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株式日記と経済展望
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ユーロ圏はドイツに支配される地域となり、債権国と債務国の格差は拡大し続ける。
周辺国は恒久的な経済の低迷に沈み、常時、財政支援を必要とすることになる。
2012年10月20日 土曜日
◆竹森俊平『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期
http://blog.livedoor.jp/yamasitayu/archives/52004358.html
毎回、豊富な経済史についての知識と、最新の経済学の知見についてのわかりやすい説明で楽しませてくれる竹森俊平ですが、今回の本も面白い。ユーロ危機という今最もホットな話題を丁寧に、そして時に大胆に読み解いていきます。
この本は大恐慌(世界恐慌)の話から始まります。
1929年10月のウォール街での株の大暴落から始まったとされる大恐慌ですが、実はその恐慌が本格化したのは1931年4月のオーストリアの銀行破綻に始まる欧州の経済危機。
今回の危機においても、2008年のリーマン・ショックが現在のユーロ危機につながり、そしてさらに危機が本格化するのではないのか?というのが著者の見立てになります。
第1章の大恐慌についての分析、「フーバーは正しい認識を持っていたが間違った」という部分も面白いですが、何と言っても面白いのはユーロに内在する問題と、その中での危機の進行、そしてユーロの未来を占った部分です。
まず、ユーロに内在する問題として著者は次のような問題をあげています。
国際経済のには「国際金融のトリレンマ」というものがあり、(1) 為替レートの安定、(2) 自由な国際資本移動、(3) 独立した金融政策、の3つを同時に満たすことは不可能だとされています。
この「国際金融のトリレンマ」と同じように、ユーロ圏には次のようなトリレンマが存在すると著者は指摘します。すなわちそれは、(1) ユーロ圏はトランスファー(所得移転)同盟に転化させたくないリーダー国(ドイツ)の願望、(2) 共通通貨(ユーロ)を存続させたいとい う願望、(3) 北に比べて競争力の弱い南の産業が崩壊する結果、南から北への大量移民が発生し、北に移民のスラムが形成させるといった事態を避けたい欧州全体の願望、の3つです(179ー180p)。
例えば、ドイツは旧東ドイツの統合において、(2)(共通のマルクを使う)と(3)(東ドイツのコミュニティの崩壊を避ける)をとるために、旧東独地域への巨額の財政支援を行いました。また、南北の格差の大きいイタリアでも同じような政策が取られています。
しかし、今回の危機において、この危機を唯一の解決する力のあるドイツは「ユーロ圏はトランスファー(所得移転)同盟に転化させたくない」という(1)にこだわって、GIIPS(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)への財政支援、あるいは財政支援につながりかねない施策を行おうとはしません。もしも、(3)の「大量の移民」を避けようとするならば、ユーロを解体させるしかないわけです。
また、EUのさまざまな仕組みも現在のところ、危機を悪化させる方向に働いています。
トランスファー同盟になることを阻止するためのEUの「非救済条項」は、ギリシャの債務削減交渉において、民間金融機関に「自主的債権放棄」を迫るという強引な手法をもたらしました。「非救済条項」に引っかからないようにするためにとにかく「デフォルト」を回避したかったのです(190ー192p)。
けれども、この「自主的債権放棄」では、債務に対する保険であるCDS(クレディット・デフォルト・スワップ)がおりません。最終的にはギリシャでもCDSがおりましたが、こうなると投資家はより大きな投資先であるスペインやイタリアのCDSも意味がないのではないか?と疑心暗鬼になります。
そしてギリシャほど財政状況が逼迫していない国にも危機は拡大していくのです。
現在のユーロ危機について、著者は「ターゲット」と呼ばれるユーロ圏の決済勘定(この説明については簡単には出来ないので本書の198pを読んでください)、ECBによるLTRO(3年もの資金供給)によって何とか落ち着いていると見ています。
しかし、実はこのしくみはドイツ、あるいはドイツの中央銀行の隠れた負債を増やすものでもあり、ドイツの負担なしにいつまでも続くものではありません。
ですから、著者の見方は悲観的です。
著者はこの本でジョージ・ソロスの次のようなスピーチを引用しています。
「ドイツはユーロが存続出来るだけのことはするだろうが、それ以上は何もしないだろう。その結果、ユーロ圏はドイツに支配される地域となり、債権国と債務国の格差は拡大し続ける。周辺国は恒久的な経済の低迷に沈み、常時、財政支援を必要とすることになるだろう。この結果、欧州同盟は『驚異的な目標』として、人びとの想像力を掻き立てたときとは、かなり様相の異なったものになるだろう。それは『ドイツ帝国』に転化し、周辺国は後背地に成り下がるのである」(263p)
実は、この本を読むまではドイツがユーロから離脱することが一番可能性のあるユーロ危機からの脱出方法ではないか?とも思っていたのですが、この本を読むと、そんなふうに簡単に行かないということがわかります。
統合されてしまった経済を簡単に解きほぐすことはできず、ソロスの言うように、ドイツが危機にい陥った国々を「生かさず殺さず」といった形で支援していくというのが一番ありえそうなシナリオに思えてきます。
