http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/550.html
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リスクを体感することの重要性~仕組み債はボッタクリ
山崎元のマネー経済の歩き方
【第242回】 2012年9月10日
山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
リスクを体感することの重要性 仕組み債は 悪質なボッタクリ
わかりやすい金融知識の解説で定評のある吉本佳生氏の新刊『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』(講談社ブルーバックス)を読んでみた。投資を考える上では、リター
ンを考えることよりも、まず、リスクを把握することが大事だということと、リスクを大ざっぱでもいいから、「体感」できるようにするべきだという著者の主張に大いに賛成だ。
では、リスクをどうやって「体感」するのか。この本には正八面体のサイコロの展開図が付いている。これを切り抜いて組み立て、転がすことが推奨されている。サイコロは2タイプあっ
て、リターン変動の2期分の結果を一度に選ぶことができるタイプAと、3期先を1回で得るタイプBが付属している。コインや正六面体のサイコロを使うよりは手抜きができる。
投資教育でリスクを説明するのは常に悩ましい問題だが、「1期先に上がる、そして2期先に……」といった分岐をサイコロを転がしながら、どれくらいの規模の損益が、どのくらいの
確率で起こるかを説明するのが、回りくどいようでいて、着実なのかもしれない。
分岐が広がる様子を具体的に見せることで、「長期投資のほうがリスクは大きい」といった、重要な知識を異論の余地なく伝えることができるメリットもある。
長期投資でリスクが低減すると説明するためによく使われる「年率の標準偏差」が、グラフでは投資期間によって縮小し、不適切な見方であることは、この本でも説明されている。
さて、この本および特製サイコロが説明しようとするリスクの対象は、株式や為替のデイトレードと長期投資の比較といった平凡なものにとどまらない。実は、この本で、力を入れて
シミュレーション計算の説明をしている対象は、「早期償還条項」と「ノックイン条件」が付いた、仕組み債のリスクの計算だ。前者は、原資産価格(例えば日経平均の値)が判定
日に一定の価格を上回っていたら、債券が早期償還されるという条件で、後者は、原資産価格が債券の満期までに一度でも一定の価格を下回ったら、債券の元本が原資産
価格に連動するようになるといった条件が典型的だ。
次のページ>> わが国の金融・消費者行政の恥だ
この仕組み債の条件は複雑であり、率直にいって、筆者は、条件を見ただけで理論価格を計算することができない。つまり、この債券を買うと、どのくらい損なのか得なのかが判断
できない。もっとも、世間知として、この種の商品が悪質なボッタクリビジネスにすぎないことを知っている。
しかし、こうした仕組み債を「銀行や証券会社などが投資初心者や高齢者にどんどん販売」(前掲書217ページ)しているのが現状なのだ。彼らは、何が判断できて、大切なお
金を投じるのだろうか。
この本は、仕組み債の理論価格計算までやってのけるわけではないが、リスクの大きさの把握に加えて、どのような条件が重要かといった、かなりマニアックなポイントについても具
体的に説明している(ノックイン価格だけでなく、早期償還の判定期間が重要だ)。
吉本氏は、こうしたデリバティブ商品に関わる訴訟で意見陳述をされているようだが、本書でのリスクの丁寧な説明を通じて、氏の金融業者および監督官庁に対する怒りが伝わ
ってくる。
筆者もこの怒りに賛同する。仕組み商品が個人投資家向けに野放しで売られていることは、わが国の金融・消費者行政の恥だ。この種の商品は「原則販売禁止」とすべきだ。
過去との整合性にこだわるのは全くくだらないことだ。
http://diamond.jp/articles/-/24517
お金が貯まる人 貯まらない人 貯まる人は、保険を総額で考える。
「月々、わずか1万8000円の保険料」。40年で見ると864万円になる
【最終回】 2012年9月10日
中村芳子 [ファイナンシャル・プランナー]
日本人は本当に保険好き。貯まらない人は、保険を「お守り」代わりと考え、貯まる人は、リスクの質と量をはかって保険を買う。「保険料負担は1日わずか250円です」も、40年
で見ると360万円。貯まる人になるための、賢い保険の選び方を考える。
不安が強い人は、保険に入りすぎる
中村芳子(なかむらよしこ)
ファイナンシャル・プランナー。アルファ アンド アソシエイツ代表。
