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中国は現在、貿易、投資の両面で人民元の国際利用を積極的に進めている。貿易コストの引き下げという商業的な目的だけではなく、壮大な戦略を視野に入れた動きだ。
中国政府の見方では、人民元が米ドルの地位に取って代われば、原油その他のコモディティ価格は今より安定し、すっかり時代遅れになった第二次大戦後の国際通貨体制の中核を成す、準備通貨の発行国という米国の「途方もない特権」が遅まきながら奪われるだろう。
上海国際問題研究院のZha Xiaogang研究員によると、中国政府はよりバランスの取れた国際通貨体制を望んでおり、それを構成する通貨は少なくともドル、ユーロ、人民元の3つで、恐らくは円やインドルピーなどその他通貨も含まれると考えている。
投資、貿易、価値の保存の手段となる通貨の選択肢が広がり、主要通貨の発行国間で競争が起こった方が、世界経済にとってより良い結果がもたらされるとZha氏は主張。「現在の国際通貨体制の欠陥は中国経済にとって大きな脅威だ。ドル以外の選択肢が広がれば、米国は今ほど幅を利かせられなくなり、勢力基盤が確実に弱まる」と論じる。
Zha氏のコメントは、バーレーンで今週開かれている通貨の地政学的側面に関するセミナー向けに用意された論文の一部。セミナーを主催したのはロンドンのシンクタンク、国際戦略研究所。
<地殻変動>
世界金融危機に続いて中国ほか新興市場諸国が台頭し、ユーロが存亡の危機に陥ったことで、先進諸国の政策当局者も従来の通貨秩序に疑問を呈している。
しかし現在はドルに代わり得る明確な通貨が見当たらないため、通貨体制移行の時期と程度は予想し難い。
人民元の国際化は、まず中国自体にとってリスクが高いとの指摘もある。
準備通貨の地位を得るには、資本管理を解き、外国人が蓄積した人民元を中国の証券市場に再投資できるようにすることが前提条件の1つだ。しかし自由な資金流入が為替レートと金利を左右するようになれば、中国共産党はこの2つのレバーの掌握権が弱まり、嫌悪する経済不安定化そのものを誘発する恐れがある。
ピーターソン国際経済研究所(ワシントン)のシニアフェロー、ジョン・ウィリアムソン氏は、準備通貨の発行国という地位が大きな恩恵をもたらすという基本的な前提に疑問符を付ける。
中国やブラジルといった国々は、米国が金融緩和を通じて故意にドルを下落させていると批判するが、ウィリアムソン氏は、ドルは基軸通貨であるゆえに為替レートの柔軟性が限定的だと反論。為替レートを調整しているのは他の国々で、ドルの動きはそのしわ寄せだと言う。
もちろん米国は、ドルに準備通貨としての需要があるおかげで財政赤字を他国よりも低コストでファイナンスしている。しかし為替レート管理の自由を奪われるという不利を補うには不十分かもしれない。
ウィリアムソン氏は「多くのエコノミストが、こうした理由で準備通貨の役割はお勧めできないと結論付けているのも無理はない」と言う。
ドルの支配的地位が世界経済における米国の力を強める経路は2つだけで、その構図は向こう25年間揺るがないだろうとウィリアムソン氏は指摘する。
1つは、中国政府が人民元のドルに対する準固定相場制を維持するために積み上げた3兆2000億ドルの外貨準備が、中国政府の手足を縛ることだ。すなわち、中国がドル保有を減らすと脅しを掛けるなど米国に対して敵対的姿勢を示せば、中国自体の富が失われるからだ。
もう1つは、ドルが世界中で民間利用されているため、米国は例えばイランなどへの経済制裁を実施しやすいという事情だ。「国際的通貨を司っていることがもたらす追加的な国家権力は、戦略的考察者によって誇張される傾向があるという印象を抱いている」(ウィリアムソン氏)という。
<アジアの緊張>
小池百合子・元防衛相は通貨の力を異なる角度から見ている。
小池氏はバーレーンでの会議に向けた論文で、アジアにおいて中国の台頭は今後も最大限の恐怖を喚起しそうで、日本が財政再建を急がなければならない理由の1つでもあると指摘。「これまでのところ、中国による日本国債の購入は無視できる規模だが、この点で中国が日本への影響力を強める可能性は現に存在しており、認識すべきだ」と論じた。
一方でZha氏は人民元の国際利用拡大について、中国が外交政策において平和裏に勢力を強めていることと表裏一体だと言う。
Zha氏の見方では、東アジアが経済的・金融的に統合を強める中で人民元が事実上の共通通貨になる日は遠くない。東アジアは国際問題について統一見解を語るようになるが、その統一見解は中国主導で決まるとZha氏は示唆する。
世界貿易機関(WTO)のハルシャ・バルダナ・シン副事務局長は、数年中に人民元が準備通貨の地位を得る可能性は高いと語る。しかし、貿易形態の変化やサプライチェーンの増加が原因となり、地域貿易において重要な他の通貨も国際舞台において役割を大きく拡大すると予想。「こうした多様な発展が生み出すのは、一般に予想されているよりもずっと大規模で多極化した通貨世界だろう」と述べた。
<通貨戦争と通貨平和>
これらのことは市場にとってどのような意味を持つのか。「通貨戦争」という言葉が頭に浮ぶのは避けられない。
しかしニューデリーのヘッジファンド、オクサス・インベストメンツのスルジト・バーラ会長は、中国が重商主義の衣を脱ぎ捨て、輸出主導から消費主導へと発展モデルの軸足を移すと確信している。
バーラ氏は、人民元の国際化を推進することにほとんど利点はないと見ているが、中国政府は実効為替レートを年3─5%ペースで上昇させることを通じ、現在は国内総生産(GDP)の約35%にとどまっている個人消費の比率を最低50%まで拡大させると予想する。
バーラ氏はバーレーンの会議の合間にインタビューに答え、この結果、通貨戦争に終止符が打たれ、先進国と新興国の経済成長がともに強まると主張。「近年で最も目覚ましいウィン・ウィン状態の1つになるだろう。通貨平和の登場だ。これまでは通貨戦争だったが、今や平和を享受する時だ」と述べた。
2012/10/04
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89303B20121004?sp=true
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