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The Economist 世界経済:サマータイム・ブルース 012.09.03(月) 英エコノミスト誌 2012年9月1日号)
景気減速が世界全体に広がりつつある。
これが初めてではないが、最近の金融市場の動きは、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)から乖離してきた。暗澹たるデータが山ほど出ているにもかかわらず、この夏の米国と欧州の株式市場は好調に推移している。投資家は経済の弱さに対抗する中央銀行の力を過信してきたのかもしれない。
本誌(英エコノミスト)がまとめた世界の国内総生産(GDP)の推計値によると、2012年第2四半期の世界経済の成長率は前年比でわずか2.8%だった(図参照)。
これは金融危機の結果として発生した過酷な不況から回復中だった2009年末以来、最低の伸び率だ。
現在の景気減速において最も不安をかき立てる要素は、経済の弱さが広範囲に及び、先進国だけでなく新興国にも悪影響を及ぼしているという点だ。
先進国の経済で最も脆弱なのは多くの問題を抱えるユーロ圏で、第2四半期のGDPは前期比でマイナス0.2%(年率換算でマイナス0.7%)、前年比でマイナス0.4%に落ち込んだ。
さらに深い泥沼に滑り落ちるユーロ圏
ギリシャのユーロ圏離脱の可能性とスペインに対する救済措置の拡大(さらにスペインの中央政府自身も、8月28日にカタルーニャ州政府から支援要請を受けている)という懸念につきまとわれ、ユーロ圏はさらに深い泥沼へと滑り落ちつつある。
調査会社のマークイットが7月と8月に購買担当者の報告に基づいて算出した、製造業とサービス業を総合した生産高の複合指数は、第3四半期にGDPがさらに縮小することを示している。
17カ国で構成されるユーロ圏内で大きな希望が持てるのは、ドイツが強さを保っていることだ。ユーロ圏のGDPの4分の1以上を占めるドイツ経済は、第2四半期の成長率がプラス0.3%で、前年比ではプラス1%成長だった。
しかし、ドイツの明るさにも陰りが現れつつある。ミュンヘンのIfo経済研究所が実施した企業景況感の調査では、今後6カ月に対する期待感は2009年半ば以来最低の水準だった。
ユーロ圏の問題は、他の先進国にも悪影響を与えている。
日本経済は、2011年3月に発生した壊滅的な地震と津波被害の後の復興需要に後押しされ、第2四半期に前年比3.5%の成長率を達成した。しかし、7月の欧州連合(EU)向けの輸出額は、驚くべきことに前年比で25%も落ち込んだ。8月28日、日本政府は、世界景気のさらなる減速が経済回復に対するリスクであると強調した。
米国は欧州よりはるかに良い状況を維持してきた。8月29日に発表された改定値によると、第2四半期のGDPは年率換算で1.7%という伸びを示している。しかし、回復のスピードは落ちてきた。成長率は第1四半期の2%、2011年末の4.1%から低下している。
住宅市場はようやく息を吹き返しつつある(住宅価格は第2四半期に前年比で1.2%上昇した)ものの、消費者信頼感指数は8月に大きく下落した。
BRICsなどの新興国に悪影響
さらに悪いことに、景気減速は新興国にも悪影響を及ぼしつつある。BRICsの4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中では、ブラジルの凋落が特に著しい。2012年初頭のブラジルの成長は弱々しかった。中南米のコモディティー(商品)に対する中国の需要の伸びが停滞するにつれて、この地域では景気減速がさらに広がりつつある。
輸入の減退から判断するに、中国の景気減速は当初の予想より深刻なことが判明するだろう。中国の輸出業者も厳しい状況に追い込まれている。マークイットによると、8月の製造業者の輸出新規受注は、2009年3月以来最も少なかった。中国の第2四半期のGDP成長率は前年比7.6%で、金融危機以来の最低水準だった。
7月の工業生産高の伸び率は前年比9.2%と、1年前の14%から大きく低下した。3年ぶりの安値を記録した上海株式市場も、こうした経済の停滞ムードを反映したものだ。
これとは対照的に、先進国の株式市場はこの夏、上昇傾向にあった。過去1カ月間で、米国株は4%上昇した。欧州の株式市場はさらに快調で、6%というかなりの上昇率を記録した。株価の持ち直しは今、次第に終息しつつあるが、それは恐らく中央銀行が現実問題として実現可能な事柄について、投資家が現実的になってきているからだろう。
