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ワーキングプアのその後−雇用不安社会を生き抜くために
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/901.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 12 日 21:07:34: cT5Wxjlo3Xe3.
 


連合総研レポート
2012年10月号No.275第25巻第10号通巻275号
CONTENTS

ワーキングプアのその後
−雇用不安社会を生き抜くために−

底が抜けた雇用劣化が招くミスマッチ
                             竹信 三恵子 …………4
困難な時代を生きるワーキングプア
−その問題解決に向けた今日的課題−  福原 宏幸 ……………8

巻頭言 ……………………………………………………………2
次代への責任という言葉の重み
視 点 ……………………………………………………………3
「世間師」を育てる
報 告 ………………………………………………………12
「ポスト3.11」の経済・社会・労働に関する研究プロジェクト・
第5回ワークショップ
ポスト成長時代の社会構想
−資本主義・コミュニティと「グローバル化の先のローカル化」−
評議員会・理事会報告 ……………………………………20
「2012年度事業計画・予算」を承認
−第10回定例理事会・第6回評議員会報告−
報 告 ………………………………………………………22
2012年度主要研究テーマ

今月のデータ ……………………………………………27
厚生労働省「平成23年度全国母子世帯等調査の結果」より
母子世帯の就業率は依然高いものの、
前回比 3.9 ポイント減少
「正規の職員・従業員」の割合も減少
事務局だより ………………………………………………28
特集
寄稿
連合総研は、2011年4月より公益財団法人に移行しました。DIO 2012, 10
次代へ の責任という言葉の重み

薦田隆成 連合総研所長

巻頭言
革への着実な一歩がみられた一方で、
積み残し法案が多く出たのは、衆参ね
じれ国会が原因と言われる。今回のねじ
れは2010年参院選の結果であるが、
2007年参院選で生じたねじれの活用が
もたらした威力を、攻守ところを代えて
現大野党が真似をし、与野党入り乱れ
てのチキンゲームが演じられた。
 連合総研が年2回、首都圏・関西圏の
民間企業雇用者(20 〜 50歳代)を対象に
行っている「勤労者短観」の2007年10
月調査では、「次の衆議院選挙では投票
しようと考えていますか」との問に対し、
「必ず投票する」との回答が50.6%あり、
「投票しようと考えている」の24.6%を加
えると、回答者の4分の3が「投票する(予
定)」と答えていた。
 当時のこうした勢いとあいまって、衆
参ねじれを活用した政局イノベーション
ともいえる、日銀総裁を始めとする国会
同意人事への対応や、公債特例法案の
店晒しという作戦が、政治的威力を発
揮し、2009年8月の総選挙につながった
といえる。(憲法に何の根拠規程も無い
参議院の問責決議が大臣更迭につな
がった1998年秋の防衛庁長官の問責は
その先駆けであった。)
 原子力規制委員会の国会同意人事関
係の条文を参考に知恵を絞ることは行
政府がやるだろうが、政治の世界では、
過去にこうしたイノベーションを開発し
た側として、言葉で謝罪するだけで与
党の責任を果たすことにならないかも知
れない。責任を明らかにして、財政法の
改正や、両院の憲法審査会での国民に
開かれた議論ということに、真正面から
取り組むことが求められていると思う。
 大震災からの復興・再生に苦労して
いる日本にとって、外交上の課題も大き
くなっている。このたび国有財産となっ
た島については、払い下げが課題にな
るかも知れない。
 ダブル党首選で投票する人もされる
人も、次代への責任を自問したに違いな
い。今度は、近いうちに信を問われる有
権者一人ひとりの番となる。 
(9月25日脱稿)
経済社会の構造改革に関する基本方
針」、骨太の方針第1号の副題は「新世
紀維新が目指すもの−日本経済の再生
シナリオ」であった。当時、経済財政
諮問会議の事務局で勤務していて、日
本には「維新」という言葉を好きな人が、
とくに政治の世界にたくさん居るのだ
な、と思った記憶がある。明治維新−
戊辰戦争という連想ゲームでいくと、
今年はさしずめ「壬辰の乱」か。
 辰年といえば、1976年(丙辰)2月に
国会提出された特例公債法案は、年度
明け5月に衆議院で可決されて参議院
に送られたが、ロッキード事件で前首
相逮捕などがあって継続審議となり、
次の臨時国会で10月15日に成立した。
そして12月には任期満了衆院選が行わ
れ、暮れに首相が交代した。翌年度予
算の編成作業は、既に8月の概算要求
から一連のプロセスが粛々と進められ
ていた。新内閣で越年編成となり、伯
仲国会ゆえの修正があったが、本予算
は4月16日に成立した。当時、官房の国
会担当課にいたのでよく覚えている。
 昨年、特例公債法は8月末に成立し
たが、今年度の特例公債法案は参議院
で審議未了廃案となったため、次期国
会に新法案を出すこととなる。それま
で11年連続して年度内に成立していた
特例公債法案を、2008年に参議院で年
度を跨いで店晒しにした党が、立場が
変わった今、「公債特例法は予算と一
体だ。国民生活を守れ。」と主張する
だけでは通らないとすれば、減額も一
部含む補正予算との関連づけをせざる
を得ないかも知れない。
 本年9月半ばまでの丁度3年間で、3
人の民主党首相を含め計58名の大臣が
誕生し、自民党衆参議員のうちの大臣
経験者の数を既に上回っていた。副大
臣、大臣政務官や総理補佐官も多く出
たので、2007年の幻の大連立騒動の際
に党首自らが指摘した政権担当能力の
問題は、解決したのかも知れない。
 先の国会で、社会保障と税の一体改

世紀初頭2001年6月に閣議決定さ
れた「今後の経済財政運営及び

― 2 ―DIO 2012, 10

視 点
2000年代に入って以降、少子高齢化はますます進
んで、人口が減少傾向に入り、家計所得の減少など人
びとの生活の質は劣化した。さらに東日本大震災と原
発事故により、生活の安全までも脅かされるようになっ
た。こうした社会の危機の進行のなかで、もっとも重
視すべきものは地域コミュニティの崩壊であろう。
日本の地域コミュニティは、近代化の過程で大きく
変貌したが、それでも人びとの拠り所として一定の機
能を果たしてきたことはまちがいない。現在はいわば
地域コミュニティ崩壊の第二幕が進行しているといえ
るが、そのもっとも大きな原因は地域社会の担い手が
いなくなりつつあるということである。
そうしたなかで、失われた地域コミュニティを再構
築する人材、いわば地域リーダーの存在と活躍が強く
求められている。地域リーダーとはどんな人間をさす
のか、その大きなヒントは、民俗学者・宮本常一のい
う「世間師」にある。
宮本常一はその著書『忘れられた日本人』のなかで、
「世間師」についてつぎのように述べている。
「日本の村々をあるいて見ると、意外なほどその若い時
代に、奔放な旅をした経験をもった者が多い。村人たち
はあれは世間師だといっている。」
「それにしてもこの人の一生を見ていると、たしかに時
代に対する敏感なものを持っていたし、世の動きに対応
して生きようとした努力も大きかった。」
「明治から大正、昭和の前半にいたる間、どの村にもこ
のような世間師が少なからずいた。それが、村をあたら
しくしていくためのささやかな方向づけをしたことはみ
のがせない。いずれも自ら進んでそういう役を買って出
る。政府や学校が指導したものではなかった。」
ここでの「世間師」とは、「若い時代に、奔放な旅を
した経験」から得たことを自らの地域に活かし、「時代
に対する敏感」さと「世の動きに対応して生きようと
した努力」をもちあわせた人であるといえる。いまよ
く使われる言葉で表現すると、“Think globally, act
locally”であろう。
すなわち、語学力やコミュニケーション能力、専門
性をもち、海外でも通用する、いま流行りの「グロー
バル人材」というよりは、「グローバルな視点をもった
ローカル人材」こそが地域再生のために必要とされて
いるのである。グローバルな視点は「奔放な旅」、いい
かえれば、異なる地域や異なる活動分野での経験から
つくられる。そして、活動の舞台はあくまで生活の場
としての地域なのである。
ただし、注意しなければならないのは、「世間師」は
「政府や学校が指導したもの」ではなく、「自ら進んで
そういう役を買って」出ているということである。つ
まり、かつては地域リーダーが自然発生的に登場して
いたのである。
これまでの地域リーダーたちは、先輩たちの例を倣
い経験を重ねることによって、リーダーとして成長し
てきたのであり、意識的に育成されてきたわけではな
い。しかし今後、より多くの地域リーダーを必要とす
る時代においては、リーダーの登場を待っているだけ
では限界がある。より組織的な育成をはかる必要があ
るだろう。
現代の「世間師」を育てるために、労働組合や労働
者福祉事業団体がもっと積極的にこうしたリーダー育
成の教育機会をつくることを期待したい。これらの団
体が、運動課題としての地域再生をもっと重視し、若
い役職員を対象に人材交流をつうじて、さまざまな地
域や活動分野といった広い世間を経験するような機会
を与えてはどうか。労働組合での活動経験が地域社会
で役立つこともあるだろうし、反対に、地域での活動
で経験したことが労働組合運動にもいきてくる。
具体的には、自らの現場感覚を使命感として発展さ
せること、活動の舞台となる地域生活およびとくに制
度に関する知識と情報を取得する手法、ネットワーク
を広げ、コーディネート機能を高めるためのコミュニ
ケーション能力の増強、先導者との出会いの場などの
さまざまな機会をつうじた先行事例の継承といった点
が重要である。
こうした教育機会はまた、次世代リーダー同士のネッ
トワークを拡大し、ソーシャル・キャピタルとしての
リーダー群の確立に大きく貢献するものと思われる。
(連合総研主任研究員 麻生裕子)
「世間師」を育てる


― 3 ―DIO 2012, 10
寄稿


特集 1
ワーキングプアのその後
―雇用不安社会を生き抜くために

底が抜けた雇用劣化が
招くミスマッチ

雇用危機の時代に問う。改革は進んでいるのか。

 雇用劣化の底が抜けた――。東日本大震
災以降の日本の働く現場を一言で言えば、そ
んな言葉があてはまりそうな状況だ。働いて
も生計を維持できなかったり体を壊したりと
いう持続可能でない働き方が増え、生計を立
てるための雇用を求める働き手と、現実の働
き方の間にミスマッチが起きている。欧州経
済危機や震災後の経済崩壊の中で、雇用劣
化へのあきらめと放置の空気が広がる中、働
き方の改善に改めて立ち向かう姿勢が問われ
ている。
●事件や事故の背景に労働条件
 最近目立つのは、事故や事件の背景に労働
条件の悪化が透けて見えることだ。
 今年4月、関越自動車道で高速バス居眠り
運転事故が起き、7人が亡くなった。新聞報
道などによると、このツアーバスの旅行代金
は通常の半値と格安で、主催した観光業者は
バスを運行した業者の間には二つも会社が介
在し、末端のバス運行会社は赤字ぎりぎりの
ラインで運行していたという。事故を起こし
た運転手は運行会社の名義でバスを購入した
いわば自営業で、人手不足のときだけ呼び出
され、「雇用契約」というより極端に不安定
な「オンコール労働(呼び出し労働)」だった。
このため、運行した路線についてもよく知ら
なかったという。「安全教育」が常識とされ
る公共交通の世界では考えられない働かせ方
が起きており、それが事故につながったと考
えられる。
 東京電力の福島原発の爆発でも、その後始
末の作業に雇われていた作業員に対し、勤め
先の下請け会社が被曝隠しを行っていたこと
が明らかになった。ここでも、多重下請け体
制の下、親会社の東電は安全衛生の責任を下
請けに押し付ける形になっており、体力の弱
い下請けが、働き手の被曝量を隠ぺいして作
業を続けさせようとしていた。
 現場の仕事ばかりではない。9月22日付の
各紙は、埼玉県の私立高校で「業務委託」と
して授業を担当してた教員が、派遣会社から
派遣される派遣労働者だったとして、学校側
と派遣会社が東京労働局から「偽装請負」と
し是正指導を受けていたことを伝えた。
 見渡せば、必要な時だけ労働力を提供させ
て使い捨てる間接雇用や、人の労働の上がり
をはねるような業務形態のオンパレード。会
社が直接契約の無期雇用で労働者を雇って訓
練を施し、生活できる賃金を払い、こうした
働き手が結成した労組との集団的労使交渉で
労働条件の改善を図るという原則は教科書の
中に消え去り、そうした状況に異議を唱える
声も高まらないまま、社会は妙に静まり返っ
ている。
 2008年暮れの「年越し派遣村」と、その翌
年の政権交代ごろまでは、雇用劣化は急速に
進展してはいても、これに歯止めをかけよう
という機運も盛り上がりつつあった。だが、
そんな中で生まれた労働者派遣法改正案は、
その後、じわじわと後退し、「不安定な登録
型派遣の禁止」という改正の核とも言える部
分が削られて今年、成立した。
 また、厚労省の直近の調査で4割近くに達
した有期労働についても、通算5年を超えて
反復更新した場合、働き手が申し出れば無期

