたとも思います。

 ただし、本来なされるべき点とは、どの地域に問題があり、その地域の問題にどう
対処するのかをクローズアップさせた上で、グローバルにいかに足並みをそろえてい
くのかの方向性を見出し、その提言をしていくこと、だと考えられます。せっかく48
年ぶりに開催された総会の割には、今回のそれを特徴づけるような決定事項も、メッ
セージもなかったように思われます。

 とはいえ、そうした特徴のはっきりしたメッセージを打ち出して行こうにも、グ
ローバル経済がほぼスタックしているから、という理由はあるでしょう。米国の存在
が薄かったのは、欧州や中国の悪化した状況に手を差し伸べることができない米国経
済の実体があるからではないか、と穿ってみることも可能です。米国経済に対する強
気派が増えてきている昨今ですが、さして強い回復でもなく、底入れした住宅市場と
いえど、QE3など低金利であればこそ、と見ることもできる状況にあります。新築住
宅市場は相変わらず低迷していますし、延滞ローンは依然として大きいまま、住宅
ローンの資金需要の回復に比較すると貸出態度の回復は抑制されています。米国金融
機関にはサブプライムの時のレガシーアセットがまだあるという仮説も成り立ち、大
統領選挙を前に米国はだんまりを決め込んだ、とも取れなくはありません。

 欧州は何と言ってもグローバル経済の問題の巣窟なのですから、率先して何かを出
すのも無理な話です。中国に至っては日本との間の領土問題のためなのか、出席もし
ないわけですから、メッセージを打ち出せるはずもありません。

 現在の日本は、金融システムが相対的には大変盤石になっており、経済の血液足る
資金の流れをもっともスムーズにできるはずの状況にあります。尊敬する邦銀の方が
「邦銀は、私が知っているここ20年間超の歴史の中でも、もっともよい状態」と述べ
ておられましたが、金融が安定している状況です。元来の技術力については、別の尊
敬すべき金融マンが「大変すばらしいシーズをいっぱい持っているのにもったいない
ことだ」と仰っておりました。しかも、「労働者の質も高い」と。ヒト・モノ・カネ
の重要な要素が実は完全に揃っているのが現在の日本だというわけです。そう考えれ
ば、復興の途上というタイミングもあり、日本らしい提言を導き出すことも、できた
はずです。結局は、冴えない展開と印象を残して終わったのは、空転する政治や国会
の動向から、国際競争力が削がれ易く、それが日本人の自信を喪失させているから、
かも知れません。

 いずれにせよ、無事終わったという意味では及第点でしょうが、何が決定したのか
のアピールができていないという意味では、存在感をアピールできたとはとても思え
ません。日本についての要求としては今年度予算の財源確保と財政健全化の一段の進
展が必要、というものに過ぎず目新しさはなし。日本のホスピタリティーはいつも素
晴らしいですが、総会幹事国としては、ホスピタリティー以上のリーダーシップを発
揮したいところだったということではないでしょうか。

                 BNPパリバ証券クレジット調査部長:中空麻奈

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト

IMF・世銀総会は、少なくとも私の周辺ではほとんど話題になりませんでした。日々
の投資家の皆さんとのミーティング、海外のお客さんからの問い合わせ、いずれにお
いても総会について質問されることは一度もありませんでした。

それよりも、この総会の期間中の12日に報道されたソフトバンクによるアメリカの携
帯電話会社の買収計画の方が「日本」の存在感を久しぶりに印象付ける出来事であっ
たように思います。いまや、外資系証券会社では、日本株だけを専門的に扱うセール
ス部隊が少なくなっております。かつては、地域ごとに担当が分かれていたのですが、
現在はアジアとオーストラリアを合わせて、一つのチームになっております。

要するに、これまで日本株しか売れなかったセールスがアジアやオーストラリアの企
業を扱えるようになる一方で、アジア株しか担当できなかったセールスが日本株も売
れるようになったわけです。条件はお互いに同じなのですが、ご想像の通り、日本の
存在感が一層薄まる結果になりました。

こうしたなかで飛び出したソフトバンクによる買収計画は、海外の投資家の目を久し
ぶりに日本に向けさせることになりました。これまで日本株に冷淡であった市場参加
者も日本発の情報に飛びついてきました。買収金額が高額であったことに加え、アメ
リカの会社がターゲットになったことも大きな要素であったと思います。

さらに、今回の買収で、もう一つ興味深いことは、ソフトバンクの取引銀行である国
内大手3行が、買収資金として約1兆5千億円を融資することです。シャープやオリン
パスのケースにおいてもそうでしたが、最近、銀行の「存在感」が、かなり目立つよ
うになってきたように思います。一つ一つの案件の今後の展望については、私は詳し
くありませんが、全体としてガバナンスのあり方も株主中心から銀行中心への先祖が
えりしているのではないかという印象があります。

