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コラム:
FRB「カード温存」の裏に、米金利低下の弊害
2012年 08月 2日 12:52 JST
コラム:ドル基軸通貨に代わる「魔法の杖」はない=竹中平蔵教授
コラム:日本は中国の「良き反面教師」=河野龍太郎氏
コラム:フェイスブックには新たなCEOが必要
コラム:北京の豪雨問題が投資家に警告する中国の政治リスク
田巻 一彦
[東京 2日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)が1日、量的緩和第3弾(QE3)のカードを温存したのは、米長期金利低下の弊害を強く意識したことが影響していると指摘したい。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるQE3発動には、依然として相当に高いハードルが控えている。米追加緩和を起点にした円高圧力の高まりが東京市場で警戒されてきたが、当面は小康状態になるだろう。結果として日銀の金融政策運営に関するフリーハンドは強化されたと考える。
<FRB、追加緩和策は何も採用せず>
1日に発表されたFOMC声明では、米経済の総括的な評価が6月FOMCに比べやや引き下げられた。ただ、QE3は決断されず、市場の一部で期待されていたゼロ金利政策の時間軸延長もなかった。英中銀が導入した融資拡大に向けた短期資金供給策も採用されなかった。
市場では、景気認識の下方修正を受け、9月12、13日のFOMCで追加緩和が決まる可能性が高まったとの観測も出ているが、私には違った展開が予想できる。バーナンキFRB議長が、これまで何回も指摘してきた追加緩和策の利点とコストの比較衡量という部分が、一部市場参加者の想定している以上に重要であると考える。
<米長期金利の低下、QE3のメリット抑制>
QE3が発動された場合、買い入れ対象に米国債とともにモゲージ担保証券(MBS)が採用される可能性があるが、長めの金利を押し下げて、住宅ローン金利を低下させ、そのことで住宅市場を再活性化させ、米経済を上向かせるという狙いがある。
しかし、10年米国債利回りは7月下旬に過去最低の1.38%台まで低下。足元でも1.5%台と低い水準で推移し、QE3実施による長期金利低下幅に限界があることは、だれの目にもはっきりしている。
<米長期金利の押し下げ、リスクオン時に巨大なリスク>
さらに問題なのは、現在は世界的なリスクオフ心理の強まりで低下している米長期金利が、何かの理由で大幅に上昇し始めた時にでてくる弊害だ。
例えば、ユーロ圏17カ国が債務危機回避で劇的な合意を形成した場合、リスクオフから一転してリスクオンへの傾斜が強まる可能性がある。そのケースでは、独国債、日本国債とともに安全資産の代表格として資金が流入してきた米国債から、急激にリスク資産へと資金シフトする可能性が出てくる。
歴史的には3%後半から4%前半での推移が長かった米長期金利にとって、現在の水準は明らかに低過ぎる水準であり、世界のマーケットがリスクオンに変化した際には、短期間で200bp前後の利回り上昇もありうる。
米長期金利の低下局面で、米国債を大量に購入してきた米金融機関は、米長期金利の急反騰で致命的な損失を抱えかねない。それは、現在の欧州で展開されている銀行の資本劣化に伴う金融システム不安が、NYでも起きかねないということを意味する。
FRBは表立ってこのリスクに言及していないが、QE3の副作用の中で最も警戒されているのが、この米長期金利の反転に伴う米金融機関の打撃問題だと指摘したい。
<ジャクソンホールでの緩和メッセージ、ない可能性も>
このリスクに比較すれば、米長期金利の限界的な低下で得られるメリットは、かなり過小ではないだろうか。このことは9月になっても何ら変わるところがないと考える。もし、追加緩和に傾斜していれば、8月末に米ワイオミング州ジャクソンホールで行われるバーナンキFRB議長の講演で、何らかのメッセージが出てくるだろう。ただ、今回は市場の一部参加者が期待するような発言が出ない可能性もかなりあるのではないか。
FOMC声明発表を受け、外為市場ではドルが全面高になった。ドル/円も78円半ば付近までドルが買い戻され、円高を予想していた向きの期待は裏切られた格好だ。
<円高圧力の後退、日銀に時間的余裕>
このため、しばらくの間は外為市場における円高圧力は弱まる展開が予想できる。このことは、日銀の金融政策の先行きを展望するうえで極めて重要だ。政府・日銀にとって、円高の急速な進展は、輸出系企業の業績下振れと企業や個人のマインド悪化を招き、せっかく進んできた2%前後の経済成長に冷水をかける"災厄"となるところだった。
