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秘密は「ガハハ系」にあり!壊滅寸前の家電メーカーに比べ、なぜ自動車産業は円高とグローバル化を乗り越えて元気なのか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33537?page=5
「あの日米貿易摩擦の真っ最中にねえ、彼らはアメリカに旅立ったんですよ。今の我々があるのも彼らのおかげなんですよねえ」
私は仕事柄たくさんの経営者とお会いしています。大企業から中小企業まで見ているので、中小企業の社長さんとの面談は日常的です。そしてそのような中小・中堅企業は電器産業、自動車産業の会社の比率が非常に高いです。日本の家電産業や自動車産業は数多くの部品会社によってすそ野が支えられているのです。
■下請け企業にグローバル化人材がごろごろ
最近はシャープやソニー、パナソニックなど家電メーカーの不調が業績、株価ともに著しく、一方で、自動車産業はとても元気です。その差はいったいどこで生まれたのでしょうか。現場で中堅企業を日常的に観察している者からすると、産業の下請け企業のグローバル化比率の差にあったのではないかと感じています。
電器産業も自動車産業もセットメーカーはみな世界中に工場があり、資材や資金の調達もグローバル化しています。その部品供給会社も多くは海外進出をしているので、総合電機も自動車産業も海外進出の歴史は古くすそ野も広いわけです。
ところが2次下請け、3次下請けのレベルになると電器メーカーの工場の海外進出比率が下がっているように感じます。一方で自動車メーカーは2次下請け、3次下請けにいたるまで海外で生産している会社の比率が非常に高いのです。
だから、自動車産業の経営陣は、2次下請け、3次下請けの会社であっても、役員陣の海外駐在経験が長く、海外事情に明るい人が多く、その点での人材のグローバル化比率が高いように思います。アメリカで10年、中国で10年、ベトナムに5年います・・・というような人が、すそ野を支える部品会社にはゴロゴロいます。
自動車業界は1985年のプラザ合意の前後から積極的に工場の海外移転を始めました。米国との激しい貿易摩擦により、自動車メーカーは製品の現地調達比率を劇的に高めていくことを要求されました。貿易摩擦によって、結果的に海外の現地部品調達率を高められたことが、今、自動車産業の隆盛の大きな要因になったのだと思います。
現地調達は、その後始まった円高の推進ともあいまって経済的にも必須の経営判断であったということです。もちろん電器の業界にも半導体摩擦というものがあり、日米でバチバチやりあった歴史があるという意味ではどちらもほぼ同じです。しかし、自動車産業には電器産業と比較して3つの違いがあります。キーワードは@重さ、A命、Bオーナー比率です。
■軽さが電器の国際化を遅らせた
1)電器産業のプロダクトに比べて車が重いこと
車は電器産業の商品に比べて重いというハンディがあります。電器産業の部品はとても軽く、小さく、そして大きさの割には高価であったりします。よって電器産業にとっては日本で作って海外に輸出してもそれなりに割にあうので、部品工場の現地化が自動車工業に比べて遅れたように思います。
自動車産業は「重い」産業であるので、コストダウンのためには現地化は必須でした。だから1次下請けから3次下請けにいたるまでみな必死の思いで、海外へどんどん進出していきました。それにより、自動車産業の「心のグローバル化」が進みました。とにかく「外に出て稼ぐ」というマインドです。
それは四の五の言わずに現地化をした歴史の積み重ねであり、そうやって外で戦ってきた先輩の層の厚さであり、世界で戦う覚悟を決めた人がセットメーカーから下請けまでの経営陣にいるというグローバル化の層の厚さが、自動車産業の競争力の源泉ではないかと私は考えています。彼らは世界中に人材を送り込み、世界のリアルな情報が入ってきているから、今の日本の現状を国際比較でしっかりと意識をしています。決して悲観一辺倒でもなく、しかし、楽観視もせず。そういう人たちの巨大な集団の集積が自動車産業の強さなのだと私は考えています。
一方、電器産業のグローバル化に対する対応は、業界全体でみると自動車産業に比べて低い。それはなぜかと言えば、メリットだと思われていた「軽さ」が、むしろ国内での生産に固執させる要因となり、業界全体でのグローバル化への動きを遅らせてしまったという皮肉な面があるように思います。