雇用に転換するとしつつ、原則半年の冷却期
間をおけばその前の有期雇用期間は算入しな
くていいという抜け穴が設けられた。
 背景に漂うのは、「震災やグローバル化で
大変な時に雇用どころではない」といった虚
脱感だ。米国のジャーナリスト、ナオミ・ク
ラークは、その著書「ショック・ドクトリン
〜惨事便乗型資本主義の正体を暴く」(幾島
幸子・村上由見子訳 岩波書店、2011年)で、
大災害や戦争などの非常事態で人々に起きる
ショック状態を利用して富裕層に有利に社会
構造を組み変えようとする世界的な動きにつ
いて分析しているが、労働の世界もいま、そ
うしたショック状態に置かれているようだ。
●ブラック化がもたらすミスマッチ
 こうした中で広がり続けているのが、「ブラ
ック企業」だ。ブラック企業とは、違法・脱
法行為を行って働き手を使い捨て、利益を上
げて行く企業のことだ。極端な長時間労働や
不合理な精神主義経営による過酷な職場につ
いて、若者たちの間で、暴力団や反社会集団
を指す「ブラック」の言葉が用いられるよう
になり、2008年には「ブラック会社」の言葉
をタイトルに用いた書物や映画も公開された。
 そんな職場に歯止めをかけようと、今年は
若者ユニオンや反貧困に取り組むNPOのメン
バーらによる企画委員会が「ブラック企業大
賞」を始めた。その年にもっとも「ブラック度」
が高かった企業を「表彰」する形で世に知ら
しめるという皮肉に満ちた賞だ。
 第1回大賞には、多重下請け構造を利用し
て原発作業員を使い捨て的に働かせたとし
て、東京電力が選ばれた。また、インターネ
ットを通じて公募する市民賞は、極端な長時
間労働や休日研修などで入社半年の女子社
員を過労自殺に追い込んだとして、大手居酒
屋チェーンのワタミ・フードサービスが選ば
れた。
 ブラック企業と言うと、経営難に追い詰め
られたり、法的な知識が足りなかったりして
非人間的な労務管理に走る中小・零細企業を
思い浮かべる人は少なくない。だが、ブラッ
ク企業大賞で著名・大手企業が選ばれたこと
は、ブラック化が、一部の例外的な不心得企
業によるものではなく、日本企業にとって骨
がらみのものであることを示唆している。日
本的経営のいびつな変質である。
 日本的経営は、長時間労働や滅私奉公的な
貢献など、「社畜」とよばれるほどの高い拘
束度が特徴とされ、引き換えに、メンバーに
なった社員には定年までの雇用や年功序列に
よる生活給などの高い保障も提供するものと
されてきた。女性を家庭での育児や介護など
の無償の福祉労働に従事させ、その経済保障
を男性によって行わせる仕組みによって社会
保障費を節約してきた社会がそこにある。
 ところが、グローバル化による競争激化の
中で高保障の部分は維持できなくなり、会社
に都合のいい高拘束だけが肥大した形で残さ
れた状態がブラック企業といえる。就職活動
をする若者の中にはブラック企業を避けよう
と、中小企業を避ける傾向もあるが、こう考
えると、大手企業だから安心とは言えないと
いうことになる。たとえば、ある著名な大手
電機メーカーでは、女性総合職として採用さ
れた女性がプロジェクトリーダーに選ばれた
が、完成期限に間に合わないため人員を増や
してほしいと上司に要求したところ断られ、
長時間労働の中でメンバーのうち二人が自殺
し、うち一人は労災と認められ、女性自身も
重いうつ病で欠勤の末に解雇となり、寮も出
てほしいといわれている。
 高保障なき高拘束の広がりは、「やめたい
といってもやめられない企業」まで生んでい
る。ある中小企業の企画会社に入社した大卒
男性は、大量の仕事をこなすため、寝袋を職
場に持ってくるよう言われ、過重労働の連続
に体調を崩し、会社をやめたいと言ったとこ
ろ、暴力をふるわれたという。
 労働基準監督官らによると、最近では、「や
めさせてくれない」と相談に駆け込んでくる
正社員が目立つという。過酷なノルマや長時
間労働に、体を壊しそうになって退職を申し
出ると、「正社員は無期契約なのでやめるこ
とはできない」「やめるなら損害賠償を払え」
と言われるという例だ。無期雇用は、使用者
の勝手で働き手をやめさせてはならない契約
ではあるが、働き手には退職の自由がある。
だが、会社の高拘束を当然のこととして受け
入れがちな日本社会で、そうしたルールは浸
透しておらず、社員は思いあまって労基署に

 就職活動は長期化し就職のハードルは極端
に高くなっている。これを越えて、やっと手
に入れた正社員としての地位が、このような
劣悪雇用であり、しかも、大手企業でも必ず
しもこうした要素を避けきれないという事実
は、先輩や友人のネットワークを通じて若い
世代に広がりつつある。
 今年の8月27日付日本経済新聞は、文部科
学省の学校基本調査をもとに、大学をこの春
に卒業した56万人のうち6%にあたる3万3000
人が、進学も就職の準備もしていないことが
わかったと報じ、それまで高卒や大学中退者
の間で多いと言われてきた「ニート」が大学
の新卒にも数万人規模で生まれていること
を、「新卒ニート」と呼んで問題視している。
企業を通過しなければ、職業人としての訓練
ができない社会でのこうした層の増加は、労
働力の劣化に直結するからだ。
 これまでは、産業構造の高度化に高卒など
の学力が追い付かず、ミスマッチを引き起こ
して来たとの見方が強かった。だが、大学の
新卒者の間にも同様の現象が目立ってきたこ
とは、雇用劣化の中で、就職活動が、もはや
費用対効果から見て割の合わない行為になり
つつあるという新しいミスマッチが強まって
いることを示しているとも考えられる。雇用
劣化を規制するはずのさまざまな法律の不備
が、その底抜け化を招き、就職活動を「割の
合わない行為」に引き下げてしまった可能性
をうかがわせる。
●被災地雇用のミスマッチ
 こうした変化の中で気がかりなのは、被災
地での雇用創出の今後だ。
 労働者派遣法改正案から登録型派遣の原
則禁止を削る際、使用者側や政府の一部から
は、「女性や若者、被災者の雇用確保のため」
との主張が繰り返された。女性や若者は、こ
れまで、「世帯主である夫や父親に生計を支
えられている」として、不安定で経済的自立
が難しい「お小遣い賃金」にとどめられても
疑問に思われることが少なく、低賃金労働力
の供給源となりがちだった。その枠の中に、
被災者も加えられたことになる。
 被災者の多くは、これまでは失業手当で生
活を支えられてきたが、手当も支給期限を迎
える。こうした「ないよりまし」の雇用創出
観が、緊急時後も続くなら、安定した生活自
立のできる雇用を求める被災者の要望とのミ
スマッチが広がり、被災地の労働意欲はそが
れていきかねない。
 被災地では、自宅での老親介護などを引き
受けている女性も多く、家庭での仕事との両
立のため、定時で帰宅できる緊急雇用でつな
ぎながら、漁業など慣れた仕事が戻って来る
のを待っている。求人があっても、遠距離通
勤や残業、不定期な勤務時間ではこうした
人々の受け皿にはならない。働き手の生活に
配慮した「ワーク・ライフ・バランス」のあ
る事業所を受け皿として増やしていく必要が
あるわけで、「ないよりまし」の雇用設計では、
ここでもミスマッチを広げかねない。
 しかも、今回の震災では、地域が壊滅的な
状態になったうえ、従来からの公務サービス
の削減で人手がぎりぎりに絞られていたこと
もあって多くのハローワークが機能不全とな
り、その穴を埋めることを理由に、人材ビジ
ネスによる職業紹介を政府が奨励した。だが、
人材ビジネスは、紹介料を払える層には有効
でも、低所得者の職業紹介には公的職業紹介
の方が効率的とされてきた。緊急避難として
の人材ビジネスの利用が、公務サービスの代
替物として恒常化されるようなことがあれ
ば、低所得層の職業紹介に影響が及ぶ恐れも
出て来る。
 公的な資金不足の中で、民営化の実験場
になりかねない被災地の雇用劣化を食い止め
るためには、「ないよりまし」と、単に雇用
の数の拡大に走るのでなく、やみくもな非正
規労働化や長時間労働を規制する法律の整
備が必要だ。
●雇用劣化を押し返すために
 このように雇用劣化を問題にするとき、し
ばしば返って来るのが、「グローバル化で競
争が激しいときに、労働条件を下げないと雇
用主の負担が重くなり、雇用が減る」という
反論だ。これらは、まるで呪文のように人々
を黙らせる。だが、これらの言説は、本当に
妥当なのだろうか。
 2002年から2008年秋のリーマンショックの

