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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33286?page=5
*** 罵り合う金持ちと貧乏人、それぞれの生活と主張
「税金払わないなら日本を出ていけ」「相続税100%にして同じ土俵で戦ってみろ」「脱税している金持ちを死刑に!」
縮小し続ける経済下にあって、小さいパイを食えるのはわずか。残りは貧困に落ちる。「社会主義が最もうまくいった国」と揶揄されるほど国民が平等を満喫していた日本。あの頃にはもう戻れない。]
*** 表に出ていない本当の姿
日本でいま、富めるものはますます富み、貧しいものはさらなる貧困に堕ちていく超「格差社会」が幕開けしている。
会社の倒産やリストラで職を失った40~50代の中高年が、信じられないほどの貧困にあえいでいる。いままで見たこともなかったような新・貧困層が生まれている。
「正社員としての再就職がままならず、しかも年齢的な理由でアルバイトにすら採用されず、仕方なく最低賃金レベルの日雇い労働者として食いつないでいる人たちが貧困化しています。
日雇いの仕事は製造業、引っ越し、チラシ配り、コールセンター、倉庫での荷積み作業など様々。仕事を求めて各地を転々とし、ネットカフェか健康ランドで寝泊まりする。それでいて最低賃金程度の時給だから、5時間働けても4000円弱の日当にしかならない。交通費も自己負担で、ネットカフェへの支払いやその日の食事に使えば、翌日に仕事がなければあっという間に貯えがゼロになってしまう」(派遣ユニオン書記次長の星野雄一氏)
つい先日までスーツで決めていた中高年が、打って変わって隊列をなすように日銭を求めて全国を転々とする姿は想像するだけでおぞましいが、これが日本に突如として大量に出現した新・貧困層の一つの形である。
*** 金持ちの世界でも、新・富裕層といわれる人たちが現れ始めた。
公的なデータを見ると日本の富裕層は資産家、医者や弁護士などが多数を占めていることになっているが、現実は違う。新聞やテレビではあまり報じられないその実態を、本誌が真っ先に紹介しよう。
「組織に属さない新しいタイプの"自営業者"です。外資系証券から独立した金融コンサルタント、最新療法が人気という美容整形医、特許ビジネスで稼ぐ弁理士、ネット関連の起業家や新興企業を顧客に持つ弁護士など。
それぞれ職種は違うものの、互いに顔見知りだというのがポイント。『上場したい』『弁護士を見つけたい』などというそれぞれのニーズを満たし仕事を融通しあっているのが特徴で、倍々ゲームで人脈を増やすことでビジネスを拡大させている。年収は数千万円以上から億を稼ぐ者もいる。六本木、西麻布、赤坂、品川あたりの高層マンションに住んでいる人が多いですね」(富裕層向けのコンサルタント業者)
*** 経済評論家の山崎元氏も、日本でついに超「格差社会」化の傾向が現れ始めたと指摘する。
「東京では子どもの学費も払えない人が多く住む区域がある一方で、子どもに高い教育を受けさせようとする金持ちが学校が多い文京区などに多く住むようになってきた。格差が日本以上に固定化しているイギリスのロンドンでは、同じような職業や収入の人たちが特定の地域に集まって、どのような家に生まれたかによって将来の職業まで決まってしまう。東京もロンドンのように金持ちと貧乏人が異なる場所に住み、まったく別の価値観を持って生きる社会に近づき始めているということでしょう」
超「格差社会」は水面下でじわりじわりと進んでいる。東京で最も所得水準が低いエリアに足を運ぶと、その実態がさらに浮かび上がってきた。
同エリアのとある駅を降りてみると、まず視界に入るのは都営住宅。住宅街や飲食店街と交差するようにサラ金の無人ATMや今では珍しいテレクラ店も堂々と営業している。パチンコ屋が何軒も立ち並び、どの店も流行っている。店員によれば「ここに来るのはほとんど地元の人。主婦と年金をもらっている人が大半ですね」。一人で遊んでいた主婦が言う。
「タバコも吸えるし、冷房もきいてるし、仲間とも会える。嫌なことも忘れられるから、毎日来るよ」
救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎて止まった。警察官も駆けつけてくる。一人の老人が仰向けに倒れている。近づくと、警察官が「おじさん名前は」「いつから飲んでるの」と、白昼の酔っぱらいだった。
