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■ スプリント・ネクステル買収
ソフトバンクがスプリント・ネクステル買収を1.5兆円で買収すると発表しました。
ところで、その資金はどこから出てくるのでしょうか?
報道ではみずほ銀行を筆頭にメガバンクが融資する様です。
日本の銀行は、資金はありますから1.5兆円を用立てるのは容易なのでしょう。
この融資、ソフトンバンクが経営に行き詰らなければ、
利息が付いて戻って来ますから、
今回の買収でソフトバンクの収益力がアップすれば、融資は成功と言えます。
■ リスクは無いのか?
スプリント・ネクステルは全米3位の携帯電話会社です。
しかし、2位との差が大きく開いており、
アメリカの携帯電話事業は2強体制が確立しています。
はたして、アメリカの携帯電話事業の「負け組み」の買収に意味はあるのでしょうか?
携帯電話事業は、莫大な通信インフラへの投資が必要です。
通信インフラへの投資が滞れば、
それは回線の繋がりやすさなどのサービスの質に影響し、
結果的に顧客は離れてゆきます。
「全米第3位の携帯電話会社を買収」と言えば聞こえは良いですが、
スプリント・ネクステルが果たして投資に値する会社かどうかは一考が必要です。
■ シナジー効果はあるのか?
ソフトバンクは日本国内でも先日イー・アクセスを買収するなど、
積極的な買収によって、勢力を拡大してきました。
国内での同業者の買収は、シェア拡大や通信インフラの拡充というメリットがあります。
イー・アクセスの買収は、プラチナバンドと呼ばれる700MHz帯の獲得の他に、
iPhone5の高速通信サービス(LTE)に不可欠な電波帯域の
1.7GHz帯を獲得する目的がありました。
ソフトバンクの従来のLTE対応周波数帯は3G用の回線で一杯であった為、
ソフトバンクは当初、LTEのサービスを開始しない予定でした。
ところがAUがLTEのサービスを発表した為、
急遽、ソフトバンクもLTEのサービスを開始すると発表しました。
しかし、ソフトバンクの従来周波数帯でLTEのサービスを開始すれば、
ソフトバンクの回線はパンクして、「繋がらない携帯」に拍車が掛かりまし。
そこで、ソフトバンクは多少強引でも、あるいは割高な買い物でも
イー・アクセスを買収せざるを得ませんでした。
しかし、700MHz帯を他社よりも多く取得する結果になり、
総務省は、この状況が適法であるか、調査を開始しています。
多分、民主党が圧力を掛けて、適法と判断されると思いますが・・・。
■ アメリカの携帯電話会社の買収はメリットが少ない
イー・アクセスの買収に限らず、ウィルコムの買収も、
基地局の用地を確保するというメリットが存在しました。
ソフトバンクの国内の企業買収には、それなりの正統な理由が認められます。
一方、アメリカの負け組み携帯会社の買収には、メリットがあるのでしょうか?
スプリント・ネクステルはアメリカ国内の携帯電話会社からも買収の引き合いがありました。
アメリカ国内の企業同士であれば、買収にはメリットが生まれます。
しかし、アメリカの電波行政は寡占を厳しく禁じているので、
業界一位のAT&Tモビリティや、業界2位のベライゾン・ワイヤレスによる買収は却下されています。
この2社のシェアがそれぞれ3割程度、スプリントが16%のシェアなので、
上位二社がスプリントを買収すると寡占状態と判断されるのです。
スプリント以下の携帯電話のキャリアーも沢山存在するアメリカですが、
スプリントが今後、これらの携帯電話会社を統合してシェアを拡大すれば、
ソフトバンクの今回の買収は成功するかも知れません。
一方、スプリントがこのままのシェアであるならば、
2位との格差は、むしろ広がるとも得ます。
スプリントを含め、アメリカの携帯電話会社は今後統合を余儀なくされますが、
既に、上位2社はシェアが大きすぎて、業界再編に関与出来ない。
そこで、海外の企業であるソフトバンクに出資させて、統合を加速させるのでしょう。
■ 単に、日本のメガバンクから資金を引き出す手口でしか無い
今回の買収は、ソフトバンクの企業戦略と言うよりは、
アメリカの携帯電話会社の再編に、ソフトバンクが資金を提供させられている様に見えます。
ソフトバンクは「巨大な自転車操業企業」ですから、
結局は資金の出所は、みずほ銀行を初めとする日本のメガバンクです。
新聞などは、今回の買収を「英断」の様に報道していますが、
株式市場はソフトバンク側のメリットを疑問視して、
ソフトバンク株は下落しています。
CDSのスプレッドと拡大しています。
■ 三菱地所のロックフェラーセンター買収という前例
今回の買収の背景には、円が対ドルで高値である事も影響しています。
バブル経済華やかかりし頃、同様に日本の企業がアメリカに投資しました。
三菱地所のロックフェラーセンター買収を覚えている方も多いでしょう。
当時の報道は、「ジャパンマネーがアメリカを買う!」的な報道で、
いかにも「戦争で負けた日本が、経済でアメリカに勝った」と言いたげでした。
しかし、実際には、アメリカは不動産取引の法律を改正し、
テナントの同意無く、ビルの売却が出来ない様にしました。
結果的に、三菱地所はバブルの崩壊と共に、ロックフェラーセンターを安値で手放し、
大きな損失を被る事になりました。
■ 法律の恣意的な運用や、新法の制定で結局撤退するのでは無いか?