■安全性や堅牢性に対する高い要求
2)自動車は命を預かっている産業であること
車はひとたび事故を起こしたら、車の中にいる人だけではなく多くの人を巻き込んでしまい、時には死に至らせてしまいます。自動車業界では「安全」や「安心」というのが何よりも大事です。その意識はセットメーカーから下請け企業にいたるまで業界全体に脈々と流れています。もちろん家電産業が命にかかわらないということではないけれども、ただプロダクトの命に対する敏感度は商品特性として車のほうがより求められるというのは紛れもない事実です。
結果的に自動車のセットメーカーにおいて、新たな部品は、それまで使われている部品より軽量化と価格ダウンがはかられていると同時にそもそもとしての安全性や堅牢性に対する高い要求をクリアしなければ採用されません。単に軽くて安いものが出てきても、安全性に対する十分な検証がなければ採用されないので、価格優先で安い部品メーカーに瞬間的にとってかわられることは少ないようです。
アップルにしてもサムソンにしても、サプライヤーの信頼度に対して決して妥協しているとは思いませんが、ただ自動車と比べると「命にかかわる」度合いがより低いために、部品の入れ替えはについては比較的ドライです。それが自動車メーカーよりも電器部品メーカーが台湾や韓国、中国企業のメーカーに取ってかわられつつある理由の一つであると考えています。
もちろんこれは最終的には時間の問題で、安全性の担保がなされたら、軽量化やコストダウンに成功したメーカーが採用をされていきますから、自動車部品メーカーが今後ともに安全だということではありません。ただこれが一気にひっくりかえされるような事態がなかった理由のひとつだと思います。
3)オーナー経営者や創業家の比率が自動車メーカーの方が高いこと
トヨタはいまなお豊田家の影響力が強く、日産はルノーが大株主ということもあって、株主の代理人であるカルロス・ゴーンが強力なリーダーとして君臨しています。スズキも鈴木会長兼社長が現役で睨みを利かせています。創業家、オーナー経営者、強いリーダーが自動車メーカーには存在しているのです。一方で、シャープもソニーもパナソニックもかつては強力なオーナー経営者がいましたが、今はほぼ完全なサラリーマン社長になってしまいました。
また2次、3次下請けのオーナー経営者の比率は自動車産業において非常に高く、強いリーダーシップが発揮できていると同時に、ファミリービジネスの永続という観点から生き残り戦略に対する感度が非常に高い、という特徴があるように思います。
私たちがみているような中堅、中小企業の自動車部品の会社にはかなり「ガハハ系」の力強いオーナー経営者がたくさんいます。「ガハハ系」とは楽観的でパワフルなリーダーシップあふれる経営者のことです。その点において自動車産業には、世界と伍して戦う気概のようなものがあるのではないかと考えています。
■デザインでは日本メーカーを凌ぐ韓国
しかし、これらの強みも、ライバルであるドイツや韓国、中国メーカーには詰められてきています。特にデザインにおいては韓国メーカーがヨーロッパのデザイン会社を使って画期的な進化を遂げており、デザインに限って言えばすでに日本メーカーの上をいっているように思います。さらに韓国の自動車産業の部品メーカーの底力も確実に上がってきていますし、日本の自動車産業が今後もわが世の春を謳歌できる保証はどこにもありません。
とはいえ、グローバル化対応の進んだ人材の厚みに勝る資産はなく、日本の中では商社と海運会社をのぞいてこれほどまでにグローバル化対応ができている業界はありません
冒頭話をした部品メーカーの経営者が言っていました。
「最初に海外の工場に行った人たちは、英語ができる人か、英語は出来ないけどモノは売れる人か、どこでも部下を作り丁寧にモノづくりの文化を作ることができる人で、一騎当千のような人たちだった。その人たちが30-40代のときに米国や中国に行き、必死に基盤を築いてくれた。
それから20年以上が経ち、当時の功労者たちが少しずつ引退してきている。その大先輩方には感謝をしているが、残された人たちでさらに発展していかなければいけない。韓国の追い上げもあるが負けない」
こういう人やこういう会社を応援していきたいと強く思いました。
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