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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35919
段であれば国民の関心を引くことも少ない領土問題がニュースのトップになったという意味で、先週は珍しい1週間だった。特に「竹島」「尖閣列島」をめぐる領土問題については、中国人による魚釣島への無許可上陸や、韓国大統領による竹島上陸など、興奮を感じるようなニュースが並んだ。
◆竹島、尖閣諸島とは性格が異なる北方領土
しかし、そんな中で日本が直面する領土問題を解説するにあたり、「北方領土」を「竹島」「尖閣」と並列して解説する記事が多かったことにはかなりの違和感を覚えた。
この3つの領土問題を日本の立場から見る時、北方領土は竹島、尖閣列島とは大きくその問題の性格が異なる。
すなわち、北方領土問題のみが、日本、ロシアという当事者両国がその問題の存在を認め、解決に向けて努力する方針を打ち出しているからである。
竹島、尖閣問題は、他国が自らの領土であるという主張をもって、合理的領有権を持つ我が国から島を奪取しようという一方的な動きであり、他国がその領有を断念しない限り解決の方法がない、という点において、あきらかに北方領土問題とは異なる。
そして、何よりも、4島に実際にロシア国民が住んでいて、それゆえにロシアによる実効支配が成立している点も竹島、尖閣にはない、北方領土問題の特別な性格である。
◆終戦時の人口を大きく超えている北方領土の人口
たとえ北方4島が日本に戻るとしても、ロシアにはその住民を強制的に他地域に退去させる法的手段はなく、従い住民の自由意思で、去るか残るかを選択させる以外ない。
一方の日本には、4島を領土に編入してもそこに住むロシア人を日本人として受け入れるという選択余地はなく、あくまでも在留外国人として遇するしかないであろう。
そんなことを言っているうちに、4島には労働者として中国人、韓国人が大挙上陸、ロシア人を含むそれぞれの島の人口はすでに第2次大戦終了時を大きく上回っている。
◆北方領土問題の解決を目指すなら今年が山場
ここで唐突な予想で恐縮であるが、北方領土交渉が劇的な展開を見せる可能性があるとすれば、今年は1つの山場ではないかと思っている。それは日本、ロシア双方に北方領土問題の解決を急ぐ理由が出てきたからだ。
***1つは、日本側の事情。日露貿易の数字を見ていただきたい。 2011年、日露貿易は輸出、輸入を合わせて史上初めて往復300億ドルという大台を突破、ロシアからの輸入は輸出を大きく超える、約190億ドルという数字を達成している。
そして、商品別輸入額を見ると、その75%が統計表上では「鉱物性燃料」と表記され、また、液化天然ガス(LNG)が全輸入額の25%を占めている。
ちなみに2010年の輸入に占めるLNGの割合は16.4%であった。すなわち、昨年、日露貿易が大きく伸びた理由は、LNGの輸入が伸びたからであり、すでに日本が消費しているLNGの9%がロシア産となっている。
LNGの輸入が2011年に急増したのは、もちろん東日本大震災後の原子力発電所の稼働停止を原因とする火力発電所の再稼働によるものである。
これまでの北方領土交渉は、ある意味ではそれほどの緊急度を持つものとは言えなかった。いつまでに解決せねばならない期限というのがなく、言ってみれば、旧島民の世代替わりによっては、領土問題そのものが消えてしまう可能性さえ云々されるような性格を持っていた。
しかしである。今、日本にそんな流暢なことを言っている余裕はない。領土問題を早く片付け、平和条約を締結し、LNGのロシアからの安定的輸入を実現することこそ、我が国に求められる火急の行動である。
東京電力:2883億円、関西電力:995億円、これは火力発電所を稼働させるために海外から燃料を大量に購入した結果生じた各社の赤字額である。
日本のエネルギー政策にとって欠かせないロシアのLNG
しかし、この数字は1年間の赤字を示すものではない。 本年度第1四半期、すなわち最も電力需要の低い4月、5月、6月たった3カ月間の数字である。