労自殺を出してしまったりすることとは、ま
ったく別のことだ。「会社が苦しい」ことが、
働き手の人権侵害の容認にまで拡大されてし
まっている現状を、労組も、働き手も、そし
て政府も、直視する必要がある。
 今必要なのは、人間を押しつぶす仕組みな
しでは効率や生産性を達成できないといった
これまでの発想を根本的に問い直し、新しい
生産性や、新しい効率へ向けて発想を転換す
ることだ。
 たとえば、従来の日本的経営では、女性は
家庭での無償労働で社会保障費の抑制に貢
献することを求められ、男性はそんな女性や
子どもを扶養するために長時間労働を求めら
れた。こうした「家庭に女性がいること」が
前提となっている労務管理の下で、働き手は、
一日に長く働いて生産性を上げる「一日あた
りの生産性」を強いられ、このような労務管
理を当然視する風潮が、ブラック企業の温床
にもなっていた。だが、いまや、女性の労働
権の重要さはもちろんのこと、男女が共に働
かなくては暮らしていけない家庭が増えてい
る。製造業が海外へ移転し、女性の知恵が必
要なサービス産業への構造転換も進む。働き
手が残業なしで帰宅できる仕組みは不可欠に
なった。こうした変化を先取りしてきた欧州
では、一日のうち連続11時間は働かせてはな
らないとする「休息時間」を設けることで、
一日当たりの生活時間を確保している。また、
米国も含め、「時間当たりの生産性」が基準
とされ、8時間労働という社会の約束ごとの
範囲内で生産性を上げるための工夫をこらし
ている。
 眠ったり、子どもを育てたりしながら働け
る最低限の生活時間の確保や、最低限死なな
いですむ働き方、といった生活の実態に即し
た「人間らしく働ける仕組み(ディーセント
ワーク)」なしでは、よい発想も生まれず、
労働力も枯渇する。労組も、政府も、そして
働き手一人ひとりが、「グローバル化で企業
が苦しい」「震災だからしかたない」といっ
た言説に惑わされず、雇用劣化を阻止する意
志を放棄しないことが、転換への第一歩だ。
前ごろまで、米国景気に引っ張られて、日本
の景気は戦後最長の「イザナギ越え」といわ
れる長期回復を続けていた。だが、この間、
経常利益に対する人件費比率は低下を続け、
一方で株主に対する配当比率は右肩上がりを
続けた。経済協力開発機構の調査では、派
遣労働が原則全面解禁された1999年から2010
年までの間、日本の賃金の前年比上昇率は、
一貫してゼロまたはマイナスを続け、リーマ
ンショックの翌年の2009年以外ゼロまたはプ
ラスを続けている米国やドイツと際立った対
照を見せている。非正規労働という仕事にか
かわりなく年収200万円以下の賃金ですませ
ることが可能な労働力が蔓延した結果、企業
業績がよくても賃金には反映されない異様な
状況が、日本では続いてきたのである。
 こうした状況について、富士通総研の根津
利三郎専務理事は筆者の取材に答えて、人
件費に利益を回さなかったため会社に資金が
だぶつき、利益を生まない放漫投資が増え、
会社にだぶついたカネをめがけて配当狙いの
ハゲタカ・ファンドが集まる土壌をつくり、
消費が振るわずデフレ脱出も難しくなったと
の批判を展開している(2008年2月26日付「朝
日新聞」)。社会にカネが回らなくなったこと
は、雇用にも影響する。非正社員の大幅増と
いう雇用劣化が、賃金を出せる企業が賃金を
出さない構造を生み、回り回って雇用の減少
の要因になっているわけで、雇用劣化によっ
て雇用主の負担を減らさなければ雇用創出は
できないとする言説の奇妙さが浮かび上が
る。
 とはいえ、震災、欧州危機、さらには石原
慎太郎都知事の尖閣列島購入提案が引き起
こした中国との関係悪化の中で景気低迷が深
刻化したいま、雇用主の負担を増やすような
雇用政策はできないという主張もあるかもし
れない。
 だが、景気低迷で賃金を上げられない企業
が増えていることと、短期雇用で先の見通し
もつかない働き手を増やしたり、質の高い仕
事をこなしても身分が非正社員だと言うだけ
で賃金を正社員の半分程度にとどめたり、長
時間労働を野放しにしたり、働き手がやめよ
うとすると脅しをかけて暴力をふるったり、
人員が足りないと訴えられても知らぬ顔で過
労自殺を出してしまったりすることとは、ま
ったく別のことだ。「会社が苦しい」ことが、
働き手の人権侵害の容認にまで拡大されてし
まっている現状を、労組も、働き手も、そし
て政府も、直視する必要がある。
 今必要なのは、人間を押しつぶす仕組みな
しでは効率や生産性を達成できないといった
これまでの発想を根本的に問い直し、新しい
生産性や、新しい効率へ向けて発想を転換す
ることだ。
 たとえば、従来の日本的経営では、女性は
家庭での無償労働で社会保障費の抑制に貢
献することを求められ、男性はそんな女性や
子どもを扶養するために長時間労働を求めら
れた。こうした「家庭に女性がいること」が
前提となっている労務管理の下で、働き手は、
一日に長く働いて生産性を上げる「一日あた
りの生産性」を強いられ、このような労務管
理を当然視する風潮が、ブラック企業の温床
にもなっていた。だが、いまや、女性の労働
権の重要さはもちろんのこと、男女が共に働
かなくては暮らしていけない家庭が増えてい
る。製造業が海外へ移転し、女性の知恵が必
要なサービス産業への構造転換も進む。働き
手が残業なしで帰宅できる仕組みは不可欠に
なった。こうした変化を先取りしてきた欧州
では、一日のうち連続11時間は働かせてはな
らないとする「休息時間」を設けることで、
一日当たりの生活時間を確保している。また、
米国も含め、「時間当たりの生産性」が基準
とされ、8時間労働という社会の約束ごとの
範囲内で生産性を上げるための工夫をこらし
ている。
 眠ったり、子どもを育てたりしながら働け
る最低限の生活時間の確保や、最低限死なな
いですむ働き方、といった生活の実態に即し
た「人間らしく働ける仕組み(ディーセント
ワーク)」なしでは、よい発想も生まれず、
労働力も枯渇する。労組も、政府も、そして
働き手一人ひとりが、「グローバル化で企業
が苦しい」「震災だからしかたない」といっ
た言説に惑わされず、雇用劣化を阻止する意
志を放棄しないことが、転換への第一歩だ。

寄稿


特集 2

困難な時代を生きる
ワーキングプア

−その問題解決に向けた今日的課題−

はじめに
 働く人びとのなかに一定の貧困層が存在す
るという問題それ自体は、決して新しいもの
ではない。多くの先進諸国では、戦前の時期
はもちろん戦後の経済成長期においても、そ
のような人びとが存在していた。とはいえ、
戦後においては、経済成長を前提に完全雇用
政策と最低生活保障制度を軸とする福祉国家
のもろもろの装置、そしてこれに加えて家族
と企業を構成要素としてできあがった福祉レ
ジームが、福祉の供給と分配をとおして人び
との生活を支えてきた。この時代では、「普通
に働けば貧しさから脱することができる」と
理解され、貧困は実体としても減少している
とみなされてきた。 
 しかし、1990年代以降、経済のグローバル
化や知識基盤型経済への移行、そして社会の
個人化などの要因によって、ワーキングプア
が増大し、それが深刻な社会問題となった。
これは、世界の先進諸国に共通してみられる
現象である。この点からみると、日本におけ
る今日のワーキングプア問題は、社会経済の
構造的な変化に対応できなくなった20世紀の
福祉レジームの機能不全によるものとみるこ
とができる。とはいえ、ワーキングプア問題
のそのあり様は、先進各国において多様性を
帯びている[たとえば、Peña-Casas and Latta
2004. Fraser, Gutiérre and Peña-Casas 2011
参照]。
 日本のワーキングプア問題は、上にあげた
諸要因によって生じたという点では他の先進
諸国と共通しているが、日本特有の労働市場
構造と福祉レジームによって規定されている
部分も大きい。日本のワーキングプア問題を
考える場合、こうした観点を念頭に置いてお
くことが重要だろう。
 ところで、日本におけるワーキングプア問
題に関しては、その数量的な増大傾向が多く
の統計分析を通して明らかにされてきた。し
かし、彼らの就労と生活の実態についての調
査研究は決して多くない。こうした中で2009
年に実施された連合総研の調査は、貴重なも
のであるといえよう。この調査では、社会経
済構造の変化のなかで、ワーキングプアがど
のような働き方、暮らし方を余儀なくされて
いるのかを明らかにした。また、日本型福祉
レジームは、彼らの雇用と生活を支えること
ができずにいる点も明らかにした。
 以下では、この連合総研の調査結果をふり
かえるなかで、ワーキングプアが直面してい
る課題を整理するとともに、福祉レジームの
改革という点にも触れつつ、求められる施策
について述べたいと思う。
1.ワーキングプアの貧困と社会的排除
 2009年に実施された連合総研ワーキングプ
ア実態調査では、東京と大阪を中心に120人
のヒアリング調査と620人のアンケート調査を
おこなった。この調査によって、以下のこと
が明らかとなった[連合総合生活開発研究所
2011][福原 2011]。
 一つは、ワーキングプアのなかには、生育
福原 宏幸
(大阪市立大学大学院経済学研究科教授)
― 8 ―DIO 2012, 10
過程における困難な家庭環境や低学歴といっ
た問題を抱えていた人が多いことがわかっ
た。親の離婚や一人親家庭であること、貧困
家庭といった家庭環境が当事者の精神的な不
安定さや低学歴をもたらし、それがその後の
不安定な就労を規定しているケースが多くみ
られた。
 なお、ワーキングプアのなかには、恵まれ
た家庭環境に育ち、学歴も比較的高い人もい
る。彼らのなかには、就職活動時期が就職氷
河期と重なって「失敗」し非正規社員となっ
たケースや、正社員として就職したが勤務先
での人間関係がうまくいかないなどの理由で
退社し、場合によってはその後ひきこもりを
経験するなどして、非正規社員となったケー
スなども多くみられた。
 第2に、学校修了後の労働において、不安
定さと低賃金が多くみられた。ワーキングプ
アは、派遣労働やパート・アルバイトに従事
したり、「非定着型正社員」として就労してお
り、また転職回数も多いことから、雇用の不
安定さがみられた。これはまた、継続的な就
労経験の蓄積や技能の向上に結び付かず、そ
の結果、彼らが就く仕事は周縁的なものにな
らざるをえない。これらはいずれも低賃金で
あり、家族のなかに安定した所得をえる人が
他にいなければ貧困への抵抗力を弱め、たち
どころに貧困に陥っていく。同時に、彼らは、
短期の雇用契約が多いことから、つねに失業
のリスクを抱えている。ワーキングプアには
雇用保険加入者は少ないことから、明日の生
活をなんとか遣り繰りする必要から、低賃金・
不安定であっても仕事に就くことを余儀なく
される。こうして、彼らの生活は負のスパイ
ラルに陥っていく。調査を実施した2009年7−
9月は、リーマン金融危機の影響によってこの
失業はいっそう深刻であった。
 第3に、こうした労働の不安定さと貧困は当
事者の自尊感情を損ない、それによってワー
キングプアは家族、友人、企業組織、そして
地域社会から遠ざかる傾向をもった。すなわ
ち、社会的つながりの希薄さや断絶である。
これは、社会のなかで「認められた存在」(社
会的承認)として自らを認識することができ
ず、いっそう強く自尊感情を損なうことにな
る。
 第4に、正社員・常用雇用者を前提とした
社会保険制度では、非正規雇用に従事してい
る人びとの多くは、加入要件を満たさない、
手当受給年数に足らないといったことから、
これらの制度から排除されていた。
 以上のように、ワーキングプアの多くは、
こども期の貧困、そして学校教育、労働市場、
社会的つながり、セーフティネットなどの領
域における社会的排除を経験し、さらにこれ
らが相互に関連しながらワーキングプアに対
しいっそう深刻な社会的排除と貧困をもたら
す構造がみられた。なお、日本社会には、こ
れらワーキングプア層と一部重なるが、「就職
困難者」と呼ばれる人びとが存在する。彼らは、
学校修了後就職ができずにひきこもっている
人びとや、就労意欲はあるがさまざまな就職
阻害要因によって就職活動ができないあるい
はうまくいかない人びとである。仮に就職で
きたとしても低賃金であることが多く、ワー
キングプア予備軍的な地位にある。このこと
から、ワーキングプアとあわせて「就職困難者」
への支援もまた、重視する必要がある。
2.ワーキングプアと日本型福祉レジーム
 連合総研の報告書における拙稿[福原 2011]
では、日本におけるワーキングプアの実態を
このように総括するとともに、この問題を社
会経済システムのなかに位置づけた。すなわ
ち、高度経済成長期につくりあげられた正社
員を中心とした企業メンバーシップ、男性稼
ぎ主型家族モデル、そしてこれらを前提とし
た生活保障システム、これら三つが分かちが
たく結びついてできあがっている日本型福祉
レジームのもとでの諸政策では、1990年代以
降に登場してきたワーキングプアや就職困難
者などの問題を解決することができなくなっ
たのである。
 第1に、企業メンバーシップがつくりだした
労働市場の分断構造のなかにあって、多くの
非正規雇用者は外部労働市場にとどまり続け
― 9 ―DIO 2012, 10
ることを余儀なくされるとともに、低すぎる
最低賃金額と不安定雇用によって規定された
低所得・貧困から脱することができないとい
う固定化の問題がそこにはあった。第2に、男
性稼ぎ主型家族モデルから離脱した母子世帯
の母親や、低所得に規定されて家族を形成す
ることができない単身男性は、貧困への抵抗
力を確保することができない。また、こうし
た家族モデルを前提に構築された社会保障の
もとでは、彼(彼女)らへの生活保障の仕組
みはきわめて不十分であった。最後に、国の
セーフティネット制度では、第1のセーフティ
ネットである雇用保険からもれ落ちる人が多
いといった問題、最後のセーフティネットで
ある生活保護では稼働能力をもつ貧困層を十
分に支給対象としてこなかったという問題が
あった。
 たしかに、2002年から2005年にかけて、政
府は、就職困難な人びと、とりわけ母子世帯
の母親、若者、ホームレスそして障害者に対
する一連の自立支援政策を実施してきた。し
かし、それらの政策の性格は、いわば「はじ
めに就労ありき」型ワークフェアというべき
ものであった。すなわち、高度経済成長期を
経て形成されてきた日本型福祉レジームのも
とで、「普通にがんばれば企業社会への包摂
と家族形成が可能なはずである」との観念が、
時代状況が変化した1990年代においても依然
として困窮者支援の理念として生き残り、時
代錯誤的な自助努力論として政策が展開され
たのである。また、この自助努力論は小渕・
小泉政権の新自由主義的路線の自己責任論と
共鳴して「自立支援」というキーワードに統
合されて、いっそう強く「はじめに就労ありき」
型ワークフェアが展開されることになった[福
原 2012]。
3.雇用政策と生活支援政策の統合政策
 その後、小泉政権の後を継いで2006年9月
に登場してきた安倍政権は、2007年2月「成
長力底上げ戦略」において経済格差の拡大と
ワーキングプア問題などを政策課題として取
り上げるようになった。これは、「はじめに就
労ありき」型ワークフェアではもはやこれら
の問題は解決できないことを示すものであっ
たし、これの転換をはかろうとした点で重要
である。しかし、安倍政権が示した政策は、
こうした問題を引き起こしている社会経済の
あり様、すなわち日本型福祉レジームの改革
に手をつけるものではなく、ワーキングプア
や就職困窮者のやる気と能力開発のみを重視
した政策であった。すなわち、「就労アクティ
ベーション」というべき政策体系であった[福
原 2012]。
 2009年6月に麻生政権のもとで出された「安
心社会実現会議報告」は、「社会的包摂」や
「『公』の新たな担い手の支援」を提起した。
その後の民主党・鳩山政権に至る過程では、
「訓練・生活支援給付金」を盛り込んだ「緊
急人材育成支援事業」が登場し、一部地域で
のモデル事業であるとはいえ社会的困窮者の
生活支援も視野に入れた「パーソナル・サポ
ート・モデル事業」などが開始された。この
時代、「就労アクティベーション」に加えて「社
会的アクティベーション」も推進されるよう
になった。しかし、他方では、雇用保険と生
活保護の2つのセーフティネットの間に恒常
的な第2のセーフティネットとして位置付けら
れて2011年10月に導入された求職者支援制度
は、雇用保険の受給期間満了者および未加入
者のすべてが活用できる制度となっておら
ず、セーフティネットとしての機能が十分に
発揮されないという限界が示されることにな
った。
 2012年になると、野田政権のもとで、「生活
支援戦略」と新しい雇用ビジョンの具体化が
はじまる。
 「生活支援戦略」では、就職困難者に対す
る日常生活自立支援から、社会参加、中間的
就労そして一般就労へと繋ぐ支援の体系を伴
走型支援と社会的企業を活用しつつ実施する
ことがめざされている。これは、雇用と福祉
の連携政策であり、その政策志向は、対象や
支援機関の限定、支援メニューの不履行に対
する罰則などを含むワークフェアではなく、
当事者の意欲の喚起とニーズ・能力に応じた
― 10 ―DIO 2012, 10
支援をめざすアクティベーションとして設計
されようとしている。それは、これまでの福
祉レジームが前提としてきた企業メンバーシ
ップや男性稼ぎ型家族モデルに依拠しなくて
も安心して暮らしていける社会的つながりの
構築を前提としている(ただし、生活保護制
度改革では、ワークフェア的な施策がとりこ
まれる可能性も残されているのだが)。
 また、雇用ビジョンについては、厚生労働
省の「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」
が、2012年3月に「望ましい働き方ビジョン」
を取りまとめた。それは、人材育成、正規・
非正規の二極化を超えた「雇用の安定」「公
正な処遇」「多様な働き方」の実現など、企
業メンバーシップに代わる新しい価値規範に
もとづいて労働市場を再構成し、すべての労
働者がその能力とニーズにあった働き方をめ
ざそうとするものであった。
 すでに、2012年8月には労働者派遣法と労
働契約法の改正が決まった。前者の改正では、
@雇用期間が30日以内の日雇派遣の原則禁
止、A離職した労働者を離職後1年以内に派
遣労働者として受け入れることの禁止などが
盛り込まれ、これらによって不安定雇用の拡
大を抑えることがめざされている(ただし、
懸案であった製造業派遣の禁止については見
送られた)。
 改正労働契約法は、有期雇用契約のもとで
働く1200万人が対象となるが、@反復更新さ
れて通算5年を超えたときは、労働者の申込
みにより期間の定めのない労働契約(無期労
働契約)に転換できる無期労働契約への転換
のルール化、A「雇止め法理」の法定化、B
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、
期間の定めがあることによる不合理な労働条
件の相違を設けることを禁止する不合理な労
働条件の禁止が定められた。これらをとおし
て、有期雇用から無期雇用への雇用転換を促
すこと、身分の違いではなく仕事の違いによ
り処遇を決める流れを後押しすることがめざ
される。
 これらの政策動向をみると、それはより積
極的なアクティベーションの追求であるとと
もに、就職困難者やワーキングプアを生み出
してきた福祉レジームに対しても一定のアプ
ローチをはかろうとするものであることがわ
かる。
むすび
 ようやく、ワーキングプアそして就職困難
者に対する政策の領域で、新たな展開がはじ
まろうとしている。それは、アクティベーシ
ョンの強化として展開されつつある。しかし、
それがどのような類型にもとづいて実施され
ようとしているのか、この点については不鮮
明な部分が多い。また、こうした政策展開を
通して、日本型福祉レジームの改革をはかろ
うとする動きも読み取れる。しかし、これが
どのような方向に向けての改革なのか、それ
もまだ明確ではない。
 このように、改革の方向性については混沌
とした部分を残している。しかし、新しい政
策が、一つひとつ着実に実施に移されるその
流れはもはや変わらないことを期待したい。
なぜなら、非正規雇用者の増加、そして貧困
の広がり、もちろんワーキングプアの増加は、
なにも止まっていないのだから。
【参考文献】
福原宏幸(2011)「ワーキングプアに対する社会的排除の
諸相−雇用・生活実態から雇用・福祉レジームを検討す
る− 」『大分大学経済学論集』第63巻第4号。
同(2012)「日本におけるアクティベーション政策の可能
性−−現状と展望−−」、福原宏幸・中村健吾共編著『21世
紀ヨーロッパ福祉レジーム−−アクティベーションの多様
な改革と日本−−』糺の森書房。
連合総合生活開発研究所(2010)『ワーキングプアに関す
る連合・連合総研共同調査研究報告書T−ケースレポート
編−困難な時代を生きる120人の仕事と生活の経歴』(主
査:福原宏幸)。
同(2011)『ワーキングプアに関する連合・連合総研共同
調査研究報告書U −分析編− 〜困難な時代を生きる人々
の仕事と生活の実態〜』(主査:福原宏幸)。
Fraser,N., R.Gutiérre and R.Peña-Casas (2011) Working
Poverty in Europe : A Comparative Approach, Palgrave.
Peña-Casas, R. and M. Latta (2004) Working poor in
European Union,European Foundation for the
Improvement of Living and Working Conditions.
― 11 ―DIO 2012, 10


