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「国家破産」の投資戦略(第3部:最終回)  ソロスはなぜ失敗したのか?
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投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 09 日 00:28:20: cT5Wxjlo3Xe3.
 

2012年10月8日


「国家破産」の投資戦略(第3部:最終回) 
「ヘッジファンドの帝王」「イングランド銀行を打ち負かした男」として知られるジョージ・ソロスは、97年のアジア通貨危機で「市場原理主義者」として批判の矢面に立たされたが、サブプライム危機が勃発した直後に書かれた警世の書『ソロスは警告する』(講談社)で次のように“警告”した。

 市場は本来不完全なものであり、政府など外部からの介入がなければ正常に機能しないものであるにもかかわらず、「市場原理主義者」は市場がそれ自体で完全だと考え、野放図な規制緩和を行なってきた。サブプライム問題に端を発する世界金融危機はその典型であり、FRB(米連邦準備理事会)の低金利政策で不動産投機が過熱し、信用の過度の膨張がバブルを誘発し、それを最先端の金融工学が加速させ、ハイリスクな不動産担保証券を世界じゅうにばら撒くことになった。この「超バブル」が崩壊したいま、市場原理主義の時代は終焉を迎えた――。

 ソロスのこうした主張には、さまざまな反論が出ている。たとえば「政府は市場を規制すべきだ」というが、ソロス自身も認めているように、米国の不動産バブルの発端は9.11同時多発テロ(2001年)を機にFRB(グリーンスパン議長)の行なった景気刺激のための超低金利政策だ。ウォール街の金融機関はたんに「政府の失敗」に乗じて金儲けしようとしただけで、問題は「市場原理主義」ではなく、市場に介入して不動産価格を歪めた政府にある――というように。

 だが世界金融危機の原因がどうであれ、ソロスがもっとも早い時期から市場の暴走に気づき、警告を発していたことは間違いない。金融機関の融資が過剰であることや、デリバティブが制御不能のリスクをつくりだしていることをこの賢明な投資家は正確に理解していた。同じ時期に多くのエコノミストやアナリストが、「移民による人口の増加を前提にすれば地価はまだ割安だ」とか、「最先端の金融工学でリスク管理しているのだから大手金融機関の財務にはなんの問題もない」とかいっていたことを考えれば、その慧眼はさすがというほかはない。

 ソロスが未来を見通すことができたのは、歴戦の投資家として、ひとたび市場が暴走を始めれば誰も止めることができず、バブルはいずれは崩壊することを熟知していたからだ。市場が完全に効率的であれば予測は不可能かもしれないが、現実の市場は国家によって歪められており、そのことが予測可能な破局をもたらすのだ。

 だがこの話は、「予測と成功はかならずしも一致しない」というもうひとつの教訓を教えてもくれる。その常人離れした慧眼にもかかわらず、ソロスの投資は大失敗に終わったのだ。

 警世の書『ソロスは警告する』には、2008年1月時点の投資戦略が掲載されている。そのなかでソロスは、不動産バブル崩壊にともなう米国の不況は長期化するものの、中国やインドなど新興国の経済は堅調で、商品や金などの価格上昇はつづき、アラブ産油国の国富ファンドが「最後の貸し手」になるだろうと述べている。なによりソロスの一貫した主張はドル崩壊で、金融危機によって“予言”が実現することに絶対の自信を持っていた。

 それから半年後にリーマンショックが起こり、世界経済は激震に見舞われた。その後の現実とソロスの予想を比較してみよう。

 まず、先進国の不況と新興諸国の好況が共存するとのデカップリング論は完全に間違っていた。中国やインド、ブラジル、ロシアなどの株価も、世界金融危機を機に急落した。同時に商品や金、原油価格も大幅に下落した。

 ドバイの不動産バブルがはじけ、政府系不動産開発会社の債務返済が滞った。オイルマネーの金融市場への流入も、リーマンショック以前の投資(アブダビ投資庁からシティグループへの8100億円など)が巨額の含み損を抱えたことから完全に途絶えた。

 金融危機はヨーロッパ諸国にも飛び火し、「ヘッジファンド国家」と化していたアイスランドが破綻し、次いで東欧諸国やギリシア、アイルランドがEUやIMFの救済を受けることになった。こうした事態はどれも、ソロスの「予言」には書かれていない。

 とりわけ大きな間違いは、ソロスが絶対の自信を持っていた「ドル崩壊」だ。

次のページ>> ソロスはなぜ失敗したのか?