長崎市出身。早稲田大学商学部で国際経済を学ぶ。
卒業後、大手電機メーカーに就職するが、翌年社員5人のファイナンシャル・プランニング会社に転職。
1991年に退社、現在の会社を設立。個人向けのマネー相談、執筆、講演などを行う一方、オンライン証券や銀行のプロジェクト、企業の福利厚生制度のアドバイザーなども務
める。20代、30代のマネーの啓蒙に特に力を入れている。
複雑な金融やマネー知識を、わかりやすく解説する書籍や記事、講演に定評がある。
ベストセラーとなった『20代のいま、やっておくべきお金のこと』『結婚したら、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)のほか、『知らないと損するお金のルールとマナー』(日本実業
出版社)、『女性が28歳までに知っておきたいお金の貯め方』(三笠書房)、『女性が30代で、必ずやっておくべきお金のこと』(PHP研究所)、『図解生命保険のカラクリがわかる
本』(東洋経済新報社)などマネーの著書多数。『聖書88の言葉』(ダイヤモンド社)、『養子でわくわく家族』(小学館)、『英語の話せる子の育て方』(中経出版)など、お金以
外の著書もある。
URL:http://www.al-pha.com/fp/
Facebook:http://www.facebook.com/Alpha.and.Associates
日本人は保険好き。生命保険加入率はたぶん世界一だろう。2010年の調査では男性79%、女性79.5%と驚くほど高い(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
)。
ところが、FPの仕事で生命保険のコンサルティングをすると、自分が契約している保険の内容をきちんと知っている人はとても少ない。
「毎月いくらの保険料を払っているか」はだいたいわかっているが、「どんな保障が、いつまで、いくらあるのか」わかっていない。わからないまま、ひとりで3つも4つも、家族で6つも7つも
入っている人がいる。長年、相談を受けて気づいたのは次のことだ。
不安が強い人ほど、たくさんの保険に、高額の保険に加入している。そのうえ、その不安の原因に気づいていない。
・給料が減るかもしれない。
・リストラされるかもしれない。
・病気で入院したらどうしよう。
・老後の生活費は足りるだろうか。
・結婚できないかもしれない。
・会社の人間関係がうまくいかない。
不安の原因、根っこがわかれば不安は半減する。対応策も見えてくる。ところが、それに正面から向き合わないと、不安な気持ちはどんどんふくらんでいく。そして、何か安心を与
えてくれるもの──「生命保険」とか「お金」とか「恋人」とか──にすがろうとする。それではまったく解決に結びつかない(どころか、別の問題を起こすことになる)。
不必要な保険、見当はずれの保険に保険料を払い続けたら、お金は貯まらない。
お金を貯めたいなら、自分の不安に向き合わなくてはいけない。
貯まらない人は、不安からたくさんの保険に入る。
貯まる人は、不安に保険で対応しない。
次のページ>> 貯まる人は、保険の本質を知っている
貯まる人は、保険の本質を知っている。
保険は、生活するうえでのリスク(=起こってほしくないけれど、起こる可能性がある事柄)に対して、お金を準備するための手段。それ以上でも、それ以下でもない。
貯まる人は、自分はどんなリスクを持っているか、それに対して保険で「いくら」準備すればいいか、クールに計算する。
貯まらない人は、リスクに向き合うことが苦手だ。起こってほしくないこと、たとえば病気になったり、事故にあったり、死ぬことなどは考えたくない。不安になるから。でも、考えないとそ
の事態に備えられない。不安は深まる。
もし、病気やけがで入院したら、どうなるか。もし、明日死んだらどうなるか。保険について考えるときの「どうなるか」は、「お金の面ではどうなるか」に限られる。
長期で入院することになったら、(1)公的健康保険と貯金で足りるか、(2)保険でプラスいくらかの保障を準備する必要があるか。
自分が死んだら、(1)悲しむ家族や友人はいても、経済的に困る人がいるか、(2)小さい子どもたちのために生活費や教育費を残す必要があるか。
お金に限って考えれば、実はそれほどむずかしくない。
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貯まらない人は、保険を「お守り」代わりと考える。
貯まる人は、リスクの質と量をはかって保険を買う。
次のページ>> 貯まらない人は、保険会社のやり口に乗せられる
保険会社は、人の不安をくすぐる方法を知っている。「万一のときはこんなにお金がかかりますよ。大変ですよ。だからこの保険に入りましょう」という具合だ。