ポスト成長時代の社会構想
−資本主義・コミュニティと「グローバル化の先のローカル化」−
広井 良典(千葉大学法経学部教授)
松山 遙
日比谷パーク法律事務所
弁護士
報 告

係すること、その次にコミュニティの在り方などをお話
します。最後に、このワークショップで既に西川先生が
お話された連帯経済とも関係しますが、コミュニティ経
済という新たな経済について、お話したいと思います。
 それでは、最初のイントロのところです。皆さんは違
和感があるかもしれませんが、私は最近、あえて「人口
減少社会という希望」という言い方をしています。人口
減少社会をむしろポジティブにとらえるべきということ
を、まずお話します。
 お手元の資料は、イギリスの雑誌『The Economist』
の2010年秋の特集号の表紙で、大きな日の丸を抱えた
子どもが潰れそうになっている絵で、ずばり「Japan’s
burden」と書いてある。この特集号では、ジャパン・
シンドローム(日本症候群)という、もう一つのキーワ
ードがあって、日本が抱える問題の本質は、高齢化と人
口減少だと書いてあります。ただ、もう一つのメッセー
ジは、これは日本だけの問題ではなくて、先進国が共通
して、日本の後を追う形で直面していくという点です。
つまりこの問題に日本がどう対応するかは、日本だけの
問題ではないという意味合いが込められています。
 しかし、人口減少と高齢化はもっとプラスの面を持っ
ているということが、今日のお話の一つの柱です。
(図−1)のように平安時代から長いタイムスパンで
人口減少社会という希望−真の「豊かさ」
に向けて
 私は、2001年に『定常型社会』という本を出す機会
がありました。これからは、かつての高度成長期のよう
な成長が続くことはあり得ず、むしろゼロ成長でも豊か
に暮らせる社会をいかにつくっていけるかが今後の日本
の課題である、という内容です。当時は、定常型社会な
どあり得ない、経済が成長してこそ人間は豊かになるの
だと、あらゆる方面から批判されました。ところが、最
近では状況が大きく変化し、むしろ逆の方向からの批判
というか、もうゼロ成長も高望みであって、マイナス1
〜2%ぐらいでようやくだ、などの意見もあり(笑)、
かなり変わってきています。
 今日、「ポスト3.11」というテーマでお話をさせてい
ただくのですが、3.11大震災はそれ自体がものすごく大
きなことであったと思います。しかし、震災の話だけが
独立してあるというよりは、日本社会が以前から抱えて
いた様々な問題、たとえば毎年3万人以上の自殺者、財
政赤字の累積、コミュニティの崩壊などは、震災以前か
ら存在していたわけです。震災が、そういう問題を先鋭
化させ、逆に改革を急ぐ必要があることを私たちに突き
つけたのだと思います。では、どうしたらいいのかにつ
いて、今日はできるだけ前向きな、ポジティブなお話が
できればと思います。
 それで、最初にイントロ的なお話、次に社会保障に関
<図−1>
― 12 ―DIO 2012, 10
連合総研「ポスト3.11」の経済・社会・労働に関する研究プロジェクトは、2012年7月26日、連合会館