振り返ってみると、日本が最も「存在感」のあった時代は、1980年代でした。当
時、資産規模でみると、日本の銀行が世界のトップテンを独占する勢いでした。むろ
ん、株価や不動産価格が異常に上昇した結果であり、所詮、持続性のない一時的な現
象であったと例外扱いすることも可能ですが、事実として「存在感」はありました。

この1980年代の日本の強みを一つ挙げるならば、資本コストの安さであったと思
います。日銀は、インフレ抑制のために金融引き締めを強化し負債コストは上昇して
おりましたが、株式の持ち合いを背景に、株主資本コストが事実上ゼロのような状況
でしたので、トータルとしての資本コストはバブルを膨らませるほどに安かったと思
います。

失われた20年では、このまったく逆の金融環境になりました。ゼロ金利がずっと続
いておりますが、外国人の株式保有比率の上昇を背景に、今度は株主資本コストが上
昇してしまいました。いくら日本銀行が金融緩和に努めても、これでは効果がありま
せん。それじゃ、銀行に頼ることができるかといえば、銀行には他人の面倒を見る余
裕がなく、財務レバレッジは下がり続けました。

ただ、興味深いのは、ここにきて、こうした流れが再逆転しつつあるように見えるこ
とです。外国人の日本の株式市場に対する関心が薄れる一方、銀行がファイナンスの
中心に返り咲きつつあります。これが、日本の調子がよかったときの「フォーム」で
す。スポーツ選手も、スランプに陥ると、昔の自分のビデオをみたりします。今の日
本の金融の姿には、それを彷彿とさせるものがあります。もちろん、ただの先祖がえ
りでは何の進歩もなく面白くありませんが、それにしても、日本の「存在感」の復活
を改めて印象付けたIMF・世銀総会の「1週間」でした。

                 JPモルガン証券日本株ストラテジスト:北野一

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 水牛健太郎 :経済評論家

 可もなく不可もなくといったところだったのではないでしょうか。世界経済の現状
は、国際会議で大きな成果が上がるような状況にないようです。

 大きな国際会議をやる以上は、ホスト国の政府は何か成果を上げようとしますし、
参加国にも、ホスト国に花を持たせるといった気持ちは当然あります。今回はラガル
ドIMF専務理事やキム世銀総裁らが東日本大震災の被災地を訪れたり、防災に関す
る国際会議が開かれたり、また日本が最近力を入れているミャンマーの支援関係国会
合が開かれたりしました。それらももちろん、それぞれに意味のある成果ではあるで
しょう。

 ただ、年次総会の本来の意味である経済的な国際協調となると、特にこれといった
目玉はなかったように感じます。世界経済は停滞が続いており、特に欧州の債務危機
と、米国の「財政の壁」(今年末からの減税の打ち切りと歳出削減)が懸念材料とさ
れています。これらの影に隠れて、日本経済は比較的問題がないと見られています。

 日本にしてみれば円高への懸念が大きいのですが、現在の先進国の経済政策は、ど
この国も金融緩和になっていて、通貨は切り下げ競争の様相を呈しています。日本の
円高懸念に積極的に理解が得られる状況ではありませんでした。実際、NYタイムズ
の報道などを見ても、今回の年次総会の記事は何と言っても欧州の債務危機への取り
組みが中心です。もとより日本にできることは多くありません。

 日本の立場に理解が薄いのは、一つにはIMFや世銀がそもそも米欧中心の組織で
あることも大きいと思います。どちらも戦後経済の枠組みを決めたブレトン・ウッズ
協定によって設立され、本部はワシントンDCにあり、世銀はアメリカ人、IMFは
ヨーロッパ人が代表を務めることが不文律になっています。職員や幹部は世界経済に
深い関心と知見を持ち、国際人としての自覚を持っていますが、無意識のうちに、米
欧に軸を置いてものを考える習慣になっているのです。

 別にIMFや世銀に限ったことではなく、現在の世界はどの分野においても米欧に
軸がありますから、日本人の目から見るとしっくり来ないことも多いわけです。たと
えば今年のノーベル平和賞はEUに与えられましたが、ほとんどの日本人にしてみれ
ば、EUにノーベル平和賞を与えるという発想からして、意外というか、唐突としか
言いようがないものでしょう。

