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【第229回】 2012年9月3日広瀬 隆雄
危機感の薄い“ボンヤリ投資家”が急増中!
9月は再び、欧州発の急落に備えよ!
【今回のまとめ】
1.このところの米国市場は小動き
2.相場が静かなので投資家は慢心している
3.欧州危機は一見すると鎮静化したように見える
4.市場は既にECBによるスペイン国債買い支えを織り込んでしまっている
5.予定表には難関がずらりと並んでいる
小動きのマーケットに潜む罠
先週(8月27日〜8月31日)のニューヨーク市場はダウ工業株価平均指数が−0.5%、S&P500指数が−0.3%、ナスダック総合指数が−0.1%でした。
このところのニューヨーク市場は、市場参加者がバケーションを取るシーズンだったということもあり、動きに乏しかったです。
このため市場参加者の心の中には慢心が忍び込んでいます。下は「ブルベア指数」と呼ばれる、投資家のセンチメント(市場心理)を示す指標です。このところ急速に「強気観(青)」が台頭している点が注目です。
このブルベア指数の使い方ですが、同指数は典型的な「逆指標」であることに注意してください。つまり強気が増えれば増えるほど、マーケットが下がる危険が高まると解釈すべきなのです。
これはどうしてでしょうか?
投資家の慢心
なぜなら、「そもそも強気の投資家なら、すでに株を買ってしまっている」からです。無限に投資資金を持っている人は別として、大半の投資家はひとたび株を買ってしまえば、次にできる行為はその株を処分、つまり売ることだけなのです。
つまり「自分は強気だ」という相場観とはウラハラに、次に自分が取れる行動は売りしかないのです。つまりブルベア指数は「気持ち」ではなく、「次に取れる行動の選択肢」を表した指標だと言えます。
なお、ブルベア指数はタイミング・ツールとしての価値はあまりありません。むしろ大掴みに、今、投資家全般が慢心しているか、ピリピリ緊張しているかの大局観を得るためのツールです。
現在の水準はボンヤリ者の投資家が増えていることを示唆しています。こういう時は、突発的な悪いニュースに対してマーケットがもろい局面であると言えるでしょう。
それでは今後、悪いニュースが出る余地はあるのでしょうか?
次のページ>> 欧州危機は沈静化したのか?
危機が喉元を過ぎれば、すぐに統制を乱す欧州
今後の悪材料ですが、これは大いにあります。とくに欧州から悪いニュースが出てくる可能性が高いです。なぜなら欧州の特徴として、危機になると一致団結しやすいけれど、危機が喉元を過ぎれば、すぐに各国が勝手気ままなことをはじめるという傾向が強いからです。
今、欧州の5年債の利回りを見るとスペインもイタリアも利回りが下がり(=債券価格は上昇)、政府の借り換えコストの上昇に対する不安は沈静化しました。
自力で借金を借り換えられる可能性が少しでも高まると、すぐ「EUからの援助は、口出しがウルサイから、要らない」という国内世論が台頭します。現在のスペインもまさしくそういう状態です。これは欧州のリーダー達の間での話し合いを困難にすると思います。
ただ、本当にスペインが危機を回避できたのかどうかは、まだわからないと思います。下のグラフにあるように、スペイン経済の鈍化はここへきて再び顕著になっています。
ECBはすでに「必要なことは何でもやる」と約束してしまっている
またスペインでは、10月末に200億ユーロにのぼる国債の償還が控えています。これは今後借り換えのニーズが激増することを示唆しています。
8月は、たまたま新発の国債発行額が31.3億ユーロと極めて低い水準だったので、それが需給を圧迫しなかったという見方もできるのです。
すでにマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、スペイン、イタリア国債を購入することをほのめかしているので、9月6日の政策金利会合と記者会見でその具体的な方法に関する言及がなければ、市場が落胆することも考えられます。
9月12日が鬼門
また、9月12日(水)も2つの面で重要な日です。1つはドイツの憲法裁判所が欧州安定メカニズム(ESM)が合憲であるかどうかの判断を示す日だからです。
これまでのドイツ憲法裁判所の判断の実績からすると欧州連合のイニシアチブに協調的な立場を表明することが多かったので、今回も合憲であるという判断を下す確率が高いと思います。ただこの判断の発表前に市場の不安が高まるというシナリオは覚悟すべきでしょう。
9月12日のもう1つのイベントは、オランダの第二院(下院)選挙です。最近の投票意向調査では、EUによる南欧諸国救済に対して批判的な立場を取っている社会党が大幅に躍進すると見られています。(下の円グラフ中、外側の紫色部分に注目)
このように予定表には難関がずらりと並んでいます。現在の米国や欧州の株価水準はこれらの懸念を正確に反映していないと思います。
大きな調整に備えて、整理できるポジションは整理し、なるべくキャッシュを積み上げておくことをおすすめします。
http://diamond.jp/articles/-/24204
【ジョージ・ソロスに学ぶ】
儲けても喜ばず、損しても落胆せず、知を深めることにこそ喜びを感じるべし
ジョージ・ソロスの巻【第3回】
神様ソロスも人並みに失敗する