都営住宅群は何度も外壁の塗り直しをしているようだが、老朽化が目に付く。住民の高齢化が進んでいるようで、孤独死も多いという。敷地内の家庭菜園にはトマトやなす、ピーマン、ゴーヤにかぼちゃなどが実っている。鑑賞用ではなく、食べることを目的とした切実な畑だった。
*** 死ぬまでわかりあえない
「新・貧困層」はいま、何を感じ、何を思っているのか。彼らに話を聞くと、富裕層に対する憤りの言葉が口をついて出た。
「そもそも大王製紙の"カジノ王"みたいに、日本の金持ちって一族のカネを相続して資産を大量に持っているただのボンボンだろ。自分自身は無能でも相続税が低いから金持ちでいられるわけで、そんなやつが偉そうなこと言うなよ。
鳩山由紀夫がまた42億円も母親から"子ども手当"をもらっていたでしょう。政治家にはこんなアホ二世、三世しかいない。安倍晋三がむかし『自助努力が必要』と言っていたけど、お前がいままで自助努力なんてしたことあんのかと突っ込みたいよ」(50代の派遣労働者)
「こないだ驚いたのはソニーのストリンガー(取締役会議長)が億単位の報酬をもらっていたこと。赤字を出し続けているのに責任は取らないで、リストラと工場閉鎖で日本の雇用に大打撃を与えた経営者にカネを与えるなんて、ふざけんな。売国奴として国外追放すべきだよ。
政治家、経営者、ボンボンらが既得権益を守るために"談合"して金持ち優遇の税制を作って、貧乏人から搾取しているのが日本の構造ってこと。こう言われて悔しいなら、消費税じゃなくて相続税をいますぐ100%にして、俺たちと同じ土俵で勝負してみろ。自分がどれだけ世の中で通用しないかよくわかるはずです。どこにも雇ってもらえないし、工場労働者としてもまともに働けないに違いないからね」(40代の日雇い派遣)
まるで憎しみ合う夫婦のように、死ぬまでわかりあえない。互いのことを見下し、罵り合い、自分の正当性を声高に叫ぶ。かつて「一億総中流」と呼ばれた日本で、いまだかつてない不平等感に国民が怒りを爆発させているのだ。
きっかけは生活保護問題と民主党政権による税制改正。全国で国論を二分する議論が噴出し、互いが互いを「金持ちにちゃんと税金を払わせろ」「働かないものに税金を与えるな」と罵り合う舌戦が繰り広げられた。
その結果、価値観が真っ二つに割れた金持ちと貧乏人が真っ向から対立する分断社会が到来したのだ。
*** 怒っているのは貧困層側だけではない。金持ちの怒りの声を聞こう。
「最近、生活保護を受給しているやつらの話が問題になったけど、もっと盛り上がって欲しいね。われわれが命をかけて稼いだ中から税金を納めているのに、生活保護を受けているやつらはろくに働こうともせず、もらった税金でパチンコや競馬をやったり酒を飲んだりしているから、心底許せないんです。日本国憲法でも労働は義務だと謳っていることを忘れているのかな。働かないなら日本を出て行けって思いますよ。
まあ、グローバル競争の時代にあって、やつらが働こうとしても仕事はまったく見つからないでしょうけどね。こないだ仕事でタイに行ったら、まだ20代前半の若い売春婦が日本語も英語もペラペラなわけ。聞くと、インターネットで日本人やアメリカ人のアーティストの映像を見て、それで語学をマスターしたっていうんだからたいしたもんだ。
努力もしないで高い収入だけ求めるバカな日本人よりよっぽど優れていて、かつ低賃金でも働きたいという人が中国やインドなど海外には山ほどいる。いま世界を見渡して、日本人を雇いたいなんていう経営者はまず一人もいませんよ。生活保護を受けている日本人にはいますぐ東南アジアに行って、売春婦からやり直したらどうって、言いたいね。それも嫌なら、働かざる者食うべからず。野垂れ死んだらいい」(40代のファンドマネージャー)
「そもそもお前らは、二言目には政府にカネをくれって言って、大人なんだから生活費くらい自分で稼げよ。子ども手当が減らされたとか言って政府を批判するのもちゃんちゃらおかしくて、子どもを育てるカネも稼げないんなら、子作りすんなって言うの。
氷河期に育ったから就職できないと嘆く若者も多いけど、大手志向が強くて人手不足に悩む中小企業などには見向きもしないでしょう。一方でおっさんたちには『あんたたちは時代が良かった』と愚痴を言う。なめんな! 仕事が欲しけりゃ、自分の手でもぎとるのが常識だろう。3K仕事からでもいいからまずやってみろよ、と」(30代の起業家)
*** 貧乏人は貧乏人と結婚する
こうした意見に対して、貧乏人側は再反論する。
「日本の金持ちがいま大挙してスイスとかに資産を逃している。アタッシェケースに現金を詰め込んで、脱法的にアジアにカネを持ち出しているやつも多い。誰もが名前を知っている有名人が、海外ネットワークを利用した脱税スキームで税金逃れしているのも業界の常識らしいじゃないか。