「35歳の夫が亡くなったとき、どれだけのお金を遺族に残す必要があるか」、つまり「どれだけの死亡保障が必要か」という特集を、ある新聞が組んだ。保険会社の試算は、9000
万円、7000万円など。私も依頼されて計算したが3000万円程度だった。
保険会社の前提は、夫が亡くなっても、妻と子でマンションを買い、妻は一生働かず、子どもは私立中学・高校・大学に進み、妻88歳までの生活費+葬式代まで準備するとい
うもの。その前提なら、計算はウソではない。
しかし実際は、夫が亡くなれば、子のいる妻は実家や夫の生家に身を寄せることが多い。子どもが成長して手を離れれば、働くのが自然だ。生命保険金でマンションを買おうとは
考えないだろう。再婚する可能性もある。現実的に考えれば3000万円で十分だ。
同様に、生命保険会社が発表するデータやアンケート調査結果には、ある意図が隠されている。入院治療にかかる費用が「自己負担額」ではなく「総額(健康保険制度によっ
て払われる金額も含む)」だったり、老後の生活費が実質額ではなくアンケートによる「希望額」だったり……。調査対象や調査方法をチェックすると、いや、けっこう面白い。
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貯まる人は、保険会社のやり口を知っている。
保険会社のいうことを鵜呑みにしたら、自分のお金は守れない。
次のページ>> 貯まる人は、保険料を総額で考える
保険会社のもうひとつのやり口は、保険料を小さく見せること。
「毎月、わずか1万8000円。新入社員でも楽に払えます」
「保険料負担は1日わずか250円です」
月1万8000円は、1年では21万6000円、40年では864万円だ(20代で保険に入るとだいたい40年は保険料を払い続けることになる)。1日250円でも、1カ月7500円、1年
で9万円、40年では360万円だ。
貯まる人は、保険の値段を「月額」ではなく「総額」で考える。そのうえで、保険料が自分の年収のどれくらいにあたるかを計算してみる。独身なら3%以下、家族がいても5%以
下に収まるはず。独身なら月5000円以下が目安だ。いろいろ保障を充実させても、月1万円以上は払いすぎだ。
貯まらない人は、保険料を月額だけで考えて、「入っておくと、なんとなく安心」「お守り代わりに」と契約する。保険料を収入に占める割合で考えないから、いらない保障のために
、高い保険料を払い続けても気がつかない。こういう人は、保険を見直せばぐんと貯まるようになる。収入が高くなるほど保険会社に狙われるから気をつけよう。
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貯まらない人は、保険料をトータルでいくら払うか計算しない。
貯まる人は、保険料を年額、総額で考える。
次のページ>> シングル・共働きなら医療保険だけで十分
貯まる人は、保険を合理的に考える。
シングルなら、万一、若くして死んでも、だれにもお金を残す必要がない。だれも養っていないからだ。だから死亡保障は必要ないと割り切れる。
共働きでも同じ。それぞれ、1人でも生活できる十分な収入があれば、死んでも相手にお金を残す必要はない。愛のあかしとして死亡保険金を残そうと考えるのは変だ。
シングルも共働きも、入院したときに備える「医療保険」だけで十分だ。
貯まらない人は「社会人なんだから、やっぱり保険に入るべきかな」とばくぜんと考える。「これまで育ててくれた両親に、親孝行として1000万円くらいは残してあげましょう」とすすめ
られると、「そんなものかな」と契約してしまう。その分の保険料を貯めて、年に1回親に旅行か何かをプレゼントするほうが、ずっといいのだけど。
医療保険には、さまざまな種類がある。貯まる人は、入院や手術のリスクを100%保険でカバーしようと考えないから、シンプルな保険を選んで契約する。
貯まらない人は、いろいろな保障、特約に目移りして、なかなか決められない。加入を先延ばしにして、その間に病気をしてしまったら、加入しにくくなるから気をつけよう。
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貯まる人は、必要のない死亡保険を買わない。
貯まらない人は、すすめられるまま、いろいろな保険を買ってしまう。
*今回は、『お金が貯まる人 貯まらない人』の、「第5章」の一部から構成しました。
【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
定価:1,470円(税込)46判・並製・200頁 ISBN978-4-478-02184-2
◆中村芳子『お金が貯まる人 貯まらない人』
20代から老後のために貯金する人は、絶対「お金が貯まらない人」!