 リーマンショックの後、ヘッジファンドなどへの解約請求が殺到したためユーロ資産を売却してドルを買い戻す動きが加速し、為替相場はドル高ユーロ安に大きく動いた。ソロスの確信とは異なって世界金融危機でドル崩壊は起こらず、ユーロ危機が先にやってきた。この「再帰性」を見誤ったために、ソロスはドル売りユーロ買いの巨額のポジションで莫大な損失を被ることになったといわれている。

 ソロスは、一貫して「市場は効率的だ」という経済学の前提を否定してきた。彼は複雑系の科学とはまったく独立に、「再帰性」という哲学的な概念を駆使して、市場が互いにフィードバックする複雑系のスモールワールドであることを論証した。

 ソロスの予言どおり、金融市場は崩壊し、巨大金融機関がいくつも消滅した。しかしそれでも、ソロスは「間違った」のだ。

*ソロスはその後、自らの「予言」を検証し、それがほとんど外れたことを潔く認めている(『ソロスは警告する2009』)。ソロスの名誉のために付け加えれば、この新著では、中国やインドなど新興国の株価がいち早く回復することなどを正確に予想している。

 ソロスの失敗もまた、市場の複雑性から説明できる。

 不動産バブル崩壊と金融危機を正しく予想したのなら、そこから生じる経済事象は地価と銀行株の下落なのだから、REITと銀行株を空売りすればいい。ところがソロスは、バブル崩壊が米国発の世界金融危機を誘発し(ここまでは正しかった)、ドル崩壊を引き起こすと考えた。

 市場が複雑系であれば、因果律がひとつ増えるごとに予想が当たる確率は大きく下がるはずだ。不動産価格が下落しても、その影響を受けて株式や債券、為替市場がどう動くのかのシナリオには膨大な組み合わせがあって、どれが正しいかを見通すのは至難の技なのだ。

 もちろんこんなことはソロスだったわかっていたはずだ。それではなぜ、不動産バブル崩壊→世界金融危機→ドル崩壊と、因果関係がふたつも先にある投資戦略を選択したのだろうか。

 真実はソロスでなければわからないが、おそらくは「ドル崩壊」のシナリオに絶対の自信を持っていたことに加えて、個別株の空売りはコストが高く、売買高も限られているため、大きなポジションを組むのが難しかったからだろう。イングランド銀行を打ち負かしたポンド投機のように、歴史に名を刻むような天文学的な富を手にするのなら為替市場で賭けるしかない。じゅうぶんすぎる富と名声を手にしたソロスにとって、望むのは中途半端な金儲けではなく、新たな伝説だった。そのように考えれば、勝率の高いREITや銀行株の空売りでは満足できなかった理由もわかる。

 このことを逆に考えれば、市場の大きな歪み(バブル)を発見して未来が見えたら、直接の因果関係に賭けるのがもっとも勝率の高い投資戦略になる。

 アメリカの不動産バブル崩壊と金融危機で大きな成功を収めた投資家の一人がヘッジファンドマネージャーのジョン・ポールソンで、2007年に彼のファンドは150億ドル(当時の為替レートで約1兆6000億円)の利益をあげたとされる。ポールソンの戦略は、金融機関の株価下落リスクに賭けるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を大量に購入する、というものだった。

 ここではCDSの詳しい説明はしないが、会社の信用力を対象とした一種の宝くじだと考えればいい(その仕組みはオプションと同じだ)。

 たとえばあなたがリーマンブラザーズの社債や株式を大量に保有していたとしよう。経営危機の噂が流れて株価も社債価格も下落してきたが、あわてて市場で売却すれば他の投資家のパニック売りを誘い、かえって損失が拡大してしまうかもしれない。このようなときリーマンのCDSを購入しておけば、たとえ会社が倒産しても保険金が支払われて損失をカバーできる。

 CDSの面白いところは、保険をかけるべき資産(この例ではリーマンの社債や株式)がなくても購入できることだ。守るべき資産のない保険を「宝くじ」という。

次のページ>> 個人が国債暴落に賭ける方法とは?

 CDSは保険期間が決まっているので、他の金融機関がリーマンを買収したり、米国政府が救済したりしたら、ポールソンは投資資金の全額を失ってしまったかもしれない。しかしその一方で、予想が当たってリーマンが破綻すれば巨額の保険金(当せん金)が支払われることになる。

 ポールソンは因果関係の連鎖を追うのではなく、不動産バブル崩壊=金融危機というもっとも確実なシナリオを賭けの対象に選び、そこにCDSを使って大きなレバレッジをかけたことでとてつもない成功を手にしたのだ。

 日本国は1000兆円の借金を背負い、ユーロ危機でのギリシアの混乱もあって、財政の健全性に対する不安が高まっている。野田内閣は消費税率を10パーセントに上げようと四苦八苦しているが、財政学者の多くは、日本の財政を持続可能にするためには税率を20〜25パーセントに引き上げる必要があると試算している。こんなことは政治的に不可能だから、彼らの計算が正しければ、そう遠くない将来に日本は深刻な財政危機に見舞われることになる……。