円高が急進展すれば、政府のドル買い介入や日銀の追加緩和検討も、現実味を帯びてきただろう。ところが、FRBがQE3を8月に実施せず、9月の可能性もはっきりしないなら、状況はかなり変わってくる。円高ルートでのマイナス要因を懸念することなく、日銀は内需の持続性や海外経済の動向と輸出の先行きについて、じっくりと点検する時間的な余裕を得たことになる。日銀のフリーハンドは、相当に強化されたと見ることができるだろう。
2日に欧州中銀(ECB)理事会、3日に7月米雇用統計とイベントが続き、市場の変動要因には事欠かないが、マーケットのリスクオフ心理が、ここから一段と強まって円高が一気に進むリスクは、それほど高くないだろう。市場の関心はECB理事会に移っているが、FOMC声明の詳細な分析のほうが、今後の市場動向を見通す上でより重要であると指摘したい。
●背景となるニュース
・米FOMC、追加緩和見送り 景気判断は下方修正
・米FOMC声明全文
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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米FOMC、追加緩和措置打ち出さず:識者はこうみる
2012年 08月 2日 09:41
[ワシントン/ニューヨーク/東京 2日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は1日発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、米経済回復の勢いは今年これまでに失速したとの認識を示し、今後国債の追加買い入れを行う可能性があることを示唆したものの、追加緩和措置には踏み切らなかった。
市場関係者のコメントは以下のとおり。
●現行の政策効果見極める時期、追加緩和は今後の状況次第
<トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏>
連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和が見送られたのは予想どおりだった。今後の米連邦準備理事会(FRB)の対応については、今回の声明からみて、能動的に追加緩和するのか否かに解釈が分かれるところだが、何か特別な意志があるとは思えず、今後入手する経済・金融動向の情報を注視するということなのだろう。
そもそも、今行っているツイストオペなどの措置は強い緩和策と言える。時間軸効果を最大限に発揮するための政策にもなるため、よほどのことが起きない限り、この効果を見極めるというのが金融当局の普通の考え方だ。失業率が上昇し続けるとか、生産が急激に落ち込むなどの兆しが出てくれば追加緩和に乗り出すかもしれないが、今の調子で状況が大きく変化しなければ緩和の可能性は低いのではないか。
●9月以降に対応へ、ドル円は底堅い可能性
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア為替・債券ストラテジスト 植野大作氏>
予想通りだった。景気判断の下方修正などはあったが、いったん現状維持で様子を見るということなのだろう。今回の結論をシンプルに判断すれば、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)まであと2回雇用統計があるので、それをみてからどのような追加緩和が必要か判断したいというメッセージと受け止めることができる。
為替相場のイニシャルリアクションはドル全面高だった。コンセンサスは見送りだったが、付利引き下げや時間軸の延長など何か出るのではないかという淡い期待が一部にあり、それがはく落した格好だ。
今後については、9月以降のFOMCで量的緩和第3弾(QE3)や付利引き下げ、時間軸の延長などを含めて、何らかの対策がとられる可能性が高いとみており、そうであれば他の条件が一定なら、米金利にもドルにもそれなりの下押し圧力がかかるだろう。
ただし、ドル/円については、78円を割り込んでくると介入警戒感が非常に強まってくるほか、景気が減速懸念から腰折れ懸念に発展する前の段階でてこ入れの政策が打たれれば、リスクオンになって金利もドルも反騰する可能性もある。これらを踏まえれば、しばらく追加緩和含みでドル/円は下がりやすいかもしれないが、比較的底堅く推移するのではないか。
●FRBは緩和効果に懐疑的、年内追加緩和見送りも
