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Financial Times
暴落の予言に抗う日本国債
欧州の格下げで外国人投資家が殺到
2012.08.10(金)
(2012年8月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
JPモルガンの元花形トレーダー、藤巻健史氏は10年以上にわたって間違ってきた。日本国債を売り持ちにしたことで2000年にジョージ・ソロス氏にお払い箱にされて以来、藤巻氏は、財政破綻が間近に迫っているとの予想の下、年金生活者に手持ちの円を減らすよう助言して生計を立ててきた。
外れ続けてきた予言
日本の財政問題から、国債や円の暴落を懸念する声は根強いが・・・〔AFPBB News〕
円は上昇し、国債利回りは低下しているが、著名な講演者でメディアのご意見番である藤巻氏は自分の意見を曲げずにいる。
大阪で行った最近の講演では、日本の「悲惨な」財政状況を正す唯一の方法は、ハイパーインフレと金利の急騰、現在の1ドル=約78円から「300円か400円」への円相場急落だと述べた。
劇的な事態を描く藤巻氏に同調する専門家はほとんどいないが、大方の人は、政府の債務(政府保証債務を含めて現在1003兆円を超える)が日本経済に大きな危険をもたらすという藤巻氏の基本的な見解に反対するのは難しいと思っている。
国際通貨基金(IMF)は今月、長年の借り入れ低迷を受けて日本の銀行が融資の代わりに積み上げた「巨大」な日本国債保有高は、価格下落がもたらすダメージを増幅させると警告した。年金基金や保険会社、そして日銀も大量に国債を買っている。
年金基金の資産運用で日本最大手のブラックロック・ジャパンの出川昌人社長は「あらゆる人が日本国債を過剰に保有している」と言う。
選択肢が多い日本の強み
だが、国内外の市場参加者は、藤巻氏が見落としているのは、特に問題を抱えたユーロ圏諸国に比べた場合、日本が債務負担に対処する選択肢を多く持っていることだと主張する。
「日本は独自の通貨、独立した金融政策、比較的強い経済、豊富な対外資産を持っている」と、キャピタル・エコノミクスの日本エコノミスト、デビッド・レア氏(ロンドン在勤)は指摘する。
さらに、日本は永続的な経常黒字のおかげで外国資本に依存しなくて済むことから、政策立案者には、様々な選択肢を比較検討し、日本に必要な痛みを伴う対策を講じる時間がある、とアナリストらは言う。
「ルールその1、ともに苦しむ日本人の能力と意欲を決して過小評価しないこと。そしてルールその2、ルールその1が確実に適用されるようにする政治家の能力と意欲を決して過小評価しないこと」。JPモルガン証券の調査部長、イェスパー・コール氏(東京在勤)はこう冗談を言う。
このような基本的な枠組みは、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻以降、外国人投資家が一段と熱心に円に逃げ込んでいる理由を説明する。
外国人の大幅買い越し続く、民間資金も大量流入
外国人の日本国債保有比率は3月末現在で過去最高の8.3%に達し、その後まず間違いなく上昇している。最新の6月のデータは、外国人が各年限にわたって日本国債を大幅に買い越したことを示していた。5月に続く大幅な買い越しで、程度の差こそあれ、4月も同様だった。
2010年には日本国債への資金流入の多くは、ユーロからの資産分散化を図る政府系ファンドや各国中央銀行の資金だった。だが、バンクオブアメリカ・メリルリンチの推計によると、昨年は日本国債に流れ込んだ21兆円の純流入額のうち、約3分の2が民間部門からだったという。
外国人投資家はほかに行くところがない、とバンクオブアメリカ・メリルリンチの債券チーフストラテジスト、藤田昇悟氏は言う。「欧州の資産は猛烈な速さで格下げされており、投資家が最善の選択肢として日本に向かわざるを得なくなっている」
野村証券の債券ストラテジスト、ニール・ビンセント氏も、日本が「高利回りで利益を稼ぐ投資先」ではないことに同意したうえで、次のように説明する。「これはむしろ、投資家がいつ、元々投資していたところに喜んで戻るかという問題だ」