George Soros 1930年〜。ユダヤ系で、ハンガリーに生まれる。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業後、ロンドンの証券会社に入社。アメリカに渡り、盟友のジム・ロジャーズと「クオンタム・ファンド」を設立、驚異的な運用実績を上げる。1992年に英ポンドを売り浴びせ、巨利を得たことでも有名。【イラスト/南後卓矢】
「ヘッジファンドの教祖」、「史上最強の投機家」など、賞賛と同時に、警戒感を周囲に与えながらも、数千億円に及ぶ個人資産を一代で築いたジョージ・ソロス。だが、彼はその一方で「私も人並みに失敗する」と自ら認めるほど、数多くの失敗もしている。
たとえば、歴史的な株価暴落であった1987年のブラックマンデーでは、500億円近い損失を出し、“もっとも大きな損失を出した投資家”といわれた。
また、少しさかのぼる1981年には、金利の見通しを誤り、顧客の解約による流出も含めファンドの資産を半減させたし、1997年のロシア金融危機でも、最大の被害を受けた投資家の一人といわれた。
1999年ころからはITバブルが発生していく過程で、IT株を空売りして失敗し、高値の時には逆に、「まだまだ上昇する」と買って失敗するというように、さんざんであったという。
この他、小さい失敗を入れれば、数え切れないほどである。
次のページ>> 人並みに失敗するソロスが人並みの投資家ではない理由
大儲けしても、喜ばない。ただ淡々と市場に臨む
“人並み”に失敗するソロスだが、“人並み”でない点は、どんな失敗をしてもまったく落胆しないことだ。そして、そのことを隠そうとせず、素直に認めることができることだ。
しかし、ソロスのそうした態度は、薄っぺらな「前向き思考」とはまったく違うものである。なぜならば、ソロスは大成功しても、喜びを表に出さないからだ。
ソロスの人生最大の勝負であり、一回の投機としては人類史上最大の儲けとなった「1992年のポンド売りによる成功」の時も、ソロスの態度は、終始淡々としていた。
大勝利が確定し、約2000億円といわれる利益を手中にした直後にインタビューをしたジャーナリストのカレッキーは、この時のソロスの態度があまりにも冷静であり、まるで感情を持たない人間に思えたほどだ、と告白している。
しかし、ソロスは決して冷血な人間ではない。家族を愛し、友人との交流を大切にし、慈善活動にも力をいれるというように、人並み以上に人間的な温かみを持った人物とさえいえる。つまり、「無感情で冷たい」のではなく、「静かで穏やか」と表現するのが、ソロスの場合にはあてはまっているようだ。
次のページ>> ソロスは終日マーケットを見続けない!
必要以上にマーケットの動きを見ない
そのことは、さまざまなことで見て取れる。
たとえば、ソロスは、ほかの金融トレーダーのように、トレーディングルーム(マーケットの動きを見るさまざまな機器類に囲まれた部屋)の中で、終日マーケットの動きを見ているということを嫌った。自分のオフィスも金融の中心地であるウォール街から離れた場所に構えているし、オフィスの中は、家族の写真や絵画を飾り、静かで穏やかな雰囲気である。
実は、ソロスは、若い頃に哲学者を目指していた。とにかく、知的な営みが好きで、熱心な学生だった。学生時代にとくに影響を受けたのが、哲学者のカール・ポパーであり、彼の提唱した「開かれた社会」(独裁を排し、自由で開かれた対話のある社会)という考え方に心酔した。
ソロスはポパーに指導を求めて面会に行ったが、その時、「世界がいかに動いているかを真剣に考えなさい。そして、できれば、世の中がいかに機能しているかを説明できる哲学体系を作り上げてみなさい」と助言を受けたという。
結局ソロスは、どうしても、自分の考えを論文に書き上げられず、哲学者になる道を断念することになるが、金融の仕事を始めてからも、「世の中がいかに動いているかを真剣に考える」という姿勢と、「世の中がいかに機能しているか説明する哲学体系をつくりたい」という希望は常に変わらなかった。
次のページ>> ソロスが掲げていた大きな目標とは?
より大きなビジョン、高い志がソロスを支える
そして、そうした姿勢が、「とことん、世界経済のシナリオを考え尽くして、投資をする」という、彼の投資スタイルにつながっている。
もちろん、金銭欲もあるだろうし、儲かればうれしさが湧いてくることもあっただろう。しかし、ソロスの目標は、もっと大きなものであった。一つ一つの投資の結果も、自分の世界観を確かめるためのものであり、より大きな目標に向かうための1つの過程にすぎなかった。
だから、大きな勝負に出ているように見えても、いざとなったら、こだわらずにすぐに撤退できる態勢をとっていたし、それらのすべての投資行動について、何があっても常に冷静にことを進めていくことができたのだ。より大きなビジョンを持っているソロスにとって、それらは大喜びしたり、ガッカリしたり、動揺したりするに値することではなかったからだ。
細かいテクニックよりも、大きなビジョンや高い志を持つことの大切さこそ、われわれがソロスから学ぶべき点かもしれない。
(文/小泉秀希 「ダイヤモンド・ザイ」2002年4月号より転載)
http://diamond.jp/articles/-/24249
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