<東海東京証券 チーフエコノミスト 斎藤 満氏>
米連邦準備理事会(FRB)は、市場が期待しているほど有効な武器(景気刺激策)を持ち合わせていないと考えている。FRBは、金融緩和が実体経済を刺激し、景気を浮揚する効果について次第に懐疑的になってきている。その一方で、金融緩和の代償や副作用について懸念している。
米国では長期金利が過去最低水準にあることから、追加緩和によって債券市場のバブルを助長し、バブルがはじけるリスクを拡大することに対する心配もあるだろう。
市場は今後も追加緩和について期待を引きずるだろうが、FRBは金融政策の効果について自信を失い、積極的に動く事に気乗りがしない様子だ。来月以降に追加緩和策が打ち出されるか否かは微妙な情勢だとみている。
政治日程との関連では、大統領選挙が近づくに連れて、追加緩和の実施は難しくなるだろう。なぜなら大統領選前に追加緩和を実施すれば、現政権に加担したと受け止められるからである。結論としては、9月以降、年内に追加緩和が実施されると決めつけるのを避けたほうが無難であろう。
●週明けの日銀会合に影響せず
<RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏>
注目された連邦公開市場委員会(FOMC)は予想に反して追加緩和が見送られた。他方、日銀が8、9日に開催する金融政策決定会合に向けては、米国が付利引き下げを実施して日銀にも圧力がかかるという極端な展開でない限り影響は出ないとみていたが、やはり、次回会合での追加緩和が検討される情勢にはないだろう。その場合は4回連続で政策が据え置かれることになり、会合ごとに追加緩和があるのではといった一部の市場参加者の見方が、一段と修正されることになるのではないか。
来週の決定会合では、追加緩和のあるなしよりも、残存1年から3年の国債買入で札割れが生じていることへの対応が焦点となる。国庫短期証券と同様に国債買入オペについても下限金利を撤廃する可能性は否定しない。しかし、それが次回の会合でアナウンスされると確定的な情勢かと言えば、そうではない面もある。2年債の利回りが付利(0.1%)を割り込んでいるのは、補完当座預金制度を適用されない海外投資家の買い需要が強いからであると考えられる。
しかし、過去の海外投資家の債券投資動向を見ると昨年4、5月に大きく買い越した後、1年ほどは緩やかに売り越し、また今年6月頃から買っているといったように、今の強い需要も、いつまで続くかは分からない。
2年債については、日銀が長国買入オペで下限金利を撤廃するのでは、という思惑が利回りを押し下げ、逆に日銀の買入を難しくしている部分もある。固定金利オペの残高が減るにしたがってレポ金利が一段と高止まりしやすくなるだろうことも考慮すると、次回の決定会合では下限を撤廃せず、白川総裁が記者会見で当面撤廃しないとアナウンスすることで、逆に0.1%でも買い入れやすくする可能性がある。
下限金利がなく札割れしにくい国庫短期証券買入オペに一部振り替えるという代替案も日銀には存在している。具体的には、短国買入と長国買入の区分をなくして、国債買入として合計で38.5兆円積み上げるというものだ。この場合、リスクプレミアムの縮小という本来の目的に照らし合わせれば、日銀が市場から吸収するリスクが小さくなるということで、金融緩和効果が減退していると捉えられる可能性があるため、これを回避するためETFなどのリスク資産を買い入れることも選択肢のひとつではないか。ただ、これについては、1回の会合で議論し尽くすような問題でもない。あるとしても数回先の会合になるのではないか。
●9月のQE3導入を決め打ちすべきでない
<シティグループ証券 チーフエコノミスト 村嶋帰一氏>
時間軸の延長も行われなかったのは、景気が緩やかに持ち直していくシナリオが維持されたことや、景気や金融環境への効果があまり期待できないことが理由とみている。緩和バイアスはやや強まったが、強まり度合いは限定的だった。9月のFOMCでのQE3導入を決め打ちすべきではない。また追加緩和が行われる場合でも、QE3ではなく、コミュニケーションの強化や民間銀行の貸出に対してFRBがファンディングを供与するといった手法になる可能性がある。いずれにせよ追加緩和は雇用統計などを見極めながらの判断となろう。
●9月の緩和実施に含み残す、失望感乏しい
<楽天経済研究所 シニア・マーケットアナリスト 土信田雅之氏>
