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滅多にお目にかかれない大金を手にしたところで
長生きすればするほど破産の危機が!
「ちょっと待った!」
サラリーマンにとっての退職金とは、長年の会社勤めのご褒美のようなもの。普通の人がなかなか手にすることのない額のお金を一度に得ることになる。
特に団塊世代の退職金を巡って、数年前から銀行や証券会社、運用会社などがこぞって獲得競争に奔走する兆しがあったものの、今もって大きな資金の移動が起こったようには見えない。
一体、退職金はどこへいったのか?
実は、多くが銀行に滞留したままだったのだ。が、果たしてこのままでいいのだろうか。少子高齢化の影響で、年金財政や社会保障制度は今後、確実に悪い状況へと向かっていく。今は世界的にデフレでも、いつインフレに転じるかわからず、そうなったらお金の価値そのものが急落してしまう。
また、現代に生きる私たち日本人は思った以上に長寿である。特に女性は、一般的に男性に比べて長生きする。妻が一人残されたとき資産がなかったらどうなるか。年金の受給額は半減、そこにインフレや医療費高騰が襲いかかり、老後は悲惨を極めるだろう。
そこで、私が所長を務めるフィデリティ退職・投資教育研究所では、団塊世代中心に、退職金にまつわるさまざまな調査を行った。すると非常に厳しい現実が浮き彫りにされてきた。アンケート調査のデータを基に、老後の生活設計や、退職金とその運用に関する問題点について、考えてみたい。
★まず、一番恐ろしいのは、定年時に残った住宅ローンを考慮せずに、退職金の使い道を考えている人が意外と多いことだ。仮に2400万円の退職金が支給されても、住宅ローンの残債が1000万円もあったら、それだけで半分近く食われてしまう。わかっていても住宅ローンの返済と老後の生活費が別々に頭の中にあって両方をあてにしていないだろうか。調査によると、実際2割強の人が退職金をローンや負債の返済に充てている。
そうなると、公的年金に期待せざるをえなくなる。退職後の生活資金に不安があると考えている人は56.8%。一方で年金にある程度以上期待している人が、全体の74.6%もいる(図2)。しかし公的年金の財政事情は、思ったよりも早い時期に、今以上に厳しい状況に追い込まれると予測される。
一番の理由は、人口構成の変化である。65歳以上の退職世代に比べて、15〜64歳の世代の人口比率が、今後どんどん低下していく。2020年には、65歳以上の高齢者1人を、2人よりも少ない現役世代で支えなければならない。20年といえば、残り11年。1949年生まれの団塊世代が71歳になったとき、このような事態に直面することになる。実質的には現役世代1人で、高齢者1人を支えるくらいになる。
となると最後の砦は、現役時代にどれだけ老後の準備ができるかということだ。調査によると、退職後の準備に満足しているかという問いに対して、満足していると答えた人はわずか15.8%。さらに退職後の準備について、56.2%もの人が、もっと勉強すべきだったと後悔している。
後悔先に立たず。しかし、今、50歳の人であれば、退職するまで10年という時間が残されている。現実を見つめ、問題点を把握し、少しでも早く準備を進める必要がある。まず、老後の生活費について考えてみよう。(抜粋)
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