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【第247回】 2012年10月2日 真壁昭夫 [信州大学教授]
日の丸製造業復活の狼煙か、存在意義の喪失か?
ソニー・オリンパス「弱者連合」への期待と不安
シナジー効果は本当に期待できるのか?
ソニーとオリンパスが正式に提携を発表
不正会計処理の発覚によって経営の屋台骨が揺れていたオリンパスと、ソニーの提携が正式に発表された。
かつて、オリンパスは光学関係の高い技術を持つ優良企業だった。そのオリンパスは、今でも内視鏡などの分野では世界トップを誇っているのだが、粉飾決算の表面化でかつての名声を失った。同社との提携については、同業のテルモやパナソニックなど、手を挙げる企業は多かった。
今回の合意によって、ソニーはオリンパスに対して500億円の出資を行ない、役員を1名派遣する予定だという。500億円の出資によって、ソニーはオリンパス株式の10%以上を握る筆頭株主になる。
それと同時に両社は、内視鏡やカメラ、さらにはイメージセンサーなど光学部品などの分野で、共同のビジネス展開を目指す予定だ。両社の提携合意の背景には、内視鏡など光学関係の新製品開発やカメラの部品共同化などによってコストを削減しながら、新分野への展開などのシナジー効果を生みたいという意思が見える。
そうした提携のプラス面が見込まれる一方、業界専門家の一部には、「両社の提携には大きなマイナス面もある」との見方もある。テレビ事業の不振などによって、ソニー自体のブランド力の低下はかなり鮮明になっており、最近では目立った新製品もない。
そのソニーと、粉飾決算事件の影響で経営状態が悪化したオリンパスが組むことについては、「“弱者連合”をつくるだけ」との指摘もある。
確かに、提携によってコストカットなどの合理化だけに目が行ってしまうと、今後、積極的な事業展開を期待することは難しい。また、提携によって組織内の管理部門が肥大化するようなことがあると、“モノづくり”のカルチャーを殺してしまうことにもなりかねない。
今回の提携によって、“世界で一番新しいモノを最初につくる”という理念を、ソニーがどこまで取り戻すことができるかが、重要な鍵を握ることになる。
開発力の低下に経営者の責任逃れ
「見方によっては弱者連合」との声
1980年代にウォークマンで一世を風靡したソニーは、世界を代表する革新的な企業だった。戦後後間もなく小さな町工場から出発したソニーは、トランジスターラジオやトリニトロンテレビ、ハンディーカムなど、世界を驚かせるような新製品を次々に世に送り出し、わが国の経済成長を象徴する存在だった。
そのソニーが曲がり角を迎えたのは、1990年代中盤、出井伸之氏が同社のリーダーとして経営を担当し始めた時期だろう。それ以降のソニーは、コンテンツ事業やファイナンスなど様々な分野に事業展開を行ない、事業部制を中心とした一種のコングロマリット=複合企業へと変身していった。
問題は、そうしたプロセスの中で、「世界で一番新しいモノを最初につくる」というカルチャーを忘れていったと思しきことだ。
金融など手っ取り早く儲けられる分野が事業部の中で目立つ一方、時間をかけて新しい技術や製品を開発する分野の効率は悪く見えがちだ。そうなると、どうしても、モノづくり部門の発言力は低下し、製品開発担当者にとっては居心地の悪い会社になってしまう。おそらく、それが今のソニーの凋落を招いた最も大きな要因だろう。
一方のオリンパスは、以前からカメラなど光学系製品に定評を持つ老舗企業だった。同社はいち早く医療用の内視鏡などに注力することで、当該分野では世界の7割近いシェアを持つトップ企業だ。
ところが資金運用に失敗し、それを粉飾決算により長年にわたって隠し続けてきた。それが近年、外国人経営者のマイケル・ウッドフォード氏によって告発され、経営責任が問われるに至った。