中銀に期待を寄せて上昇してきた株式市場だが・・・
8月31日にワイオミング州ジャクソンホールで開かれる中央銀行当局者を集めた年次会合では、米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長から、米国の金融政策の方向性について何らかのヒントが出るものと期待されていた*1。
バーナンキ議長がここで量的緩和第3弾(QE3)の実施をほのめかしたとしても、追加的な量的緩和が米国の成長にもたらすインパクトは、過去2回に比べて小さくなる可能性が高いと思われる。
ジャクソンホールの会合を欠席する中央銀行総裁の1人が、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁だ。ドラギ総裁が会合への出席をキャンセルしたのは、9月6日に開かれるECB理事会の極めて重大な会議を前に膨大な仕事を抱えているためだった。
市場は、会議後のドラギ総裁の発言を心待ちにしている。夏に市場が活気を取り戻した最大の理由は、ドラギ総裁が7月26日に、ECBはユーロを救うために「いかなる措置をも取る覚悟がある」と明言したことだ。ドラギ総裁は新たな国債購入の枠組みを示したが、これから極めて重要な細部の詰めが大量に残っている。
9月初頭に適切な計画を提示できないのではないかと疑念を抱く者もいるが、たとえできたとしても、投資家は実際に示された計画に失望するかもしれない。特に、大きな影響力を持つドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁が国債購入に反対の姿勢を強めているためだ。
金融危機後の先進国経済の回復が期待外れに推移していることは、中央銀行だけでは負債を背負い込んだ経済を再起動させられないということを示している。果てしなく続くユーロの物語は、債務危機の恒久的な解決には大胆な政治的行動が必要であることの証だ。
金融市場はこれらの教訓を夏の間にすっかり忘れてしまった。しかし、すぐに学び直さなければならなくなるかもしれない。
*1=バーナンキ議長は8月31日、「必要に応じ追加緩和政策を行う」と述べ、市場ではQE3に対する期待が高まった
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36017
Financial Times
中国の銀行に貸し倒れ増加の兆し
2012.09.03(月)
(2012年8月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の銀行はごく小幅な貸し倒れの増加を報告しただけだが、公開された情報の穏やかな水面の下からは問題の兆候が泡立ち始めている。そして、これを受けて、大手格付機関が警告を発するようになっている。
一見したところ、中国の銀行は極めて健全な状態にあるように見える。新規融資は不良債権よりもはるかに速いペースで増加しており、銀行業界全体の不良債権比率は今年第2四半期に0.9%まで低下した。金融当局によると、過去10年余りで最も低い水準だという。
だが、投資家やアナリストはここ数週間で、銀行の上期の業績について極めて懐疑的な見方をするようになった。
不良債権比率の低下より、延滞債権の増加に注目
中国銀行は延滞債権の増加などが嫌気され、株価は業績発表以降5%下落した〔AFPBB News〕
中国銀行は大手銀行の中で最初に業績発表を行い、基調を決定付けた。
同行は今年上半期に不良債権比率が6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下したと発表した。今年は中国の成長が鈍化し、不動産デベロッパーからスポーツウエアメーカーに至るまで、あらゆる業界が苦痛に見舞われていることを考えると、これは与信管理における目覚ましい成果と受け止められるかもしれない。
ところが投資家はこれに懸念を示し、中国銀行の株価は業績発表以降、5%下落している。
アナリストたちは中国銀行の不良債権比率に焦点を当てるのではなく、むしろ、上半期に延滞債権が17%増加したという事実を指摘している。さらに、減損費用は前年同期のわずか半分だった。
「我々としては、減損費用が少なすぎると考えている。経済が減速する中で、将来の潜在的な不良債権を埋め合わせるには不十分ないかもしれない」とマッコーリー証券のアナリスト、ビクター・ワン氏は言う。