米連邦準備理事会(FRB)は追加緩和を見送った。ただ米景気に対する認識を下方修正しており、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での緩和実施に含みを残した格好だ。また8月末にバーナンキFRB議長がワイオミング州ジャクソンホールで行う講演で何かしらのメッセージを発するのではとの期待感もあり、今回の緩和見送りはさほど失望するほどではないとみている。
事前には過度な期待感もあり、前日の米国株式市場では主要株価指数が下落したが、下げ幅は限定的。一方、緩和見送りに伴って円高警戒感が遠のいており、日本株の下支え要因になるだろう。
●不安後退でカード温存
<セントラル短資 執行役員総合企画部長 金武審祐氏>
連邦公開市場委員会(FOMC)が追加緩和を見送ったのは、ひと頃よりは市場が落ち着いてきたためだろう。欧州の債務問題が危機的状況に陥り、スペインの国債利回りが急騰するなどしていた場面では、何か手を打つのでは、と読む市場参加者が多かった。しかし、ここにきて欧州当局者からの発言が不安心理を後退させていた。結果として緩和カードが温存できた格好だ。もっとも欧州中央銀行(ECB)が2日に開催する理事会では無回答はあり得ないだろう。
週明けには日銀会合も控える。国債市場で2、3年物の利回りが節目の0.1%を割り込んだため、国債や社債を買い取る資産買い入れ等基金のファインチューニングが視野に入っているのではないか。国庫短期証券だけでなく国債も下限金利が撤廃される可能性もある。
●失望、ECBに期待
<コンバージェックスグループの首席市場ストラテジスト、ニコラス・コラス氏>
やや失望した。量的緩和(QE)か金利据え置きの時間軸延長に関する新たな知らせを市場は期待していた。景気が悪化しているとされるのに、(今回の決定は)まさに現状維持だ。今回の声明は、これまでのものと似通っていてとても驚いた。もはや欧州中央銀行(ECB)に積極的な政策を期待するほかない。
●新材料は皆無、FRB内での議論の高まり示唆
<ミズホ・セキュリティーズの首席エコノミスト、スティーブン・リチュート氏>
市場では失望感が広がるだろう。米連邦準備理事会(FRB)の措置をめぐり、市場は先走っていた感があり、失望が広がってもおかしくはない。ただ、少なくとも想定内の結果になったようにみえる。
声明には新材料はまったくない。声明からは、FRB内で多くの議論が行われていることが示された。
●意外感ない、9月会合でもIOER引下げは予想せず
<クレディ・スイスの金利ストラテジスト、マイケル・チャン氏>
新たな発表がなかったことは全く意外というわけではない。QE3(量的緩和第3弾)や超過準備金利(IOER)引き下げはある程度織り込まれていたものの、9月会合で実施される可能性の方が高いとみられていた。ただ、われわれはIOERの引き下げは見込んでいない。
米国債にある程度の売りがみられ、イールドカーブがフラット化している。今後、長期債部分のフラット化が進むと予想される。
●QE3を市場沈静化手段として温存
<ワールドワイド・マーケッツの首席市場ストラテジスト、ジョセフ・トレビサーニ氏>
米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)の実施に消極的なのは、効果が非常に小さいからだ。言い換えれば、QE3に何らかの効果があるとすれば、そのほとんどは心理的なものになる。
投資家懸念の沈静化に効果はあるかもしれないが、経済に対する影響はほとんどないし、失業に対してはまったく効果がない。
FRBは量的緩和を市場で波乱が起きた場合に沈静化する手段として温存している。まだ行使する時期は来ていない。
●下振れリスク強調、緩和の用意明確に
<プルデンシャル・フィナンシャルの市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏>
米連邦準備理事会(FRB)は経済の下振れリスクをはっきりと強調し、必要に応じて緩和的な姿勢をとる構えを極めて明確にした。これは、FRBが現時点で追加量的緩和に踏み切らず状況を見極める、という市場の予想とほぼ一致した。
●ハト派色明確、一定の刺激策検討のもよう
<ウエストパックのシニア為替ストラテジスト、リチャード・フラヌロビッチ氏>
連邦公開市場委員会(FOMC)声明は、経済活動が減速しているとの認識が示されるななか、ハト派色が明確で、一定の刺激策が検討されているもようだ。しかし市場が期待したほどハト派的ではなく、今後の政策行動に関する詳細もごくわずかだった。
*内容を追加して再送します。
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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE87002A20120802?sp=true