20年以上のFP経験から、お金が貯まる人と貯まらない人には、それぞれ特徴的な考え方、習慣、行動パターンがあることを発見。それを、わかりやすくまとめたのが本書です。
この本に書かれてある72の考え方、習慣、行動パターンを実行すれば、きっと「お金が貯まる人」になれる。
ご購入はこちらから
http://diamond.jp/articles/-/24399
イマドキ職場のギャップ解消法
【第73回】 2012年9月10日
高城幸司 [株式会社セレブレイン 代表取締役社長]
人事異動を拒否する自己チュー部下を納得させる方法
「僕がいなくなったら職場のみんなが困ります!」
ビジネスパーソンが生涯たった1つの職場で、同じ上司、同じ同僚と仕事をしていくのは不可能な話。自分も含めて、人事異動によって何度も職場が変わるのは当たり前のことです。よって、長く勤務していれば「この職場も長いからそろそろ異動のタイミングかも…」と腹をくくって、上司から異動の内示を受けても驚かないように心の準備をしたりするものです。
ところが、最近は人事異動を言い渡されても、異動先に対して自分が納得できなければ、「理由を説明してください」「異動はお断りします」と刃向かってくる社員が増えてきました。上の世代である上司からすれば、おそらく「人事異動を甘んじて受けてきた」人が大半でしょう。なので、こうした社員の対処に苦慮してしまうことになります。では、人事異動に刃向かってくる社員に対して、上司はどう対応したらいいのでしょうか?今回は、みなさんが上司になったつもりで考えてみてください。
人事異動に文句を言うのは
タブーだったはずなのに…
「来月から大阪支社に異動してもらうことになった。おめでとう。新たな職場は、君に大きな期待をしているから、来てくれるのを心待ちにしていることだろう」
突然、異動の内示を受けて戸惑っているのは、総合リース会社に勤務して3年目になるDさん(25歳)。新入社員として入社し、東京本社の営業部門に配属されて以来、今まで何の異動もありませんでした。ただ、周囲の同期をみていると、半数が入社時に配属された部署から別の部署へ異動しています。それでも、自分が慣れた同僚や上司と離れてしまうとは、考えられない状況になってきた矢先の通達であったので、ショックが大きかったようです。
そのせいか、Dさんは、
「納得できません。私は東京の営業部に慣れたばかりです。この時期に私を大阪に異動させるのは会社にとっても損失です。それに…」
と、(自分なりの)合理的な意見を主張し、異動の内示に反抗を始めました。
ただ、異動に反抗した本当の理由は、
・都内にマンションを買ったばかり
・彼女ができて、近くプロポーズする予定
など、プライベートで東京を離れたくない事情がいくつもあるタイミングだったから。それもあって、上司からの内示に対して反抗的な態度をあからさまに出してしまったのかもしれません。
もちろん上司も、Dさんのこうしたプライベートの事情については把握していました。それゆえ逆に、
「プライベートの事情で転勤をしたくないのかもしれないけど、いくら文句を言っても辞令は変わらない。会社の人事異動に対して、これほど文句をつける部下は初めてだ」
と、やや呆れた様子。
会社が決めた人事異動に対して個別の文句を聞いて、「じゃ、異動は中止」としていたら、組織は統制がとれません。ゆえに「人事異動の理由を聞くこと。文句を言うのはタブー」とするのが暗黙のルールになっている職場が大半ではないでしょうか?
次のページ>> もし社員全員の都合を聞いていたら?
会社都合で転勤が決まる企業は74%
もし社員全員の都合を聞いていたら?
ちなみに人事異動とは、定期的または随時、組織内の年齢的・地位的アンバランスを解消するために、組織を構成する職員を適切な位置に配置し直すことが主たる目的で行われるもの。
アート引越しセンターの調査によると、人事異動を毎年3回以上実施する企業が最も多く、時期は4月(59%)と10月(42%)にピークを迎えます。また、転勤者は会社の都合を優先する企業が74%と大半を占める一方、個人の希望・意志を反映する企業の割合も23%に上るといいます。
最近では、FA(フリーエージェント)制度などと命名して、配属された部署の他に興味がある部署へ本人の希望によって部署異動をする事ができる制度を導入する企業も現れています。ただ、そうした制度で自分の意志を貫ける人事異動がスタンダードになっている会社はほとんどありません。あくまで「こうした仕組みもありますよ」とごく一部の社員が権利にありつけるのが実情です。そうでない限り、社員全員の希望をすべて受け入れていたら組織は維持できません。
少々脱線しますが、辞令通達から実際に転勤するまでの期間は、ほとんどの人が1ヵ月以内だといいます。異動に際して頭を痛めることといえば、「転居先の住宅問題」「引越問題」「単身か家族赴任かの転居形態」がベスト3として挙げられるようです。
社員のキャリアのための異動はごく一部
大半は組織を維持するためのパッチワーク
さて、話を戻しましょう。同一職場への在籍期間があまりにも長いと、作業や業務のマンネリ化・後進育成の停滞・取引先との癒着・何らかの権限の独占による私的流用といった問題が起こるため、人事異動にはこうした事態を予防・回避する目的もあります。また、職場によってはその業務が肉体面・精神面において極端にハードである場合、数年単位で人を入れ替えるという目的の場合もあります。
加えて、社員の成長や新たな可能性を探る人材育成的な機会と捉えて人事異動を活用する職場も少なくありません。人事的な用語としては、CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)と呼ばれる個々の社員のキャリア形成を、中長期的な視点で支援していくための育成的な人事異動をすすめる仕組みがあります。
例えば、本社で経営企画を経験して「組織を俯瞰する力を身に付ける」ことができたら、次に営業部門で「顧客接点を磨く」機会を経験させて、さらにマーケティング部門で「戦略立案を学ぶ」機会をつくる…というかたちです。つまり、職場を定期的に異動させて一義的な視点にならずに、幅広い観点を身に付けるといったイメージになります。
