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穀物高の悪夢が再来、身構える食品メーカー
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120925-00000001-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 9月25日(火)11時20分配信
世界的な穀物高がついに日本の食卓に波及し始めた。日清オイリオグループは、10月から家庭用食用油を1キログラム当たり10円、業務用を1斗缶(16・5キログラム)当たり200円値上げする。同業のJ─オイルミルズも値上げを検討している。
6月以降、穀物価格は急ピッチで上昇している。8月下旬には、トウモロコシと大豆の価格がそれぞれ1ブッシェル当たり8・3ドル、17・7ドルと史上最高値を更新。小麦も過去最高値となった2008年の水準に近づきつつある。
引き金を引いたのは世界的な異常気象だ。6月以降、世界最大の穀物輸出国である米国中西部の穀倉地帯を熱波が直撃。7月にトウモロコシは受粉期、大豆は開花期から受粉期を迎え、この時期の高温少雨は致命的である。もともと今年は豊作と見ていた米国農務省は、記録的な干ばつを受けて一転、穀物生産量の予想を大幅に下方修正(表)。需給が逼迫するとの危機感から、短期間で急激に価格が上昇した。
■需要構造の変化も
過去にも、07年から08年にかけて穀物価格は暴騰している。06年の豪州干ばつに加え、「新興国での需要が急増することを見込み、穀物だけでなく原油、銅、石炭などの資源価格も連動して高騰した」(丸紅経済研究所の美甘哲秀所長)ことが大きい。そのときに流入した投機マネーはリーマンショックを機に引き揚げ、09年には相場は反落。ただ08年以前の水準までは下がり切っていない。穀物需給の構造が変化しつつあるためだ。
その主な理由は二つある。一つは新興国での食料需要の拡大だ。たとえば中国では生活水準の向上に伴い食肉や乳製品、油脂の消費量が増加。飼料や油脂の原料となるトウモロコシ、大豆の輸入量が急増し、中国の大豆輸入量は10年間で5倍増の約5200万トンに到達した。トウモロコシも09年に輸出から輸入に転じ、近い将来には日本を抜いて世界最大の輸入国になるとみられている。
トウモロコシの場合、これに加えて米国が05年以降バイオエタノール政策を本格化したことの影響も大きい。現在では米国でのトウモロコシ生産量の約4割がバイオエタノール用に回されている。
今回はこうした構造変化に異常気象が重なり、穀物価格が一気に上昇した。12年の穀物収穫量の見込みは過去と比べれば高水準だが、消費拡大に伴い、穀物全体の期末在庫率は低下している。
11年度の在庫率は20・5%にまで下がり、国連食糧農業機関(FAO)が安全な在庫水準の最低ラインとする17〜18%に近づきつつある。今回の穀物高騰は「食糧の逼迫が現実のものとして認識され、危機感が高まった結果」と、SMBC日興証券の沖平吉康シニアアナリストは指摘する。
■国内メーカーにも影響じわり
穀物高に身構えるのが、国内の食品メーカーだ。穀物需給の問題に詳しいコンチネンタルライスの茅野信行氏は「今年度後半から来年度にかけ、タイムラグを伴ってさまざまな食品に影響が及ぶ」と話す。まずは食用油に始まり、マヨネーズなど油脂量の多い加工品、トウモロコシや大豆を原料とする飼料価格高騰によって食肉へと広がるとみられる。
冒頭のとおり、製油業界にはすでに影響が及んでいる。また、自社農場を保有する食肉大手は「生産の回転が速い鶏肉では一部が今年度中に、豚肉は来年度中心に飼料高の影響が出てくる」と話す。
一方、小麦は政府が商社に委託して一元的に買い上げ、直近6カ月の買い付け価格の平均値を参考に、製粉業者などへの売渡価格を決定する「国家貿易」の枠組みで流通している。売渡価格の改定は毎年4月、10月の2回のみ行われるため、相場変動の影響はほかの穀物より遅れて表れる。政府は8月末に、10月からの売渡価格を平均3%引き上げると発表。小麦価格の高水準が続けば、来年4月の売渡価格が大幅に引き上げられる可能性もある。
ただ、国内では食品の低価格化が進み、容易に小売価格に転嫁できないのが現状だ。比較的転嫁しやすいとされる油脂メーカーでも「相場の上昇分を完全に上乗せすることは難しい」(日清オイリオグループの芋川文男専務)と漏らす。
こうした中、加工食品メーカーは「まずは販促費の抑制や量目変更、商品数削減などで対処するしかない」(UBS証券の高木直実アナリスト)。一方、原料価格に左右されにくい商品開発も進めており、たとえばキッコーマンでは「使い勝手がよい容器に入ったしょうゆなど、高付加価値品の強化で対応する」(中野祥三郎常務)。また、業務用マヨネーズ大手のケンコーマヨネーズは油脂量の少ないマヨネーズの生産設備を増強する。健康機能品のニーズ獲得だけでなく、原料の油脂費用を抑えるのが狙いだ。
「秋以降は南米で大豆の増産が行われるなど供給が増え、穀物価格は下落に向かう」(丸紅経済研究所の美甘所長)との見方が強い。ただ「量が確保できても品質が伴わなければ、加工時の歩留まりが悪化する」(日清オイリオの芋川専務)という懸念も残る。
異常気象が常態化する可能性も指摘されている。日本総合研究所の藤井英彦理事によると、「00年以降は異常気象の発生頻度が増えている。今後(穀物の生育に適した)気象条件に改善するとは考えにくい」。需要構造や気候条件が変化する中、中長期的に穀物価格が高値圏で推移する可能性もある。小売価格への転嫁が難しい状況下、食品メーカーにとっては試練が続きそうだ。
(平松さわみ =週刊東洋経済2012年9月15日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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