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株式日記と経済展望
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アジア通貨危機が中国に伝染しなかったのは、ひとえに中国が内外の
資金移動を厳しく規制し、為替相場の変動を抑制しているからだ。
2012年10月6日 土曜日
◆人民元国際化に政治の壁、通貨危機リスクも=竹中正治氏 9月26日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE88P02820120926?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0
[東京 26日 ロイター] 中国人民元の国際通貨としての台頭については、このフォーラムでも斉藤洋二氏、加藤隆俊氏が慎重ながらも将来的にその現実性は十分あると述べられている。
こうした比較的慎重な意見の一方で、「国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第二の経済大国になったのだから、人民元のプレゼンスが国際通貨として高まるのは自然」といった論調も中国内外で横行しているようだが、それは実に危うい俗論だ。
国際通貨化のプロセスは必然的に中国国内の経済・金融にまたがる既得権益のほぼ解体的な再編を意味するものであり、本気でそれを実現するならば「第二の革命」とでも呼ぶべき、高い政治的なハードルを乗り越える必要がある。その過程において政治体制の不安定化や、制度・政策の不整合を原因にした金融危機的な状況すら起こり得ることを指摘しておこう。
<人民元先物為替市場の構造的問題>
まず、今日のドルや円、ユーロのような「国際通貨」とは、貿易、投資、金融などの国際取引に世界中で使用されるものだ。したがって、世界の外為市場で自由に交換、売買できる条件が満たされる必要がある。
たとえば、日本と中国の間で「ドルや円ではなく、人民元建てで契約しましょう」と言われた場合、為替相場の変動リスクは日本の契約者が負うことになる。当然、日本の契約者は人民元の為替リスクをヘッジできる環境がなければ、一方的に為替リスクを負うことを拒む。外国為替のリスクヘッジ手段としては、先物為替取引が最も一般的であり、先物為替取引で人民元相場の変動リスクを回避する反対取引ができれば問題はない。ところが、現在、人民元については十分な流動性のある先物為替市場はできていない。
一方、ドル建てで契約すれば、日本の契約者はドルと円の為替変動リスクをドル円の先物取引でヘッジできる。また、中国の契約者にとっては、十分な流動性のあるドル・人民元先物市場はないものの、中国政府が常時大規模な外為市場への介入で事実上対ドルでの為替変動リスクを抑制しているので、短期なら大きな為替リスクを負わずに済む。そのため、日中間でもドルで契約される場合が一般的になるのだ。
では、なぜ流動性の高い人民元先物為替取引市場ができないのか。その理由は相互に関連した二つの事情による。
第一に、海外の金融機関などが中国の国内銀行に資金決済用の人民元口座を保有することを中国政府が禁じているからだ。そのため海外の銀行は中国国外で人民元と他通貨の交換取引をしようにも決済することができない。これは中国政府が人民元相場をできるだけコントロールする目的でそうしているのだ。
第二の理由は、中国が内外の資金移動を規制しているからだ。ドル、円、ユーロなど先進国通貨の間では居住者・非居住者の区別なく相互の交換、国境を越えた資金移動、各通貨建ての各種金融資産の売買が自由にできる。一方、中国政府は海外との間でそうした取引を依然厳しく規制している。少し専門的になるが、流動性の高い先物為替市場は二国間の資金移動が自由である条件の下で金利裁定原理に基づいた価格形成が行われて初めて可能になるのだ。
以上二つの事情の結果、海外では人民元の資金決済を前提としないNDF(ノンデリバラブル・フォワード)と呼ばれる外為相場取引しか利用できない。この市場は中国国内の外為市場と分離され、金利裁定原理も働かないので、流動性の乏しい狭隘なものにとどまっている。
なぜ中国は内外の資金移動を規制しているのか。それを理解するために国際通貨制度におけるトリレンマ(不可能の三角形)の命題を理解しておく必要がある。それは内外の資金移動の自由、自国の金融政策の独立性、為替相場の安定、この三つを同時に満たす通貨制度は原理的に不可能であり、同時に満たせるのは二つまでであるという原理だ。