次のページ>> 「同僚に自分の異動の信を問いたい!」
こうした人事異動ばかりなら「今回の異動は君の将来の活躍のためである」と言い切れるかもしれません。ただ、現実的には会社の事情で「「大阪の若手社員が退職したので代わりの要員が必要だから」と、組織を維持するためのパッチワーク的な異動が大半の職場も少なくありません。
ゆえに異動の内示を受けると、「なぜ私が異動なのですか?大阪支社の社員が退職した玉突きで、自分が異動させられるのは納得ができません」と、感じざるを得ないケースが頻繁に起きてしまうのです。
ただ、それでもこれまで多くの社員は納得できない気持ちをグッと堪えて、「わかりました。大阪で頑張ります」と、文句を言わずに異動を受け入れたものでした。
ところが、最近は前出のDさんのように「納得できません」「異動になる具体的な理由を教えてください」と、説明責任を求め、説明に納得出来ないと、「ならば異動は断ります」と堂々と言い切る社員も出てきました。こうした社員は上司にとって頭の痛い存在かもしれません。
「同僚に自分の異動の信を問いたい!」
納得できない部下の説得に2時間
そんな異動に関するトラブルをもう1つご紹介しましょう。大手メーカーに勤務するAさん(26歳)は、東京で生まれ育ち、都内の大学を卒業後、大手メーカーの東京本社に入社して3年目の社員です。営業部に配属され、まじめに仕事をしてきましたが、ある日突然、営業企画部への異動の辞令が出されました。
なぜ自分が営業現場を離れなければならないのか?Aさんはまるで納得することができません。上司のBさんに、この異動は自分にとってどういう意味なのか、合理的な説明を強く求めてきました。
ちなみに、今回の異動は、人事部が「同じ職場での勤務期間が長くなった若手社員を3割程度部門間異動させよう」と決め、その対象にAさんが選ばれて異動が決まったのが実情です。つまり、大きな理由などありません。昔の社員ならば、「ここを離れるのはさびしい」とか一言くらいは積年の思いを口にするかもしれませんが、「発令された異動は絶対」と考えて、文句も言わずに異動を受け入れて一件落着したもの。
ところが、Aさんは違いました。感情的になり、
「絶対に納得できません。職場の同僚だって全員が反対するはずです。みんなが困りますから。明日にでも聞いてみます」
と、他言してはいけない個別の人事異動の情報を周囲に発信して「信を問いたい」と言い出しました。これには上司であるBさんもまずいと感じて対策を講じざるを得ませんでした。
次のページ>> 「自分を軸に世界はまわっている」と勘違いする社員たち
確かに、イマドキの若手社員はソーシャルメディアを頻繁に使います。「来月から営業部を離れることになったらしい。ありえない!」とツイッターで発信でもされたら大事です。
Bさんは、
・決まった人事が変わることはない
・社内でオープンになっていない異動の内示は秘密厳守
・納得するまでトコトン話し合おう
と伝えて約2時間、2人で会議室に籠って異動の趣旨を説明して納得するまで説得をすることになりました。
AさんもBさんの粘り強い説得で異動については納得してくれましたが、一方で「部下に対する人事異動の内示について、以前より丁寧な説明を加えないと大変なことになる可能性が高まっている」と、痛感させられる機会となりました。
「自分を軸に世界はまわっている」と考える
勘違い社員をなだめる効果的な方法
さて、イマドキの若手社員は、「会社は自分の適性を考慮して人事を決めている」という思い違いをしている場合があります。でも、考えてみてください。職場の社員全員が100パーセント納得できる人事などありません。人事部や経営陣は、異動させる本人の適性も多少は考慮しますが、大筋では会社組織全体にとって都合がいいように、社員の配置を検討するのが実情です。
ところが、いまの若い人たちは、自分を軸に世界がまわっているかのように、ものごとを考えてしまいがちです。異動の辞令が出ても、「人事部は自分の能力を鑑みて、最適なところにマッチングさせている」と勘違いしています。
そのため、人事異動を命じられたときに、自分の適性や将来にとって理不尽なものであると感じると、納得できるまで上司に合理的な説明を求めるのです。
このような部下に対しては、まず「会社の人事は、君本位で動いているのではなく、会社本意で動いている」という本質をはっきり説明すべきかもしれません。それでも、異動を命じられた部下は食い下がってくるでしょう。そうした場合に、いかにもこじつけのような理由で説得しようとしても逆効果です。
次のページ>> 異動先が“君”を求めている理由を伝えてあげよう
今回、最初にご紹介した大阪転勤を命じられたDさんのケースで、「大阪が好きだと言ってたじゃない」とか「たしか阪神ファンだったよね」といった、職務と関係ない要素を持ち出すのは逆効果。不信感を醸成するだけです。ましてや「君ももう少しがんばれば残れたのに」などの「たら」「れば」を話すのはもってのほかです。そのような余計なことを話してしまうと、ますます非合理的な説明になってしまいます。
では、どうしたらいいのか?ここで、発想の逆転が必要となります。「なぜ営業部から異動なのか」ではなく、営業企画が“君”を求めている理由を考えて、伝えることが大事なのです。Aさんの場合ならば、次のように答えるようにしましょう。
「会社が営業企画部に必要な人材の優先順位を考えた結果、君になった。それが事実だ」
そのあと、上司が説明すべきことは営業企画部の状況と将来の方針です。それを、Aさんの才覚と結びつけます。
「来年から組織を拡大することになって、新製品の販路を強化していきたい。君のように営業経験のある、若手社員の視点を営業企画部が求めている」
このように、異動先の求める適性とマッチしている資質を伝えると、部下は異動に対して納得して受け入れる可能性が大いに高まるはずです。愛着のある部署から異動になっても、その異動をポジティブに解釈できるようになることでしょう。
◎編集部からのお知らせ
本連載の高城幸司氏が共同執筆をした最新刊『新しい管理職のルール』が好評発売中!