それによって、かつての名声は地に落ち、経営状態も悪化に追い込まれることになった。オリンパスの凋落は、有体に言えば、単純な経営者の責任逃れの結果ということになる。
合理化や技術の共有はメリットだが
モノづくりのカルチャーを取り戻せるか
そうした凋落のプロセスを通ってきたソニーとオリンパスが、今回、提携の道を選ぶことになった。確かに、両社の提携については、それなりのメリットがある。
まず、ソニーが500億円を出資すると、オリンパスはそのキャッシュを受け取ることによって財務内容が好転する。オリンパスの資金繰りが改善すると同時に、同社の自己資本比率が上昇することになる。それはオリンパスにとって大きなメリットだ。
また、オリンパスが不振を続けているカメラ部門を立て直すためには、世界有数のデジタルカメラのメーカーでもあるソニーの支援は心強いはずだ。さらに、オリンパスは一部の製品に、すでにソニー製のイメージセンサーを使っている。
ということは、両社が提携することで、相応のコストカットが可能になる。たとえば、当該分野で新しい技術や製品を開発するときに、技術者やノウハウの共有化、開発コストの軽減などが期待できる。
一方、最近目新しい製品の開発事例が少ないソニーにとって、オリンパスが持つ世界トップシェアの内視鏡器具のビジネス分野を手にする意味は大きい。そこを起点にして、今後成長が見込める医療機器分野への突破口を広げる好機になるかもしれない。
また、オリンパスの持つ一眼レフのレンズに関する技術なども、大きなプラスになる可能性がある。特に、そうしたカメラなどに係る技術は、デジタルカメラ分野で激しくわが国メーカーを追い上げる韓国メーカーとの競争にも役立ちそうだ。
そして、もう1つ重要なポイントは、両社が部品や開発に関して重複している部分を削る=合理化することによって、経営の行為率化を図ることができることだ。ライバルである韓国メーカーなどとの競争を想定すると、その意味は決して小さくない。
確固たる経営理念を確立できなければ
“レゾンデートル”は失われてしまう
しかし、「ソニー・オリンパス連合」には、潜在的な問題点があることを忘れてはならない。問題点を一言で表現すると、両社が本来の“モノづくり”のカルチャーを取り戻せるか否かだ。
特にソニーは、一時期の事業部制の展開によって、新しいものを生み出すカルチャーを失いつつある。今回の提携によって、ソニーが医療分野への足がかりをつくっても、新しい技術や製品を生み出すことができなければ、意味がない。結果的として既存製品に依存するだけで、いずれジリ貧状態に陥ることは目に見えている。
今回の提携では、ソニー、オリンパス共に、ある意味では「スネに傷を持つ者同士」が一緒に事業展開を考えようとしている。両者の経営があまりに傷を意識し過ぎて、短期的な業績改善に重点を置き、単純にコストカット・経営合理化の方向に目が行くようだと、ソニー・オリンパス連合の行く末は限られたものにならざるを得ない。
また、企業の中で管理部門が肥大化して、頭でっかちの組織ができ上がると、それにも大きな弊害が出るはずだ。
両社の経営にとって、最初にやらなければならないことは、ソニー・オリンパス連合が、今後、企業としてどのような経営理念を持って進むかを十分に共有することだ。それがないと、提携自体が形骸化してしまい、時を経ずして空中分解することにもなりかねない。
ライバルとなる韓国企業などの追い上げを考えると、おそらく両者の持っている技術やノウハウを最大限に生かして、これからも常に新しいモノをつくり続けることが最も有効な経営戦略になるだろう。
それを実行するためには、開発部門や製造部門の発言力を強化することが必要だ。経営陣が、それらの部門と管理・営業部門などとのバランスを重視することが必要になる。それができないと、わが国の製造業が持つ“レゾンデートル=存続意義”を失うことになってしまう。
http://diamond.jp/articles/print/25662
トヨタなぜHV戦略にこだわるのか EVと距離を置く理由とは?