おいて第5回ワークショップを開催しました。今回は、千葉大学の広井良典教授から「ポスト成長時代

の社
会構想」をテーマに講演いただきました。この講演の要旨は、連合総研の責任において作成・掲載した


のです。
日本の人口のトレンドを見ると、基本的に江戸時代の人
口は3,000万人ぐらいで安定していました。しかし、黒
船がやってきて、これではいかんということで、急激な
人口増加をたどるようになり、第二次大戦が終わったこ
ろが7,000万人ぐらいでした。その後もずっと人口カー
ブは緩むことなく上昇を続け、2004年にピークを迎え
て、2005年から人口減少という状況になっている。こ
れを見ると、いわばジェットコースターみたいな感じで、
今は急激に落ちていく入り口に立っているような感じで
す。
 2050年には1億人を切って、2100年には5,000万人を
切ってしまい大変だと言われています。しかし、この図
のもう一つの見方は、これまでは無理に無理を重ねてき
た100年だったのではないかということです。黒船が来
て、ものすごい武力を見せつけられて、富国強兵に邁進
し、戦後はとにかく経済成長ということで、無理に無理
を重ねて背伸びをして走り続けてきたのが、これまでの
100年です。その矛盾が、あらゆる意味で一番現れてい
るのが今の時期です。これからは、そういう方向から解
放されて、本来の自然な方向に向かっていく、その入り
口に立っているのではないか。ちょうど黒船が来た時と
同じような分岐点に来ているのではないかと思います。
 ちなみに基本的な事実として、イギリス、フランス、
イタリアの人口はいずれも約6,000万人で、ドイツは
8,000万人強です。ある程度まで減少し、やがて定常化
するというのが望ましい姿ではないでしょうか。
 今、プラスの方向という話をしましたが、最近、幸福
度の研究が活発になってきて、いろいろな国際ランキン
グが出されています。どれを見ても日本の幸福度は非常
に順位が低く、ミシガン大学の「世界価値観調査」では
43位、イギリスのレスター大学の「World Map of
Happiness」では90位となっています。GDPでは相当
上位にありながら、幸福度が非常に低いのは、何か根本
的な問題があるのではないかと考えるわけです。もちろ
ん、幸福度というのは極めて主観的なもので、数量化す
るのは非常に難しいので、国際比較も難しいということ
は留保する必要があります。
 人口減少社会はマイナス面ばかりでないということの
一つの手がかりは、江戸時代の終わりから明治のはじめ
に日本を訪れた外国人が口をそろえて、「これほど幸せ
そうに見える人々を見たことがない」と言っている点で
す。アメリカの初代総領事ハリスは、「これほど幸福そ
うである日本を開国させることが、ほんとうに幸せにな
るのかどうか疑わしい」ということを書いています。イ
ギリス人のエドウィン・アーノルド(明治22年)も、「こ
れ以上幸せそうな人々はどこを探しても見つからない」
と言って、町の人々の様子を描いています。
 これは、ブータンなどの話とも似ていて、当然これは
外側からの印象だけではないかとも言えるわけです。た
だ、おそらく外国人が今日本に来て、「これほど幸せそ
うな人々はいない」とは言わないだろうと考えると、こ
こに、何か一つ手がかりがあるのではないかと思います。
 そういう意味で豊かさについて、発想の転換が必要で
す。江戸時代は、人口3,000万人で、農業を中心とした
定常型社会として一定の豊かさや幸福が実現していたの
は、今よりも時間的、空間的なゆとりがあり、地域のつ
ながりも自然な形であったからだと思います。私は、こ
うした点も意識しながら、新たな定常型社会、ポスト産
業化時代の新たな社会を日本が先導していくべきだと思
っています。
 それから、この研究会の一つのテーマでもあると思い
ますが、サルコジ大統領の委員会で、ノーベル経済学賞
を受けたスティグリッツやセンといった学者がGDPに
かわる新たな指標についての報告書を出しています。ま
た、荒川区の「Gross Arakawa Happiness」(GAH)や、
高知県の経済同友会などでもGKH(Gross Kochi
Happiness)として、地域のつながりといった新たな豊
かさの指標を考えていこうという動きが出てきていま
す。また、私も参加していますが、内閣府の「幸福度に
関する研究会」でも、「経済社会状況」、「心身の健康」
に加えて、「関係性(つながり)」を視野に入れた指標づ
くりの検討が進んでいます。
 要するにGDPがある程度成長すれば、人々の生活満
足度が上がるという状況ではないということが、幸福の
「ポスト3.11」の経済・社会・労働に関する研究プロジェクト・第5回ワークショップ
― 13 ―DIO 2012, 10
がむしろ接近してきて、しかも対立の舞台が下側に移っ
て来ている状況です。そこで、「持続可能な福祉社会」
という新しい社会モデルが求められるようになっていま
す。では、それがどのような形で可能なのか、次に考え
ていきたいと思います。
1.資本主義の進化とこれからの社会保障
 わが国の社会保障の総給付費は、2009年度で約100兆
円と、非常に大きな規模になっています。ただし、対
GDP比による国際比較では、アメリカと並んでむしろ
最も小さい部類です。全体としてヨーロッパ大陸は社会
保障が手厚く、高福祉・高負担型になっています。
 日本の社会保障は、先進国の中で対GDP比の規模は
一番低く、しかも年金が社会保障の半分以上を占めてい
て、福祉分野の比重がとくに小さいのが特徴です。では、
日本の社会保障が低いわりには、なぜ、アメリカほど貧
富の差が大きくないのか。これは、インフォーマルな社
会保障の存在のためです。終身雇用の会社が、正規雇用
とその家族の社会保障の下支えをする役割を果たしてき
ました。それに、私は「公共事業型社会保障」と言って
いますが、公共事業が地域での職の提供を通じて、社会
保障的な機能を果たしてきたということです。しかし、
小泉改革で公共事業が削減され、低い日本の社会保障を
下支えしてきた要素が失われた結果、日本はOECD平
均よりも格差が大きくなってしまったわけです。
 とくに大きな問題は、若者の失業率が高いことと、失
業していなくても非正規雇用の若者が非常に多いという
問題です。この若者の失業率が高いのは、現在の先進国
が生産・供給過剰という状況になっているからです。社
会にモノがあふれ、需要が限りなく増える状況でなくな
ってきた結果、日本に限らず先進国の若者の失業が慢性
化しているわけです。
 この問題については、「成長の限界」を出したローマ
クラブが1990年代に、「楽園のパラドックス」として論
じています。一言でいえば労働生産性が最高度に高まっ
た社会では、ほとんどの人が失業してしまうという考え
政治経済学などで活発に議論されています。では、幸福
度を決める要素として何が大きいのかといえば、「コミ
ュニティのあり方」、それから「所得分配の問題」、「自
然環境とのかかわり」や「精神的なよりどころ」などだ
と思います。
 それから、今までの話と多少次元が違うかと思います
が、(図−2)は、何を示しているかというと、横軸が
分配の対立軸で、左側が大きな政府で高福祉・高負担、
右側が小さな政府で低福祉・低負担の社会です。縦軸は
パイの総量、経済の大きさで、上側が成長志向、下側が
環境(定常)志向としています。第二次大戦以後の基本
的な対立軸は、左と右の対立で、左側の考え方を「伝統
的社民、ケインズ主義」、右側は「伝統的保守、市場主義」
としています。
 ただ、これまでは大きな政府派も小さな政府派もいず
れも成長志向でした。左派は政府が積極的な活動を行う
ほうが成長する、右派は市場に委ねたほうが成長すると、
成長志向という点では共通していたと思います。ところ
が、1970年代頃から「成長の限界」が言われるように
なり、人々の需要が拡大し続けるという状況ではなくな
って、徐々に縦の対立軸が浮かび上がってきました。し
かも、上から下のほうへ、成長志向から環境・定常志向
に移ってきています。そうなると、従来の左と右の対立
<図−2>
― 14 ―DIO 2012, 10
です。労働生産性が最高度に達した社会では、少数の労
働ですべての需要を満たすことができるため、生産性が
高ければ高いほど失業者が増えてしまう。従来は、その
失業は需要が拡大することで吸収できたのが、そういう
状況ではなくなってきた。そのため、若者の失業問題は
日本だけに限らず、ヨーロッパ、アメリカにも共通して
います。
 企業は生産を極大化しようと行動するが、生産過剰が
背景にあり、需要や消費が無限には拡大しないので、物
をつくれば売れる状況ではなくなっている。そのため、
以前は、定常型社会なんて全くあり得ないと言われたが、
最近は企業の方々も、人口減少社会のため物をつくって
も売れない、生産を拡大すれば成長する状況ではないと
いう認識を持つようになっています。
 そういう状況を踏まえて、パイが拡大する時代とは違
う方向での対応を考えていく必要があります。では、ど
うしたらいいのか。最終的に、私は三つの方向が必要だ
と思います。一つは、過剰を抑制するために、ワークシ
ェア的なことを含めた労働時間の短縮や環境政策が必要
です。第二に、再分配(社会保障)の問題です。それか
ら第三に、「コミュニティ経済」として地域で循環する
経済の構築が必要で、これは連帯経済にもつながるので
はないかと思います。
 そこで、社会保障について簡単に触れたいと思います。
(図−3)にあるように、セーフティネットが3層構造
のピラミッド型になっています。このピラミッドの一番
上(C)が雇用のセーフティネットです。しかし、人間
は病気になったり、退職したり、失業したりしますので、
そのときに必要なのが真ん中(B)の社会保険のセーフ
ティネットで、医療保険や年金や失業保険等です。ただ
社会保険は、雇用とセットになっていて、働き口を得て
社会保険料を払うことが前提です。病気とか失業期間が
長く続くと、この社会保険のセーフティネットから漏れ
てしまいます。そのため、最後のセーフティネット(A)
である生活保護制度があります。
 これが現在の姿ですが、重要なのは次の点です。それ
は、今お話しをした順番のセーフティネットは、歴史的
には逆の順番で整備されてきたことです。歴史的には、
イギリスでエリザベス女王(一世)のとき、1601年に
救貧法ができたのが、図の根底にある生活保護で、貧困
に陥った事後に救済する措置です。
 その後、工業化社会に移行していくと、貧困に陥って
いった人を後から救済してお金を給付するのでは間に合
わなくなる。そうなる前に、働いているうちから保険料
を払い、病気になったり、仕事を失ったときに備える仕
組みとして、社会保険制度を19世紀後半にドイツのビ
スマルクが作った。いわば、社会保険は予防的な意味合
いを持っている。しかし20世紀に入り、1929年から世
界恐慌が起こって大量の失業者が発生し、社会保険の前
提である雇用そのものが大幅に失われるという状況に陥
ってしまいました。
 そこで、資本主義の救世主として出てきたのがケイン
ズです。ケインズの発想は、人間の需要は刺激すれば拡
大するので、政府が公共事業や様々な政策を通じて雇用
そのものをつくり出すことができるということで、この
ピラミッドの一番上(C)に注目して雇用をつくるとい
う考え方です。
 この経済成長と雇用、社会保障がすべて拡大する形で
うまくいっていたのが20世紀後半であったわけです。
しかし、今はリーマン・ショックをはじめ、ヨーロッパ
やアメリカの経済不況などもあり、そういうやり方自体
も限界にきています。そこで、このピラミッドの一番上
ポスト成長時代の社会構想−資本主義・コミュニティと「グローバル化の先のローカル化」−
<図−3>
― 15 ―DIO 2012, 10
うことです。
 それから3番目が、「ストックに関する社会保障」と
いうことです。これまでの社会保障は、概してフローが
中心であったわけですが、今はフローの格差よりもスト
ックの格差のほうが大きい状況です。私は2008年に、
土地住宅政策に関する自治体アンケート調査をやったの
ですが、地方では空き地・空き家対策が重要課題の第1
位でした。しかし、大都市圏では、高齢者や低所得者の
住宅確保が第1位の課題であり、住宅・ストックの保障
機能が非常に重要になっています。
◆資本主義・社会主義・エコロジーの融合
 次に都市政策・まちづくり・環境政策との融合につい
て、触れたいと思います。多少理屈っぽい話になります
が、私自身は資本主義・社会主義・エコロジーの融合、
あるいはエコロジー志向の福祉国家というような、そう
いう方向がこれからの社会モデルになるのではないかと
思っています。限りない成長拡大の終焉によって、これ
からは、「緑の福祉国家」ないし「脱生産主義的福祉国家」
という方向、さらに、中央政府主体からローカル・コミ
ュニティ中心の福祉・社会保障の方向に進んでいくと思
います。
(ドイツの環境税に関するDVD上映)
 いま見ていただいたのは、ドイツの環境税に関するD
VDの映像です。一言でいうと、ドイツの環境税の導入
は、その税収を社会保障の年金財源に充てて、その分年
金保険料を引き下げ、さらにまちづくりとも一体的に進
めるという内容です。私は、こういう姿が3.11後のポス
ト成長時代の社会のあり方として非常に参考になると思
います。
 さきほどエコロジー志向の福祉国家がめざす社会だと
いいましたが、ドイツの環境税は、まさにそういう感じ
です。環境と福祉国家、社会保障とがダイレクトに結び
ついています。日本はどうしても縦割りになって社会保
障は社会保障、環境は環境という感じがありますが、ド
イツではそれらが連動して政策展開がされています。し
かも、街の中心部から自動車を排除して歩行者中心の街
にし、まちづくりやコミュニティ空間をしっかりさせる
(C)のその上に楕円を描きましたが、新たなセーフテ
ィネットを考えなければならない状況になっています。
◆社会保障をめぐる新たな課題
 では、それは一体何かということです。これについて
は大きく二つの方向があると思います。一つは、人生の
早い段階での制度的対応です。二つ目は後でお話しする
コミュニティの再構築です。まず、早い段階での対応に
ついて3点ほど挙げたいと思います。
 1点目は、これまで私が言ってきた「人生前半の社会
保障」です。若者の失業がいま一番深刻な問題で、格差
が累積して共通のスタートラインに立てない状況になっ
ています。残念ながら、人生前半の社会保障を国際比較
すると、際立って日本が低く、アメリカよりも低いとい
う実態です。この人生前半の社会保障として大きいのが
教育ですが、公的教育の支出を対GDP比で見ると、日
本はOECD加盟28カ国中最低です。そのため、この人
生前半の社会保障を強化することは、機会の平等を保障
し、また、広い意味で経済活力にプラスになるという意
味でも重要です。
 例えば、フィンランドなどは「イノベーションとして
の福祉」という理念を掲げています。「すべての市民に
対する社会保障、無料の学校教育等によってもたらされ
る市民の幸せと社会の安定は“特許のないイノベーショ
ン”」、「福祉社会と競争力は互いにパートナー」である
として、こういう分野に力を入れている。私がおもしろ
いと思うのは、大学の学費が無料であることに加えて、
大学生に対して「勉学手当」として、相当な額が給付さ
れていることです。GDPの2%相当というかなりの額
で、日本でいえば、10兆円相当の規模になります。
 次に2番目の提案は、「心理社会的ケアに関する社会
保障」ということです。自殺の問題もそうですが、従来に
比べて定型化、パターン化できない個別のケア、ニーズ
が非常に生まれてきている。例えば、WHOが「DALY」
という指標で、40歳代前半までの「病気の負担」を示
したものでは、男性も女性もうつや統合失調症等の精神
疾患が上位を占めている。これは、狭い意味の医療より、
もっと広いケアというものが求められている時代だとい
― 16 ―DIO 2012, 10
など、非常におもしろい内容だと思います。このドイツ
の環境税は、エコロジー税制改革ということで、環境税
の税収を年金財源に充て、そのぶん企業の社会保険料負
担も軽減できるので、雇用も増える効果があるという考
え方です。
 ただ、それも実は表面的な話で、ここで一番重要な点
はドイツの改革の根底にある思想で、労働生産性から環
境効率性に転換するという考え方です。これは生産性の
概念を変えるということです。内容は極めてシンプルで
す。かつての『三丁目の夕日』の時代では、人手が足り
なくて、資源は幾らでもあったので、できるだけ少ない
労働力でたくさん生産を上げることが重要でした。とこ
ろが、今は状況が全く逆で、失業が慢性化して、人手が
余っている。労働生産性が上がり過ぎて、むしろ、逆に
自然資源が足りなくなっている。そのため、生産性の概
念を変えて、人をどんどん使って資源を使わない経済に
変えていくという考え方です。それを実現するために労
働に課税するのではなくて、自然消費とか環境負荷に課
税し、それで社会保険料を下げていくという政策転換で
す。これは非常に望ましい、日本においても進めていく
べき方向性ではないかと思います。
2.コミュニティと福祉都市ビジョン
社会的孤立の国際比較をした「世界価値観調査」では、
残念ながら、日本が社会的孤立度で最も高い国になって
います。この社会的孤立とは、家族を超えたつながりと
いうことです。これが、今の日本では非常に希薄な社会
になっています。
 これを農村型コミュニティと都市型コミュニティとい
うことで考えると、日本は、2000年の稲作の歴史の中
で農村型コミュニティの性格が非常に強くなり、いい面
もあるが、悪い面としては、集団のウチとソトの区別が
非常に強く、集団を超えたつながりが非常にできにくい
社会です。見知らぬ者同士のコミュニケーション、まさ
に都市的な関係性というものが弱く、それが社会的孤立
ということに象徴されていると思います。これは、日本
が戦後急激に農村から都市に人口が大移動してきたの
で、社会の変化に人の行動や関係性が追いつけなかった
ためです。そのため、今後、都市型コミュニティを確立
していくことが、日本社会で一番大きな課題だと私は思
っています。
 最近は、こういう社会的関係性が注目され、ひとり暮
らしの高齢者が多いところほど、介護の軽度認定率が高
いとか、人とのかかわり合いが心身の状況に影響を及ぼ
すというような、いろいろな研究が活発になっています。
 こういう話をすると、未来は明るくないと聞こえるの
ですが、この点に関しても、これからは、非常に大きな
変化が生じてくると思っています。それは、高齢者や子
どもなど「地域密着人口」の増加です。人生全体を考え
た場合、子どもの時期と高齢の時期は地域とのつながり
が非常に強い時期です。
(図−4)のグラフは2000年をほぼ真ん中にして、前
後あわせて100年ぐらいの人口割合の変化を見たもので
す。注目すべきは、子どもと高齢者を足した人口割合で
す。これを見ると、これまでの50 〜 60年間は地域密着
人口が減り続けた時代でした。これからは、逆に地域密
着人口(高齢者が中心)が、一貫して増え続ける時代で、
地域社会がいやが上にも重要になってくる時代です。高
度成長期とは逆の現象が進んでいくのです。
 今は地域コミュニティが一番弱い時期ですが、これか
ポスト成長時代の社会構想−資本主義・コミュニティと「グローバル化の先のローカル化」−
<図− 4 >
― 17 ―DIO 2012, 10
ということです。
 日本では、高度成長期に郊外の田んぼや農地が宅地に
なっていったが、今後の人口減少社会では、逆に、郊外
に空き地や空き家が出てくる。それを、プラスに転じて
いけば、田園都市的な姿がもう一度つくれる可能性があ
ると思います。これは夢物語ではなくて、例えば、横浜
市が既にこういうことを進めています。横浜市の郊外に
空き地や空き家が増えているので、それを市が買い取っ
て緑地や農地にして、市民がコミュニティ空間として過
ごせる場所にするなど、人口減少社会のプラス面を積極
的に生かしています。
3.地域再生と「コミュニティ経済」
最後に、コミュニティ経済について簡単に触れたいと
思います。人口減少社会という話をしていますが、問題
なのは、日本全体が均一に人口減少するわけではなくて、
空間的なギャップが非常に大きいという点です。国土交
通省が一昨年の審議会に出した人口見通しによれば、
2050年には人口が半分以下になる地点が居住地域の6
割以上を占める。全国的な人口減少率(約25.5%)を上
回って減少する中心市街地が約8割を占め、このうち2
割は半分以下の人口になるという状況です。そして、高
齢人口の増加は東京圏が突出し、首都圏の高齢化が急激
に進んでいく見通しです。
 そういった空間的な視点を含めて考えていくことが大
事だと思います。3.11震災の前年の7月に地域再生・活
性化に関する全国自治体アンケート調査を行いました。
その調査結果では、人口減少社会への対応としては、拡
大成長ではなく、生活の豊かさや質的充実を実現するよ
うな政策や地域社会を追求する定常型社会の志向が多数
を占めていました。
 それに、地域によって非常に課題が違うということで
す。大都市圏では社会的孤立やコミュニティといった問
題が大きな課題で、地方都市では中心市街地の空洞化な
どが特に課題となっている。農村部では、若者の流出や
人口減少などの課題が中心で、地域によって大きな違い
らは地域コミュニティが極めて重要になると思います。
◆福祉政策とまちづくり・都市政策との総合化
 福祉政策とまちづくりや都市政策をあわせて考えるこ
とが重要です。ヨーロッパの街では、お年寄りなどがカ
フェや市場などでゆっくり過ごしています。日本やアメ
リカの街は概して生産者中心ですが、憩いの場所が街の
中にあることは、福祉施設や医療施設をつくる以上に重
要であるという意味で、都市政策と福祉政策の統合が必
要だと思います。ヨーロッパの街では、中心部から自動
車を排除して、歩いて楽しめるコミュニティ空間や座れ
る場所も街の中にたくさんある。街が単なる通過する場
所ではなくて、人々が憩うコミュニティ空間であるとい
うことは、心身の健康とか、介護予防とか、生活の質を
高めるという意味で重要です。さらに、公的な住宅が街
の中心部にあるということがコミュニティづくりの点か
らも重要であり、住宅保障ということが今新しい局面を
迎えています。
 日本の悪い例としては、私のいる千葉大学の近くの稲
毛の浅間神社のわきにある「せんげん通り」ですが、こ
こはすごく交通量が多くて、歩行者は肩身を狭くして歩
いている感じです。コミュニティ空間という点からする
と、非常に問題です。ここは本来が商店街ですが、これ
だけ交通量が多いと、商店街として機能しない。本当は
神社があって、周りに商店街があるので、いろいろな意
味で社会的資源になるわけですが、それが台なしになっ
ている。残念ながら日本の地方都市に行くと、こういう
感じのところが非常に多く見られます。
 最後にもう1点、実は、私が最近知って感銘を受けた
ことが、20世紀のはじめにイギリスで唱えられた田園
都市(ガーデン・シティ)という考え方と日本との関係
についてです。このガーデン・シティは、実は日本をイ
メージしていたと、これを提唱した一人のレイモンド・
アンウィンが本の中で書いています。日本人は桜が咲く
ころになると、みんなが街の桜の下に繰り出してにぎや
かに騒ぐなど、自然とコミュニティと都市が一体になっ
ていると書いている。そういうことをイギリスでも実現
したいということから、田園都市という概念が出てきた
― 18 ―DIO 2012, 10
があります。
 これらへの対応としては、「地域内経済循環」が非常
に重要ではないかと思います。ヒト・モノ・カネが地域
の中で循環するような経済、すなわち「コミュニティ経
済」をどうつくるのかです。このコミュニティ経済とは、
今いいました経済の地域内循環ということで、こういう
経済のほうがある意味ではグローバル化に対しても強い
といえます。今、電機産業などの製造業が非常に苦境に
立たされており、地方の工場が閉鎖され、それが地域経
済全体に打撃を与えているわけです。グローバル化への
対応は、大事だと思いますが、途上国と低賃金競争をや
っていっても到底勝てないし、それは自分の首をしめる
ことになります。むしろ、できるだけ地域の中で循環す
るような経済にしていったほうが、逆にグローバルな経
済変動に対しても強いといえます。最近よく「リジリア
ント」(弾力性のある、柔軟な)というような言葉が使
われたりしますが、これは地域で循環するような経済と
いう意味です。それから生産のコミュニティと生活のコ
ミュニティができるだけ融合しているような姿が必要で
す。
 さらに、経済とは何かということを考えた場合、もと
もと経済の中には相互扶助的な、コミュニティ的な要素
があって、そういうものを再評価していくことが必要で、
昔から「三方よしの家訓」とか言われています。最後に、
さきほど触れました生産性という概念を考え直していく
ことです。こういった要素を含んだコミュニティ経済を
考えていくことは、連帯経済ということにもつながって
いくと思います。
グローバル化の先のローカル化(若い
世代の「ローカル志向」)
 最後に1点だけ補足させていただきますと、私は大学
で学生に接したりしている中で、若い世代がローカルな
ものへの関心が非常に強くなっていると感じています。
例えば、静岡出身の学生が自分の生まれた街を世界一住
みやすい街にしたいとか、新潟の農業を再生させたいと
か、愛郷心を卒論のテーマにするとかです。これに対し
て最近の若い世代は内向きになったとか、外に出て行く
覇気がないとか批判する意見が聞かれますが、私はこれ
ほど的外れな批判はないと思います。むしろ何でも外へ
外へということで進めてきた結果が、今の地域の空洞化
をもたらしたといえます。そのため、(図−5)のように、
コミュニティ経済やローカルに循環する経済をできるだ
け再生させていくという意味で、「グローバル化の先の
ローカル化」が必要だという点を最後に指摘させていた
だきます。
ポスト成長時代の社会構想−資本主義・コミュニティと「グローバル化の先のローカル化」−
<図−5>
― 19 ―DIO 2012, 10
 連合総研は、2012年9月21日に連合会館において、第10回定例理事会、
第6回評議員会を開催した。評議員会・理事会では、2012年度(2010年10
月1日〜 2013年9月30日)事業計画・予算および定款の一部変更など6議案
について提案され、いずれも提案どおり承認された。
 議案及び現在の理事・監事・評議員は次のとおりである。
評議員会・理事会報告
「2012年度事業計画・予算」を承認
−第10回定例理事会・第6回評議員会報告−
・第1号議案 2012年度事業計画(案)に関する件(共通)
・第2号議案 2012年度収支予算(案)に関する件(共通)
・第3号議案 役員報酬総額(案)に関する件(評議員会)
・第4号議案 定款の一部変更(案)に関する件(評議員会)
・第5号議案 規則・規程の一部変更(案)に関する件(理事会)
・第6号議案 基本財産の確認に関する件(理事会)
議  案
古賀 伸明 (連合総研理事長、 連合会長) 薦田 隆成 (連合総研所長)
久保田 泰雄 (連合総研専務理事) 小川 英一 (中央労働金庫理事長)
落合 清四 (UIゼンセン同盟会長) 加藤 良輔 (日教組委員長)
毛塚 勝利(中央大学教授) 末廣 啓子 (宇都宮大学教授)
鈴木 宏昌 (早稲田大学名誉教授) 南雲 弘行 (連合事務局長)
西原 浩一郎 (前自動車総連会長、 金属労協議長) 安本 皓信 (日本機械工業連合会副会長・専務