しかし、著者は長期的にはこのシナリオも成り立たなくなり、ユーロが崩壊する可能性も十分に高いと見ています。財政支援に対するドイツ国民の不満、ドイツに対する他の国々の反発、いずれも一度火が着いてしまえばそれを抑えるのは難しいからです。
この著者の悲観的なシナリオが果たして本当に実現してしまうのかどうかはわかりませんが、ユーロ危機の構造を丁寧にときほぐしていくさまは本当に面白いですし、「成熟経済では金融業が不要に」(118p)といった部分を始めとして、今後の世界経済を考えていく上で重要な知見があちこちに散りばめられています。
『資本主義は嫌いですか』で、世界経済危機の第1ラウンドであったリーマン・ショックについて見事な分析をしてみせた竹森俊平が、第2ラウンドのユーロ危機においてもまた見事な分析を見せてくれた本と言えるでしょう。
(私のコメント)
金融危機は、資金の追加さえあれば先送りする事ができます。中国のバブルが崩壊するといってもなかなか崩壊しないのは資金の追加融資が続いているからです。アメリカの株価が高値を維持しているのもFRBの資金供給が続いている為であり、それに対して日銀はバブルを潰す為に金利を上げて資金供給を絞った。その結果株価が大暴落して全国の地価が下がった。
果たしてどちらの政策が正しかったのだろうか? 当時の日本はバブルを潰せとの大合唱であり、住宅ブームで値上がりした住宅価格は手の届かぬ価格になっていたからだ。しかしバブルを潰した結果、20年経っても景気は上向かずデフレ状態になってしまった。このような日本の経験があるから、アメリカもヨーロッパも中国も日本とは逆に金融緩和することでバブル崩壊のショックを和らげようとしている。
日本の株価は四分の一まで下げ地価は商業地で五分の一から十分の一まで下げた。それに対してニューヨークの株価は高値を維持して上海の不動産価格も維持されている。そうする事によって金融機関の破綻を防いでいますが、それに対して日本の金融機関の倒産は一部分で済んでいる。不良債権の処理も進んできましたが、アメリカやヨーロッパの不良債権はCDSやCDOが絡んでいる為に処理したくても出来ない。
これらの不良債権は穴の開いたバケツに水を追加しているだけで、中央銀行が資金供給を止めてしまえば不良債権問題が再発します。ユーロ圏における不良債権問題もECBやドイツからの資金の追加があれば問題を先送りに出来ますが、ドイツがいつまで支えきれるのだろうか? PIIGS諸国が経済を立て直して不良債権を処理する事は不可能であり、債権放棄で借金をチャラにするしか無いだろう。しかしCDSが絡んでいるから自主的債権放棄が行なわれた。
こうなると投資家はリスクをとった投資が出来なくなり、安全な投資先にしか投資しなくなる。日本国債が買われているのもその為であり、アメリカのドルや米国債はいつまで持つのだろうか? 日本は再び米国債を買い始めましたが日本が支える形で破綻を先送りにしていますが、最後の貸し手が無くなれば破たん処理しなくてはならない。
ユーロも「ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った」と言う本にあるように、ユーロを救えるのはドイツだけですが、PIIGS諸国への財政支援は消極的だ。ドイツはかつて東西ドイツが統合して東ドイツ地域に多額の財政支援を行ないましたが、東ドイツ地域の発展はなかなか進まない。同じドイツ人でも一度格差が付いてしまうと解消は難しいようだ。
だからドイツと南欧との経済問題でも、経済の建て直しは難しく「大量の難民」がドイツに押し寄せる事になる。それを避けようと思えばドイツが多額の経済援助を続けるかユーロを解体しなければならない。結局ユーロの導入はユーロ圏の経済格差を拡大しただけであり、ジョージ・ソロスが言うように、 「ドイツはユーロが存続出来るだけのことはするだろうが、それ以上は何もしないだろう。その結果、ユーロ圏はドイツに支配される地域となり、債権国と債務国の格差は拡大し続ける。周辺国は恒久的な経済の低迷に沈み、常時、財政支援を必要とすることになるだろう。」となるのだろうか?
このような関係は、日本とその他アジア諸国との関係に良く似ていますが、中国も経済はバブルを抱えて潜在的不良債権を積み上げている。通貨を幾ら安くして輸出競争力を高めても人件費や製造コストが高騰して競争力が無くなれば世界一の外貨準備もあっという間に無くなるだろう。海外からの投資が一斉に引き揚げるからだ。
ドイツは結論的には、『統合されてしまった経済を簡単に解きほぐすことはできず、ソロスの言うように、ドイツが危機にい陥った国々を「生かさず殺さず」といった形で支援していくというのが一番ありえそうなシナリオに思えてきます。』という形でユーロを存続させていくのだろう。
当初はドルに代わる通貨としてユーロが誕生しましたが、ギリシャがトロイの木馬になってしまってユーロは
破綻の危機に直面してしまった。しかしいまさらユーロを解体させるのは経済は入り組みすぎている。通貨には生産力や労働力や技術力が信用価値を反映するものであり、ユーロは限りなくドイツマルクに近づいて行くのだろう。その為には3000ものユーロ圏内の銀行が一つの機関によって監督されるようになり、やがては財政まで統合されるのだろう。
しかし民族問題や歴史問題でドイツとの摩擦が大きくなりどうなるかわからない。日本に対する韓国の「反日」も円経済圏に対する反発であり、通貨スワップ協定も韓国との反発で無くなった。著者も「財政支援に対するドイツ国民の不満、ドイツに対する他の国々の反発、いずれも一度火が着いてしまえばそれを抑えるのは難しいからです。」と言うように政治外交問題化すると解決がむずかしくなる。
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