今年の日本成長率予想は2.5%、欧州危機など下方リスク=IMF
2012年 08月 2日 08:54 JST
[ワシントン 1日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)は1日、日本経済は前年の東日本大震災の被害から回復しつつあり、2012年の成長率は2.5%になるとの予想を示した。ただ、欧州債務危機と中国の成長鈍化による下方リスクは存在すると警告した。
IMFは日本経済に関する年次報告書で、対国内総生産(GDP)比率にして125%を超える公的債務、高齢化社会、低成長、デフレの各問題に対処するためには広範な構造改革を実施する必要があると提言。「公的債務の削減が最優先事項だが、低成長、根強いデフレ、急速に進んでいる高齢化社会などの要因により、達成は困難になっている」との見方を示した。
成長率見通しについては、GDPの1.5%に達する震災復興予算、および強い消費需要により、2012年は2.5%程度になるとの予想を示した。
ただ、2013年は復興予算の減少により、1.5%に減速すると予想。短期的には「欧州問題の深刻化、もしくは中国経済の予想を上回る鈍化」により、日本の輸出と経済成長には明らかな下方リスクが存在すると指摘した。
金融システムについては、東日本大震災、および前年のタイの洪水があったにもかかわらず、引き続き安定していると評価。日本の銀行の欧州周辺国に対するエクスポージャーの規模も小さいとした。ただ、「欧州主要国との金融上の関係を通した間接的なエクスポージャーはかなりの規模になる」と指摘した。
中期的には、世界的に景気が低迷するなか、主要な構造改革の進展が遅れれば、日本は「公的債務の悪化に拍車をかける低成長とデフレに苦しみ続ける」と警告した。
消費税率引き上げについては、現在5%となっている税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げる法案を成立させることは、政府が財政改革に対するコミットメントを示し、投資家の信頼を維持するうえで「重要」との考えを示した。
しかし、公的債務の対GDP比率を引き下げるには増税以外にもさらなる措置が必要とし、歳出抑制と歳入増を図ることにより、向こう10年で財政を10%引き締めることを目標とするよう提言した。
ただ、急激な緊縮財政措置は慎重に導入されなければ成長が損なわれる恐れがあるとの認識を示し、例えば女性の労働参加率の引き上げ、高齢者の雇用促進、移民受け入れの増加など、実現可能性の高い労働市場改革などから着手するよう提案した。
通商問題については「アジアと欧州の主要貿易相手との質の高い自由貿易協定(FTA)を追求し、環太平洋連携協定(TPP)に参加するとの当局の方針は、サービス部門と農業部門における地域的な融合の加速に寄与する」とした。
また為替については、不安定または無秩序な市場の状況に対応するために介入を用いうるものの、日本は引き続き為替レートが市場によって決定されることを許容すべきとし、介入を容認する姿勢を示した。
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ドルに代わる魔法の杖はない
米国の地位低下を根拠とするドル危機論は早計であり、ドルを中心とする国際通貨システムには進化の余地があると竹中平蔵氏は指摘する。
記事の全文 | 特集ページ
日本は中国の良き反面教師=河野龍太郎氏
貿易赤字基調でも円高の理由=佐々木融氏
人民元「最強通貨」への道のり=斉藤洋二氏
円安・株高への因果の出発点=田中泰輔氏
トヨタ自動車、米国で76万台のRAV4をリコールへ 12:56pm
英政府の一部閣僚、RBSの完全国有化も視野に協議=FT 12:33pm
強力な金融緩和を間断なく推進=森本日銀審議委員 12:22pm
ドイツの格付け「AAA」を確認、見通しは安定的=S&P 12:19pm
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87007G20120801?sp=true
極端な円高なら介入も正当化、最高値接近が目安か−加藤元財務官(1)
8月2日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)の副専務理事を務めた加藤隆俊元財務官は、米欧の追加金融緩和で円高が極端に進めば「為替介入も正当化される」とし、介入実施の目安としては戦後最高値(1ドル=75円35銭)接近などが有力だとみている。円高是正を狙った日本銀行による外国債券購入案には否定的な見解を示した。