なぜ同時に三つを満たすことができないのか。たとえば、日本が米ドルに対して1ドル=100円の固定相場制を採用したとする。同時に日本銀行と米連邦準備理事会(FRB)は独立した金融政策を行っており、10年物日本国債利回りは1%、同じくアメリカの10年物国債利回りは3%だとしよう。
この場合、もし内外の資金移動を自由にしておくと、日本の投資家は、保有していた日本国債を売って、米国債に大規模にシフトするだろう。固定相場制で為替リスクがほとんどないのだから、低利回りの日本国債から高利回りの米国債にシフトするのは当然だ。その結果、外為市場では投資家の円売り・ドル買いが殺到し、ドル相場は上昇しようとする。
それを抑えて固定相場を維持するためには、日本政府はドル売り介入をしなくてはならない。しかし、民間のドル買いの動きは、数百兆円もの日本国債が米ドルにシフトするか、あるいは日米金利差がゼロになるまで尽きないので、到底政府の介入では抑えることができない規模になる。つまり、固定相場は維持できなくなるのだ。もし固定相場を維持するなら、内外の資金移動を規制するか(「内外の資金移動の自由」の放棄)、あるいは日米間の金利差をゼロにする(「自国の金融政策の独立性」の放棄)しかない。
<トリレンマの原理とアジア通貨危機の教訓>
このトリレンマの原理に反した制度・政策は最終的には厳しい市場のしっぺ返しを食らう。その典型例が1997―98年のアジア通貨危機だ。
タイをはじめとするアセアン諸国は90年代に内外の資金移動の自由化を進めながら、同時に政府の外為市場介入で米ドルに対して固定的な相場を維持していた。一方、国内経済は日本を含む先進国からの直接投資の増加などもあって好況で、タイ・バーツの金利がドル金利を大幅に上回る状態となっていた。つまり、トリレンマの三つの条件を結果的に同時追求してしまった。
その結果、高金利の自国通貨と低金利のドルの金利格差に誘引されて、ドルで借り入れ、バーツに転換して国内投資に充てる取引残高(ドル・ショート・ポジション)が現地の企業や各種機関で莫大に積み上がった。それに目を付けたのがヘッジファンドだ。
彼らの仕掛けたバーツ売りでバーツの対ドル相場が下落し始めるや、ドル債務(ドル・ショート)を抱える企業もリスクヘッジのためにドル買い・バーツ売りに殺到した。途中までドル売り介入でバーツの下落を抑制していたタイ政府も外貨準備の底が見えてくると、介入を止め(97年7月)バーツ相場は急落した。その結果、ドル債務のバーツ換算額が急拡大し、莫大な為替損で企業は債務不履行となり、融資していた銀行にとっては不良債権の山となった。こうして通貨・金融危機に陥ってしまったのだ。
そして、インドネシアやマレーシアなど同様の構図にあった他国に危機は一気に伝染した。
当時、アジア通貨危機が中国に伝染しなかったのは、ひとえに中国が内外の資金移動を厳しく規制し、その意味でトリレンマの原理に整合的な制度をとっていたからだ。現在の中国は、為替相場は完全な固定相場ではないが、一種のクローリング・ペッグ(じわじわと変動させる半固定的相場制)を採用し、為替相場の変動を抑制している。その結果、内外の資金移動も規制している。(後略)
(私のコメント)
「株式日記」では、日本は米中の挟撃で経済が弱体化されてきたことを何度も書いてきましたが、アメリカは日本を円安政策を認めないから日銀も金融緩和が出来ない。それに対してアメリカは中国が世界第二位の経済大国になったにも拘らずドルに対する準固定相場を認めている。米国議会は何度も中国に対する為替操作国の指定を求めましたが、アメリカの大統領は指定を拒否し続けて来た。
日本の円高と中国の人民元安によって日本の輸出製造業は痛めつけられて、工場は中国へ移転を余儀なくされて来た。そして今では中国に進出した日本企業は、中国人労働者から賃上げストを仕掛けられて苦しんでいる。毎年20%もの賃上げされたらコスト高になって中国に進出した意味がありません。だから日本企業は中国から一斉に撤退していますが、先日の反日デモでそれは一気に加速されるだろう。
中国人労働者の賃上げは、国内のインフレの為であり、インフレはドル買いによる大幅な人民元が放出されている為だ。人民元はドルに対して固定相場をしてきたから、ドルが下がれば人民元も下がり、人民元でもってドルを買ってきた。それだけ市場に人民元は放出されるからインフレになる。ドルと共に人民元が切り下げられてくれば鉄鉱石や石炭や石油などの輸入価格が上がる。