時代が変ればマネジメントの手法も変わります。会社組織や会社に関するルールが変わり、若者 の組織に対する意識も変わっていますから、マネジメントも変わらなくてはならない。では、どのように?「戦略」「業務管理」「部下育成」「コンプライアン ス」をどうマネジメントに取り入れるのか。新しいマネジメントのルールを教える1冊です。
質問1 もしあなた自身に納得のいかない人事異動が出されたら…?
文句を言わず受け入れる 26
文句を言いながらも受け入れる 35
拒否する 7
会社を辞める 26
その他
>>投票結果を見る
DOL特別レポート
【第293回】 2012年9月10日
若手社員の「新型うつ」は単なるうつ病ではない!
パニック障害の権威が職場の偏見と治療の誤解に警鐘
――貝谷久宣・医療法人和楽会理事長に聞く
企業で働く若手社員の中に、「新型うつ」と呼ばれる心の病が流行っている。この病気の難点は、患者が周囲の理解を得にくいことだ。職場でうつ状態になって仕事を休んでいるのにプライベートでは元気に遊び回る患者の姿を見て、上司や同僚は「仮病ではないか」と不信感を露にする。しかし患者自身は、得体の知れない気分の浮き沈みに苦しみ、疲弊している。職場を混乱させる「新型うつ」の正体とは何か。パニック障害の第一人者として、多くの患者を治療してきた貝谷久宣・医療法人和楽会理事長は、「メディアで新型うつと呼ばれる病はうつ病ではない」と持論を展開し、医療現場や企業の職場に蔓延する誤解に対して警鐘を鳴らす。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
「新型うつ」はうつ病ではない
むしろ「非定型うつ病」に似ている
かいや・ひさのぶ/医療法人和楽会理事長、特定非営利活動法人 NPO不安・抑うつ臨床研究会代表、社団法人 日本筋ジストロフィー協会理事長。1943年生まれ、愛知県出身、名古屋市立大学医学部卒。ミュンヘン・マックスプランク精神医学研究所留学、岐阜大学医学部助教授、自衛隊中央病院神経科部長、岐阜大学客員教授を経て1993年開院。米国精神医学会会員、2009年第1回日本不安障害学会会長などを歴任。『社交不安障害』(新興医学出版社)、『非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害よくわかる最新医学』(主婦の友社)、『不安・恐怖症のこころ模様』(講談社)など著書多数。
――企業で働く若手社員の中に、「新型うつ」と呼ばれる心の病が流行っています。この病気の難点は、 周囲の理解を得ることが難しいこと。うつ病のような症状で仕事ができなくなり、休暇を取っているのに、プライベートで元気に飲み会に参加したり旅行に行っ たりしている様子が、ツイッターなどに書き込まれている。それを見た職場の上司や同僚が、「仮病ではないか」「まったく近頃の若い者は」と憤るといった話をよく 耳にします。確かにこのようなケースでは、周囲の誤解を招くのも無理はありません。「新型うつ」とは、いったいどんな病気なのでしょうか。
「新型うつ」という言葉は、そもそも心理学用語になく、メディアによる造語です。私も、患者の治療をする際にそういう言葉は使いません。
私がこれまでの臨床経験から言えることは、世間で「新型うつ」と呼ばれている病気は、単なるうつ病ではなく「非定型うつ病」の兆候に似ているということ。まったくイコールとは言い切れませんが、ほぼそうだと考えられます。
――「うつ病」と「非定型うつ病」の違いとは?