 ノーベル平和賞はノルウェーのノーベル委員会というところが選定しており、基本
的にノルウェーの政治家や専門職についている人たち数人で決めています(もちろん、
様々な形で外部からの影響もあるようですが)。一生懸命世界中の情報を集めている
にしても、ノーベル平和賞の選択が、北欧の小さな国のインテリたちの目に映る「世
界の姿」を反映していることは確かです。彼らから見ると、今年は何よりもEUを顕
彰すべき年だったのです。債務危機に揺れる欧州をその中から見続けた人たちの選択
として考えれば、EUにエールを送りたいという気持ちは分からなくはありません。

 世銀やIMFに代表される世界経済の協調の枠組みを、新興国が台頭してきた現状
に合わせるべきだという議論は以前からあります。ただ今回は、新興国の代表と言う
べき中国の中央銀行総裁と財政相が、日本での開催を嫌って欠席してしまいました。
世界第2位の経済大国である中国の欠席が、年次総会の意義を多少なりとも傷つけた
ことは間違いないでしょう。

 中国はもともと社会主義国でもあり、米国が中心となっている現行の世界秩序には
批判を持っています。だから、現在自国と問題を抱えている日本での開催といったこ
とがあると、欠席に舵を切りやすかったのだと思います。また、中国の経済もいま失
速しているところであり、出席してもメリットがないと判断したのかもしれません。

 一方で韓国の財政相と日本の城島財務相との会談が行われ、「日韓財務対話」の再
開で合意したということです。韓国との実務的な関係が復活したということは日本に
とって一つの成果だと思います。

                           経済評論家:水牛健太郎

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

「IMF総会でのわが国の存在感」

 バブルの後始末のフロントランナーとして、それなりのプレゼンスは保てたものの、
全体的に見ると、会議における日本の存在感はかなり低下していると思います。わが
国の経済低迷が長期間続いたこともあり、元々、海外諸国のわが国に対する意識はか
なり低下しています。

 ある大企業の経営者は、「どこに行っても、日本製品が見当たらないのは驚くほど
だ」と指摘していました。わが国は素材や部品などに強みを維持していると言っても、
やはり家電製品などの完成品を海外で見かけることが少なくなっているのは寂しいこ
とです。

 それに伴い、かなり前から日本株専門のファンドマネジャーもめっきり減っている
といわれています。日本の株式市場の重要性が低下しているということです。確かに、
現在の株価が、89年の最高値の4分の一以下という水準であることを考えると、それ
は仕方のないことかもしれません。

 元々、わが国は政治の分野があまり得意ではないといわれてきました。それは、今
までの国際会議などで、わが国が目立ったイニシアティブを取ったことがないことを
見ても明らかでしょう。元々、国際政治の分野で強い発言力を持っていたわけではな
く、わが国の経済力が低下すれば、国際会議でのプレゼンスを維持できないのは当然
といえるのかもしれません。

 それと今回のIMF総会に関して、財務大臣がまた代わったことにも批判が集まっ
たようです。友人の海外メディアの記者によると、海外の財務担当者は、会議毎に日
本の財務大臣が代わっていることに慣れてきたといっていました。ただ、海外の友人
の一人は、「あれだけ頻繁に財務大臣が代わると、海外のカウンターパーティーは、
日本の誰と話をして良いかわからなくなるだろう」と指摘していました。

 国際会議の場での信頼関係を作るためには、実際に顔を合わせて話し合う機会が必
要だと思います。フェース・ツー・フェースで何度も話した相手だからこそ、難しい
話について腹を割って話が出来るということはあるはずです。現在のわが国のように、
頻繁に総理や財務大臣が代わると、そうした信頼関係を築くのは困難であると考えら
れます。

 また、今回の会議には、一部で中国からの出席がなかったことも、わが国にとって
マイナスの印象を与える要素になったかもしれません。現在は、わが国よりも中国の
経済に注目が集まっており、その中国が、わが国との問題の絡みもあり欠席したこと
は、会議の重要性を損なうことになったと考えられます。

 今回の会議について、一つわが国にとって好ましいことがあったと思います。それ
は、わが国の財務大臣が、過度な円高について断固たる措置を取るとの発言を行なっ
たとき、出席者から特段の反対意見が出なかったことです。出席者の心の中の真意が
どのようなものであったかは定かではありませんが、少なくとも、その場での反論な
どはなかったと報道されています。

 為替のディーラや投機筋の連中は、その報道を見て、取り敢えず円の買い持ち=ロ
ングポジションを少し手仕舞ったようです。そうした事情もあり、足元で、円がやや
弱含みの展開になっています。それは、わが国の輸出産業にとって少しメリットがあ
ることでしょう。今回の会議の予想されざる効果のひとつといえるかも知れません。

                       信州大学経済学部教授:真壁昭夫
                
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●○○JMMホームページにて、過去のすべてのアーカイブが見られます。○○●
          ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民78掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民78掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