理事)
【理 事】
理事・監事<2012年9月21日現在>
【監 事】
磯部 行雄 (連合総合総務財政局長)  森 一夫 (日本経済新聞特別編集委員)
― 20 ―DIO 2012, 10
評議員会・理事会報告
「2012年度事業計画・予算」を承認
−第10回定例理事会・第6回評議員会報告−
有野 正治(電機連合委員長) 今野 浩一郎(学習院大学教授)
大日向 雅美(恵泉女学園大学教授) 岡部 謙治(教育文化協会理事長)
種岡 成一(電力総連会長) 田原 憲次郎(全労済理事長)
團野 久茂(国際労働財団専務理事) 徳永 秀昭(自治労委員長)
中村 圭介(東京大学教授) 八野 正一(サービス・流通連合会長)
吉川 薫(白鴎大学教授)
【評 議 員】
職  名 氏  名 派遣元・現職
理事長 古賀 伸明 連合会長
所長兼副理事長 薦田 隆成 連合総研所長
専務理事兼事務局長 久保田泰雄 連合総研事務局長
副所長 龍井 葉二 連合
主幹研究員 小島  茂 連合
主任研究員 麻生 裕子 連合総研
主任研究員 中野 治理 JAM
主任研究員 矢鳴 浩一 UIゼンセン同盟
主任研究員 高原 正之 厚生労働省
主任研究員 小熊  栄 サービス・流通連合
主任研究員 前田佐恵子 内閣府
研究員 落合耕太郎 教育文化協会
研究員 南雲 智映 連合総研
研究員 城野  博 電力総連
研究員 内藤 直人 電機連合
研究員 高山 尚子 自治労
管理部門経理担当部長 畠山 美枝 連合総研
管理部門総務担当 村岡  英 連合総研
客員研究員 井上 定彦 元連合総研副所長
客員研究員 鈴木不二一 元連合総研副所長
客員研究員 成川 秀明 前連合総研副所長