今のところ、投資家は動かずにじっとしていることに満足しているように見える。アナリストらによると、外国人の資金の重みを示す1つの明らかな兆候は、ここ数週間繰り返し起こっているように、満期が4年くらいの債券でさえ、利回りが10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を切る水準まで下がっていることだ。
このような価格だと、国内の銀行は、国債を売り、売却代金を日銀に預けてわずかな利益を得ることができる。「10bp以下の利回りで買っているのは日銀の準備制度に参加していない投資家だ」と藤田氏は言う。
もちろん、日本国債が全く安全というわけではない。8月7日には、最大野党の自民党が2015年までに消費税を引き上げる増税関連法案の採決を阻止するのではないかとの不安から、利回りが6%も急騰した。これは1日の上げ幅としては21カ月ぶりの大きさだ。
東海東京証券のチーフストラテジスト、佐野一彦氏は、早ければ今秋にも行われる可能性が高まっている総選挙(および関連する歳出の公約)は、指標となる10年物国債利回りが近い将来、反落する前に4月以降の最高水準である0.9%を付ける可能性があることを意味していると話す。
投機筋の攻撃は続くが・・・
一方、投機筋は引き続き、海外から定期的な攻撃をしかけてくるだろう。
大口の「日本売り」取引がこれまで度々失敗してきたことから、「海外のマクロトレーダーは、日本に貸しがあると感じている」と、ドイツ証券のグローバルファイナンス・外国為替トレーディング本部長、ラッセル・ラスカーラ(東京在勤)は言う。
だが、避難先という意味では、日本自身の「Dr.Doom(破滅博士)*1」の警告にもかかわらず、世界第3位の経済大国はまだ十分に安全なように見える。「日本はすぐにはひっくり返らない」とラスカーラ氏は言う。
*1=悲観論でならし、危機を予言したヌリエル・ルービニ氏の異名としてよく使われる
By Ben McLannahan
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35860
The Economist
日本の震災と人口動態:世代間闘争
2012.08.10(金)
(英エコノミスト誌 2012年8月4日号)
津波で被災した地域社会の復興に対する考え方は、若者と高齢者で異なっている。
日本に住む多くの人は最近、日本人女性が1985年以来初めて、世界最長寿の座を失ったというニュースを聞いて愕然とした。日本の女性の2011年の平均寿命は85.9歳に下がり、香港の女性よりほぼ丸1年短かくなった。
平均寿命低下を招いた主な原因が、2011年3月の東北地方の地震と津波の死亡者だったというニュースに、人々は一段とうなだれた。これは、世界でも高齢化が進む一角で、大災害が偏って高齢者を襲ったことを思い出させる話だった。1万8800人近い死者・行方不明者のうち、56%が65歳以上だった。
高齢化は復興のプロセスにも影を落としている。沿岸部の町では、自治体の職員らが、復興に向けた取り組みを妨げる「ジェネレーションギャップ」に直面したことがあると話している。
日本が直面する問題の縮図
簡単に言えば、残りの人生が比較的短いことを理解している高齢者は、一刻も早く失ったものを元通りにしたいと思っている。一方で、若い家族は、人口や雇用が増え、社会的な自由の多い活性化された地域社会を望んでいる。
宮城県女川町は震災で住民の1割近くを失った〔AFPBB News〕
これはまさに、日本中が直面している問題の縮図だ。若者よりも裕福で、リスクを嫌い、影響力を持つ高齢世代は、変革に対する抵抗感も強いのだ。
震災で1万人いた人口の約1割を失った宮城県の漁港、女川では、これまでのところ、高齢者の言い分が通ってきたと職員たちは言う。津波に襲われた時、住民の3分の1以上が65歳以上だった(日本全体では24%)。
女川町の職員の柳沼利明氏によると、高齢者の多くは、津波で一部もしくは丸ごと流された15の魚村に住んでいた。町としては、こうした漁村を元通りに再建するのではなく、いくつかの大規模な集落に統合したいと考えていた。
