http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/369.html
Tweet |
住んでいる地域でごみの処理費用が違う理由
ごみ処理のエネルギーを節約する賢い捨て方
2012年8月20日(月) 和田 由貴
私たちが排出するごみの量は、1人1日あたり約1kgといわれています。最終処分場がひっ迫していること、ごみ処理には膨大なコストやエネルギーがかかること、そして何より処理する工程やその製品自体にかかる環境負荷を減らすため、ごみの削減は大きな課題です。
とはいえ、心が折れてしまいそうなほど細かいごみの分別区分があったり、過剰なまでに包装された商品が店頭に並ぶ現状。そしてたまに耳にする「ごみは分別なんてしないで全部燃やした方がコストは低い」なんて悪魔のささやき。誰しも面倒なことはできるだけ避けたいし、いくらエコと言われても身銭を切って貢献したいという人はほとんどいないのも事実。だからごみの減量化はいつの時代も難しく、迷走しがちです。
改めて整理すると、ごみの減量には、自治体、事業者、消費者の3者の連帯が不可欠です。
ここ何年かごみ行政が大きく変わってきたことで、ごみの分別や回収方法が変更になった地域が多いと思います。分別が複雑に細分化された地域、ほとんどのごみが燃えるごみになった地域、家庭ごみの処理を全面有料化した地域など。
例えば東京都だけを見ても、23区の場合、家庭ごみは無料(粗大ごみ除く)でプラスチック類は3年ほど前から燃えるごみとして回収するようになりました。しかし23区以外の市町では、30市町中21市町が有料化しており、処分料金は従量制で金額は自治体によって異なります。中でも武蔵野市、小金井市、府中市、日野市。狛江市は最も高額で、40リットルの袋1つにつき80円もの処分費がかかっています。このように隣接した市区町村でも、回収方法や処分費が大きく異なるのです。
分別が細かいほどコスト増に
すべての自治体が目指しているのは、ごみの量を減らすこと。なのに、どうしてここまで方向性が異なってしまうのでしょうか。実は、自治体ごとに抱えている現状と苦悩が如実に表れています。
自治体がごみの分別を細分化してリサイクルを推進した場合、ごみの減量につながることが多いとされています。しかし、細かくするほど回収のコストは増え、自治体の負担は増えます。ごみ分別に細かいルールを設けると、地域住民への分別の指導など、手間も格段に増えることにもつながるのです。
それを補うためにごみ処理を有料化をする自治体が多くなっていますが、不法投棄防止などの理由から個別回収の必要があり、さらにコストや手間が増えることになってしまいます。特に都心部などでは単身者世帯も多く、ルールの徹底も個別回収も非常に困難です。
逆に分別を大雑把にして必要最小限にすれば面倒は減るものの、「ごみを減らそう」という住民の意識を高められません。また、焼却炉の能力の差によって、燃やせるものと燃やせないものが異なります。能力の低い焼却炉や古い焼却炉を使っている場合、プラスチックなどの燃焼カロリーが高いものを燃やすと炉が傷んだり、大気汚染につながったりするため、燃えるごみと一緒に回収するのは困難です。焼却施設の能力が標準化されればよいのですが、財政が苦しい自治体では、すぐに高性能な焼却施設に建て替えるというわけにもいかないでしょう。
いずれにしても、ごみを減量して処理にかかるコストを削減したい、住民への負担もできるだけ少なくしたいというのは、自治体の共通の思い。「どうして、隣の区は無料なのに、うちの市は有料なんだ!」など、ごみ行政に疑問や不満がある人も多いと思いますが、自治体によって対応や方向性が全く異なっているのは、このような背景があるからです。
クリーニングとユニクロでもらう袋の違い
家庭ごみの中で圧倒的に質量が多いのは容器包装廃棄物。商品のパッケージや容器などです。そして重量的に大きいのは生ごみ。生ごみは水分を多く含んでいる分、重量があり、焼却にもより多くのエネルギーを必要とするタチの悪いごみです。
容器包装に関しては、現在多くの自治体が容器包装リサイクル法の改正に伴って、プラスチックを分別回収しています。従来これらのプラスチックごみは、ほとんどの自治体で燃えないごみとして回収されていましたが、きちんと分別収集すれば、資源として再利用できるリサイクル原料となるわけです。
しかし、容器包装とそうでないプラスチックの線引きが難しかったり、容器内が汚れているとリサイクルが難しかったり、なかなか問題山積みです。
例えば、クリーニング店から戻ってきた衣類を包んでいるプラスチック製の袋。これは、容器包装でしょうか? 実は、容器包装には分類されません。
容器リサイクル法では、容器(商品を入れるもの)、包装(商品を包むもの)のうち、中身が消費されたり、分離された際に不要になるものを「容器包装」と定義しています。家庭でよく使われるラップなどは、それ自体が商品であり包装ではないため、容器包装ではなく、その他プラスチックに分類されます。しかし、スーパーなどでラップがかかって売られている商品のラップは容器包装です。
同様に、クリーニングの袋も、中身が商品ではなく、サービス提供のために供されるものなので容器包装ではないわけです。一見、クリーニングの袋と似ていますが、ユニクロなどの衣類店で買った服を入れる袋は容器包装です。
CDやDVDケースのようなものはケース自体が商品の一部であり、商品と分離して不要にならないものもですから容器包装ではありません。しかし購入時にケースを包んでいる透明フィルムは容器包装です。