竹中正治氏が述べているように日中貿易で円や元ではなくドルが使われているのは、人民元には先物為替市場が無いからだ。貿易には契約から決済にまで長い期間がかかるから外国為替のリスクヘッジのために先物市場で変動リスクを回避する。だから日中間の貿易でもドルが使われて来た。中国は輸出依存度が高いから為替も自由化したほうが合理的なのですが、日本がプラザ合意でダメージを負った事を見て、自由化や切り上げを拒否し続けている。
その理由として竹中氏は、「なぜ中国は内外の資金移動を規制しているのか。それを理解するために国際通貨制度におけるトリレンマ(不可能の三角形)の命題を理解しておく必要がある。それは内外の資金移動の自由、自国の金融政策の独立性、為替相場の安定、この三つを同時に満たす通貨制度は原理的に不可能であり、同時に満たせるのは二つまでであるという原理だ。」と述べていますが、自由化を拒否して独立性と為替の安定を優先している為だ。
日本はプラザ合意以来、円はドルに対していつも3%の金利差が付けられて来た。そうする事によって日本国内から資金がアメリカに流出して行った。そして多くがアメリカ国債の購入に使われて来た。中国も為替介入で得たドルをアメリカ国債を買ってきた。そうする事がアメリカの国益であり、ドルをジャンジャン印刷しまくって中国や日本から物を買い捲ってきた。
こんな事をすればアメリカ国内の製造業は安い中国製品にやられてしまって空洞化してしまった。このような政策は米中経済同盟によって仕組まれたものであり、ウォール街やグローバル企業にとっては有益であっても労働者にとってはアメリカの賃金が下げられてしまって中産階級が没落していく事になった。日本は米中の経済同盟によって苦しい立場に立たされましたが、アメリカに代わって中国と言う輸出先が拡大して、最大貿易相手国がアメリカから中国に代わった。
日本が中国のような固定相場にしようとすればどうなるだろうか? 竹中氏は、「それを抑えて固定相場を維持するためには、日本政府はドル売り介入をしなくてはならない。しかし、民間のドル買いの動きは、数百兆円もの日本国債が米ドルにシフトするか、あるいは日米金利差がゼロになるまで尽きないので、到底政府の介入では抑えることができない規模になる。つまり、固定相場は維持できなくなるのだ。もし固定相場を維持するなら、内外の資金移動を規制するか(「内外の資金移動の自由」の放棄)、あるいは日米間の金利差をゼロにする(「自国の金融政策の独立性」の放棄)しかない。」と述べていますが、円安にすることは不可能に近い。
1997年のアジア金融危機は、自由化を進めながらドルの固定相場を維持する結果生じたものであり、高金利の自国通貨と低金利のドルとの金利差で、ドルを借りて自国通貨で運用する金額が巨大になり、先物市場ではドル買いと自国通貨売りの残高が増えて行った。そこをヘッジファンドに狙われてドル買いバーツ売りによってアジア金融危機が仕掛けられた。ASEAN諸国はドル買いで自国通貨を支えようとしたが外貨が無くなり破綻した。
アジア通貨危機で中国が免れる事が出来たのは、自由化されていなかったためであり、マレーシアも通貨投機を規制して何とか切り抜ける事が出来た。中国はこのような教訓があるから為替の自由化は行なわずにドル固定性を維持していくだろう。しかしこれはアメリカ政府の容認が無ければ出来ない事であり、日本に対しては円安介入しようとすれば為替介入指定国になってスーパー301条の適用を受ける。
このように金融の世界から見れば、アメリカと中国は同盟国であり、日本は敵国として扱われている。中国はGDPで日本を追い抜いて世界第二位の経済大国になり、日本の経済成長は20年間もストップしたままであり、日本人の所得は下がり続けた。このようなアメリカ政府の意図は不明ですが、日本の弱体化はアメリカにとってプラスなのだろうか?
アメリカ政府は中国を為替操作国指定をしないのは明らかにおかしいのですが、日本に対しては1ドル=75円にまで上げて日本の家電産業は壊滅的な被害を受けてしまった。さらに福島原発事故により天然ガスの大量輸入によって貿易赤字になっても円高は止まらない。ヨーロッパもソブリン危機でユーロ安が止まりませんが、ECBは無制限のユーロ国債の買いを発表した。世界中にドルやユーロが溢れかえって円だけが高くなっている。
竹中氏は人民元について、「政治的な理由で経済原理に反した制度・政策の大きな不整合を犯した場合、最終的には巨大なしっぺ返しを引き起こすことは、すでにアジア通貨危機を例に述べた。」というように、どこかで不都合な事が起きて収拾不可能な事態が訪れるだろう。それはドルやユーロでも起きており、印刷機で札をフル回転してばら撒けば、まさしく紙幣はただの紙になってしまうだろう。
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