詳細は銀行によって異なるが、事実上すべての大手銀行が不良債権のわずかな増加――そして延滞債権の大幅な増加――を報告していた。
悪戦苦闘する沿海地域の民間起業家への融資が最も多い中規模銀行では、状況はもっと悪かった。平安銀行は不良債権が51%増加したと発表した。
また中国の銀行では、利益の伸びも過年度の平均である約30%から、今は10%近くまで鈍化している。
中央銀行は今年、金利を自由化する方向に一歩近づいたが、その結果、銀行が長年主な利益成長の原動力として当てにしていた確実な利ざやが圧迫され始めている。
緩やかな景気下降でも銀行の利益成長はマイナスに
「悪化傾向は始まったばかりだ」と格付機関ムーディーズのアナリスト、ビン・フー氏は言う。「業績発表は・・・資産の質の劣化と利益成長の鈍化を示していた。これらは何年も続いた財務成績の改善が終わったことを意味するため、信用力にはマイナスだ」
交通銀行のチーフエコノミスト、連平氏によると、現時点では、緩やかな景気悪化でも中国の銀行の利益成長が消滅するという。
「再び利下げが実施され、さらに不良債権比率が0.2%高まれば、中国の銀行で利益成長がマイナスに転じる可能性は大きい」。連氏は中国証券報に対してこう話していた。
By Simon Rabinovitch in Beijing
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36016
中国:年間成長目標下回る可能性高まる−経済悪化の兆候増す
9月3日(ブルームバーグ):中国経済はメーカーや銀行などさまざまな分野で悪化の兆候が強まっており、温家宝首相の2003年の就任以来初めて年間の成長目標を下回る公算が大きくなっている。
1日に発表された8月の中国製造業購買担当者指数(PMI)は予想外に50を割り込み、受注減少で同国の製造業活動が9カ月ぶりに縮小したことを示した。これに先立ち、中国の主要輸出港の天然ゴム在庫が過去最大近くに達したほか、5大銀行で返済期限を過ぎた融資が1−6月(上期)に27%増加するなど景気鈍化の兆候が見られていた。
中国は1998年のアジア金融危機以降、指導部の年間成長目標を毎年達成してきた。今年の目標である7.5%成長を達成できなければ、10年に1回の指導部交代に複雑な影響を与える可能性がある。温家宝首相ら現指導部は今年、不動産市場ブームの抑制と不良債権急増の回避を図り、景気刺激策を控えている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の中国担当チーフエコノミスト、劉利剛氏(香港在勤)は、「追加の政策対応が行われなければ、国内総生産(GDP)伸び率は目標を下回り、現在の指導部は次の指導部にハードランディングする経済を引き継ぐ公算が大きい」と分析。中国人民銀行(中央銀行)は「経済の再活性化に向け、銀行の預金準備率を一段と積極的に引き下げる政策に戻る」べきであり、「近いうちに引き下げれば、10−12月(第4四半期)は順調な成長になり得る」と指摘した。
劉氏は成長率が7%を下回った場合、財政難を招く恐れがあり、地方政府が資金を使い果たせば財政危機もあり得ると説明。そうなればインフラ建設は止まり、その悪影響が重工業、最終的には銀行システムに波及しようと予想した。劉氏は世界銀行と香港金融管理局(HKMA、中銀に相当)勤務の経験がある。
劉氏はPMI発表の後、中国の年間成長見通しを8.2%から7.8%に引き下げた。8月のPMIは49.2と、ブルームバーグが調査したアナリスト25人中24人の予想値を下回った。同指数は50が製造業活動の拡大・縮小の境目を示す。
原題:China Economy’s Deterioration Raises Risk of Wen MissingTarget(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:北京 Nerys Averynavery2@bloomberg.net;北京 Kevin Hamlinkhamlin@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurstppanckhurst@bloomberg.net
更新日時: 2012/09/03 07:24 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9QPZ46TTDS001.html
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