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ジョージ・ソロスがドイツ政府に迫る決断
「ユーロ圏を先導するか去るか、どちらかだ」
2012年09月11日(Tue) Financial Times
(2012年9月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
投機家として世界に名を馳せたジョージ・ソロス氏〔AFPBB News〕
億万長者の投資家で慈善家でもあるジョージ・ソロス氏がドイツ政府に対し、成長促進と共同財政機関の創設、共同債の保証によってユーロ圏を先導して景気後退から脱出させるか、そうでなければ、欧州の未来を救うために自ら通貨同盟を去るよう求める熱烈な嘆願をした。
「先導するか、去るか。これがドイツが下さねばならない論理的な決断だ」。ソロス氏は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)とのインタビューでこう語った。
「ほかの欧州諸国と運命をともにし、一緒に沈むか一緒に泳ぐかというリスクを取るか、ユーロ圏から離脱するか、どちらかだ。なぜなら、ドイツが去れば、ユーロ圏の問題が改善されるからだ」
ソロス氏はさらに「完全にドイツの態度次第だ」と付け加えた。「ドイツがあくまで緊縮政策と、現在のデフレを招く立場を強化する政策を主張し、その立場を崩さないのなら、実際、(去った方が)長期的にドイツのためにもなるだろう」
ECBの対策ではデフレスパイラルを止められない
欧州統合の支持者だが、2010年以降、ドイツによるユーロ圏の危機対応を批判してきたソロス氏は、ユーロ圏の国債購入再開に向けた欧州中央銀行(ECB)の新たな対策を「過去の対策より強力な一手」として称賛した。「効果があるだろうし、最終的な解決策の基礎を築く可能性さえある。だが、これは一時しのぎの対策であって、解決策ではない」
単にECBの介入の可能性を発表するだけで、スペイン政府が国債に払わねばならないリスクプレミアムが低下するはずだが、現在のデフレスパイラルを止めるには不十分だとソロス氏は言う。
同氏は、スペインは「進退窮まるまで」支援を要請しないと見ている。だが、スペインのような国に一層厳しい緊縮の条件を求めると、ユーロ圏内の債務国と債権国の分裂を悪化させることになるという。「2層構造の欧州の恒久化に向けた一歩になるだろう」
82歳のソロス氏は10日夜にベルリンで行う講演で、こうした分裂が通貨同盟の崩壊、さらには欧州連合(EU)だけでなく単一市場の崩壊にもつながるという懸念を説明する。同氏はニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス誌の最新号に、欧州の「悲劇」に関する論考を寄せている。
ドイツは慈悲深い覇権国になれ
だがソロス氏は、自身が望む解決策はドイツによるユーロ離脱ではなく、ドイツがデフレ的な立場を捨て、パートナー諸国に対して「慈悲深い覇権国」として振る舞うことだとの考えを明確にした。
「離脱は政治的に大変な打撃になる」とソロス氏は言う。「私が知っている欧州統合支持者は皆、ドイツがユーロから去るべきだという考えにショックを受けている。ドイツが心変わりする方がずっと望ましい。コストに目を向けたら、ドイツもとどまりたいと思うかもしれない」
債務国と債権国の現在の対立が恒久化するのを防ぐためには、本格的な「欧州財政機関(EFA)」、すなわちECBが購入したすべての国債の支払い能力のリスクを引き受ける欧州通貨基金が必要だとソロス氏は指摘する。
また、ユーロ圏は最低でも5%の名目成長率を目指し、一定期間に限り、ドイツ連銀がこれまで決して容認しなかった高さのインフレ率を実現すべきだという。成長の見込みがないと、債務国は「デフレの罠」から抜け出せず、デフォルト(債務不履行)を余儀なくされるからだ。
EFAはユーロ圏の救済基金である4400億ユーロ規模の欧州金融安定基金(EFSF)と5000億ユーロ規模の欧州安定メカニズムを引き継ぎ、「債務削減基金」を創設する。
「債務削減債」の発行を
債務削減基金は、ドイツ政府の経済諮問委員会が提案した「債務償還基金」と似ており、ユーロ圏の政府債務のうち、各国の国内総生産(GDP)の60%を超える部分をすべて取得する。GDP比60%というのは、各国が本来目指すべき債務の上限だ。
そして基金は、ユーロ圏諸国の連帯債務として「債務削減債」を発行する。ソロス氏は、ECBはこうした債券を最も質の高い担保として扱うだろうし、投資家にとっては魅力的な債券になるはずだと言う。
「ECBには約7000億ユーロの資金が預けられていて、その預金が現在得ている金利はゼロだ」とソロス氏は言う。「銀行はこのお金をECBに預けておくのではなく、ゼロよりましな金利が付く債務削減債につぎ込むようになるだろう」
ユーロ圏の債務に共同保証を与える措置は、ドイツで抵抗に遭う。ドイツのアンゲラ・メルケル首相とヴォルフガング・ショイブレ財務相は、欧州で財政規律を監視するための「財政同盟」が創設されるまでは、連帯保証はあり得ないという考えで一致している。
EUそのものを脅かすユーロ危機
ソロス氏は「ユーロに対する見方を変えない限り、ドイツは意図せずして、欧州を耐え難い状況に追い込む」と言う。「私が本当に心配しているのは、ユーロが今、EUを危険にさらしているということだ。怒りが渦巻く中でEUが瓦解したら、欧州は統合が始まる前よりも悪い状況に置かれるだろう」
ソロス氏は、金融界の投機家として講演することで自分がドイツで非難されることになると考えている。「だが、私はただの投機家ではない。事実上引退している。私の年で意見を言うことは適切だと思う」と話している。
By Quentin Peel
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36077
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