ソフトバンクの今回の買収も、何だか同じ道筋を辿りそうな気がします。
その懸念材料の一つが、ソフトバンクの使用する通信機材が中国製である事です。
アメリカは先ごろ、中国製のルーターやハブが、スパイ行為に使用される恐れがあるとして、
Huawei Technologies(ファーウェイ テクノロジーズ;華為技術)と
ZTE(中興通訊)の製品を、米国企業や政府に利用しないよう米下院の委員会が勧告しました。
ソフトバンクが日本国内で使用している通信機器には華為技術製品が含まれています。
今回のスプリント・ネクステル買収に際しても、この点を問題視する人も居ます。
仮に、今回の買収が認められたとしても、
後日、この件が蒸し返される可能性はゼロではありません。
「お金を出させた後で、難癖を付けて手を引かせる」というアメリカの得意技です。
(最近は中国のお家芸とも言えますが・・・)
■ 何故ソフトバンクにお金を貸すのか?
今回の件で注目すべきは、ソフトバンクでは無く、
ソフトバンクに1.5兆円を融資するメガバンクです。
そもそもソフトバンクは巨大な「自転車操業企業」です。
大型の投資や買収で、派手な話題を振りまきますが、
その台所事情はいつも火の車です。
しかし、何故か、銀行はソフトバンクに融資をする。
普通に考えれば、ソフトバンクの企業戦略はいつでも綱渡り、
「丁半博打」に近いものがあります。
街角で無料でADSLモデムを配ったり(実際には1ヶ月の無料レンタル詐欺)
メガソーラ事業にいきなり参入したり、
企業戦略というよりは、無謀経営と表現したくなります。
しかし、結果的にソフトバンクは成功して、そして成長しています。
だから、新たな事業資金を銀行から借り入れて、
以前の借金を返し続けています。
この点をリスクと考えない銀行は狂っています。
もし、リスクを無視出来るとするならば、
それは成功が最初から約束されているケースです。
例えば、電波行政の規制撤廃の先兵としてソフトバンクを利用する勢力が、
ソフトバンクの資金繰りを強力に後押ししているとか、
例えば、電力自由化をい推進する勢力が、
メガソーラ事業の資金提供を後押ししているとか・・・。
当然、政治献金などの見返りも要求されるでしょうが・・・。
いままでの国内の新規巨大事業は、幸運にも成功したのでは無く、
政治的思惑で、成功が約束されていたのかも知れません。
例えば、国内の通信事業の旧電電公社や、
KDDの寡占状態を破壊する為の先兵がソフトバンクだと捉える事も出来ます。
メガソーラ事業参入時を見ていても、ソフトバンクは民主党と繋がりが深い様に感じます。
旧電電公社系列や、KDD系列のNTTやAUの納入業者は富士通やNECです。
これらの企業の業績が低迷する一方で、
中国製の通信機器を利用するソフトバンクが勢力を伸ばしています。
価格競争の当然の帰結とも言えますが、
旧通産省が主導した護衛船団方式は、現在は見るも無残に破壊されています。
結局、富士通やNECは、携帯電話端末でサムソンやappleに破れ、
通信機器で中国製にシェアを奪われて現在の状況を生んでいます。
市場原理の結果とも言えますが、それを主導したのは誰なのか?
■ 一回の失敗で、無残に倒産する自転車操業
ソフトバンクのビジネスのリスクは、失敗が許されない事です。
巨大投資が一回でも失敗すれば、
途端に資金繰りが出来なくなり破綻します。
私はソフトバンクのスプリント・ネクステルの買収は成功しないのでは無いかと思います。
そして、その失敗によりソフトバンクの経営に赤信号が灯るのではないかと思います。
ソフトバンクは日本の閉鎖的な通信ビジネスに風穴を開けました。
そして、その存在意義は、市場開放という実績と共に段々と薄らいでいます。
最後は欧米の大手通信キャリアーが、経営支援という名目で、
ソフトバンクを買収して、結果的に日本の通信市場の自由化が達成されるのでは無いでしょうか?
日産がルノーに成った様に、気が付いたらソフトバンクがスプリント・ネクテルになっている。
こんな、軒下を貸し手、母屋を取られる状況も、グローバリゼーションの一つの姿では?
<追記>
実際にスプリント・ネクステルは次世代技術への投資が滞り、
さらには、5期連続赤字、負債総額1兆4000億円、時価総額1兆2000億円の企業です。
尤も、ソフトバンク自体が、今回の借り入れを含めれば、負債総額4兆円の企業です。
負債総額は利益とのバランスで判断すべきですが、
収益性が低下した時に、過大な負債は一気に企業の体力を奪ってゆきます。
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