だが、(主に年配の)漁師から猛反発を受け、その計画を断念した。こうした漁師は、それぞれの浜には独自の歴史や文化、伝統があると主張し、移転してしまえば、年間800万円の稼ぎになるとも言われる漁業や牡蠣の養殖の免許を失うのではないかと心配していた。
彼らの息子や娘たちの優先事項は異なる。柳沼氏の話では、若い人たちは店や病院、雇用や学校が増えることに加え、集落を統合することで、結婚相手を見つけて家庭が築きやすくなることを望んでいる。出生率が世界最低の部類に入る国にあって、これは非常に重要な要因だ。
この問題に関しては家族全員の意見が割れる、と柳沼氏は言う。
「年配者は若者に『そのような考え方をするのは傲慢だ』と言い、若い人は『お父さんは私たちの将来のことを考えてくれていない』と反論する」
復興ペースを遅らせる世代間の意見の相違
こうした悩ましい社会問題について妥協点を探ることが復興のカギとなるが、これは復興のペースが今後も苦痛なほど遅いことを意味している。
昔であれば、中央政府の官僚は、自分たちに盾突く人を完全に無視しただろう。だが、復興庁は、被害が広範囲に広がり過ぎていて、画一的な解決策では対応できないと言う。そのため復興計画の策定は地方政府に委ねられ、資金は国家予算で賄うことになった。
中央政府は今も、被災地の復興が日本各地の高齢化した地域社会の活性化の青写真となることを期待している。政府は革新的な地域を「特区」に指定する。規制が緩く、スマートグリッド(次世代送電網)や高密度居住といった新しいアイデアを優遇する地区だ。
これが意味しているのは、単に失われたものを元通りにしたいと考えている人たちが厚遇されない可能性があるということだ。ただ、当局者らは、日本では高齢者が投票による大きな影響力を持っており、言うことを聞かせるのが難しいことを理解している。
人口動態の課題は、隣接する福島県の方が一段と大きい。福島では、津波によって引き起こされた原子力発電所のメルトダウンのせいで、住民の多くが避難を余儀なくされた。ここでは、若者と高齢者が抱く異なる将来展望に加え、放射線の危険性に対する認識の違いもある。
専門家によると、宮城県と同様に福島県でも、若い世代より高齢の避難生活者の方が、故郷に帰って以前の生活に戻りたいという思いが強いという。年金生活者の多くは、低レベルの放射線は、地域社会との絆が絶たれることほど大きな問題ではないと思っている。
その一方で、若い親たちは、普段の生活に戻れる可能性は低いと考えている。まず、若い親は、子供たちが放射線によるガンのリスクに影響されやすいことを恐れている。また、たとえ瓦礫の一部が片付いたとしても、企業が汚染地域に戻ってくる可能性は低い。つまり、雇用が不足するということだ。
また、時間が経つとともに、子供たちは避難先の学校に順応してくる。「様々な事情が絡み合っている」。県のアドバイザーを務める福島大学の鈴木浩氏はこう言う。「お年寄りの多くは、子供や孫が一緒でなければ故郷に帰る意味はないと話している」
一部の高齢者が危惧しているのは、子供たちがいなければ、故郷が、彼らが嫌そうに「巨大な老人ホーム」と呼ぶものと化してしまうことだ。
だが、鈴木氏はもっと楽観的だ。故郷の近くの放射線量の低い場所に新しい村を建設し、若い世代と高齢世代がともに魅力を感じる近代的な住宅やビジネスを創設すれば、一部の住民を呼び戻せると同氏は考えている。
都市部への人口流出、反転なるか?
もちろん、現実はと言えば、昨年の震災以前から地方は人口減少に苦しんでいた。農家と漁師の大半は60歳を超えており、その子供たちの多くは既に都市部に移り住んでしまっていた。少なくとも原因の一部は、若者が村の生活に息苦しさを感じていたことだ。
起業がもっと自由になり、社会がより開放的にならない限り、その流れが反転するとは考えにくい。しかし、それと同じくらい、頑なに昔のままを望む高齢の村民が考えを改めるとも思えないのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35858
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