●(公財)連合総研所員名簿(2012年9月21日現在)
評議員<2012年9月21日現在>
― 21 ―DIO 2012, 10
報 告
2012年度主要研究テーマ
 本研究委員会は、日本の経済・社会情勢を分析し、生活の
ゆとり・豊かさ、社会的公正の視点に立ち、経済・社会政策
の提言を行うことを目的として、連合総研発足以来、常設の
研究委員会として活動を続けている。
 2012年度は、引き続き中長期的視点に立って、マクロ経済
や企業行動、勤労者の雇用・生活、家計の状況などを中心に、
各労働組合の方針策定や労使交渉の基礎資料となるデータの
提供と問題提起に努め、研究委員会の助言の下に「2012 〜
2013年度・経済情勢報告」をとりまとめる。
 また、さまざまな政策の実施効果も見込めるような、中期的
なシミュレーションのあり方についても検討を行う。
(研究期間:2012年10月〜 2013年9月)
 本調査研究は、勤労者生活の質の現状について、年2回(10
月、4月)、勤労者モニター(約2,000人)を対象として「勤労
者の仕事と暮らしのアンケート調査」(「勤労者短観調査」)を
実施し、景気、家計消費、雇用などの主要な生活関連活動の
状況、またその時々の生活・労働の問題点について調査した
うえで、政策課題等への資料となる論点を報告書に取りまとめ、
公表してきている。
 2011年度からは、定点調査項目の整理、ウェブ調査への切
替を行ってきたが、2012年度においては、さらに集計の迅速
化に努めるとともに、「経済情勢報告」などへの一層の活用を
図っていく。
(研究期間:2012年10月〜 2013年9月)
 2009年の政権交代は、政策の基本方向だけでなく、国の
政策決定プロセスについても見直しの論議を呼び起こす大き
な契機となった。
 本研究では、日本の国レベルにおける政策の企画・立案・決
定について、行政(内閣官房、各府省)中心の旧来のあり方
から、新たに政党マニフェスト等による政治主導の政策の企画
・立案に移行した場合に、政策の立案および決定がどのように
変わるか、政策の企画・立案における重視要素、意見採択の
判断内容等ではどのような差が生まれるかなどについて解明・
分析するとともに、国民に開かれた政策の立案・決定となるた
めの課題について検討し、報告書にまとめることとしている。
研究対象としては、労働法制関係、社会保障関係、地方分権
関係等で争点となる事例を設定して検討し、労働組合や国民
の議論を促すものとなるように工夫する。
 2009年度以降、関係者へのヒアリングを実施し、2011年1
月には、鳩山政権時代についての中間報告をまとめ、また
2012年8月にはワークショップを開催したところである。2012
年度においては、ヒアリングを継続しつつこれまでの論点整理
を行い、報告書をとりまとめる。
(研究期間:2009年10月〜 2013年9月)
1. 継続して実施する
調査研究
<1>
経済社会研究委員会
(主査:小峰 隆夫 法政大学教授)
< 2 >
勤労者短観調査研究委員会
(所内研究プロジェクト)
< 3 >
国の政策の企画・立案・決定
に関する研究委員会
(主査:伊藤 光利 関西大学教授)
― 22 ―DIO 2012, 10
2012年9月21日に開催した第6回評議員会・第10回定例理事会において、連合総研の2012年度事業計画が

承認
された。2012年度(2012年10月〜 2013年9月)の研究テーマは以下のとおりである。
 2008年の‘リーマン・ショック’は、それまでの企業経営
のあり方に改めて見直しを迫ることとなったため、従業員重視
や企業内訓練重視への傾向を示すデータも一部紹介されてい
るが、全体としてどういう方向に向かうかは、予測の難しい状
況だといえる。連合総研が実施した「グローバル経済下の産
業革新と雇用」の研究(2006年10月〜 2009年9月)は、人
と情報の相互連関(相乗り)を推進する「職場連繋モデル」
という特徴を見いだしたが、その将来については今後の研究に
委ねられている。
 労使関係、とくに集団的労使関係の今後のあり方を探って
いくには、@企業行動と人事制度、A労働・生産過程と職場
集団、B労働者個々人と労働組合、といったそれぞれの分野
の分析にとどまらず、相互の連関を捉えていくことが重要に
なっている。
本委員会では、先行研究をもとに委員相互の論議を深め、「現
場力」や「集団的労使関係」を軸に課題を絞り込んでいくこと
を確認するとともに、十数社の企業労使に対するヒアリング調
査を実施してきた。
 2012年度においては、これらの調査結果にもとづき、今後
の労使の取り組みに対する課題提起も含めた報告書をとりま
とめる。
(研究期間:2010年10月〜 2013年3月)
 非正規雇用にかかわる諸問題の深刻な状況が依然として続
くなかで、労働者派遣法の見直しに続き、パートタイム労働や
有期契約労働についても、関係法制の見直し論議が進んでい
る。法改正を急ぐ必要があることは言うまでもないが、それを
実効あるものとするためには、いま職場で起きている問題につ
いてのより詳細な実態把握を行ったうえで、さまざまな措置を
検討する必要がある。
 本委員会では、2010年度に実施した改正パートタイム労働
法に関するヒアリング調査をさらに発展させ、有期契約労働も
含めた実態把握を行うとともに、労働条件の均等・均衡処遇
の実現に向けた職場における労使の課題を明らかにする。
 2011年度においては、各委員の問題提起を受けた討論と労
働組合ヒアリングを行ってきたが、2012年度は、労働組合ヒ
アリングをさらに進め、職場の取り組みに向けた提言づくりを
めざす。
 (研究期間:2011年10月〜 2013年9月)
 いま企業では、「団塊の世代」が退職年齢にさしかかるなかで、
一方では定年延長を含む高齢者雇用の維持・継続、他方では、
社会的な課題として求められる若年雇用問題の解決という、
二重の課題に直面している。
 2011年度においては、所内プロジェクトを設置し、こうした
中期的な労務構成の変化における各企業の対応などについて
先行する調査研究の整理を行ってきたが、調査研究期間をさ
らに1年延長することとする。
 2012年度には、新たに研究委員会を設置し、個別企業の労
使に対するヒアリング調査と、労働組合を対象としたアンケー
ト調査を実施するとともに、今後の労使の取り組みに関する提
言を含めて報告書をとりまとめる。
(研究期間:2011年10月〜 2013年9月)
< 4 >
企業行動・職場の変化と労使
関係に関する研究委員会
(主査:禹 宗  埼玉大学教授)
< 5 >
有期・短時間雇用のワークルー
ルに関する調査研究委員会
(主査:緒方 桂子 広島大学教授)
<6 >
企業における労務構成の変化と
労使の課題に関する調査研究
― 23 ―DIO 2012, 10
 この間のリーマン・ショック、政権交代、震災・津波・原発
事故などに象徴される国内外の枠組みの変化のもとで、働く
者や生活者の視点からの経済・社会・労働に関する中長期的
なビジョンの策定が求められている。
連合総研では、2011年度に「ポスト3・11の経済・社会・労
働」をテーマとするプロジェクトを設定し、新たな豊かさ、こ
れからの産業・雇用、連帯経済、参加民主主義などをめぐっ
て討議を重ねてきた。
 2012年度においては、これらの討議をより深め、共通認識
を醸成していくために、連合役員との共同討議も行いながら、
今後の経済・社会・労働のあり方について中長期的なビジョ
ンの策定に取り組む。
(研究期間:2012年10月〜 2014年9月)
 グローバリゼーションの進展やポスト3・11の枠組み変化の
下で、新たな産業・雇用のあり方が問われる一方で、地域か
らの復興・再生が課題となっており、連合総研では、この間、
被災地における地域づくりや地域再生に向けた労働組合の新
たな取り組みをフォローしてきた。
 一方、政府においても、地域再生に向け、地域の独自性に
根ざしてさまざまな領域にまたがるネットワークづくりを支援
する取り組みを進めようとしている。
本研究では、いくつかの地域を対象に設定し、地域における
産業政策や雇用政策の策定とその具体化に関する事例研究を
行う。具体的には、当該地域の地方連合会や大学などとの連
携のもとに、地域における動向をフォローしモデル事例を抽出
2. 新たに実施する
調査研究
する。
 そのなかで、政府、自治体、業界団体、NPOなど、各セク
ターが果たす役割について明らかにするとともに、とくに、労
働組合が果たすべき役割について提言を行う。
(研究期間:2012年10月〜 2014年9月)
 職務ではなく企業組織への帰属をベースとするいわゆる「日
本的」な雇用システムは、経済変動や産業構造の変化の波に
伴って見直しや再評価の動きが繰り返され、労使交渉にも影
響を与えてきた。最近では、成果主義賃金の導入とその行き
過ぎの見直しが指摘されているが、今後の方向が定まってい
るという状況にはない。労使が確信をもって交渉を進めていく
には、時々の動向に一喜一憂するのではなく、これまでに形成
されてきた雇用慣行や労使関係が、どんな歴史的経過を経て
きたかをきちんと踏まえることが不可欠となる。
 本研究では、これまで行われてきた議論について文献サー
ヴェイを中心に検討するとともに、産業構造や社会構造の変
化に伴い、新たに検討すべき論点を整理し、今後のあり方に
ついて課題提起を行うことをめざす。
 (研究期間:2012年10月〜 2014年9月)
 連合総研では、「シリーズ研究・21世紀の日本の労働組合
活動」として、これまでに「T.非正規雇用労働者の組織化」「U.
労働組合の地域活動」「V.労働協約とストライキ」の各テー
マで、事例ヒアリングを実施し、それをベースにした新書版の
<10>
<シリーズ研究> 21世紀の日本の労働
組合活動W「労働組合の職場活動」
< 8 >
地域再生をめざす産業・労働政策
と労働組合の役割に関する研究
< 7 >
経済・社会・労働の中長期ビ
ジョンに関する研究
< 9>
「日本的」雇用システムと労使関
係の歴史的検証に関する研究
― 24 ―DIO 2012, 10
2012年度主要研究テーマ
刊行に取り組んできた。
2012年度は、本シリーズの「W」として、各単組の職場レ
ベルの活動について、事例紹介と課題提起を行う。
 労働組合活動の基本は個々の職場活動であるが、環境条件
の変化、組合執行部の世代交代などもあって、つい最近まで
日常的に行われていた活動が行われなくなったり、いざ始めよ
うとおもってもそのノウハウが伝わっていない、といった事態
も起きている。
 本調査研究は、職場の実態把握や要求作り、労働条件交渉、
組合員教育、苦情処理といった具体的な課題について、労組
OB・OGを含むヒアリングを通じていくつかの事例紹介を行
い、職場活動の活性化に向けた課題提起を行うことをめざす。
(研究期間:2012年10月〜 2013年9月)
 2000年以降の格差と貧困の拡がりの下で、連合が要求し
てきた「第二のセイフティネット」の恒久化をはじめ、政府も
いくつかの政策を講じてきたが、目に見えた改善が見られたと
はいえず、2011年の東日本大震災によって新たな問題も生じ
ている。
本調査研究は、政策の対象とされる当事者の視点から、各
種政策の政策効果について検証し、今後の政策のあり方につ
いて課題提起を行う。
 具体的には、支援団体・NPO、行政窓口および各種制度の
利用者に対するヒアリング調査を実施し、求職支援制度、住
宅手当制度、パーソナルサポート制度などの施策の活用状況、
実績、運用上の問題点などを明らかにする。
(研究期間:2012年10月〜 2013年3月)
 看護労働者の厳しい労働条件、とくに長労働時間の実態は
なかなか改善が進まず、職場への定着率が低かったり、看護
師の資格を持ちながら就労に結びつかない大きな要因の一つ
となっている。
連合は、こうした実態の改善に向けて「看護職員の労働条件
の向上と組織化に向けた取り組みについて」の方針を2012年
5月に確認し、そのなかで「看護職員の夜勤・交代勤務時間に
関するガイドライン」を策定し、労働基準法に係る指針の策
定につなげるとしている。
本研究では、連合からの委託を受けて、上記ガイドラインの
策定を行う。具体的には、研究者、医療・看護等関係団体、
関係労働組合などをメンバーとする委員会を設置し、ヒアリン
グ等を行いながら検討を進める。
(研究期間:2012年10月〜 2013年9月)
 標記調査は従来、アジア社研が実施していたものであるが、
第14回調査(2003年)から連合による連合総研への委託調
査として隔年で行われてきた。
2012年度からは、連合と連合総研による共同調査として実
施することとし、各単組と産別構成組織を対象に、労働組合
費の現状とその支出状況などについて明らかにする。
 (研究期間:2012年10月〜 2013年9月)
 内外の情勢の変化を踏まえながら、社会的就労や、介護労
働者の実態と課題、社会保障と地方分権などを含め、新規調
査研究の機動的な実施について検討を進める。
<11>
社会的困窮者・就労困難者の現状と
各種支援策の効果に関する調査研究
(厚労省社会福祉推進事業)
<12 >
看護職員の労働時間のガイド
ライン策定に関する研究
(連合からの委託研究)
<13 >
労働組合費に関する調査(第 17 回)
(連合との共同調査研究)
<14 >
その他の調査研究
― 25 ―DIO 2012, 10
日本経済は、昨年の東日本大震災で大きな打撃を受けましたが、生産活動の面におきましてはサプライ