一方、先月から全国で開催された討論型世論調査を含む一連の調査では、30年後に原発をゼロとする指標の支持者が大半を占めた、という報道があった。この国民の声は非常に重いものと受け止めるべきだろう。
しかし、それは同時に、上記の電力会社の赤字がこのまま30年間続く可能性を示唆している。いや、為替が円安にぶれれば、その赤字は何倍にも膨らむ可能性さえある。安価な火力発電用燃料を、安定的に購入できる環境を早急に作らないと、本当に電力会社は倒産してしまう。
LNGの話に戻る。電力会社救済策のうち、比較的容易に実現するのは、ロシアからのLNG安定輸入である。
すでに具体案が発表されているが、ロシア極東ウラジオストックに液化工場を建設、そこで生産されたLNGを日本海を横断するLNG専用輸送船で日本国内に輸送する。
天然ガスは、東シベリアやサハリンのガス田からパイプラインでウラジオストックまで輸送される計画がロシア政府より発表されている。
最後の関門となるのが・・日本がロシア産LNGへの依存度を高める際には、北方領土問題をどうしても乗り越える必要が出てくるのである。
***2つ目はロシア側の事情。ウラジーミル・プーチン大統領は、本年5月7日の就任演説で、中長期国家経済政策を発表、極東の重要性とその未開発な経済状態に触れ、自身の職務としてシベリア極東開発を国家の第1優先順位に置き、相当に巨額の投資を行うことを宣言した。 また、新規に極東発展省なる行政機関までスタートさせた。
◆資金は潤沢、問題は人材不足
幸いロシアは投資資金を潤沢に持つ。問題は人材である。ロシア極東における人口の減少は止まることがない。
ソ連邦の消滅により、極東地区での労働に対する給与割増制度がなくなると、労働人口のロシア中央部、南部への移動が始まり、その結果1991年から毎年、極東ロシアの人口は減少し続けている。
その減少した労働力を補充したのが越境してきた中国人労働者だった。一説では、ピークであった2000年前後には年間100万人以上の中国人が極東、沿海州地区で働いていたという。
しかし、2000年代中頃から、ロシア政府は中国人労働者のロシアへの流入に厳しい制限を設け、国境管理を厳格化した。
◆ロシアの極東から続く頭脳流出
モスクワでも、極東出身者に会うことは非常に多くなってきた。こうして有能なロシ人青年の極東ロシアからの流出は続き、ロシアの極東開発は大変な問題に直面することになるのである。
プーチン大統領がこのような事態を知らないはずはない。
ここ数年、ロシア大統領府の人材開発センターによる外国人のための研修プログラムに日本人参加者が招待されるようになってきた。
ロシア各地で最大の問題として浮上しているのが、青年層の流出と、そのために生ずる人材不足。その人材不足の最たる都市、それがウラジオストックである。
◆APEC開催に間に合わないインフラ整備
9月2日のAPEC首脳会談開会式・・ あくまでもAPECでの体裁を考えて計画されたホテルが、そのAPECに間に合わず、また、その後の集客も難しいとなると、今後の経営は困難が見えている。すべては人手不足、人材不足が織りなす困難だ。
◆APEC開催は早すぎた?
この事実に気づいているのもプーチン大統領である。7月28日、ソチでプーチン大統領と異例の対談に臨んだ玄葉光一郎外務大臣に対して、大統領は極東をサンクトペテルブルクに次ぐ、第2の外資導入型自動車工業地帯にするアイデアを開示した。
そして、その実現のためには、どうしても日本人の協力が必要なのだと述べている。
客観的に見て、今こそ、日露はWin-Winで対話ができるように思える。日本はロシアのLNGにより、電力を安定的かつ廉価に国内供給が可能だ。
そして、ロシアはウラジオを中心とする極東開発に、日本の知恵とアイデアの提供を受け、時には日本人がロシアの組織で活躍することも必要となるだろう。
経済をこの方向に導くためには、いつまでも北方領土をめぐる対立思考に解決を委ねるべきではない。
これまでの一切の議論を一度棚上げし、全く新しい視点から北方領土問題を論ずる勇気が日露双方に必要だと思う。日本の東日本大震災とロシアのAPECが日露の背中を押していることに早く気付かねばならない。(抜粋)
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