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マイナス金利とどう向き合うか
2012/08/31
千田 英明
研究員の眼2012年08月31日全文ダウンロード(172KB)
ここ最近、ドイツをはじめとする欧州主要国の短期国債がマイナス金利になっている。かつては金利がマイナスになることは理論的にありえないと考えられていたが、その常識は変わりつつある。マイナス金利は何故発生するのか。金利がマイナスになるのであれば、投資せずに現金のまま保有しておけば良いだろう。しかし、大量の現金を保有するにはそれなりのコストやリスクが発生する。そうであれば、金利がマイナスでも投資しておいた方が安全だと考える人がいる。
日本でも2003年ごろから為替スワップ取引との関係で、しばしばマイナス金利が発生した。しかし、今回はそれとは様相が異なっている。今回は単純に国債を購入しようとする資金が売却しようとする資金を上回ることにより、金利がマイナスにまで突入している。欧州ではギリシャ信用不安等の影響があり、より安全な資産へ資金が集まろうとしている。ドイツなど信用力の高い国債は人気が高く、みんなが投資しようとする。投資する人が増えるとそれを抑制するために金利は下がる。しかし、いくら金利を下げても投資する人は減らない。そこで、とうとう金利はマイナスにまで突入してしまったのだ。そのためマイナス金利の幅をみると、日本の場合は−0.001%や最大でも−0.01%といった単位であったが、欧州の場合は−0.1%とより大きなマイナス幅になっている。また、日本の場合はマイナス金利になっても1日か2日ですぐプラスに転じていたが、欧州の場合は2ヶ月近く連日でマイナス金利が続いておりほぼ定着している状況である。
この状況は海外での出来事と、いつまでも傍観していられるだろうか。低金利の先駆者である日本もいずれマイナス金利が定着する可能性はないだろうか。欧州の場合、銀行は不良債権を抱えているため、預金金利はいまのところマイナスになっていない。しかし、これは裏を返せば銀行預金はリスクがあり安全資産とは考えられていないということである。銀行の信用力が回復すれば、いずれ銀行預金もマイナスになる可能性がある。アメリカでは銀行が預金に手数料をかけて手取りベースでマイナス金利とした例がある。
日本の場合はどうであろうか。現在、個人金融資産の半分以上は銀行預金に預けられている。この資金は銀行を通して、その多くが国債に投資されていると考えられる。仮に、国債の金利がマイナスになれば、銀行は投資せずに現金を保有するだろう。しかし、大量の現金が集まると、いずれ銀行の金庫も限界になりマイナス金利の国債に投資しなければならない。そうすると、銀行は預金金利をマイナスにする必要に迫られるだろう。預金金利がマイナスとなった場合、預金者はどのような行動に出るのであろうか。
預金金利がマイナスになるのであれば、なるべく現金のまま保有しておこうと考える人が多いだろう。しかし、それには盗難のリスクなどが発生する。そこで、盗難に備えて自宅に頑丈な金庫を備える人もいるだろう。一方でこういったリスクや管理コストを嫌い、ある程度のマイナス金利であれば我慢して銀行預金に預けようと考える人もいるだろう。また、現金で保有するぐらいであれば、いっそのこと消費に回そうとする人も出てくるだろうか。もしそういう人の数が増えれば経済に対してはプラスに働く。本来、金利を低く抑えているのはそういった効果を期待しているはずだ。金利が低いだけでなく、さすがにマイナスにまで突入するのであれば消費に回そうと考える人が増えても不思議ではない。しかし、ここでも慎重に考える人はいるかもしれない。金利がマイナスということは、景気が低迷しているということであり、給料も年金も減らされる可能性があると考える人達だ。そうであれば将来に備えて更に貯蓄を積み増さなければならないのではないか・・・とも言える。
自分ならどうするか。皆に先駆けて準備しておくのも良いが、できればマイナス金利にならないことを願いたい。
http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2012/eye120831.html
日本の失われた20年〜正しい不満は何か
1.20年は失われたのか?
1990年代初めにバブル景気が崩壊して以来、日本経済は低迷が続いており、「失われた20年」と呼ばれるまでになっている。確かに、現在の日本経済にかつての躍動感はなく、我々はこれまで考えてもみなかったような困難に直面している。しかし、現状を悲観的に見過ぎているのではないかと思われる点も多い。
毎日見ている我々は気が付かないが、東京の街並みはこの20年間で大きく変化した。国際機関に就職した知人が十数年ぶりに帰国し、自分が浦島太郎になったかのような気分だと言っていた。バブル崩壊後20年も経済成長が低迷しているという数字だけを見てきた知人は、日本がどんなにひどい社会になってしまったのかと心配していたらしいが、街は昔以上にきれいで、とても賑やかだと驚いていた。
2.驚くべき変化
最近、満員電車の中で新聞を折りたたんで読む人の姿を見ることは少なくなった。代わりに増えているのは、スマートフォンで新聞を読む人達である。20年前は、待ち合わせ場所に相手が現れずに、連絡が取れなくて困るなどということもしばしばだったが、今はそんな心配もない。携帯で地図を調べられるので、交番で道を聞く人が減ったという話もあった。日本に住む我々の生活は驚くべき速度で変化し、便利になっている。
20年前には既にカラーテレビの普及率は99%に達していて、乗用車の普及率も80%もあった。生活を便利にしてくれた携帯電話も、2002年には普及率はもう80%以上に達していた。その後の我々の生活を変えたのは、携帯電話の台数の増加ではなく、携帯電話でできることの変化だ。
単なる通話ができる道具は、メールもできるし写真も撮れる、インターネットに繋がって、テレビを見られて本も読める、お金の支払もできる、驚くべき多機能な装置に変身してきた。我々の生活を便利にしてくれたのは、量の拡大ではなく質の改善である。
3.正しい不満の中身
他の国の人たちに比べて、現在の生活に不満だと答える人が日本人には多いことを問題視する意見も多いが、これは日本人の向上心の現れで、悪いことではないと考える。現状に対する不満こそ、進歩のエネルギー源だ。しかし正しい不満を持たないと、鬱屈するだけで進歩にはつながらない。
日本経済はもっと発展することが可能なのに、持てる力を十分発揮できていないのは確かだ。しかし、日本経済はもっと高い水準の経済活動が可能だという意味は、もっと大量にモノを作ればよいということではなく、もっと高度なものを生み出して、人々に提供できるはずだということである。
日本経済が目指すべきことは、質の向上や変化であり、経済発展の形は量の拡大から質の改善に変わっている。活力ある日本経済を取り戻すには、単に時計の針を逆に回して昔成功した様にすれば良いというものではない。これまでとは違った戦略が必要だということを認識することが、日本経済復活の第一歩である。
http://www.nli-research.co.jp/report/report/2012/09/repo1209-c1.html
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