まぁなんとややこしい分類でしょうか。こんな面倒な分類をせず、容器包装以外のプラスチックもリサイクル原料となるならば一緒にしてもよいのではないか?と思われそうですが、そこにはちょっと問題があります。
リサイクルをするのには、当然ながら費用が発生します。その費用を負担しているのは、製品を作った事業者。法律で事業者にはリサイクル義務が課せられています。一方、包装容器以外のプラスチックは誰もリサイクル費用を負担していません。ですから、たとえ同じ素材で同じリサイクルが可能であったとしても両者が混在してはいけないのです。
ただ、実際には容器包装以外のプラスチックもリサイクルの対象にした方が良いという動きも広がっており、埼玉県所沢市、神奈川県藤沢市など、自治体によっては容器包装以外のプラスチックを資源として回収するところも出ています。今後また大きく制度が変わる可能性もありそうです。
意外に有効な紙の分類
そして生ごみ。こちらも一部の自治体では分別回収して堆肥化するという動きもありますが、臭いなどの発生もあり、なかなか難しいのが現状。水気をよく切って捨てて下さい、という呼びかけにとどまっていることがほとんどです。
コンポストなど、家庭でたい肥化させるものもありますが、かなりマメな人でないとハードルが高いもの。しかし生ごみの減量は暮らしの快適さにダイレクトにつながります。多少の投資をしても生ごみの減量は価値があると思います。筆者自身はハイブリッドタイプの生ごみ処理機を使用しています。この季節にも生ごみの腐敗臭に悩まされず、燃えるごみの回収日を気にする生活から解放されて快適です。
また、同じく燃えるごみの中で質量の多い雑紙類。お菓子の箱などの紙類の容器包装や、チラシやダイレクトメールなどが燃えるごみに占める割合は膨大です。これを紙資源として分別を徹底することで、驚くほど燃えるごみの量は少なくなります。一見面倒そうでも雑紙類は生ごみと違って腐るものではないので、分別した方がごみ捨てのストレスを減らせます。
がんばって洗浄しない
そしてもう1つ、資源分別の面倒ポイントは、洗浄でしょう。
食品系の容器包装プラスチックなどは、洗浄して乾かして分別・・・というものが多いですが、よく洗っても汚れが落ちないようなものだとはっきり言って面倒でやる気をなくします。このようなものは、無理して洗浄する必要はありません。
水でさっと洗って汚れが落ちるレベルであればよいですが、洗剤を使用して汚れを落とし、すすぎに給湯器の湯を使う・・・なんてことになると一気に使用するエネルギーはかさみ、ごみとして捨てるよりも環境負荷が大きくなってしまいます。
資源として分別するプラスチックは、汚れたものが混入していると上質のリサイクル原料になりません。軽く洗浄してきれいにならない容器や、油がこびり付いているような容器は、無理して洗わずにその他ゴミとして処理したほうが賢明です。
「エゴなごみ減量」から
一部の資源はコスト面を考えるとリサイクルしないで燃やしてしまった方がいいという考え方もあります。高度成長期からバブルに至るまで、大量生産大量消費、使い捨て文化がもてはやされていました。これがまさに、コスト安で手間がかからないという消費スタイルの象徴です。ですが、ごみの処理は単純にコストが安く手間がかからなければいいわけではなく、これから未来に向けて私たちが循環型社会を作っていくためには、減量や資源分別も責任の1つです。
最後に。分別やリサイクルのことに焦点を当てましたが、リデュース(ごみの発生抑制)が一番根底にあることを忘れてはなりません。そもそもごみになるような物をできるだけ買わない、選ばないというライフスタイル。近年「シンプルライフ」という言葉が注目を集めていますが、まさにこれに当たるでしょう。必要以上に買わない、選ばないことがひいては節約にもつながります。
ごみの減量、分別は面倒という先入感がありますが、ごみが減ることで手間は減り、その処分にかかる費用も節約でき、暮らしも快適になる。ごみの回収が有料の自治体でなくとも、処分費は私たちが払った税金で賄われているのですから、ごみの減量や分別は誰かのためでなく、めぐりめぐって自分自身のためと言えます。環境負荷がどうのとか、サスティナビリティがどうのというだけでなく、もっと自分のための「エゴなごみ減量」から取り組んでみてもよいのではないでしょうか。
和田 由貴(わだ・ゆうき)
消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。環境カウンセラーや省エネルギー普及指導員でもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R 推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通する。現役の主婦・2児の母でもあり、講演、執筆、テレビ出演、新聞・雑誌やWebでの連載なども多く、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。「節約は、無理をしないで楽しく!」がモットーであり、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。
今こそ考える暮らしのエネルギー
またしてもやってきた節電の夏をどうやって乗り切るのか。エアコンの節電方法から進化したエコカーの利用方法、省エネ家電の選び方など、生活の中ですぐに使える知恵を紹介します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120816/235634/?ST=top
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。