ちゃんと税金払ってからモノを言えっての。そもそも脱税をしているんだから厳正に処罰、こいつら全員死刑にすべきでしょ。牢屋に入るのがいやなら、お前らこそ日本を出て行け」(40代のフリーター)
金持ちは貧乏人を「自己責任」だと批判し、貧乏人は金持ちに「出自や制度のおかげだ」と応酬する。歩み寄る着地点が見出せないから、罵り合いはヒートアップするばかりだ。実際、両者の生活環境の差はあまりに大きい。
東京・港区の高級住宅地(元麻布、南麻布)は都内で最も一人当たり課税対象所得額が高い区、つまりは日本一の金持ちエリアだけあって、巨大な邸宅やレンガ張りの低層マンションが並び、戸建ての塀は高く中を覗き見ることもままならない。麻布台や麻布山と地元の人間から呼ばれるこのエリアの住民の実態を、地元不動産業者がこう言う。
「代々こちらに住み続けられる方が多く、バブル長者などはなかなか入ってきません。赤坂や六本木のタワーマンションに部屋をお持ちだったりする方も多いですよ。税金対策ですね。都内にいくつもの高級物件を持って、それを回して生活している方も何人か存じ上げております」
歩道を歩く人影は少ない。自動車移動がメインなのだ。目に付くのは高級車ばかりで、ベントレーやベンツ、アウディにBMW、レクサスなどが悠々と車道を進む。丘の上から降りてきた女性に声をかけると、「私はメイドです」と流暢な日本語で答えたのはフィリピン出身の家政婦だった。
広尾側の商店街を行くと、通りに面したイタリア料理店で母子が会話をしている。「どれにする」「ぼく、これ」と、指をさしたのは、500円のトマトと夏野菜の冷製スープだ。あるマンションの管理人が話してくれた。
「部屋に置く観葉植物もレンタルで、庭があっても管理もすべて業者任せ。掃除も調理もすべて業者に任せる家庭もあります。信じられない金持ちばかりですよ」
これだけではない。次のような新・富裕層、新・貧困層も出てきており、格差の拡大を助長しているのだ。
「たとえばいま結婚格差が広がっていて、かつては高所得の夫の妻は専業主婦、低所得の夫の妻は働くことで世帯収入格差が縮小していたが、いまは高所得の男性と高所得の女性の夫婦が結婚、低所得の夫が低所得の妻と一緒になるケースが増えている。また高所得の夫を求めるも相手を見つけられずにずっと独り身でいる女性と、前述のような夫を見つけた女性との格差も拡大しています」(ニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内昭雄氏)
所得格差が固定化し、新・富裕層と新・貧困層が互いに憎みあうまでに事態は進行している。二つの階層の「対決」が始まっているのだ。
「親が金持ちだから東大に行けると俺たちのことを批判するバカがいるけど、実際に東大に合格してから言って欲しいね。はっきり言って、親が貧乏なやつ、塾にも通わずに地頭で勝負するやつがワンサカ東大にはいるんだよ。親のせいにして自分の無能さを見てみぬフリしているだけだろ。それに貧乏だから結婚できないと嘆く男のいかに多いことか。女はカネしか見ていないと思うその陰気な性格こそが女性に嫌われる理由だとなぜ気づかない」(30代の経営コンサルタント)
「最近、金融屋たちがインサイダーで情報を流して、儲けあっていたことがバレたでしょう。要するに"犯罪"に手を染めてカネ儲けしていた。いま流行っている携帯ゲームで儲けたやつらだって、小学生や中高生からカネをぼっていた。そんなモラルのないやつらに、私たちみたいな日本の製造業を足元で支えている人間の文句を言う資格はない。そう思わないですか」(40代の工場労働者)
*** 京都大学名誉教授の竹内洋氏は、想像力、理解力が失われたことが「対決」につながっていると言う。
「かつては富裕層の子も貧困層の子も同じ公立学校で机を並べ、互いに対して理解があったが、いまは豊かな家庭の子は幼稚園、小学校、中学校と私立に通うから、幼い頃から裕福でない家庭の子とまったく交流しなくなっている。そして貧困層と富裕層、低学歴と高学歴が交わらなくなることで、互いに対する想像力を失い、感情の対立が起きるようになっているのです」
生まれた家、地域によって通う学校、就職先から金持ち、貧乏人になるかまでが大半決まってしまい、互いが永遠に交わらず、罵り合う。これがナマナマしい超「格差社会」の実態なのだ。
(週刊現代 2012年8月18・25日号)
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