国際金融情報センター理事長の加藤氏(71)は7月31日のインタビューで、円はやや過大評価されているとIMFのラガルド専務理事も7月に認めていると指摘。円高圧力が高まれば、日本も景気支援のため「適時適切に必要な行動をとる」と予想した。円高是正策は日銀の追加緩和が主となるが、「極端な円高進行の場合は為替介入も当然検討すべきだ」と強調。目安としては最高値接近などが考えられるとし、通貨当局が市場に「あらかじめヒントを与えるのはうまくない」とも語った。
円の対ドル相場は昨年10月31日、75円35銭の戦後最高値を記録。政府・日銀は同日、8兆722億円と単日、月間ベースともに過去最大規模の円売り・ドル買い介入を実施した。今年に入り、円高は一時小康状態にあったが、欧州債務危機や世界的な景気後退懸念からリスク回避の円高が再燃し、2日の午前9時11分現在は78円40銭前後で取引されている。また、円は対ユーロでは先週、約11年8カ月ぶりの高値を付けた。
加藤氏は1995年6月、円・ドル相場が当時の戦後最高値1ドル=79円75銭をつけた約2カ月後に財務官に就任。榊原英資国際金融局長らと円高是正に取り組み、同年9月には100円の大台を実現した。IMFは昨日公表したレポートでも、円は「やや過大評価されている」と指摘。為替相場は市場で決まるべきだとしながらも、過度な変動や無秩序な動きには介入もありうるとの考えを示した。安住淳財務相は2日、記者団に対し、IMFの見解は日本政府と同じだと述べた。
外債購入は説明困難
加藤氏は「為替差損のリスクを覚悟で円の安定のために市場に出ていく」のは、介入を担う外国為資金特別会計の役割だと強調。円売り介入と同じ効果がある日銀の外債購入は、「中央銀行のバランスシートになぜ今、外債を加えるのが適切なのか」の対外説明も必要になると指摘した。過度な相場変動が見られない現状で実施すれば、米欧から「相当な批判を招くリスクもある」とも述べた。
日銀の外債購入をめぐっては、歴史的な円高を背景に昨秋以降、岩田一政前副総裁や中原伸之元審議委員らが提唱。佐藤健裕審議委員も先週の就任会見で「一案」だと述べた。一方、日銀の山口広秀副総裁はその翌日、外債購入は「日銀法との関係で大きな問題を引き起こす」と発言。安住淳財務相は昨日、実質的な介入としての日銀の外債購入は適切ではないと、衆院で答弁した。
日本経済は東日本大震災からの復興過程で「公的歳出から輸出部門に徐々にバトンタッチ」する形で実質2%程度の経済成長率を維持するのが望ましいと発言。世界景気の鈍化や資金逃避による円高をもたらしている欧州債務危機が「小康状態になることが極めて重要だ」とし、スペインやイタリアの国債利回りが目に見える形で低下する即効性、心理的効果のある政策措置の発表が必要だと指摘した。
加藤氏は、ユーロ圏全体で見れば経常収支やインフレ率、公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率などは日米に見劣りしないと指摘。「現在の危機的な状況に上手く対処できれば、ユーロ安が極端に進む理由はない」との見方を示した。
身の丈に合ったインフレ目標
購買力平価説によると、デフレのため通貨価値が目減りしない日本の円は、インフレ率がプラス領域にある主要通貨に対して上昇傾向が続く。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は2%程度のインフレを目標とするが、日銀が2月に導入した「中長期的な物価安定のめど」は1%。一部の政治家や市場関係者は円高容認も同然と批判的だ。
加藤氏は、人口減の日本経済は人口が増え続ける社会とは「かなりの構造的な違いがある」とし、1%のインフレ目標は「今の日本には身の丈に合っためどだ」と評価。「インフレ率が供給力の伸びとあまりかけ離れて決まるとも考えにくい」と述べ、「人為的に高いインフレ率を設定すれば経済がそれに向かうというほど簡単ではない」と語った。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 Shigeki Nozawa snozawa1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/08/02 11:04 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M82I530UQVI901.html
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