うつ病は、原因もなくいつ何時でも深い憂鬱感が湧いてきますが、「非定型うつ病」の特徴は、本人にとって都合の悪いことに対面すると気分が沈み込んだ状態が続くものの、よいことや楽しい出来事があると、それまでの不調がウソのようにたちまち元気になるということ。
次のページ>> 自分の生命を傷つけられた気分になり「拒絶過敏性」を発症
しかし長続きはせず、またガクンと憂鬱な気分に戻る。こうした気分の浮き沈みが繰り返されます。また、以前より食欲があってよく眠れるなど、普通のうつ病と違う症状も出ます。
こうした状況を周囲が見て、「あいつはうつ病みたいだけど、よく見ると元気なときのほうが多いな。本当は仮病じゃないか」といった誤解を招き、患者に対する偏見に結びついていくのでしょう。
社会的生命を傷つけられた気分に
非定型うつ病の特徴は「拒絶過敏性」
――気分が落ち込む背景には、どんなメカニズムがあるのでしょうか。
根底にあるのは「拒絶過敏性」。たとえば、職場の上司にささいなことで注意されただけなのに、その言葉に過剰反応して、「自分のプライドを傷つけられた」と必要以上に悲観的に考える。それが本人にとっては重いトラウマになって、PTSD(外傷後ストレス障害)のような症状になってしまうのです。
本来、国際基準で言うPTSDは、生命の危機に晒されるような重大な出来事を体験して発症するもの。たとえば、兵士が戦場で危険な目に遭ったり、住民が大災害に襲われるなど、生きるか死ぬかの極限状態に置かれた経験がベースになります。
しかし、最近の若者には、些細なことで深刻なトラウマを抱える人が増えている。他人には理解し難いですが、本人にとってはプライドを傷つけられることが、まさに自分の社会的生命を傷つけられることになるわけです。
――「非定型うつ病」の拒絶過敏性にはどういう特徴がありますか。
無意識のうちに、嫌な体験をした場所の雰囲気や光景が頭に叩き込まれているせいで、職場で自分を注意した上司の表情を見ただけで、大きく気が滅入るようになります。
次のページ>> 挫折を知らない人は要注意。“うつ”とは違う脳のメカニズム
また、職場とは違う場所にいても、嫌な経験をしたときに職場に飾られていた花と同じ色を見たり、同じ臭いを嗅いだりしただけで、フラッシュバックが起き、大きく気分が落ち込んでしまう。その刺激がどんどん広がっていくのです。ただし、刺激の原因となるものと関連性のないシチュエーションでは気分が落ち込みません。
挫折を知らない人は要注意
“うつ”とは違う脳のメカニズム
――そうした拒絶過敏性が起きやすいのは、どんなタイプの人ですか。
典型的なタイプは2つあります。
第一に、プライドが高く自己愛型の人です。たとえば、偏差値の高い学校を出ており、いつもトップを走ってきて、誰かに褒められていないと気が済まないような人。第二に、気が小さくて人の顔色ばかりうかがっている人。
こうした人たちが、ささいな挫折の経験で拒絶過敏症になり、軽傷のPTSDに似た症状に陥る可能性が高いです。
――拒絶過敏性によるフラッシュバックは、脳のどのような働きによって起きるのですか。
脳の前頭葉機能の低下が背景にあります。本来前頭葉は、感情の起伏や怒りを司る扁桃体、海馬などが激しく活動するのを防ぐ役割を持っていますが、それが抑え切れなくなって、激しいフラッシュバックが起きるようになる。
また、前頭葉の機能が低下すると、眠気が出て、疲労感を覚え、何もしたくなくなってしまう。うつの症状と似ているため、これも混同されやすいところですね。
――こうしたメカニズムがよくわからないまま、世間では「新型うつ」という言葉でひとくくりにされているわけですね。
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私のような説を唱えている医師は、まだどこにもいません。しかし、これは想像ではなくエビデンス(検証された結果)に基づいたものです。
私は、患者1人につき1時間は時間をかけてじっくり診察していますが、彼らの8割方にはPTSDの症状が見られます。これは、患者の症状をきちんと分析しないと、見えてこない。いつも憂鬱感に悩まされるうつ病に対して、非定型うつ病は嫌なことに対するレスポンスなので、嫌な記憶を取り除いてあげればいいわけです。
治療法は嫌悪刺激を消去すること
しかし職場の協力を得るのは難しい
――では、「非定型うつ病」にはどんな治療法がありますか。
嫌悪刺激を「消去」することが必要です。マウスの実験を例に考えてみましょう。電気ショックを与えるとマウスはフリージングを起こしますが、その際、前もって「ピー」という音を出したり、赤いランプを付けるようにする。それを3〜4回繰り返すと、マウスは条件反応により、赤いランプを見たり音を聞いたりしただけで、フリージングするようなります。
そうした状態からマウスを解き放つには、消去学習が必要。今度は、音を鳴らしたり赤いランプを付けても電気ショックが起きない状態を何回か体験させると、もうフリージングしなくなります。