2012.9.29 19:30
トヨタ自動車が平成27年末までに新型ハイブリッド車(HV)21車種を発売する。HV重視の戦略を鮮明にしたわけだが、一方で電気自動車(EV)は年内に発売するものの、当初計画は大幅にトーンダウン。なぜ、トヨタはEVに及び腰なのか。EVが普及すれば、取引先約2万6千社から成る巨大な“トヨタピラミッド”に亀裂が生じるとの危機感が見え隠れする。
販売台数は全世界で100台
「エコカーの“本命”といえば?」
こう問われると、「電気自動車(EV)」と答える人は多いはずだ。
ガソリンではなく、電気で走るクルマ。これは1908年に米フォード・モーターがガソリン車の量産モデルを開発して以来、自動車業界の新たな1ページの始まりであり、すでに三菱自動車、日産自動車がEVを発売している。マーケティング会社の富士経済(東京都)によると、日本のEV販売台数は2025年に100万台超、30年には191万台と200万台に迫ると予測されている。
ただ、不思議なことに今年1〜6月の世界販売台数では2年ぶりに頂点に返り咲いたトヨタは、EVに対してやや距離を置く。トヨタ関係者は「HVもEVも燃料電池車(FCV)も全方位にやっています」と説明するが、HV、プラグインハイブリッド車(PHV)に比べ、EVの事業化に対するスピードは決して早いとはいえない。
9月24日の環境対応車戦略発表会で、今年12月に小型車「iQ」をベースとしたEV「eQ」(国内販売価格は360万円)を発売すると発表。しかし、グローバルの販売台数はわずか100台と少ない。
2年前に計画を公表した際には数千台の販売を見込んでいたが、「EVはまだまだ難しい」(内山田竹志副会長)。HVについては平成27年末までに新モデル14車種を含め21車種を投入するだけに、「EVに対するトヨタのスタンスを如実に物語っている」と業界関係者は話す。
HVは年間100万台達成へ
トヨタは、平成9年に世界で初めてHVの量産車を開発し、初代プリウスを世に送り出した。
以来、HVによってエコカー市場を牽引(けんいん)し、今年のHV世界販売台数見通しは初めて100万台に達するなど、約15年かけて事業の柱に育て上げた。
長年積み上げてきた歴史もあり、HVへのこだわりは並大抵ではないが、実はそれだけではない。前出の関係者は「EVが主流になれば、自動車メーカーの存在基盤すら揺らぐ恐れもある」という。
約3万点の部品で構成され、複雑な構造のガソリンエンジン車に対し、EVは電池とモーターという2つの部品がクルマの性能を決定付ける。「EVは電池とモーターがあれば動く。安全性は大前提だが、部品点数も少なく、異業種も参入しやすい」とある大学教授は解説する。
トヨタには、一次サプライヤーと呼ばれる主要な部品供給先400社をはじめ二次、三次サプライヤーなど計2万6千社前後の取引先が存在する。ガソリンエンジン車を構成する部品点数の多さと、内燃機関の複雑さによって「この巨大なピラミッド構造が成り立っている」と前出の大学教授は明かす。
危機感募るピラミッド崩壊?
言い換えれば、部品点数が少なく、「プラモデルのように比較的容易に組み立てられる」(関係者)EVが普及すれば、トヨタピラミッドに亀裂が入る恐れもあるというわけだ。
しかも、EVの心臓部である電池は自動車メーカーではなく、パナソニックなど電機各社が技術を保有しているケースが多い。これはピラミッドが崩れるだけでなく、状況次第では将来的に自動車開発の主導権を電機メーカーに握られてしまう可能性があることを意味している。
これに対し、HVは「エンジン」と「モーター」という2つの動力源を搭載しているため、エコカーでありながら“ブラックボックス”の内燃機関が存在。つまり、構造はきわめて複雑で、「トヨタピラミッドをこれまで通り維持することができる」(関係者)。
実際、トヨタはHVの新モデルを大量投入するだけでなく、米フォード・モーター、独BMWとHV技術で協業関係を構築。HVをエコカーのデファクトスタンダード(事実上の業界標準)とするための動きを活発化させている。
トヨタを頂点とするピラミッド構造こそグループの強さの源泉。それだけにEV技術は保有しつつも、当面はHV一本やりのエコカー戦略が続くはずだ。(島田耕)
http://www.sankeibiz.jp/business/print/120929/bsa1209291931004-c.htm
#今後、EVが主流になり、自動車がコモデティ化すれば、日本の製造業の栄光は、ほぼ終わりか
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