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東芝は原発ビジネスから撤退!? 三菱・日立はどうするのか?
http://news.livedoor.com/article/detail/6957413/
2012年09月16日18時00分
提供:ビジネスジャーナル
日本の原発輸出はどうなるのか――。ロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は9月9日、「原子力の安全かつ確実な利用の確保」を明記した首脳宣言を採択した。この首脳宣言は東芝、日立製作所、三菱重工業の有力原発メーカー3社を抱える日本にとって、2011年の東京電力福島第1原発事故以降、停滞する原発の輸出拡大の契機となるはずだった。
だが、日本政府は革新的エネルギー・環境戦略で「脱・原発依存」を打ち出している。将来の原子力発電の比率について、民主党の提言を踏まえ「2030年代に原発稼働ゼロ社会を目指す」としている。
「国内では脱原発だが、海外向けには原発輸出を奨励」。内向けと外向けでは、完全に矛盾しており、政府の方針は実にわかりにくい。
原発の輸出は民間だけがんばれといっても難しい。受注競争では相手国政府への働きかけが重要だ。特に新興国では政権中枢に実権が集中しており、トップの意向が受注の成否を大きく左右する。
ベトナムの原発を受注したロシアは、プーチン首相(当時、現・大統領)自らハノイ入りし、ロシア製の原子力潜水艦を提供した。日本が優先交渉権を得ているトルコの原発計画では、韓国の李明博(イミョンバク)大統領が直接訪問してトルコ首相と会談を行うなど、猛烈な巻き返しを図っている。
もはや、国の支援なくして原子力発電所の争奪戦では勝ち残れない。国内向けと釈明したとしても脱原発が原発輸出の足かせになるのは確実だ。
定まらない国の原発政策の狭間で東芝は揺れ動いている。東芝にとって原子力発電事業は「選択と集中」の輝かしい成果だからである。
経営戦略にも流行語がある。「選択と集中」は、その最たるものだ。80年代、世界最大のコングロマリット(複合企業)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチCEO(最高経営責任者)がシェアで1、2位の事業に経営資源を集中し、それ以外は撤退もしくは売却する「選択と集中」で業績を上げた。そして90年代後半から、主力の事業にヒトとカネを集中する「選択と集中」が日本の経営者の合言葉となった。
「選択と集中」で名前を売ったスター経営者は東芝社長の西田厚聰氏(現・会長)である。圧巻は06年2月の米原子力プラント大手、ウエスチングハウス(WH)の買収だ。大本命と目されたのがWHと古くから取引がある三菱重工業だった。日本の業界関係者は「買収価格は2000億円から、どんなに高くても3000億円」と見ていたが、東芝は相場の2倍以上の6200億円の買収価格を提示して、最終コーナーで三菱重工を抜き去り大逆転に成功した。
勝者となった西田社長は半導体と原子力発電事業を経営の二本柱に掲げた。東芝は総合電機だが圧倒的にナンバーワンといえる分野はなかった。「選択と集中」を進めた結果、半導体は国内首位で世界三位(当時)、原発は世界首位に躍り出た。
●日本の原発輸出に吹き荒れる向かい風
原発は一基つくれば、そのメンテナンスで食っていける美味しいビジネスといわれていたが、リスクは原発事故と背中合わせである。東芝の原発事業は、11年3月11日の東日本大震災前には受注残が14基(中国4基、米国8基、日本2基)あった。原発の売上高は「目標として掲げた1兆円を、2年前倒しして2014年3月期に達成する」と、ものすごい鼻息だった。
だが、東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、世界の原発市場は一変。新規計画のキャンセルや見直しが相次いだ。
東芝は11年9月、WHの株式20%を追加取得すると発表した。売り手は米エンジニアリング大手のショー・グループで取得金額は1250億円。ショーは東芝が06年にWHを買収した際、WH株20%を保有することで合意。その際、資金調達のために発行した社債の償還期限前にショー側が東芝にWH株式の買い取りを請求できる契約があったとされる。原発事故を受け、このビジネスの先行きに見切りをつけたショーは、WH株式の買い取りを東芝に求めたということだ。
WHの株主構成は東芝が発行済み株式の67%、ショーが20%、カザフスタンの国営原子力事業会社カザトムプロムが10%、IHIが3%。ショーの分を追加取得すれば東芝の持ち株比率は87%に上昇する。
「WH株追加取得」の報道を受け、11年9月6日の東京株式市場で東芝の株価は急落し、2年5カ月ぶりに300円を割り込んだ。この期に及んで原発事業に1250億円の追加投資をするのはリスクが大きすぎると投資家は懸念したのだ。
結局、東芝は追加取得を断念した。ショーは2013年1月までにWH株式を手放すことにしている。しかし売却に関してショーは自分では売る力がないので東芝が仲介することになる。だが、前途は多難だ。
「東芝 原発受注へ企業連合 米子会社株売却、出資募る」(読売新聞8月14日付朝刊)というスクープ記事(!?)が出た。東芝が67%保有しているWH株式のうち16%を、新興国と強いパイプを持つ米国の原子力関連企業などに売却するという内容だ。
国際的な企業連合を形成するという前向きのトーンの報道だったが、WH株式の売却は「東芝が原子力事業の比重を下げるためのもの」との観測が浮上した。「撤退説」まで取り沙汰された。東芝は「WH株は50%以上を維持する方針」として撤退説を完全に否定した。しかし、株式市場はそれで納得したわけではない。「経営上のリスクを考えたら原発の比重を下げざるを得ないだろう。近い将来、原発事業から撤退するところが出てきても何ら不思議ではない」(重電担当の証券アナリスト)
原発の受注は、官民一体となったオールジャパンで取り組まなければ勝ち目はない。政府が建て前として脱原発の方針を打ち出した以上、官民一体となった海外での売り込みはできなくなる。少なくとも表向きはそうなる。
6年前の専務時代に自らWH買収を手がけた東芝の佐々木則夫社長(63)の新しい「選択と集中」に関心が集まる。そして、東芝、日立、三菱重工の日本の原発事業はどうなるのだろうか。
(文=編集部)
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