 こうして、「国家破産」を警告するたくさんの本が書店に並ぶことになった。そこで描かれるシナリオはどれもほぼ同じで、国債暴落(金利の上昇)→超円安→ハイパーインフレという順番(因果関係)で危機は深刻化していく。この予想に基づいて、「国家破産に備えて外貨資産を持とう」というアドバイスもよく目にする。

 私はこれが間違っているとは思わないが、ソロスの失敗を見れば、国債暴落=金利上昇という第一要因がただちに円安やインフレという因果関係に結びつくかどうかは不確定だ。国債が暴落して金利が上昇すると、損失を被った日本企業や金融機関は海外資産を売却して円に戻そうとするかもしれない。だとすれば為替相場は一時的に大幅な円高になるだろう。

 このように考えれば、日本の財政は持続不可能だと考えた投資家は、円安ではなく、第一要因である国債暴落に賭けるべきだということになる。実際、日本国破産を予測するヘッジファンドは、日本国債のプットオプションを大量に買っている。これはCDSと同じ宝くじの一種で、期限までに日本国債が暴落すれば巨額の当せん金が支払われる。

 もっともここで注意しなければならないのは、仮に日本の国家破産が避けられない運命だとしても、いつ国債暴落が起きるかは誰にもわかない、ということだ。国家は無限に借金できるわけではないから、日本国の負債が5000兆円や1京円まで膨らむことはないだろう。だが日本経済は世界3の規模で、1500兆円や2000兆円の負債なら耐えられるかもしれない(あるいは逆に、負債はすでに限界を超えていて、なにかのきっかけで明日にでも国債が暴落するかもしれない)。

 オプションを使って投資するリスクは、仮に予測が当たっても、期限までに間に合わなければ宝くじはすべて外れになってしまうことだ。だからこれは、典型的なハイリスク・ハイリターンの投資法といえる。ヘッジファンドがこうした投資戦略をとれるのは、他人(投資家)の資金を運用しているからだ。

 それでは個人投資家はどうすればいいのだろう。

 じつはプットオプション以外にも、国債暴落に賭ける方法はある。それも、きわめて手軽に。

 一部の証券会社で扱っている「国債ベアファンド」は、日本国債の値動きに3〜4倍のレバレッジをかけ、国債価格が下落すると利益が出るように設計された金融商品だ。1万円から購入可能で、もちろん期限はなく、将来の金利上昇(国債の下落)まで積立て投資をすることもできる。おまけに日本の金利は限界まで下がっているから、損失(金利がさらに下がる=国債価格が上昇する)は限定されている【編集部注:具体的な商品としては、T&Dアセットマネジメントが運用している「日本債券ベア」(SBI証券、マネックス証券、野村証券などが発売)がある】。

 もちろん私は「日本国破産」の不吉な予言者でもないし、国債ベアファンドが必ず儲かると保障するわけでもない。ただ現在の経済状況を考えれば、これが有効な投資の選択肢のひとつであることは確かだろう。

 興味のある方は、あくまでも自己責任でどうぞ。

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http://diamond.jp/articles/-/25885?page=3  

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コメント
 
01. 2012年10月09日 05:01:42 : cYwQ5lW2to
アメリカの経済的破綻より欧州のほうが深刻だっただけの話だ。それどころか、欧州より中国経済の破たんのほうが深刻になりつつある。

低金利が定着して、金融の舵は使い物にならない。どこの国でも財政の舵取りをうまくやる以外にやることなどない。世界は世界バブルの最終章の長期デフレ期に入っているのだ。


02. 2012年10月09日 12:54:57 : cqRnZH2CUM

>ソロスは、バブル崩壊が米国発の世界金融危機を誘発し(ここまでは正しかった)、ドル崩壊を引き起こすと考えた

最近は沈黙しているようだが

そう言えば日本でも、ちょっと前まで、米国・ドル崩壊論者が、2011年には破綻すると騒ぎ

何も起きないと2012に破綻して超インフレ、米国分解などと騒いでいたな


>ソロスはドル売りユーロ買いの巨額のポジションで莫大な損失を被ることになった

真相はわからないが、本当に、そうなのかは疑問ではあるね

>。ヨ国債ベアファンド」は、日本国債の値動きに3〜4倍のレバレッジをかけ、国債価格が下落すると利益

CDS「宝くじ」で儲けられるかどうかは、わからないが

まあリスクは限定されているから、好きな人はチャレンジしてみればいい


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