これを人間に当てはめると、患者を嫌な上司の前に何度も出して、怒らせるのではなく、「いつもよくやっているな」と優しい言葉をかけさせればいい。
しかし、普通に考えれば、それは簡単なことではないでしょう。会社は本来、営利を目的にする団体であって、社員の治療のために存在するわけではないですから。
――とはいえ、普通のうつ病と違って、「消去学習」というはっきりした治療法があるとすれば、患者が職場に復帰できる可能性も高いと思われます。
マウスの実験と違って、人間で同じことをやるのは難しい。職場の協力も必要ですが、本人の我慢がどこまで続くかが最大の問題です。
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一昔前の会社員は、「仕事は休まずに行くものだ」「サボってはいけない」という矜持を今より強く持っていた。辛抱して苦しんで、そこで丁稚奉公をしているうちに一人前になっていったものです。
しかし今は、世の中の規則が昔より柔軟になったり、望むものが簡単に手に入るようになり、嫌なことに辛抱強く立ち向かっていけない若者が増えている。これも時代の流れなのでしょうね。昔の丁稚奉公のように、我慢して消去学習ができればいいのですが、今の若者にはそれに耐えられない人も多い。
もちろん、自分の意思に関係なくフラッシュバックの症状が出て、会社に行かなくてはならないと思っていても、体が動かない患者もいる。そういう若者たちに無理を強いるのは、可哀そうだとは思います。
ちゃんと治療をせずに放っておくと
記憶力も仕事の能力も落ちてしまう
――ちゃんとした治療ができないまま、そうした若者たちを放っておくとどうなるのでしょうか。
前頭葉の機能がどんどん落ちていきます。うつの情動により扁桃体や海馬が過敏に活動すると、バックファイアーが起き、ますます機能が低下していく。記憶力も仕事の能力も落ちていき、悪くすると人格まで変容し、性格が子どもに戻って幼稚化していくことさえあります。
世の中には、5〜10年病気を患っている患者もいますが、悪い状態のまま脳が固定されてしまっているので、そうした人たちはもう治りにくい。サラリーマンについて言えば、転職すれば治るほど簡単な病気ではありません。多くの患者は結局、仕事を辞めて療養に専念するしかないでしょうね。
――現状では、仕事を続けながら治すことは難しいのですね。
ケース・バイ・ケースだとは思いますが、今の日本では職場の協力でどれだけ治せるか、疑問があります。本当は、刺激の少ない田舎に転居して、農業をやることなどをお勧めしたい。
次のページ>> 「新型うつ」は社会の課題。医師たちが誤診を続ける背景
自分が植えた種から、おいしい野菜やきれいな花が育っていく姿を見る。そうした人間本来の生きる喜びを得られる生活を送ったらいいでしょうね。肉体労働を行なうと、脳の神経細胞も活性化します。
――メディアが言う「新型うつ」は、うつ病の一種、あるいは普通のうつ病より軽い病というイメージを持っていました。しかし、ここまで話を聞いてきた限り、想像以上に深刻な病気なのですね。
この病気は実際に重いですよ。ただ、今はマウスの実験段階ではありますが、サイクロセリン、デキサメサドンなど、消去学習を促進する薬も出てきました。ここ5年ほどの間に、研究はどんどん進んできています。近い将来、人間に効く薬が出てくるかもしれません。我々医療に携わる者も、研究を続けなくてはいけないと思います。
「新型うつ」は社会の課題
医師たちが誤診を続ける背景
――貝谷理事長は、そもそもメディアが言う「新型うつ」の正体をどのように見破り、このような持論を構築できたのですか。
私は開業してからの20年間、精神薬理学や神経病理学を基本に、パニック障害や対人恐怖症の患者をじっくり見つめてきました。特に、脳の機能を考えながら、薬がどの部分に効くかを地道に分析して治療してきた。「新型うつ」が普通のうつ病と違うのではないかという疑問を持てた理由は、こうした積み重ねに尽きますね。
一番の問題は、多くのうつ病の研究者たちがそうした患者の症状をきちんと分析せず、短期間の面接だけで「うつ病」と診断していること。米国の疫学調査によると、うつ病と診断される病気の4割には不安障害が見られるそうです。つまり、4割は単なるうつ病ではない可能性がある。うつ症状が見られるという理由だけで一般的なうつ病の治療をしても、患者がよくならないのは当然と言えるでしょう。
普通に診察して不安障害を見つけられる割合は、わずか2%程度と言われていますが、きちんと構造面接をやると、その確率は3割程度まで増えると言われます。こうして考えると、世間で「新型うつ」が問題化する背景には、実は精神医学や社会が抱える課題も深く絡んでいるのではないでしょうか。
質問1 あなたの周囲に「新型うつ」と思しき社員はいる?
いる 71
いない 11
わからない
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