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リフレ論者の主張は「宗教」、金融政策頼みに未来はない−藻谷浩介氏
8月30日(ブルームバーグ):ベストセラー「デフレの正体」の著者、藻谷浩介氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、経済成長やデフレの克服が日本銀行の金融政策によって可能だとするリフレ論者の主張は「宗教」と同じであり、彼らの言いなりになっている限り、「日本に未来はない」と警告した。
藻谷氏は現在、日本総研の主席研究員。出版社の角川書店によると、「デフレの正体」は50万部以上を売り上げた。27日行ったインタビューで、物価は貨幣的な現象であり、中央銀行が通貨の量を増やせばデフレを克服できるとリフレ論者が主張していることに対し、「彼らが信奉している新古典派経済学のモデルは自己完結した美しい体系だが、日本ではモデルの前提が崩れているので機能しない」と主張した。
金融緩和が機能するための3つの前提が日本では崩れている、と藻谷氏は言う。第1は、利益を犠牲にして値上げを回避するという日本企業に一般的な行動だ。「1994年に5兆円弱だった日本の化石燃料輸入額は、今では25−30兆円に増えているが、企業がコストを価格転嫁しないので、消費者物価は全く上がっていない」という。
同氏は「普通の企業はマージンを優先して非採算部門から撤退し、コストを価格転嫁できる部門にシフトするが、日本企業はマージンを殺してコストダウンを続ける」と指摘。「企業が合理的に利潤を追求するというのがマクロ経済学の前提だが、明確な資源コスト上昇すら価格転嫁されない日本では、そのような前提自体が崩壊している」という。
人口は半分なのに生産は過去最高に
2つ目は人口だ。「日本では就業者数の増減はほぼ生産年齢人口の増減に連動している。生産年齢人口の増減は、15歳になる人と65歳を超える人のどちらが多いか、つまり15年前の出生者数と65年前の出生者数の差で決まってくる」と指摘。「日本は今後50年間、生産年齢人口が減り続けるので、就業者数が減り続けることは避けられない」という。
その上で「就業者数が減ると、1人当たりの賃金を連動して上げない限り消費総額は細るし、1人当たりの生産を増やさない限り生産総額が落ちるが、世界で最もロボット技術が発達している日本では、資本装備率(1人当たり資本設備)がどんどん上がっていて、生産年齢人口減少にもかかわらず生産が維持されている」と指摘。「日本全体でもそうだし、釜石みたいに人口が半分以下になった工場町で、消費は見る影もなく細っているのに、工業出荷額は史上最高だったりする」という。
藻谷氏は「エネルギー価格が上がり始めたのが1995、96年。日本の生産年齢人口が減り始めたのもちょうど同じころで、それらが偶然重なったことにより、日本企業はエネルギー価格上昇を商品価格には転嫁せず、団塊の世代が高齢化で労働市場から退出するのに合わせて、人件費の総額を減らすという方向で調整した」と語る。
消費をせずに死ぬ日本人
3つ目は日本人の貯蓄志向の強さだ。「リフレ論者のモデルでは、貯蓄は消費する前のリザーブ(予備)であり、必ず消費に回ることを前提としているが、日本では死ぬまで貯蓄して、消費しない人が多い。相続人の平均年齢は67歳で、相続した人もまた消費しない」という。
藻谷氏は「日本のように生産力が強いのに、生産年齢人口減少で給与所得が減り、かつ高齢者が消費しない国では、どんどんモノは作るが、買う人がいないという特殊な現象が生じ、需給バランスが崩れ、物価が下がることになる。これはマネーを増やせばどうにかなるという貨幣的現象ではない」と指摘。「数式の前提が崩れていることを認めず、空理空論を言い続ける一部の学者は占星術者のようなものだ」と語る。
金融緩和が機能しない日本経済への処方せんとして藻谷氏が挙げるのは、最低賃金の引き上げと女性の雇用促進により、消費性向の高い現役世代と女性の所得を増やすこと。また、人口減少に歯止めをかける長期的な対策として「子供を産むインセンティブを高めること」だ。
責任転嫁する企業は淘汰
藻谷氏は「米国のような人口増加社会では、雇用の総数を年々増やさないと失業者が増えて社会不安が起こるが、日本のような人口縮小社会では、経済が停滞してもそれほど失業者は増えないので、非効率な企業を温存して雇用を維持しなければならない理由がない」と指摘。「コストの価格転嫁ができず、現役世代にしか消費されない商品の大量生産をやめられず、デフレなのは日銀のせいだと責任転嫁をしている企業は、いずれ淘汰(とうた)されていく」と話す。
藻谷氏はその上で、「個別にみれば、そういう罠にはまらず、高く売れるモノを裕福な高齢者に売ったり、海外市場で売って生き延びる会社がいくらでも出てきている。日本全体が駄目、というようなえたいの知れない総論自体がナンセンスだ」と言明。「ろくに人件費が払えない企業が退場し、若者と女性に高い人件費を払える企業が生き残っていけば、人口減少であっても経済は拡大する」としている。
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/08/30 07:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9G1E36TTDTB01.html
#外部環境が変化しない限り、単純な国債買い入れ(いわゆる量的緩和QE)政策のみで、流動性の罠から抜けデフレを解決するのは難しいが
日銀やFRBが行っている大規模資産購入(LSAP、拡張されたQE)を強化して外債なども対象にすればデフレ自体は確実に解決できる
ただし、外債のデフォルトや、世界経済が反転して資源や食糧価格高騰など、外部環境が変化した時に、その副作用が巨大になり過ぎるリスクがある
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