チェーンも回
復し、懸念された電力需給問題についても生産現場や家庭の節電努力によって乗り越え、マクロ経済に

対する障害は
克服してきています。被災地ではまだまだ生活の早急な立て直しが求められていますが、復興への取り

組みが本格化
する中、我が国経済は、全体として復興需要を中心とした回復を続けております。他方、海外に目を向

けると、欧州政
府債務危機問題等による先行き懸念や、主要国経済の成長減速リスク、引き続く円高など、我が国経済

を取り巻く厳し
い環境には留意が必要です。
 本フォーラムでは、10年とも20年ともいわれる経済停滞の中で、人的資本の構築や消費力が弱体化し

たことが懸念
されているなか、企業のグローバル展開を始め、海外経済リスク等、我が国を取り巻く経済環境変化に

伴い雇用の現場
や地域はどのような影響を受けてきたのかといった構造的な課題に焦点を当て、「グローバリゼーショ

ンと産業・地域・
雇用の再生」について考えてみます。
 多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
○日  時 2012年10月22日(月)13:00 〜 17:00
○テ ー マ 「グローバリゼーションと産業・地域・雇用の再生」
○場  所 ホテル ラングウッド 2階「ラングウッドルーム」
【交通】 JR山手線・京浜東北線・常磐線/日暮里駅南口徒歩1分
    京成線/日暮里駅徒歩3分、舎人ライナー/日暮里駅徒歩3分
東京都荒川区東日暮里5−50−5 03-3803-1234 (代表)
○参 加 費 無  料
○そ の 他 会場で「連合総研2012 〜 2013度経済情勢報告」を配布します。
プ ロ グ ラ ム(一部内容を変更する場合があります。)
13:00 〜 13:05   主催者代表挨拶
13:05 〜 13:30   基調報告「連合総研2012 〜 13年度経済情勢報告」
  薦田 隆成(連合総研所長)
13:30 〜 14:00   講演「日本経済の現状と課題〜中長期的な成長に向けて〜」
  小峰 隆夫(法政大学大学院政策創造研究科教授、
        連合総研経済社会研究委員会主査)
   <休憩>
14:15 〜 17:00   パネル・ディスカッション「グローバリゼーションと産業・地域・雇用の再生


  森 まり子 (東京商工会議所中小企業部副部長)
  橘川 武郎 (一橋大学大学院商学研究科教授)
  太田 聰一 (慶応義塾大学経済学部教授)
  小峰 隆夫 (法政大学大学院政策創造研究科教授)
       (コーディネーター)龍井 葉二 (連合総研副所長)
<お申し込み方法>
連合総研ホームページ上の専用フォーム(http://www.rengo-soken.or.jp/)、もしくはFAX(03-5210

-0852)にて、
10月18日(木)までにお申し込みください。
FAXの場合は、「件名:連合総研フォーラム」「お名前」「ご所属・役職」「ご連絡先(電話番号)」

を明記の上、連合総研・
矢鳴(やなる)あてにお送りください。
主催:連合総研・教育文化協会・連合
第25回「連合総研フォーラム」のご案内
グローバリゼーションと産業・地域・雇用の再生
― 26 ―DIO 2012, 10
今月のデータ 厚生労働省「平成23年度全国母子世帯等調査の結果」より
母子世帯の就業率は依然高いものの、前回比3.9ポイント減少
「正規の職員・従業員」の割合も減少
 本年9月に「平成23年度全国母子世帯等調査の結果」を厚生労働省
が発表した。ここでは、母子世帯の母の状況をとりあげてみる。
 母子世帯の母の、80.6%が就業している。この比率は、前回の(平
成18年度)と比べて3.9ポイント減少している(表1)。
 就業形態別にみると、「パート・アルバイト等の就業」が47.4%で
前回調査から、3.8ポイント増加(なお、前回調査では「臨時・パート」
であった。)した。これに対し、「正規の職員・従業員」は39.4%と前
回比で3.1ポイント減少している(なお、前回調査では「常用雇用者」
であった)。
 母子世帯の平均年間収入は291万円であり、前回調査と比べて78万
円増加している。国民生活基礎調査における児童のいる世帯の平均所
得は658.1万円であるので、これを100とすると、母子世帯では44.2
にとどまっている(表2)。依然として家計が厳しいという状況にかわ
りはない。なお、母自身の平均就労収入は181万円であり、前回調査
と比べ10万円の増加となっている。
 生活保護の受給状況をみてみると、「受給していない」が85.6%と
前回調査より4.8ポイント減少している。
 母子世帯は、生活保護を受けられる年収であるにもかかわらず、高
い比率で受給していない世帯が多いのではないだろうか。
 また、母子世帯の母が抱える子どもについての悩みの内訳をみると、
「教育・進学」が56.1%と最も多く、次いで「しつけ」が15.6%とな
っている(表3)。子どもを年齢別にみると、「教育・進学」の悩みが
最も高いのは10 〜 14歳である。「しつけ」の悩みが最も多いのは、0
歳〜 4歳となっている。
 相談相手が「有り」と回答した母子世帯は全体の80.4%である。相
談相手の内訳をみると、「親族」「知人・隣人」を合わせて93.1%とな
っているが、公的機関等への相談が少ないのが課題である(表4)。
 一人で子どもを育てて働く母親には、就労支援に加え、多様な相談
機能の充実が求められている。
表1 母子世帯の状況
表3 母子世帯の母が抱える子どもについての悩みの内訳
表2 児童のいる世帯と母子世帯の比較
表4 相談相手の有る母子世帯及び相談相手の内訳
資料出所:厚生労働省「平成 23 年度全国母子世帯等調査の結果」
資料出所:厚生労働省「平成 23 年度全国母子世帯等調査の結果」
注)児童のいる世帯については「平成 23 年国民生活基礎調査」の平
均所得金額(岩手県、宮城県及び福島県を除く)。
資料出所:厚生労働省「平成 23 年度全国母子世帯等調査の結果」
資料出所:厚生労働省「平成 23 年度全国母子世帯等調査の結果」
注 1)「−」は該当数値がないことを示す。
注 2)今回調査から新たに設けた項目には、それ以前の調査の欄を*印としている。
― 27 ―dio@rengo-soken.or.jp
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【9月の主な行事】
9 月 3 日 「ポスト 3.11」の経済・社会・労働に関する研究プロジェクト 
第 6回ワークショップ          【連合会館 404 会議室】
4 日 21 世紀の日本の労働組合活動に関する調査研究委員会V
「労働協約とストライキ」    (主査:中村 圭介 東京大学教授)
5 日 所内・研究部門会議
地域再生に挑戦する労働組合に関する調査研究プロジェクト
12 日 研究部門・業務会議
所内勉強会
企画会議
     14 日 日本の賃金の歴史と展望に関する研究委員会
     18 日 所内・研究部門会議
有期・短時間雇用のワークルールに関する調査研究委員会
(主査:緒方 桂子 広島大学教授)   
19 日 総務委員会
21 日 第 10 回定例理事会・第 6 回評議員会

【連合 3 階 A・B 会議室】
24 日 期中外部会計監査
26 日 臨時企画会議
27 日 地域再生に挑戦する労働組合に関する調査研究プロジェクト
I NFORMATION
D I O
2012 
 1990年代にワーキングプアが社会
問題になってから現在まで依然として
日本経済は低迷、グローバル化の影響
により、国内雇用は空洞化の懸念さえ
生まれています。
 東日本大震災後の復旧・復興では、
未だに雇用情勢は悪化のままであり就
労支援は喫緊の課題となっています。
今回の特集は、「ワーキングプアのそ
の後−雇用不安社会を生き抜くため
に−」をテーマに、「底が抜けた雇用劣
化が招くミスマッチ」、「困難な時代を
生きるワーキングプア−その問題解決
に向けた今日的課題−」について、お
二人の方からご寄稿をいただきました。
 今後、働くものが、このような危機
の時代を生き抜くための論議が深まる
ことを期待します。     (小竹) 
http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio275.pdf  

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